どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第九十八章

 

 モタリケさんが地下室に戻ってきた途端、ざわっと肌が粟立(あわだ )つ。ウラヌスがベルさんの方をじろりと見やる。

 

「ベル、お前さ」

「ベルさん、モタリケさんに手を出したら許しませんよ」

「……はい」

 

 しゅんとするベルさん。まだ何かくすぶってる感じはするけど……。

 2人がかりで抑え込まないといけないとか、どんだけ面倒なんだこの人は。

 

「モタリケも、オマエ弱っちぃんだからヘタな挑発してんじゃねーぞ。

 嫁に殺されたいのか?」

「ちょっとウラヌス、わたしを何だと思ってるの?」

「元盗賊団の団長。

 あんだけ殺気ぶち撒けといて何言ってんだ。

 加減しないと、たかが喧嘩のつもりでもホントに殺しちまうぞ?」

「……」

 

 ぶすっとした表情のベルさん。念能力者がオーラを自制できないのは相当マズイからな。少々キツイ言い方になっても仕方ないだろう。大怪我しても病院にすら行けないんだし。

 

「別にオレ、挑発したつもりはないよ……」

「そういうのが良くないっつってんだろ。夫婦そろって面倒だな、ったく。

 言いたいことは分かるが、言葉に気をつけろよ。モデルに相応しい体型になってほしいとか他に言いようがあるだろ?」

「わたし、その言われ方でもイラっとするなぁ……」

「運動が足りてない図星つかれて怒るのは筋違いだよ。働いてるモタリケに対してフェアじゃないしな。

 俺達がいる前でそういうこと言われて、恥をかかされたって怒るなら分かるけど」

「……うん。まぁそうね」

「ごめん……そこまで考えてなかった」

 

 モタリケさんが謝り、ベルさんは力なく首を振った。おおぅ、ウラヌス仲裁成功した。やるなぁ。

 

「どうせお前ら、喧嘩なんていつものことだろ?

 いいからさっさとバインダー整理してくれよ」

「あ、そうだったわね。ブック」

「ブック」

 

 さっきまで喧嘩してたのがウソのように、相談しながらバインダーの整理を進める2人。いつもこんな感じなんだろうなぁ……

 

「どっちかに、空き枠寄せた方がいいのよね?」

「そうだな。

 じゃあ、ベルの方のフリーポケットをカラにしてくれるか?

 モタリケがフルにカード預かってくれ。こいつにカード扱わせるとイマイチだからな」

「余計なこと言うなよ……

 分かったよ」

「お2人がカード整理してる間に、ウラヌスもいつものスペルを使っちゃった方がいいんじゃないですか?」

「あ、確かに。

 2人ともやっといてくれ。俺は『名簿』と『解析』消化しとくから。……後『道標』もだな。ちょっと時間かかると思う」

「はーい」

 

 絵画の道具、家具、ダンボールなどがゲインされていく。その傍らで、スペルを使用しメモに筆を走らせるウラヌス。私は姉弟と一緒にその様子を眺める。

 シームが窺うような目を向けてきて、

 

「アイシャ、ほんとによかったの?

 絵を描いてもらわなくて」

「イヤですよ……

 あれを見た後じゃ」

 

 ウラヌス、恥ずかしいったらなかったみたいだしな。私が描いてもらって、同じようになるかは微妙だけど。それでも何となくイヤだ。

 私がモデルうんぬんはさておき、ウラヌスの絵は欲しいんだけどな。あれはいいものだ。写真とは違った趣がある。内面まで描かれてるというか、人柄(ひとがら)(にじ)み出てるというか。

 

「ふぅん。もったいないと思うけどなー」

「もったいないわよねぇ。

 アンタ、むしろヌードモデルでもいけるんじゃない?」

「やめてくださいね? そういう冗談」

「あ、うん、はい。

 怖いから、そんな目やめて。ね?」

 

 ったく。隙あらばイジってこようとするな、この変態は。

 そうこうしてるうちに、夫婦のカード整理とゲインしたアイテムの荷物整理が終わったようだ。ウラヌスは……まだかかりそうだな。

 

「……

 …………

 …………ぅん?」

 

