時期外れに乱れ咲いた
桜の精霊が沈み往く月達を見送る
精霊の調べに身を委ねなさい
床に臥す黒い商品がやがては目を覚ますから
さっと見ただけでも無性に落ち着かなくなる占いの文面を、何とか気力で読み解こうと試みる。
時期外れに乱れ咲いた……この節いらねぇだろ。全削除。……予想はつくけども。
桜の精霊……誰だろうな。全く心当たりねぇや。かーっぺ。
沈み往く月達を見送る……なんで月なのか分からんが、多分旅団だな。ニュアンス的に。
精霊の調べに身を……いや、なんでこんなムダに詩的なんだ。むずむずするわ。
床に臥す黒い商品が目を覚ます……行方不明の地下競売品が見つかるってことだよな。
「これ……
解釈言わなきゃダメか?」
「ぜひとも伺いたいもんだ。
それがその占いの結果に従うことにもなるしな」
「……。
時期外れに乱れ咲いた桜って……まぁ俺のことだろ。認めたくねーけど。
まんま髪が桜色だし、旅団が捕まってからヨークシンに来て、意味もなくドンパチするハメになったしな。
月にたとえる理由が分からんけど、月達が旅団を指すなら、俺が旅団を連行したことを言ってるんだろ」
「そうだろうな。
街中の防犯カメラの映像を調べられる限り調べさせたが、該当しそうなのはお前くらいだった」
「……
精霊の調べに身を委ねってのは……解釈が分かれるな。
調べって言葉には歌の意味があるから、話を聞けという解釈が出来るし、文字通り俺に調べさせろって意味にも取れる」
「あるいは両方に掛けてるのかもな。
その占いは、そういう言葉遊びをたまにする」
「ふぅん。
最後の、床に臥す黒い商品がやがては目を覚ますってのは……
そのまんま、どっか消えた地下競売品がいずれ見つかるってことだろ?」
「……オレは何度も占ってもらったクチだが、お前と同じ見解だ。
オレ達が何を頼みたいか、これで分かったか?」
「えっと……
地下競売品の捜索? ……を、俺に依頼したら見つかるってか」
「その通りだ。
実際お前は足を運んでくれたしな。期待してるぜ」
「いや、待て。
まだ受けるとは言ってない。何で俺なら見つかるって解釈なのか、さっぱりなんだが」
「探し物を発見できる念能力者じゃないのか?
現に、伝えていないオレ達の居所を突き止めたじゃないか」
「待てや。
具体的なモノが分からんのに、何をどう探せと言うんだ。
そもそも陰獣の能力も知らねぇんだぞ。捜索に必要な情報、こんなんで足りるか」
「必要な情報があれば、可能な範囲で最大限提供する。
──が、それはお前が引き受けた場合の話だ。
無関係の人間に、情報を晒すわけにはいかない。
お前が断れば、オレ達が捜索を続けるんだからな」
……正論だな。仮にマフィア以外が発見したら、こいつらの手元に戻る可能性はむしろ低いと見るべきか。
「断るか受けるか、今の時点で決めろってことか?」
「当たり障りのない範囲なら、情報を渡せなくもないがな。
正直オレ達も困り果てている」
「──待て。
私はまだその子供に依頼することを承諾していない」
「ワシもだ……
そもそも捜索に足る能力があるのか、はなはだ疑わしい……」
十老頭のうち2人がゴネだす。拍手を渋ってたヤツラだな。さっきの俺の言葉を弱気と受け取ったか。信用してないなら、そりゃそうだろな。
とは言え、この時点で断ったりすると、それはそれで後腐れしそうだし……
てか、ガチの依頼か。これはちょっと想定外だったかも。面倒なことになってきたぞ。
苛立たしげにトントンと、十老頭の1人がテーブルを指で叩き、
「そもそもが、だ。
コミュニティーが報復すべき対象を、この子供は庇護し、我々を妨害したのだ。
本来であれば、同様に報いを受けさせるべきだろう」
あー……やっぱその辺の話は出てくるか。つーか、そういう話をしたいヤツもいたってトコかな。
十老頭同士が睨み合いを始める。おぅおぅ、剣呑だねぇ……
扉の外で控えてる連中も戸惑ってんぞ。
「その件は一旦保留にすると結論が出ていただろう。
少なくとも、オレ達の呼び出しに応じた相手を、本気で報復対象にするつもりか?」
「このような敵地にノコノコ来る迂闊さは、到底褒められんがな」
「それだけ腕に自信がある、とも考えられる」
「多勢に無勢であることは否めないだろう。仲間を連れてきたなら、まだ理解できたが」
「だが幻影旅団1人相手に、ワシらの陰獣は歯が立たなかった……
本来、殺し合いは専門ではないのだ……」
「いずれにしろ、このままでは収まりも示しもつかぬ。
地下競売へ参加しようとして、犠牲を払うことになったファミリーの怒りは計り知れん。
もし競売品が発見できぬようなら、誰かを断罪せねばなるまい」
はぁ。ほっとくと長引きそうだな。聞いてるだけで情報は得られそうだが。
「あのさ」
俺が一声かけると、一斉に十老頭の視線が集まった。
「幻影旅団の暗殺指令は取り下げたんだろ?」
「……一旦はな。
暗殺者へ出した依頼は取り下げた。
だが、コミュニティー全体の方針としては、まだ何も指示していない。
殺せとも、殺すなともな。オレ達の判断待ちだ」
「ほぁ? つうと、なにか?
