どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第九十六章

 

「──ベルさん。

 モタリケさんを好きになったキッカケって、なんだったの?」

 

 それまで話さなかったシームが平和な食卓に爆弾を投げ込み、私とウラヌスとモタリケさんが『ぶぅッ!?』と吹いた。メレオロンも向こうの食卓でゲホゲホむせてる。

 

「えー。シームくん、それ聞いちゃう?」

 

 なんだかくねくねしながら嬉しそうにベルさん。お、おい。そんなの聞きたくないぞ。

 

「と言っても、明確にコレっていうのがあったわけじゃないのよねー。

 知らないうちに好きになってたって言うか。

 モリーが居なくなって、そのとき初めて『あ、好きだったんだ』って気づいたかな。

 ほら、普段はあるのが当たり前になってて、なくなった時に大切だって気づいたりする、あの感覚よ。分かる?」

「……うん。なんとなく分かる」

 

 普通にいい話だった……

 どこぞのバカップルに毒されすぎていたか、私も。くっ……

 

「だから、好きになったのは積み重ねかな。

 もちろん最初は貴重な念能力者だからって理由で、盗賊団にスカウトしたんだけど。

 モリーって性格ヘタれでモタモタしてるけど、真面目で優しいのよねー。

 アレやれコレやれって言ったら、ぶつくさ言いながらちゃんとやってくれるしさー」

 

 モタリケさんがすっごい複雑な顔してる。まぁそうだろうな。

 訝しげにウラヌスは、

 

「つか、前に話した時は絵がどうの言ってなかったか?」

「もちろんそうよ。

 贋作やってもらう為に色々美術工芸してもらって、わたしをモデルにした絵が一番出来よかったのよね。それがキッカケと言えばキッカケかも」

 

 うん?

 

「でもそのモデルにした絵って、贋作じゃないですよね……?」

「そうそう、それだけ聞くと不思議に思うでしょ?

 モリーがたまには贋作じゃなくて、普通に絵が描きたいって言ったの。

 なに描きたいのって聞いたら、わたしを絵のモデルにしたいとか言って。今までそんなこと一度も言ってきたことなかったから、わたしもビックリして」

 

 うーん……勘繰るとナンパに聞こえるな。でも一番出来がよかったみたいだし、純粋に描きたかっただけなのか?

 

「お前、昔っからそんな(なり)じゃないんだろ?

 盗賊団にいた時からそんなだったのか?」

「……違うけど」

 

 ウラヌスの質問に、不機嫌そうに答えるベルさん。モタリケさんがモデルにしたいって言うぐらいだから、昔も悪くはなさそうだけど。

 その当のモタリケさんは微妙な表情のまま、

 

「こいつ、昔はもっとカッコ良かったんだよ。

 ピシッとして、キビキビしててさ。

 気を抜いてる時はそうでもなかったけど、気合い入ってる時は相当なもんだった」

「疲れるんだってば、アレ。

 ちゃんとしてないと、ヘタ打ったら捕まっちゃうからユルくできないしさ。

 もう今更あんなのしたくないわよ。わたしはお嫁さんとして生きるんでーす♪」

 

 おちゃらけた感じのベルさんに、ウラヌスは肩をすくめ、

 

「で、若返り薬か。

 青春取り戻す気まんまんだな」

 

 ──ああっ! なるほど、そういうことか。そりゃ見た目変わるわ。

 

「だって昔のままじゃ、指名手配されてるからヤバイじゃん。

 これだけ若返ったら流石に誰も気づかないでしょ」

 

 えっと、元々いくつだったんだろ……いや年齢そのものは変わらないからアレだけど。

 モタリケさんは呆れた顔で、

 

「だからって13粒は飲みすぎだ。ほとんど子供じゃないか」

「こ、こら、バラすな!」

 

 13……二十代って言ってたし、今の見た目は15くらいかな。あ、うん。計算終了。

 

「ちなみに、モタリケさんって何歳なの?」

 

 いい質問をするシーム。そしてベルさんに聞かなかったことから、同じ計算を終えたと推測できる。

 

「オレか? 34だけど……」

 

 ほー、思ったより若かったよ。……34歳と28歳前後なら、まぁアリか。

 

「もー……

 で、あなた達はいくつなのよ? わたしばっかりズルいじゃない」

 

 気分悪そうに尋ねるベルさん。年齢か……

 

「俺は知ってるだろ? 17だよ」

「ぼく11歳!」

 

 シーム、思ったより子供だった。

 

「あなたは?」

「私は14歳、今年で15になります」

『──わっか!?』

 

 モタリケさんとベルさんが一斉に反応する。ははー……

 

「うーわ、その見た目で14? ないわぁー」

 

 なんか夫婦の視線が胸に集中してる気がする。……ベルさんもワリとあるんだけどな。私と比較するなとは言いたいけど。

 誤魔化すように、フォークでパスタをくるくるして口に運ぶ。

 

「じゃあ、なに?

