どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

11 / 300
第十一章

 

 改めて私がグリードアイランドの攻略に挑む場合、様々な問題が浮かびあがってくる。

 

 長期間ゲーム内に拘束されることが確定するから、父さん母さんに許可をもらわないといけない。黙って行くなんて有り得ないし、隠し事もしたくない。

 

 その上で……うん、リィーナ達に妨害されないよう、事が露見しない工作が必要になる。そっちは全力で隠し通させてもらう。悪く思うな。

 

 もちろん、ウラヌスさんの募集に応募して、私が足手まといになる旨を充分伝えた上で、一緒に参加させてもらわないといけない。

 

 どれも難しい気がするなぁ……。ま、無理だったら諦めよう。仕方ない仕方ない。

 

 

 

 飛行場でネテロとチードルさんにお礼と別れを告げ、ハンター協会本部へ。

 

 共有ルームとして開かれた部屋に置かれている、ハンターサイト専用PCからハンターサイトへアクセス。

 

 仕事仲間の募集項で、最新のモノから見ていくとすぐ目当ての募集が見つかった。

 

 

 

 ────グリードアイランド協力プレイヤー募集、報酬は応相談。採用面接あり。

 

 

 

 入力フォームに私の名前と携帯電話の番号とメアドを打ち込み、備考欄には『いつでも構いませんが、お早めにご連絡いただけると助かります』と記入して、応募を完了する。ハンターサイトにアクセスする際には、ハンターライセンスが必要になる。ライセンスが身分証明になるので、これ以上の情報はいらないだろう。

 

「さて、早く返事が来るといいんだけどなぁ……」

 

 これでウラヌスさんの仲間に入れてもらったら、今度はアームストルへ帰って、自宅で許しをもらい、風間流道場に対して何らかの工作をする必要がある。少なくともゴンには、きちんと事情説明してから行こうと思ってる。誰の協力もなしに、妨害を抑えるのはまず無理だろうしな。

 

 ……ぼんやり待ってても仕方ないので、ハンターサイトのグリードアイランドに関するごく最近の情報を購入してみる。ウラヌスさんも知ってるだろうけど、自分の目でも確認しておきたい。追加情報程度で、情報料500万はちょっと痛いけど……

 

 

 

 

 

・バッテラ氏によってかけられていたクリア懸賞金500億は、クリア者が現れたことにより消滅。

 

・誰がクリアしたかは一切不明。バッテラ氏も行方が知れず、ゲームクリアしたと名乗り出る者も現在までいない。クリア者としてツェズゲラ氏が有力視されていたが、その件について彼は沈黙を貫いている為、他の誰かである可能性が高い。

 

・クリア後一定期間、現実世界からグリードアイランドへのログインが封鎖。

 

・クリア時、ゲーム内にいたプレイヤー達は、脱出しない限りはゲーム内に留まることができた。逆に帰還したくてもできないプレイヤーもいる模様。

 

・クリア後、全プレイヤーのバインダーから全指定ポケットカードが消滅した。変身前が指定ポケットカードであったモノも、同様に消滅した。

 また、ゲインした指定ポケットカードのアイテムが、ゲイン待ちのモノも含めて同様に消滅した。フリーポケットカードも一部消滅したようだが、詳細は不明。

 

・ログイン封鎖期間中、指定ポケットカードの入手イベントは一切発生しなかった。

 

・グリードアイランドへのログインが再び可能に。

 

・ログイン再開時期から、指定ポケットカード入手イベントが発生するように。ただし、一部の入手イベントは仕様変更が入った模様。要調査。

 

・指定ポケットカードの効果には、特に仕様変更がない模様。要調査。

 

・一部スペルカードには、仕様変更があった模様。要調査。

 

・グリードアイランドのゲームソフトは、相場を乱高下させながらブラックマーケットを始めとする取引市場に多く出回っている。異様に安価なモノは、偽物か取引自体が虚偽である可能性が極めて高く、ソフト購入を検討する際には要注意。

 

・複数の富豪や資産家が、ゲームクリアに懸賞金をかけ始めた。これはバッテラ氏の情報封鎖が消え、クリア報酬についての情報が出回るようになった為と予想される。

 

・現在、公式にゲームクリア懸賞金をかけている人物は以下の────

 

 

 

 

 

「ふぅん……」

 

 つまり、バッテラさんがかけてた……まぁ途中でリィーナにすりかわってたんだけど、ゲームクリアの懸賞金は、今でも少ないながら存在はしていると。

 だから、前ほどじゃないにしても、クリアを競うプレイヤーはいるってことか。

 