 スペルを消化していたウラヌスが妙な声を出す。

 

「どうかしました?」

「あー、うん。

 大したことじゃないよ。急いでるし、また別の時に。

 ……。

 ──『道標/ガイドポスト』オン。85。

 …………。

 おし、こっちも出来た。待たせてごめん」

 

 ベルさんがそれに頷き、

 

「わたしのフリーの空きが45枠全部、モリーの空きが20枠よ。

 まだ1万ジェニーが5枚あるから、これをトレードショップに預けたいんだけど」

「俺達もトレードショップに用があるから、ちょうどいいな。

 アントキバのトレードショップで用を済ませて、マサドラへ移動スペルで飛ぶ。

 マサドラでもトレードショップへ寄ってから、スペルカードを買いに行く。

 ってプランだけど、付き合うなら出かける準備してくれ」

「うん、分かった。

 ちょっと着替えてくるから5分待って。

 モリー、家の外までみんなを送ってあげて。モリーは別に着替えないでしょ?」

「そりゃそうだけど……」

 

 

 

 不満顔のモタリケさんと一緒に、家のすぐ外でベルさんを待つ。

 

「なぁモタリケ。

 今のうちに、バインダーに登録されてるプレイヤー確認させてほしいんだけど」

「ああ、そんなこと言ってたな。

 ブック」

 

 ウラヌスがモタリケさんのバインダーを受け取り、自分のバインダーから外したスペルカードを、最後のページにハメ込む。

 

 それを横から覗いてみると……

 

 うわぁーっ、いっぱい居るよ。画面全部に表示されてるから、100人分か。当然だけど、ほとんどのプレイヤーが不在のようだ。

 しばらくウラヌスは名簿を眺めた後、バインダーのボタンを操作する。と、表示されていた名前が全て変化した。次のページか。これ何人登録されてるんだ……

 

「……いた!

 アーカ、多分こいつだ」

 

 ウラヌスが指差す位置に、『アーカ』というプレイヤー名が確かにある。

 

「モタリケ、助かったよ。確認できた」

「ん?

 それはいいけど、そいつに連絡しないのか?」

「今はいいよ。用はあるけど、まだバタバタしてるから接触は後日にしたい。

 連絡したい時が来たら、協力してくれ。あと最後のページに『交信』が入れてあるけど、今はそのままにしといてほしい」

「うーん。

 構わないけど、結局そいつに何の用なんだ?」

「野暮用さ」

 

 誤魔化すウラヌスに、首を傾げるモタリケさん。事情はちょっと説明しづらいもんな。安全保障に関わることだし、できれば教えない方がいいだろう。

 

 しばらくして玄関の扉が開いた。

 

「お待たせー♪ それじゃ行きましょ」

「お前、なんで服装気合い入ってんだよ……」

「普段着よ、普段着♪」

 

 そういうベルさんの服装は、まー女の子らしかった。白を基調にしたフワフワの子供服。足下はブーツで固めている。これで普段着とかないよね、流石に。

 

 

 

 ぞろぞろ6人でアントキバのトレードショップへ移動する。その夜道で、

 

「こうやって大勢でウロウロするのも久しぶりね」

「そうだな……」

 

 夫婦で星空を見上げながら語らうのを、後ろから眺める私達。

 

「お前ら、デート気分かもしれないけど、俺達がいるのを忘れるなよ」

「分かってるわよ。

 だから大勢で、って言ってるじゃない。

 ……昔、よくこうして歩いてたのよ。なんだか懐かしくて」

「盗みに入る晩とかか?」

「そんな時に堂々と歩けるわけないでしょ。

 しばらく仕事がない時とかよ」

 

 これまで聞いた話とベルさんの性格から考えて、またずいぶんとロマンチストな盗賊団だったのかもな、と思いはする。どこぞの盗賊どもとはえらい違いだ。

 

「ウラヌスから聞いたんですけど……

 ベルさん達は、よく美術品のすり替えをされていたんですよね?