 ウラヌス、こんな巨乳ロリな子が好みなんだ?」

 

『──ぶほぉぉッッッ!?』

 

 いぃ、イキナリなんてこと言いやがるッ!! 鼻からパスタが出るトコだったぞ!!

 

 ウラヌスはウラヌスでコーヒー吹きかけて「げぇほげほげほッ!」やってる。

 

「お、おまえぇぇ……」

「あれ、違うの? なぁんだ。

 仲良さそうだから、付き合ってるかと思ったのに。

 あんた誰が誘ってもずっとソロだったし、連れがいるって聞いたからてっきり」

「けほんけほん!

 あー……私とウラヌスは友人です。そういうのじゃないです」

「そうだよ、ゲスな勘繰りしてんじゃねーよ」

 

 なんかシームが何とも言えない顔してる。なんでだ。

 

「へぇー。

 ともだち。友達ねぇ♪」

「……んだよ?」

「いえいえ。お友達からって大事だなって♪」

 

 ベルさんの言ってることがよく分からん……

 

 ウラヌスは強く咳払いした後、

 

「まったく、ごちゃごちゃ余計なことばっかり……

 つかモタリケ、結局描いたコイツの絵ってどうしたんだよ?」

「そりゃ置いてきっぱなしだよ。

 気まぐれにゲームへ来たはいいけど、簡単に戻れなくなったしな」

「もったいないよねー……

 まぁあの絵を手元に置くと、昔と今を結び付けられる可能性があるから怖いんだけど」

 

 ベルさんが複雑そうにぼやく。ふむ……それはどうしようもないかな。失し物宅配便で取り戻すだけなら出来るだろうけど。

 ウラヌスはちょっと怒った様子で、

 

「だから、戻ってみりゃいいだろうに……

 オマエラ、全然その気ないじゃないか」

「言っただろ、現実は現実で危ないから戻りたくないって」

「こっちだって充分危ないだろが。なに言ってんだ」

 

 おそらく毎度の言い合いをしてるウラヌスとモタリケさん。ベルさんは何でもない顔で、

 

「それならこっちに留まっても別にいいかなーって。

 リスクは変わんないんだし」

「全然ちげぇーよ。

 向こうは捕まるリスクで、こっちは死ぬリスクだろうが」

「そうは言うけど、現実だって死ぬ可能性は充分あるわよ?

 PKバスターさんが頑張ってくれたから、こっちはワリと平和だもんねー♪」

「んなつもりでやったんじゃねぇよ……ったく」

「あー、その。

 ちょっとお伺いしたいことが……」

 

 軽く挙手する。ここは聞けるタイミングだろう。

 

「ん、なに?」

「PKバスターってなんですか?」

「あれ?

 ウラヌス、話してないんだ?」

「なんで話さなきゃいけないんだよ。

 ……今、そんなことしてる暇ないしな」

「する必要もないと思うけど。

 だって、もう全然聞かなくなったもん」

 

 むぅ。ベルさんとウラヌスで話が進んでるけど、肝心の説明をしてくれない。……いや、もしかして。

 

「えっと……」

「あ、ごめん。

 ウラヌス、話していいの?」

「……」

「ウラヌス……

 どうしても知られたくないなら、このまま聞かないでおきますけど」

 

 今の話の流れで、大体わかっちゃったしな。

 

「……別にいいよ。そんなもったいぶることでもなし。

 俺もちょっと今の状況を整理しときたいからね」

「ん。じゃあ、わたしから話すわね。

 PKは、プレイヤーキラーの略。プレイヤーキラーは知ってる?」

「ええ……知ってます。

 カード化限度枚数のせいで、入手したアイテムがカード化しない状況を解消する為に、積極的にプレイヤーを殺す存在……ですよね」

「そうそう。カードなんて二の次、プレイヤーを殺すことが主目的の連中。理由は色々で、単純に競争相手を減らす為とも言われてたわね。まったく、たかがゲームなんかでムキになっちゃって、怖い怖い。