 ハメ組で、まだゲームから出れてない人もいるんだろうなぁ……実力的にアレだったし。

 

 誰かがクリアしたら、全部の指定ポケットカードとアイテム消滅か……

 大人数で協力しての連続クリアを阻止する為だとは思うけど、これって結局プレイヤー同士でクリアを競わざるを得ないってことか。えげつなー。

 

 やっぱり指定ポケットカードの入手方法変更は厄介かな……ちょこっと変わってるだけならいいけど、前はゲンスルーさんが持ってた入手方法の情報にずいぶん助けられたからなぁ。

 

 今度こそ、あのドッジボールに参加してみたいけど、んぅー……ボス属性ェェェ。

 

 レオリオさんがいないから、私は今回も移動スペルの恩恵にはあずかれないし。

 

 リィーナがいないから、他プレイヤーの攻撃スペルからカードを守るのが難しいし。

 

 あと……やっぱり……

 

 ゲーム開始直後に数時間気絶、おまけに1ヵ月間強制『絶』か……

 

 ……。

 

 ウラヌスさん、ダメって言いそうな気がする……どんだけ足手まといだ私。。

 

 諸々を考えただけで、座っている椅子からずりずりずりと滑り落ちそうになる。

 

 ……大丈夫か私。事前情報だけで心折れかけてますやん。

 

 いや……いや、おおむね分かっていたことだ。それを再確認しただけだ。

 

 こんなことで挫けてたら元ゲーマー……じゃなくてプロハンターの名がすたる。困難に立ち向かうんだ私。がんばれ私。負けるな私。

 

 それに、あのクソ親父(ジン)の挑発に乗るみたいで嫌だけど、指輪とメモリーカードのデータの中身を少なくとも一度は確認しておかないとな。

 

 ──ブルルッ。とポケットの携帯が震えた。

 

 確認すると、メールが入ってる。

 

 相手は……ウラヌスさん。もう来たのか早いな。もしかしてハンターサイトにちょうどアクセスしてたんだろうか。このビルにいるなら、ここから繋いでそうなもんだけど……でもここにはいないみたいだし……うーん?

 

 今日の夕方5時に、協会本部近くの喫茶店、か。なんでわざわざ本部の外で? まあ、いいけど。

 

 まだちょっと時間もあるし、父さんと母さんへのおみやげ探しておこっかな。すぐ帰ることになるかもしれないし。

 世界樹のおみやげはあるから、たまにはハンター協会でハンターらしい珍しいモノでも買っちゃおっか。興味もってくれるといいな。ふふん♪

 

 

 

 約束の時間5分前くらいに、指定の喫茶店の前まで来る。入口には『CLOSED』の札が下がってる。

 

「んー……」

 

 お店の中には、見た目に誰もいない。でも、外から直接見えないトコにウラヌスさんの気配とオーラは感じ取れた。他にひとけは無いかな。

 

「……」

 

 なんだろ。ちょっと違和感あるんだけど……まあ、気にしても仕方ないか。

 中に入ってみる。カランコロン♪ とベルのお迎えはあれど、いらっしゃいませの声はなし。

 

「こっちだよー」

 

 覚えのある声が聞こえたので、お店の奥の方の席へと進んでいく。

 やや奥まった一卓のソファーに、桜色の髪を撫でながら座るウラヌスさんがいた。そこまで歩いていく。

 

「こんばんはアイシャさん。

 ずいぶん早かったね。もう身体、診てもらったの?」

「こんばんはウラヌスさん。

 身体の方は、とりあえず経過観察です。やっぱり原因はオーラだったみたいで」

「そっか……

 ああ、向かいに座って。無理やり貸切にしたから注文は頼めないけど」

 

 うーん……みんな秘密守る為に色々苦労してるなぁ。多分ハンターライセンスを使ったんだろうけど。便利だよね、ホント。

 

 私が向かいのソファーに座ると、ウラヌスさんが空いたグラスにポットから水を注いで、私の前に置く。

 

「どうも。

 ……ウラヌスさん、私の他に応募してきた人っています?」

「うーん。今までにっていう話なら、何人か。

 ただ、無名のルーキーとか、金にガメついヤツとか、あんまりいい噂聞かないヤツとか、そんなのしか来てなくて。面接もせずに断らせてもらってるけど」

「なるほど……

 ウラヌスさんはプロハンターを求めてるんだと思うんですけど、どういう人が必要なんですか?」

 