 どうしてわざわざそんな手間を?」

「うーん。

 盗みたいだけなら、さっさと盗めば確かに楽なんだけどね。

 それだと誰の目にも盗まれたって明らかだし、事件になると後で面倒だからかな。

 バレにくいじゃない、すり替えなら」

「それはウラヌスからも聞きました。

 ……でも、贋作ってそんな簡単に作れるのかなと。手元に本物があって、それを真似るならまだしも」

「ご質問よ、モリー」

「程度によるかな……

 実のところ、絵はそこまで難しくない。間近で撮影した写真があればいいから。有名な絵画なら、大体世間に出回ってるからね。

 立体的な造形物だと、写真なんかじゃどうしても難しくなる。周りや上下から撮影した動画があれば何とかなるけど」

 

 ……ふむ、そりゃそうか。絵よりは、壺とか像の方が真似しづらいに決まってるよね。

 

「そもそもの美術品の良し悪しっていうのもある。

 美術品として出来が良すぎると、却ってバレるから、わざと出来を悪くするのも必要になってくる。

 ……それが結構ストレスなんだよな。こうすれば良くなるのに、とか考えちまうから」

 

 なーるほど。それが『贋作じゃなくて普通に絵が描きたい』って心理に繋がるのか。

 

「うーん♪

 できる美術家は言うことが違うわねー♪」

「やらせてた人間が言うことかよ……

 そもそも贋作の技術仕込んだのはオマエじゃないか」

「わたしのは趣味レベルよ。

 鑑定はお母さんに叩き込まれたから、プロレベルだけどね♪

 団長しながら贋作やるより、専門で贋作やってるモリーの方が出来よくて当然よ」

「……ヘタなの作ってバレたら、命に関わるからな。

 そりゃ必死になるよ」

「ふふ♪ そうね。

 こんなモリーが作った美術品だから、贋作って言ってもなかなかに良い出来なのよね。オリジナルじゃないって意味では自慢できないけど。

 色んな美術品をすり替えしていくうちに、多くの美術館で有名な美術品としてモリーの作品が展示されてる状態になっちゃって。……それがちょっと愉快だったかな」

 

 モタリケさんが軽く身震いしてるのが見て取れた。

 現実に戻りたくない理由の1つがそれか。確かに犯罪が露見した時のことを想像したら、怖がるのは当然だろう。

 隣でウラヌスが、腕を組んでなにごとか考えている。

 

「盗んだ美術品って、ブラックマーケットに流してるんだよな?」

「大体はそうね。アレで足がつきにくい捌き方をいくつか知ってるから。

 盗品でも買い取ってくれそうな相手が見つかれば直接売るけど。

 すり替えてから充分時間が経った頃に、これこそ本物っていう謳い文句で出品するの。

 あの美術館に飾ってあるのは偽物だって言い切って」

「それ、危なくないですか……?」

「ううん。

 だって贋作を出品する時の常套句だもん。

 本物か贋作か判断するのって、素人じゃほぼ無理だし。いくら専門家の鑑定書がーって言っても、鑑定書も偽造できるからねー♪

 どうせ贋作だろと思って落札して鑑定したら本物でしたとか、笑っちゃうじゃない♪」

 

 あああ。怖い世界だ……何を信じればいいか分からなくなるだろうな。

 

「大体、わたし達がすり替えで手に入れたはずの本物が、実は複製でしたっていうこともあるし。美術館の展示品が本物とは限らないのよね。

 始めからレプリカだって言って展示してれば、文句もないけど」

「出来の悪い本物の美術品を、有り難がって鑑賞するのもどうかと思うしな」

 

 ウラヌスの一言に、みんな沈黙する。

 

 本物か、偽物か……か。

 

 美術品を取り扱うなら、絶対拭い去れない厄介な問題だもんな。出来の良し悪しが問題じゃないから、余計に。

 

「……モタリケさん。

 あのウラヌスの絵って、複製はできませんか?」

「うん?

 あれを見ながら、もう1枚描けってことか?