 で、ウラヌスはゲーム攻略のかたわら、そのプレイヤーキラーの情報を集めて、狙ってハントしてたことがあって。それでプレイヤーキラーバスター、略してPKバスターって呼ばれてたの」

 

 うぅむ……やっぱりそうなのか。ほんと無茶苦茶するな、ウラヌス。

 

「どうしてまた、そんなことを?」

 

 私がウラヌスの顔色を窺いながら尋ねると、スネた表情でそっぽ向かれた。……だから、そういう顔されると、こう……ほっぺたつつきたくなるんだってば。

 

「わたしも同じこと聞いたのよ。

 ちょっと長話になるけど、いい?」

「……お願いします」

「最初の最初、わたしがモリーを追っかけてゲームに入ってきて。

 まぁ色々あった後、がんばってモリーを発見して、一緒に暮らしてたんだけど。

 ある日、帰ってきたモリーの様子がおかしかったのよ。

 時々そういうことがあって、たいてい仕事をサボって絵を描いてた日なのよね」

「え? それって……」

「モリーって定職に就いてるのに、絵を描きたいのかサボリたいのか知らないけど、時々そんなことするのよ。お給料減っちゃうから、わたしは困るんだけど。

 家で絵を描くとわたしにバレるから、外で描いてるのよね?」

「……」

 

 モタリケさんが気まずそうに目を逸らす。……なるほど、趣味と休暇を兼ねて外で絵を描いてたのか。というか、ゲーム内で定職に就けるのか。てっきり懸賞の貼り紙に書いてあった日雇い仕事だけかと思ってたよ。

 

「で、その日もそうなのかなと思って、モリーを問い詰めたのよ。

 実際それはそうで、描いてた絵を無理やり見たんだけど……

 なんか見たことない子が描いてあって。

 え、誰これって。いつもなら風景とか建物とかゲームキャラ? とかなのに、その日に限って可愛い子が描かれてたわけよ。

 アントキバのゲームキャラは把握してたし、プレイヤーで女の子なんてそうそういないから、どうやって描いたのか尋問したら──」

 

 ああ、うん。誰のことか分かったよ……

 ウラヌスが痛ましい表情で、額に手を当ててる。

 

街中(まちなか)で見かけた子に絵のモデル頼んだら、引き受けてくれたって」

「お、俺も最初は断ったんだよ……

 でもこいつ、しつこくて」

 

 顔を赤くしながらウラヌス。

 

「拝み倒されて、引き受けちゃったパターンですか。平常運転ですね」

「ウラヌスらしいよね」

「やめろぉおおっ……!」

 

 私とシームの波状攻撃で、顔を覆うウラヌス。このヒト、ほんと断るのヘタだな。

 

「あははは。

 わたしも最初断った口だけど、モリーってしつこいのよね。絵のモデルにしたい理由を懇々と語られるうちに、口説かれてる気がしてきちゃうっていうか。

 モリー、女の子を勘違いさせるのが上手いのよ」

「オレ、そんなつもりじゃないぞ。言っとくけど」

「自覚がない分、タチが悪いのよ。

 この天然ジゴロ」

 

 夫婦の会話に反応して、ぷるぷるしてはるウラヌス。うん……イ㌔。

 

「で、もし勘違いしてたら良くないなーと思って、その子に説明しようと思ったわけよ。

 今日みたいにモリーから『交信』してもらって、この家に来てって」

「……そのお誘いも、今日みたいにウラヌスは断れなかったわけですね?」

「ひぁぁぁぁぁぁっ……!」

 

 抑えた手の隙間から細い悲鳴。このウラヌスならシームでも勝てるな。

 

「だ、だって……

 絵のモデル引き受けて、実際描いてもらってさ。

 その日のうちに、そいつの恋人が話したいことあるから来てくれ、って言われたら……

 ほっとくの怖いじゃん。えっ、なに? って」

「それはまぁ……」

「ごめんねー。怖がらせて♪

 この家にご招待して、わたしが説明したわけよ。

 モリーは純粋に絵のモデルを頼んだだけだから、勘違いしちゃダメよって。

 そしたら、勘違いなんかしてないって言って」

「あれ?