 場合によっては、ゴン達のうちの誰かに声をかけないといけないからな。今回協力してもらうのは難しいだろうから、したくないけど……

 

「そりゃまぁ……

 最低でも中堅以上の戦闘能力か、ゲーム攻略に適した念能力持ちだね。

 グリードアイランド経験者はもちろん優遇するし、あと……信用できるかどうかかな」

「……。

 そうですか」

「ま、キミの場合は……

 俺の方から手を組むのを断る理由があるとすれば、足手まといになるって言ってたのがどの程度のものか、っていう一点だと思う。できれば、この場で話してほしい」

「えっと……

 お話するのは構わないですけど、私の場合まだ他にも問題があって」

「いいよいいよ。聞かせてくれるなら、そっちも一緒に。

 なんせ俺もアテがなくて、ほんとに困ってて」

「はい……

 それじゃあ、まず──」

 

 

 

 ──少女説明中(両親編)──

 

 

 

「──なので、あまり長期には空けられなくて……」

「うん……

 まあ、両親の了解が得られなかったら難しいのは分かったよ。

 それで?」

 

 

 

 ──少女説明中(仲間編)──

 

 

 

「──今回もそうなっちゃうんじゃないかなって。

 それはもう、嫌なんですよね……」

「そっか……

 もし大人数でゲーム攻略を妨害されたら、相当キツイね……

 他プレイヤーとの争いは、ある程度仕方ないんだけどさ」

「できるだけそうならないように、説得はしてみますが」

「その時はお願いするよ。俺も協力する」

「すいません……」

 

 うん。ここまではいい。ウラヌスさんもそれを理由に、私を拒絶しないだろうと予想はしてた。

 問題は、次だ……

 

 

 

 ──少女説明中(ボス属性編)──

 

 

 

「…………」

 

 テーブルに両肘をついて、完全に考え込んでしまうウラヌスさん。

 

 うん……ですよね。

 私だってそうなります。知った時の虚脱感たるや。

 

「移動スペル無効て……

 

 ……それ……

 

 あまりにハードモードすぎると思うんだけど……」

 

「……ですよねー」

 

 

 

 

 

【ボス属性】

・特質系能力

 自身に作用する念能力による状態異常・特殊能力を無効化する。自分自身の念能力は、無効化の対象にならない。

 

<制約>

①この念能力は常時発動する。オーラが枯渇しない限り、発動を止めることはできない。

②無効化する念能力を任意選択できない。治癒・支援の念能力であっても無効化の対象となる。

③この念能力によってオーラ枯渇に至った場合、枯渇に至らせた念能力は無効化できない。

④死者の念による状態異常・特殊効果を無効化することはできない。

⑤無効化中、オーラを消費する。消費するオーラ量は、無効化対象の念能力に込められたオーラ量×自身にかかるはずだった影響の強度。

 

<誓約>

①この念能力によってオーラ枯渇に至った場合、即座に気絶する。

②この念能力によってオーラ枯渇に至った場合、30日間強制『絶』になる。この間はこの念能力による無効化も発動しない。

 

 

 

 

 

 ……ぐぉぉぉ。なんで私はこんなアホな能力を作っちゃったんだぁ……!!

 

 改めて身もだえする思いだ。せめて……せめてON/OFFできるように、制約と誓約調整すべきだった……!

 

 ウラヌスさんは少し顔を上げ、

 

「……いちおう聞くけど、グリードアイランドに入る時は?」

 

 気づいたか。ぐ……なんで私は気づかなかったんだ。

 

「えっと……それも例外ではなくて。

 ゲーム内に移動する効果も消しちゃうんで……

 その……

 オーラが枯渇するまで、全力で『練』して無理やり入ります」

「ぅわお。ムチャするなぁ。

 ……ゲームから出る時も?」

「ええ。多分……」

「ということは、出る時も問題だけど、入って1ヵ月間も『絶』かぁ……

 で、それが治ったら、今度は移動スペル全部無効、と。

 ……。

 俺、ぜっんぜんイメージできないんだけどさ。

 どうやってクリアしたの?」

 

 どうやったっけ? うーん、と。……私、ゲーム攻略にほとんど貢献してない気がするんだよな。うん……

 

 ……。

 

 あかん……正直に言おう……

 

「……

 仲間の努力の賜物です」

 

「…………」

 

 あ。また顔沈んだ。

 

「ワケがわからないよ……」

 

 ……ダメですよねぇ。やっぱり。

 

 

 

 その体勢で固まっていたウラヌスさんは、顔を上げてソファーに深くもたれかかった。

 