幻影旅団を探しだして殺せとか、十老頭が命令したわけじゃないのか?
勝手に報復だー、って連中がドンパチ始めたわけか?」
「……。
制御できているとは言いがたいな。
陰獣の出動も、オレ達が許可したのは事実だが、要請自体は現場から来たものだ。
コミュニティーの指示と言っても、オレ達を通したモノと現場判断──」
「待て。それ以上こやつに話すな」
口許に傷のおっちゃんと話してるのを、他の十老頭が制止する。
俺は腕を組み、
「部外者扱いを続けるなら、俺に色々話しちまうワケにはいかないわな。
けど、こっちの話題も平行線になるようじゃ、一向にケリがつかないぞ。
俺を慌てて呼んで直接話すくらいだ。急いでるんじゃないのか?」
十老頭が互いに顔を見合わせ、唸っている。
しばし待つが、誰も提案を出さない。俺が来るまでにまとまらなかった話だ。俺が来たところで同じだわな。
……つまり、俺が譲歩せざるを得ないと。あーやだやだ。
「ったく……
分かったよ。
競売品については、探すだけ探してやる」
十老頭の顔つきが変わる。少なからず明るい方へ。どんだけ困ってたんだオマエラ。
「でも、期待はしないでくれよ?
俺がいくらその気になったって、見つかる保証は1つもない。
依頼は受けてもいいが、見つかるまで探し続けろなんて無茶もゴメンだ。
それでもよければ」
「……我々から情報を引き出す為の方便にも聞こえるな」
「んなこと言われても。
信用するしないの話でしかないし、そもそものアテは占いだろ?
あの占いを信じる信じないの話じゃないのか?
……精霊の調べとやらに、身を委ねるかどうかはそっちが決めろ」
俺は離れ、近くにある別のテーブルから椅子を引っ張り、十老頭に向かう形でドスンと座る。てめーらだけ座って話してんじゃねーよ。俺ずっと立ち話じゃねぇか。
「オレは信用するぜ。占いもコイツもな」
「他にアテがないのも事実じゃしな……賛成に票を入れておく」
「ワシは反対だ……。信用に足るかどうかより、不審な点が気になる……」
「能力者なんて、大体こんなものだと思うがの。どいつもこいつもクセモノよ」
「この子供はともかく、私はあの占い師の腕を信用しているんでな。よって賛成だ」
ごにょごにょ言い合ってるが、全体的には賛成寄りのようだ。
数分して話し合いが終わった気配。反対派もロクな対案を用意できてなかったしな。
「来てくれ、ウラヌス=チェリー。
結論が出た」
閉じていた目を開き、椅子から立ち上がって再び十老頭へ歩み寄る。
「オレ達は、正式にお前へ依頼を出す。
消失した地下競売品の捜索だ。お前が依頼を受け次第、必要と思われる情報は提供する。
引き受けた上で、もし発見に到れば充分な見返りを約束しよう」
「……見返りうんぬんは聞かなかったことにする。
地下競売品の捜索依頼、確かに承った。
契約成立したところで、早速頼みを聞いてもらえるか?」
「ああ、遠慮なく言ってくれ」
「俺が捜索に必要とする情報が欲しい。
まず幻影旅団が地下競売を襲撃した日、何が起こっていたかという情報。把握してる分だけでいい。
競売品を持ち出した陰獣の死亡現場。その陰獣の念能力。
あと……占い師に会えるなら会わせてくれ。予言について、聞きたいことがある。
とりあえずはそれぐらいだ」
「……いいだろう。
では、旅団が襲ってきた9月1日に起こったことから説明する。