 ウラヌス、ナンパだって分かってたんじゃないの?」

 

 シームの何気ないツッコミに、「ぅぐ」と呻くウラヌス。

 

「ナ……ナンパだって分かったのは後だよ。今の説明されたから。

 始めから気づいてたら、絶対に断ってたよ……」

「だからオレ、ナンパなんかしてないぞ。

 絵のモデル頼んだだけだ」

 

 モタリケさんの訴え。混沌としてるなー……

 

「うっせーよ、くそ……

 俺がハナからナンパだって気づいてたら断った、って分からせる為に俺は男だって説明したら、オマエ引っくり返ったじゃないか」

「そ、それはビックリしただけだ。

 こんな男いるわけないって」

「オマエ、ヤメロ!」

 

 ウラヌス、全力で顔まっか。あっははは、おっかしい。

 カーテンの向こうから、メレオロンが耐え切れず爆笑してるのが聴こえてくる。

 ベルさんも半笑いで話を続ける。

 

「そ、そんでね。

 モリーが足滑らせて転んで気絶しちゃって。

 2人で介抱してあげたのよ。わたし達とウラヌスが縁できたのはその時」

 

 ああ、うん。それはウラヌスも話してたな。

 そうすると、次はあの話か……

 

「それがキッカケで、結婚式を挙げるって話になったんですかね?」

「そうそう、よくご存じで。

 ちゃんと捕まえとかないと、またフラっと、どっか行っちゃいそうだなって。

 色々準備が大変だったけど、知ってるプレイヤーに声かけて、ようやくルビキュータで結婚式の流れになったのよ。

 前置きが長くなっちゃったけど、こっからがPKバスター誕生秘話ね」

 

 おう? そんなご大層なものなのか?

 当のウラヌスは、

 

「お前、変な脚色すんなよ……?」

「しないわよ。ありのまま話すだけ。

 ゲームで結婚式なんて物珍しいからか、大勢プレイヤーが集まったのよ。呼んでない人まで見物に来て。わたし達もすっごいビックリしたんだけど。

 ウラヌス目がけてブーケぶん投げたら、必死で避けてて面白かったわね」

「お、まぇぇ……!」

「あははは。わたしは好意で投げたのよ?

 意味知ってるから避けたのよね」

「ぐ……!」

 

 結婚式のブーケか。なんかいわくがあったはずだけど、なんだっけか。

 

「……でも、人が集まりすぎたのがよくなかったんでしょうね。

 その中に1人、危ないのが混ざってたのよ」

「……。

 プレイヤーキラーですか?」

「そう。

 誰を狙うか、品定めしてたんだと思うけど。

 ただ、狙った相手が最悪だったのよ──そいつにとって。

 狙った理由は分からなくもないけど」

 

 ベルさんが黙り、ウラヌスを見つめる。彼は面白くなさげに、

 

「……そいつ、よりによって俺の髪の毛をハサミで切ろうとしやがったんだ。

 式が終わって、さぁ解散ぐらいの気が抜けるタイミングで。

 なんとなく気配は察してたから、カウンターで沈めてやったんだけど……」

 

 ウラヌス、普段は弱々しいからな。見た目がこんなだし。

 

「あのプレイヤーキラー、確かプロハンターなんだっけ?」

「ああ。

 ブラックリストハンター、ビノールト。

 あいつ自身も賞金首っていう、ワケ分からんヤツだけど。

 第一級殺人犯で、ロクでもないの一言に尽きるな。

 戦闘不能にしてやったまではいいけど、こいつどうしようって」

 

 ビノールト、ビノールト……どっかで聞いたような気がするけど、思い出せないな。

 

「なんか集まって相談してたわね。

 こいつ食人なんてやらかす大悪党だから、絶対殺した方がいいとか」

 

 うわ……食事中にやめてほしいな。もう食べるもの、あらかた残ってないけどさ。……メレオロン、気にしてないといいんだけど。

 

「でも結婚式みたいな祝いの席で、そういうのは……って意見もあって。

 無理やり目を覚まさせて、何でウラヌスの髪を切ろうとしたか尋問したら、切った髪を食べるとその相手の情報が全部分かるとか」

「どんな趣味してんだって話だよな……

 誰だよ、あいつプロハンターにしたのは」

 

 機嫌悪そうにウラヌス。……多分ネテロです。はい。

 

 腕を組みながら、気だるそうにウラヌスは続ける。

 

「賞金首なんだから、捕まえてハンター協会に突き出せれば良かったんだけど。

 でも港から出る時は、同時に出れないからその時間差で逃げられそうだし、『離脱』を使うにしても、もし出た先が別の場所ならやっぱり逃げられそうだなって」

 