「……うん。まあ、分かった。

 そりゃキミも足手まといだなんだと気にするよな」

「その……

 ダメ、ですよね?」

 

 ウラヌスさんの顔とオーラを見る限り、すんごい悩んでる感じが伝わってくる。

 

「……別にいいよ」

 

「え?」

 

「それで構わない。……それが分かってても、キミは行きたいんだろ?」

「……はい」

「じゃあ連れてく。

 移動スペルが効かないっていうのも、全くメリットがないわけじゃないしな。

 たとえば『離脱』でゲーム外へ飛ばされたり、『同行』でどっか連れ去られたりしなくなるから」

「デ、デメリットの方が大き過ぎないですか?」

「……キミには相当走ってもらうことになると思うけど、足には自信ある?」

「あ、それは大丈夫です。前回はそうしてました」

 

 ソファーから背を浮かせ、頭をかくウラヌスさん。

 

「なら、いい。

 役割分担を考えれば、まだいくらかやりようはある。

 ……ゲームへ入った時に気絶するっていうのは、回復に時間かかるの?」

「えっと、前は6時間かかりました」

「長いな……まぁ気をつければ何とかなるか?

 それって本当に、気絶と強制『絶』だけ?

 他になんか悪いこと起きない?」

「多分……

 誓約で無理やりそうなるだけなんで、他には何も」

「……キミがそう言うなら、俺から言うことはないかな」

 

 ウラヌスさんの難しがってる顔を見て、私は言葉を悩んだ。

 

「本当に、いいんですか?」

「……いいさ、いいさ。

 何だかんだで、キミは仲間とクリアしたんだろ?

 俺もそれにあやかろうじゃないか」

「でもウラヌスさん、命が懸かって……」

「いいって!」

 

 突然怒鳴られ、軽くビクついてしまった。ウラヌスさんは沈痛な面持ちで、

 

「怒鳴ってゴメン……

 ……それが分かってても、キミが俺と組むって言うならね。

 キミのエネルギー量なら大丈夫だろうけど、練を見せてもらえれば納得するよ」

「あ、はい。

 それは構いません」

「……俺も偉そうなことは言ってるけど、キミと組むに相応しいかどうか練を見せなきゃとは思ってたし。……この後移動するから、少し待ってて。

 ああ、もちろん両親にダメって言われたら、俺も組むのは諦めるから」

「……説得します」

「……。うん」

 

 言ってウラヌスさんは携帯を操作する。操作し終えた後、そのままじっとしている。

 

 

 

 ず……

 

 

 

 突然、オーラが減り始めた。

 私の視界に──店内の化粧室から、茶色いツナギを着た2人連れが出てきた。

 店内をこちらへ向かって歩いてくる。減り続けるオーラ。【ボス属性】が発動し続けている。

 

 強烈な違和感。

 

 私はその2人から目を離せない。特に片方は、放つオーラもさることながら、歩き方が人間のそれではない。骨格もおかしい。

 

 ウラヌスさんは座ったまま、じっとしている。

 

 その奇妙な2人が、そばまで来て──立ち止まった。

 

 私の顔をじっと見る。私も見返す。その、人ならざる目を。

 

 ……まさか……こんなところで。

 

「キメラ、アント……」

 

「──ぷはっ!」

 

 片方が息を大きく吐き出した。私のオーラ減少が止まる。

 

「……なんなのよ、アンタ達……」

 

 息を吐き出した方が、私の方をワナワナと震えながら睨んでくる。息が荒い。ウラヌスさんが、明らかに何の動揺もなくそちらを見やる。

 

「アイシャさん。

 キミの能力を聞いて、多分こうなると思ってた」

 

「……。どういうことです?」

 

「それは、こっちのセリフよっ!!」

 

 バン! とテーブルを叩くキメラアントの1人。……ん? なんかやけに人間っぽいな。

 

「なんで、アンタまで!

 ──アタシの【神の不在証明/パーフェクトプラン】が効かないのよっ!!」

 

 ウラヌスさんは、彼女? に、やや同情めいた顔を見せ、

 

「……しょせん、念能力さ。絶対はない」

 

 わなわな身体を震わせるキメラアントの女性に、もう1人のツナギ姿が背に手を当てている。

 

「おねーちゃん……」

 

 えっと、超展開すぎて私ワケわかめなんですけど……

 

 困った顔を私に向けるウラヌスさん。

 

 

 

「この2人も行きたいんだってさ。グリードアイランドに」

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 

【挿絵表示】





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。