少し長話になる。オレ達の円卓に着いてくれ」
言って、口に傷のおっちゃんが椅子をずらし、俺の分のスペースを開ける。……そこはあんま座りたくないんだけどな。
せっかくなので、渋々椅子を引っ張ってきて、隣に腰掛ける。
お互いの顔がよく見える。……どいつもこいつもくたびれてるな。俺もだけど。
そして、9月1日に起きたことを説明された。
真っ先に崩落したとされるセメタリービル。そこが地下競売の会場だったらしい。
このヨークシンシティは、毎年9月1日から10日までの日程で、街を挙げて、世界でも類を見ない規模の大競り市が開催される。
盗品や御禁制の品を扱う地下競売も、その大競り市の闇に紛れる形で毎年開催される。ヨークシン市長とマフィアの黒い結びつきは、もはや公然の秘密だ。……そもそも大勢のマフィアが、この時期ヨークシンへ一斉に移動するのだ。隠し通せるはずがない。
そして今年の地下競売の会場は、セメタリービルだったというわけだ。何でまたそんな不吉な名前をつけたのか、そんな名前のビルを会場にしたのか、サッパリワカンネーけど。墓標の役割すら果たせず崩れたけどな。
その会場を、幻影旅団が襲撃した。
会場内にいた初日の競売に参加する予定だった客は、ほぼ死亡が確認されたらしい。
数百人ものマフィアの重役──幹部や組長、選りすぐりの護衛がだ。
地下競売の会場は、原則として武器・記録装置・通信機器全ての持込が禁じられている。その手の連絡や警備は、全てマフィアンコミュニティー本体が担っている。破れば当然、制裁を受けるだろう。
ともあれ、防犯ビデオすらマフィアンコミュニティーは設置しておらず、会場を旅団が襲撃して参加者を殺害した事実は、その場に居合わせた生存者の証言と、崩落したビルを調べた結果からなる。なんせ現場500メートル圏内に、各ファミリーの護衛など競売に参加しない者は進入禁止だったからだ。とにもかくにも火種をおこすまいとする慣習がアダになったとも言える。コミュニティー側の警備も全滅したらしい。死体は発見できなかったらしいが。
ただ、マフィア側もやられっぱなしではない。幻影旅団が来ることは察知できずとも、何者かが地下競売を襲撃してくる可能性を、例の占いで先んじて予見していた。十老頭が暗殺される可能性も。
言うまでもなく、占いで嫌な結果が出たから競売中止てへぺろなんて言えるはずもない。メンツ丸つぶれだし、信じるわけもない。念能力の存在を知らないマフィアも多いだろう。
だから陰獣の1人
なお地下競売は4日間の日程で、9月1日から4日に開かれる予定だったらしい。全く別の場所に保管していた3日と4日の競売品は無事。まだ事態が収まっていない為、競売自体も開催してはいないそうだ。
その本当の理由は、1日と2日の競売品が行方不明だから。出品目録としては既に提示されていたから、競りに出てこなかったらバレバレだわな。
おまけにその原因が、陰獣の1人が金庫から持ち去った挙げ句に、殺されたドサクサでどっかいっちゃった♪ ではシャレにもならない。死人もアホほど出てるしな……そりゃ責任者出て来いってなるわ。
報復対象とすべき旅団は既にヨークシンにはおらず、結局競売と報復はどうするんだと各ファミリー
さっさとマフィアンコミュニティーの見解を出さないといけないわけだが──……
「……ちょーめんどくせーことになってんのな。
セメタリービルって、生存者いたんだろ?