 確かに。厄介だな……

 

「確実なのは殺すことだっていうのは、俺にも分かってたんだけど。

 まぁ……

 面倒だけど、俺がビノールトを港まで引っ張っていって、オーラをほぼ使い切らせて、更にぐるっぐるの雁字搦めで港に放り込んで、脱出先の港をこの場所にしろって指定して。

 違うところを指定してないか、脱出先を扉越しに盗み聞きしておいて。

 俺もすぐ港からゲームを脱出して、そのまま現実で俺の飛行船があるところまで行って、直接ハンター本部まで連行した。

 それをする為に、俺のカード預かってもらったりとか、色々手間だったけど」

 

 はぁー……。と疲れた息を吐くウラヌス。

 

「……ご苦労様でした」

「いやまあ、昔の話だよ?

 ゲームから戻ってきた後は、何人かに『交信』で事の顛末を説明した。

 そのついでに──

 プレイヤーキラーの情報があったら、俺によこせって伝えた」

「どうしてまた、そんなことを?」

「……もののついでだよ。

 俺達の間で噂になってたプレイヤーキラーは、最低4人いて。

 どうせなら全部倒してスッキリしとこうと思って。なんとなくゲーム全体が殺伐してたのは、そいつらのせいでもあるし」

 

 ベルさんは機嫌良さそうに頷きながら、

 

「しばらく、プレイヤー間のやりとりが活発になってたのよね。

 プレイヤーキラーとか、交戦的なプレイヤーの情報交換が。

 発覚したらウラヌスに連絡とって、ウラヌスがそいつ成敗しに行って。

 逃げる為の移動スペルもまともに使わせずにハントしてみせて、そこから付いた名前がPKバスター。わたしが命名したんだけど」

「お前かい!

 ……いつの間にか変なあだ名ついてんなと思ったら」

「そうでーす♪

 結局ハントしたプレイヤーキラーって、3人で終わりよね?」

「俺が把握してる分はな。

 プレイヤー狩りならもっといたけど、明確に殺害が目的だったのはそんだけだよ。

 少なくともボマーは発見できなかった」

 

 あ……

 

「よっぽど上手くやってたんでしょうね。

 犠牲者を目撃したプレイヤーも、誰もそばにいないのに突然爆発したって言ってたし」

「まぁな。

 結局いつの間にか犠牲者出なくなったみたいだけど」

「うん。全然聞かなくなった。

 相当警戒されたんじゃない?」

「どうだかな……

 俺が積極的に動いてる間も、犠牲者は出てたしな。ボマーが一番動きデカかったし。

 とはいえ、プレイヤーキラーらしき連中が消えたのはいいことだよ。

 ……だからって、ゲームの中にダラダラ留まるのは賛同しかねるけど」

「えー。別にいいじゃん」

「よくねぇよ。

 病院もないのに、大きな病気したらどうすんだ」

「まぁ……それはわたしも気にしてるけどね。

 だって、病院もないから……ねぇ? モリー」

 

 ベルさんはなぜかちょっと頬を赤くして、モタリケさんを見る。モタリケさんも、少し顔を赤くして視線をよそに向ける。

 私の頭の中でなんでか『ぱるぱるぱる……』と謎の呪文が谺する。

 ウラヌスも耳を赤く染めつつ、

 

「へぇへぇ。リア充、ボマーに爆破されとけ。

 つか子供が欲しいなら、なおさら外に出ろよ」

「そしたら多分ゲームに戻って来れないから、それはそれでやだなーって」

「若返ってグダグダ嫁生活したいって言ってるお前に、そんな気がないのはワカッテルヨ。

 適当こいてんじゃねーぞ、ったく」

 

 そういえば……

 ゲームの中で子供が生まれたら、その子供ってどういう扱いになるんだろ。病院がないから、想定してない可能性もあるな……

 ま、まぁ私には関係ない話だ、うん。シームもいるし、込み入った話はしたくない。

 

「とにかく、PKバスターの話はこれで終わりよ。

 そろそろ食器片付けましょうか。

 モリー、みんなに食後のコーヒー淹れてあげて」

「ああ、分かった」

「あ、私も後片付け手伝いますね」

「あら。

 いいわよ、お客さんなんだし」

「いえいえ、楽しいお話を聞かせていただいたので」

「そう?