 そりゃ描くだけなら描けるけど」

「オリジナルを譲ってもらうのが難しいようなら、せめて複製だけでもと思いまして」

「アイシャ……

 なんでそんなの欲しがるの?」

 

 お隣のモノホンさんが、私を訝しげに見てくる。

 

「なんとなくですよ。アレを見てたら、無性に欲しくなったと言うか。

 友達の写真の1枚や2枚、欲しがるのは普通じゃないですか。それと同じです」

「それは……分からなくもないけど」

 

 より疑わしげに私をじろじろ見るウラヌス。

 

 実のところ、欲しくなった理由は分かっている。

 いずれ彼は若返るからだ。若返り薬で。

 10歳未満になると言ってたから、流石に今の見た目ではなくなるだろう。そうなった時、あの絵は今のウラヌスを描き残した、とても貴重な代物になる。若返ってから歳をとって、今と同じ姿になるとは限らないからな。

 

「……

 描いてもいいけど、お代はキミのモデル料で」

「へ?」

 

 モタリケさん、さらっとおそろしいこと言った。

 

「キミをモデルに絵を1枚描かせてくれたら、あの絵の複製を描いて譲る。

 それが条件」

「あ……

 あ、あー、いやー。そのぉ」

 

 返答に詰まり、視線を彷徨わせる。私にみんなの視線が集まってるのが分かる。

 

「し、しばらく忙しいんで、その……

 検討させて、いただけると」

「分かった。

 その気になったらいつでも来てくれ。歓迎するよ」

 

 た……高い買い物になりそうだ。モデルかぁ……

 どうも嫌な予感がするんだよなぁ。あのポスターみたいなことにならなきゃいいけど。んー……。くっそ、ネテロのやつがモデルうんぬん言ってたのがすごい引っかかる……

 

「アイシャ、絵のモデルなんて嫌だろ?

 そこまでしてあんなの欲しいの?」

「……考え中です」

「わっかんないなぁ……」

「本人には分からないですよ、あの絵の価値は」

「えぇぇぇ……

 あんなのタダのゴミだってば。俺、今すぐ燃やしたいもん」

「なんてこと言うんですか、お姫様の絵をよりによって燃やすだなんて。

 照れ隠しにしてもヒドすぎますよ」

「ぇぇー……なんで俺が怒られんのー」

 

 ウラヌスとぐだぐだ話してるうちに、トレードショップへ到着した。

 

「モリー、あの2人にだけモデル頼んでるの、ほんとにナンパじゃないのよね?

 もし浮気だったら──」

「そんなわけないだろ!

 そもそも片方は男じゃないか!」

「まぁそうだけどさぁー。

 可愛い可愛くないの基準で言ったら──」

「おーい、オマエラ。

 バカなこと言ってないで戻って来い。どこまで行く気だ」

『あ。』

 

 慌てて戻ってくる夫婦。

 ウラヌスはわざとらしく、しっしっと払う仕草で、

 

「別にデートしたいなら、行ってくれても構わないんだぞ?

 俺らに無理して付き合わなくたって」

「あーごめんごめん。

 そんなつもりじゃないって。うっかり話し込んでただけよ」

 

 話題が話題だっただけに、そのままどっか行ってほしかった気もしなくはない。

 

 

 

 まずモタリケさんが、ゴリさん──と言うか、お店にお金カードを預ける。

 これでモタリケさんのフリー枠が25、ベルさんと合わせて70の空き枠が出来た。

 次にゴリさんの前へ、入れ替わりにウラヌスが立つ。「ブック」でバインダーを出し、カードを外しながら、

 

「レッドロブ1枚、グリーンキャビア2枚、サザエ1枚、白色真珠3枚、イシダイ2枚、ワカメ2枚とトレード」

「あいよ。13900ジェニーね」

「へー。

 あなた達、海行ったんだ?」

「ええ。今朝ソルロンドに」

「あぁー、いいなぁ。

 わたしも久々に海水浴行きたいなぁ♪」

「……でもソルロンド、すっごい暑かったですよ?」

「あそこはねー。

 でも海水浴と言えば、やっぱり真夏の海でしょ♪」

「アイシャ、話してるトコ悪いけどコッチ来て。

 シームとメレオロンも」

「あ、はい」

「はーい。

 なに、ウラヌス?」

「あいよ。なにすればいいの?」

「せっかく人数いるし、可能な限りトレードショップの貯金をアントキバからマサドラへ移動させたい。

 で、フリーをギリギリまで空けたいんだけど、確か3人とも本をまだ何冊かゲインしてなかっただろ? アレ、荷物になっちゃうけどアイテム化してほしい」

 