なんであのビル崩れたん?」
「生存者はみな逃げるのに成功しただけだからな。
ギリギリまで場に留まれば、崩落に巻き込まれただろう。
当然、原因を知る者はいない」
「……まぁそれは分かるけど。
ビル自体を検証しなかったのか?」
「専門家じゃないんでな。
おそらく支柱が破壊されたことによる崩落だろうという話だが」
「……。できなくはないだろうな。
わざわざ破壊しようとすれば、だけど。
なんでまた、んな目立つことしたんだろうな?」
口傷のおっちゃんと俺が話してる横から、他の十老頭が口を挟む。
「証拠隠滅ではないのか?」
「いやー……
その為にビル崩すとかナンセンスだし、そもそも隠滅とかするタマじゃねーだろ旅団は。それだけの規模の戦闘があったと考えた方が自然かな」
つっても、コミュニティーの警備が全員消えてたって話だし、隠滅の手段はあるんだろけど。
「ふむ……
もう1つのビルが倒壊した原因は、明確に旅団の1人が地盤を破壊した結果だそうだ。陰獣との戦闘でな。お前の言う通り、セメタリービルも戦闘の影響による可能性が高い」
それを聞いて俺が考えていると、口傷のおっちゃんは、
「だがウラヌスよ。
陰獣ですら単独で全滅させるほどの実力者がいる旅団と、誰がそこまで応戦したんだ?
オレ達以外の者が、旅団を捕らえたことは把握している。プロハンターであることもな。
プロハンターにそれほどの実力者がいるのか?」
……。それ、詳しく説明するとリークになっちまうんだよな。うまくボカすしかないか。
「少数なら、いる。
ただ幻影旅団は知っての通り、A級賞金首だ。旅団全員のトータルバウンティーは360億。
熟練のプロハンターでも迂闊に手を出せない、手練れ揃いで知られてる。……ご自慢の陰獣が壊滅したんだから、あんた達も身をもって思い知っただろうし。
マフィアンコミュニティーですら旅団の地下競売襲撃を予測しきれなかったわけだけど、偶然旅団に匹敵するハンター達が居合わせた可能性は──諸々を加味するとゼロに近い」
しん。と静まる。偶然と片付けるには出来すぎなんだよな……
「ちなみに、陰獣を全滅させた旅団員って誰か分かるか?」
「ああ。野生的な大男で──」
「あ、うん。わかった」
どう考えてもウボォーギンです。……やっぱアイツ、相当弱ってたんだな。
「お前自身は、旅団と戦ったプロハンターに心当たりはないんだな?」
問われて、こりこり額を掻く。
「……俺、会長の依頼で旅団の護送を手伝えって言われただけなんだよ。
だから誰が旅団を捕らえたとか、どういう経緯でとか知らされてないんだ。会長を問い詰めても、教えてくれなかった。
ただ……
旅団捕縛の為に、大勢のハンターが投入されたってことはないだろうな。そんなことをすれば、流石に調べりゃ分かるし、陰獣みたく大量の犠牲者が出ただろう。
けど、少なくとも俺の方にプロハンターが大勢殉職したって話は聞こえてきてない」
「そうなのか?
多少はプロハンターも旅団に殺されているはずだが」
「ああ。プロと言っても玉石混交、弱っちいのもいるからな。
ライセンス取って念を修めるのがやっとの、無名レベルだろ。
プロハンターに必要な資質の1つは危機察知だから。
分かりやすい危険に向かっていって死ぬのは、どうしようもないバカですわ」
そういう意味では、撤退の許されない裏社会に関わるプロハンターは、かなりのバカだ。自由を謳歌してこそのプロハンターだろうと俺は思ってる。
「ワシには、お主もそう映るがな……」
ん? んー……ハタからはそう見えるか。うん、言われれば俺もそう思うけど。
「俺がバカだってのは否定しないよ。
なんでこんなところであんたらと駄弁ってんのか、俺にもさっぱり分からん」
ハハハ、と数人に苦笑される。俺は頬をふくらませておく。っせぇーよ、面白くない!
「逆に、旅団とプロハンターが戦闘してるのって目撃されてないのか?
それが俺には不思議なんだけど」
「ふむ……
セメタリービルの生存者に聞いても、よく分からないという返答だったしな。
改めて聞くとしようか。
──この中にッ!! 旅団とハンターの戦闘を目撃したヤツはいるかッ!?」
ドスの効いた大声量で、口傷のおっちゃんが問いかける。部屋の周囲で聞き耳を立てる護衛達に聞いてるんだろう。
……返事はない。本当に誰も知らないか、知ってても関わり合いになるのを避けてるかだな。
おっちゃんが肩をすくめ、
「誰もいないようだな」
「……そうすると、やっぱり少数の可能性が高いな。大勢なら目撃されてるだろうから。
正直、あれだけの実力者が揃った幻影旅団を少人数で、しかも生きたまま全員捕縛とか、マジで信じられないけどな」
「そうは言うが、お前も相当な手練れだろう?