 じゃあ、お願いしようかな♪」

 

 私とベルさんとモタリケさんが席を立ち、ぞろぞろとキッチンの方へ行く。おっ、結構キッチンもいい感じに整ってるな。ここなら料理しやすそうだ。

 往復して食器を運んでる最中、ダイニングから話し声が途切れ途切れに聞こえる。

 

「おねーちゃん、ごめんね?

 なかなかこっち来れなくて」

「別にいいわよ。

 聞きに徹するのも、なかなか楽しかったわ。

 ウラヌスの悶える顔想像するのも一興ってもんよ」

「おまえ……」

「さっき食べてた時も飲んでたけど、あいつの淹れたコーヒー美味しいわね」

「ああ、あいつゲームじゃ珈琲専門店に勤めてるからな。

 盗賊団にいる時も、美味い美味いって重宝がられてたらしい」

「でもボク、ミルク入ってる方が好きかなー」

「そんなら言ってこいよ。多分そうしてくれるから」

 

 シームがキッチンへ顔を出す。

 

「モタリケさん。ぼくのコーヒーなんだけど」

「聞こえてたよ。

 ミルクコーヒーがいいんだろ?」

「うん!」

 

 嬉しそうに頷き、ダイニングに戻るシーム。

 隣に並んで食器洗いをしてるベルさんが、

 

「仲いいわね、あなた達」

「ええ。

 それほど長い付き合いじゃないんですけど、意気投合しちゃって」

「いいパーティーね。

 ……ウラヌスのことなんだけど。

 あなたも知ってる通り、アイツああいう性格だからさ。

 放っとくと必ず無理しすぎるから、ちょっと支えてあげてね」

「……

 ええ、そのつもりです」

 

 本当に、損な生き方してるよね……。そりゃ心配されるよ。

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
・プレイヤー狩りとプレイヤーキラー

 原作14巻でゲンスルーが解説していた『プレイヤー狩り』は、『プレイヤーキラー』と同一の存在を指しています。
 現在(今作)のグリードアイランドで意図的に言葉が使い分けられている理由は、同一と見なしていない為です。

 プレイヤー狩りの原作における本来の定義は、『カードを奪うことを目的とせず、始めから殺害を目論むプレイヤー』です。
 ビノールトはカードを奪う目的があったのか微妙ですし(初心者を狙っていた)、当初のゲンスルーも直接カードを奪う目的で殺害をしていたわけではありません(ハメ組の殺害以降は別ですが)。よってこの2者は明確な『プレイヤーキラー』です。
 厳密に言えば、『プレイヤー狩り』とは行為であり、『プレイヤーキラー』は人物を指すわけですが……

 今作でのプレイヤーキラーの定義は『カードを奪うことを目的とせず、始めから殺害を目論むプレイヤー』であり、この点は同じです。
 原作では特に呼称されていませんでしたが、『殺害が主目的ではなく、何らかの目的で他プレイヤーを襲う者』を今作ではプレイヤー狩りとしています。スペルでカードを奪うのではなく、直接プレイヤーを威嚇・攻撃してカードを奪おうとする者のことを指します。

 なぜ『プレイヤーキラー』のことを『プレイヤー狩り』とウラヌスが呼称しないのかと言うと、ウラヌスも『プレイヤーキラー』を狙って狩っていることに変わりは無く、彼をその定義に含めてしまうと誤解を招くなどの可能性を踏まえ、分けて定義していました。ウラヌスと顔見知りで情報交換していたプレイヤーも、彼が決めた基準を採用しています。

 プレイヤーを痛めつけてカードを奪う行為、それ自体はプレイヤー間でも暗黙の了解としてまかり通っていると言えます。よって、殺害には到らずとも好戦的なプレイヤー達も指して、プレイヤー狩りと呼称しています。そう呼称される者達の中に、当然ウラヌスも含まれます。ラターザへの苛烈な対応は、その活動の名残です。

 カードを奪おうとして、奪えなければ殺すというプレイヤーも元々は居たでしょうが、そういうプレイヤーは返り討ちにされたり、ウラヌスの動きを警戒して鳴りを潜めるなどした為、姿を消しています。原作では幻影旅団もプレイヤーキラーに相当しますが、既にアイシャ達の手で捕縛されていた為、彼らも島には存在しませんでした。

 そうしてプレイヤーキラーが消えたことで、警戒の対象は危険度のより低いプレイヤー狩りへと移っていきます。ゲンスルーは、この警戒網の合間を縫って活動していました。リィーナと遭遇する、その時まで。




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