 なるほど。これまでも機会があれば移してるけど、まだアントキバにシーム名義で900万くらい貯金あるみたいだしな。

 

「ええ、分かりました。ブック」

『ブック』

 

 バインダーをめくり、それぞれ「ゲイン」でカード化を解除していく。

 

「本、預かろっか?」

「お願いします。

 2人とも、ベルさんに本を預けてリュックを下ろしてください。

 しまってほしいですから」

「はーい、預かりまーす♪

 ……ん?

 心源流拳法? アイシャってば心源流なの?」

「いいえ。風間流ですよ」

「あー……

 関節技得意そうだし、そっちなのね。

 他流派の勉強とか、研究熱心ね。

 で、魔法少女隊ナッパ……なにこれ?」

「そういうアニメがあるの」

「ふぅん。女の子向けアニメっぽいけど、違うのかしらねぇ。

 で、今日の夕飯と……

 これ、なんて読むの? サリサ? ファッション誌……っていうか、男装女性の本?」

 

 私とウラヌスが『ぶっ!?』と吹き出す。ちょ待てメレオロン、なんでそんなの買ったし。

 

「……特集されてる劇団が好きなだけ。

 そこにいるのも好きだけど」

「まぁ独特よね。わたしもこの劇団、好きは好きだけど。

 ああ、そこの子もね。可愛いわよね♪」

「おまえら……」

 

 女装男性の呻き声。仕方ない仕方ない。女性陣の見解は一致してる。おそらく男性陣の見解も一致してる。本人はどうか知らん。

 

「ほらほら、これって似てると思わない?」

「そうね……でもちょっと化粧がキツイかな。

 ウラヌスって天然物だから、どうしてもね」

「加工品なら、ワリと良さげなのも居るんだけどねぇ。

 やっぱり生まれ持った──」

「いいから、ンな本さっさとしまえや!

 金下ろすっつってんだろ!」

「はいはい。

 かわいこちゃんがプンスコしてるから、コレしまってあげて♪」

「あ、うん。

 ……まったく、あんな可愛いのが怒ったって、迫力不足でむしろ吹いちゃうってのに」

「きぃぃぃ! こいつらぁぁぁ!」

「ウラヌス、いつものことじゃないですか。

 クール、クールに」

「もうやだぁぁ……」

 

 めそめそするお姫様。これで私が『ぷにぷに姫ー』とか言ってほっぺたプニプニったら、当分スネるだろうな。

 

「おーい、ウラヌスぅ♪

 本かたづけたけど、次どうするの?」

「くっそ……

 ベル、お前これ預かっとけ。最後のページに入れろ」

「え?

 この『交信』、入れっぱなしにしとけばいいの?」

「そうだよ、今だけな。

 シーム。俺の細かい金カード、預かって貯金してくれ」

「うん、分かった」

「各自、フリーポケットの空き枠を最終確認してくれ。

 空き枠に1万ジェニー詰め込むから」

「わたし達は何もしなくていいのよね? 空き枠はさっきと同じだし」

「うん。

 ……あ。いや、あるな。

 俺のフリーポケットに指定ポケットカードがあるから、2人の指定ポケットで預かってくれ。もちろん後で返してもらうけど」

「オッケ♪

 カードくださいな」

「ん。

 ……この2枚。モタリケ、ちゃんと入れといてくれよ。52と80だ。

 消えたら大損だからな」

「わっ!? ランクSだ!