あのゾルディックを同時に5人も敵に回して、退けたなんて話は聞いたこともないが」
その言葉に、周囲の護衛達の気配が一斉にざわめく。ちょっ……
「ぃゃぃゃぃゃ。待て待て待て。
とんでもない尾ひれを付けるな。
会長が一緒にいたの、お前ら把握してるだろ?
アイザック=ネテロ。掛け値なしの、世界最強の1人だぞ。
俺1人で戦ったみたいに言うな」
「……だがな。
あの暗殺の名手として知られるゼノ=ゾルディックが、そのネテロ会長とお前を名指しした上で、割に合わなさすぎる仕事と言ったんだぞ?
オレの知る限り、初めて耳にする最大の賛辞なんだが」
ゼノのジジイ……なんつー手放しの称賛してんだ。買いかぶりすぎだろ。
「んなことないない。
実力の割合的に、ネテロ9、俺1ぐらいだよ」
実際の働きは、俺9、ネテロ1だけどな。……あのジジイ、マジぶっころ。
「そうか。
……実はまだ、お前に見せていない占いがある。
おい。ウラヌスに見せてやってもいいか?」
「……、私のプライバシーに関わる部分は見せんぞ。
9月初週の分なら構わん」
「ああ。それでいい」
そっちから、紙をこちらに回してくる。十老頭達が軽くその紙に目を通しながら、俺の手元まで回ってきた。なんだこの黒すぎるリレー。
どれどれ……
夜空に輝く霜月が獣の影を踏み
堕天使の翼の羽ばたきが
港に沈んだ月達は仏の
……。なるほど、月ってのは暦の月か。蜘蛛は13人構成だから、団長を除いて1から12ってことかな。
獣の影は陰獣達だな。それを霜月と称される団員、おそらくはウボォーギンが蹂躙したわけか。
堕天使……誰のことだ? 俺のことは精霊とか言ってたから、俺じゃないだろ?
そんなふうに呼ばれるヤツがいたのか? ……ヒントがないな。
港は、港町ヨークシンシティだろう。沈んだ月達……。捕まって街のどこかにいたってことか。
仏の御手に託される……ネテロに連絡がいったってことだ。あんなバチ当たりジジイを、仏と称するセンスは理解できんが。
「どうだ?」
「……期待には応えられないな。
堕天使だか翼だか、このキーワードが何を指すのか、俺には心当たりがない。
それ以外は簡単だな。
夜、旅団の1人が陰獣を全滅させて、堕天使の翼と称される何かが旅団をヨークシンで捕らえた。その後、ネテロ会長に連絡した、だろ」
可能性としては、ネテロと電話で喋ってた相手なんだが……ネテロ、やけに楽しそうに喋ってたしな。名前言ってた気がするけど、忘れちまったな……
「──ん?」
「どうした。何か気づいたか?」
「いや……
俺が見せてもらった占いだけどさ。なんかそれぞれ食い違ってないか?
すごい違和感あるんだけど」
「気づいたか。その通りだ。
オレ達も並べて見るのは初めてなんだが、占ってもらうタイミングによって結果が変化しているようだ。
試しに分かりやすく並べてみようか」
口傷のおっちゃんが立ち上がり、占いの結果が書かれた紙をテーブルに並べる。それを俺も立ち上がって見る。ていうか全員椅子から立ち上がって、それらを凝視した。
「……なぁ。
この占い師、今すぐここに呼べるか?
ぜひとも話を聞きたい」
「ああ、いいとも。
オレ達も詳しい話を聞きたくて、そこに控えてもらっていたんだ。
ノストラードファミリー! 部屋に入ってきてくれ!」
すぐさま扉の1つがガチャリと開き、ぞろぞろと数人が入ってきた。……みんな、緊張してるな。そうだよな……なんか悪いことしたかも。
こちらの近くまでは来ずに、ある程度距離を開けて全員立ち止まる。
1人、女の子が前へ進み出て、ドレススカートの裾を広げながら挨拶する。
「十老頭のみなさま、お初にお目にかかります。
ネオン=ノストラードです。
お呼びでしょうか?」