 あなた達、もう取ったの?」

「浮遊石はたまたま見かけて、具合よく取れたんだよ。

 いいから早くバインダーに入れてくれ」

 

 

 

 そんなこんなでバタバタした結果、手持ちが200万ジェニーになった。お店の外に出て、私達は『同行』でマサドラへ飛ぶ。

 早々にトレードショップへ向かい、真珠蝗5枚とイタチザメのカードを売却、所持金の大半をウラヌス名義で貯金する。

 66万ジェニーを持って、ようやくスペルカードショップへ。最後のページの『交信』をフリーポケットに移し、6人でぞろぞろと店内へ入った。

 

「カードパック66袋くれ」

「はい。66万ジェニーになります」

「うわ……」

 

 ベルさんが1人呻く。うん、きっと私達が麻痺してるんだよな。

 

 ともかく所持していたスペル48枚と合わせて、スペルカード計246枚。モタリケさん達が最初から持っていたスペルは除く。

 

 

 

 『盗視/スティール』4枚

 『透視/フルラスコピー』5枚

 『防壁/ディフェンシブウォール』15枚

 『反射/リフレクション』4枚

 『磁力/マグネティックフォース』1枚

 『掏摸/ピックポケット』4枚

 『窃盗/シーフ』3枚

 『交換/トレード』2枚

 『再来/リターン』14枚

 『擬態/トランスフォーム』4枚

 『複製/クローン』2枚

 『左遷/レルゲイト』7枚

 『初心/デパーチャー』4枚

 『離脱/リーブ』2枚

 『念視/サイトビジョン』3枚

 『漂流/ドリフト』9枚

 『衝突/コリジョン』10枚

 『徴収/レヴィ』2枚

 『城門/キャッスルゲート』16枚

 『贋作/フェイク』4枚

 『強奪/ロブ』1枚

 『堕落/コラプション』4枚

 『妥協/コンプロマイズ』2枚

 『看破/ペネトレイト』4枚

 『暗幕/ブラックアウトカーテン』11枚

 『聖水/ホーリーウォーター』3枚

 『追跡/トレース』4枚

 『投石/ストーンスロー』6枚

 『凶弾/ショット』2枚

 『道標/ガイドポスト』6枚

 『解析/アナリシス』9枚

 『宝籤/ロトリー』24枚

 『密着/アドヒージョン』3枚

 『浄化/ピュリファイ』1枚

 『神眼/ゴッドアイ』1枚

 『再生/リサイクル』9枚

 『名簿/リスト』11枚

 『同行/アカンパニー』16枚

 『交信/コンタクト』14枚

 

 

 

 あー。2枚目の『離脱』引けちゃったかぁ。あと『徴収』も2枚目が引けてるな。

 さてさて、これは……

 

「あらら、『堅牢』だけ無いのね」

「どうしてもこうなっちゃいますよね……」

 

 ベルさんの言葉に私がうんざり頷く。結局アレが引けるかどうかだけの勝負なんだよな。

 ウラヌスがテーブル上のカードをトントンと指で叩き、

 

「どうせオマエラ、『離脱』欲しいって言わねぇんだろ?」

「うーん……

 外に出るにしたって、『離脱』では出たくないかな。

 だって、ゲーム機の状態がどうなってるか分からないもの」

「……ま、それはそうだな。

 なら、港からだったら出るのか?」

「出るとすれば、ね。

 当分そのつもりはないけど」

「さいですか」

 

 

 

 枚数と人数が多いからか、少し長めにウラヌスが悩んだ後、ようやく店を出る。店前で待っていた他プレイヤーが、6人ぞろぞろ出てくる私達を怪訝そうに見送った。

 

 しばらく歩いた先にある路地に入り、立ち止まる。

 

「さっき説明したけど、改めて。

 シームは俺達3人に『密着』を。これで全員かけ終わった状態になる。

 で、他は『宝籤』を。どうせ当たんないだろうし、適当に」

「……」

「モタリケ。そんな顔したって、アレはもうやらないぞ。

 今回は報酬なしって取り決めだからな」

「分かってるよ……」

 

 モタリケさん、前の時に指定ポケットカード引けなかったの、よっぽどくやしかったんだろうな。こっちもドキドキするから、精神衛生によくない。……面白かったけどね。

 

 結局、『宝籤』を24回使っても目ぼしいものは引けなかった。使い道のある『再来』と『贋作』が1枚ずつ引けたくらいか。

 

「あ、このブラ可愛い♪

 もらっていい?」

 

「……どうぞ」

 

 私の手からババ抜きみたく、ベルさんが1枚引き取った。

 

 

 

 

 

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