どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百四章

 

 恋愛都市アイアイの喫茶店。

 

 周りの席も、NPCのカップルがそれなりにいる。

 そんな中、テーブルを挟んで向かい合わせに座るダルツォルネさんとメガネの子。

 

 私達も見物しないとイベントの流れを掴めないので、9人とも入店。周囲4卓に別れて座っていた。それがまた、ダルツォルネさんのイライラを促進してる。晒し者だもんな、完全に……

 

「さっきはありがとうございました。

 おごりますから、お好きなものを頼んでください」

「……」

 

 メガネの子の申し出に沈黙で返すダルツォルネさん。後ろの席に陣取ってるウラヌスとベルさんに視線を向ける。その様子が窺える位置に、私とバショウさんが座ってる。

 

「お前、早速かよ……」

「ここは、いやオレが持つよ、って言って」

 

 ダルツォルネさんは不機嫌な表情を崩さず、

 

「……。いや、ここはオレが持つ」

「とんでもない!

 私がお礼するんですから、好きなモノ頼んでくださいね?」

 

 多分可愛らしくハニかんでるんだと思うけど、グルグルメガネの台無しっぷりよ。

 ここで2人の卓に店員さん登場。

 

「ご注文は?」

「私はアイスレモンティーで」

「……オレはどうすればいい?」

 

 途方も無い迷子感を醸し出すダルツォルネさん。ウラヌスが何とも言えない顔してる。

 

「好きに頼んで良いけど、あんまり高いのはダメ。

 500ジェニー以下のを一品だけ頼んで」

 

 ベルさんが小声でする助言に従い、「……アイスコーヒー」と彼が頼む。

 

「畏まりました」

 

 ん? 店員さん、こっち来た?

 

「ご注文は?」

 

 あ……そっか。普通にお客さん扱いされるわけね。そりゃそうか。

 メニューを手に取り、素早く目を通す。

 

「タマゴサンドのモーニングで」

「この状況で食うのかよ。

 ……俺はブレンドコーヒー。ホットだ」

 

 一緒に座るバショウさんが呆れたように言ってくる。だって何かオナカ空いたんだもん。

 

 

 

 注文が届くまでの間、メガネの子が一言二言放ってくる質問を、ウラヌスかベルさんが助言してクリアする。内容を聞いてる分には、よっぽどおかしなこと言わない限り大丈夫そうだけどね。

 そして、2人の卓に飲み物が並ぶ。

 メガネの子がストローで飲んでるのをだるそうに眺めつつ、コーヒーのグラスを傾けるダルツォルネさん。助言役の2人に頼ってなかったら、まだサマになるんだけどな。

 

「あの!

 このメガネなんですけど……似合ってますか?」

 

 ついに核心の質問が来る。

 ベルさんが何か言おうとして、黙る。ウラヌスは人差し指を伸ばすだけで、何も言わず。

 ダルツォルネさんは正面を向いて、宙をじっと見ている。

 ……なるほど、オーラを文章に変形させてるのか。今の私には見えないけど、それなら文章を読むだけで済むもんな。

 えっと……つまりそれ、私の時には使えない手ですよね。おぉぉ……難度が上がっとる。

 

「…………

 いや。似合っていない。

 メガネを外した顔の方がいい」

 

 声色からして、嫌そうな雰囲気が伝わってくる。できるだけ棒読みしてるな。

 メガネの子は急にアタフタしだし、

 

「えっ!?

 あ、いや、でも……

 これ、お母さんに買ってもらった大切なメガネなんで……

 それに私、目が悪いですし」

 

「…………

 ……だが、メガネの度が合っていないんじゃないか?

 さっきも転んでいただろう」

 

「あっ、その……

 そんなこと、ない、です」

 

「……度が合っていないメガネを無理にかけていると危ないぞ」

 

 もはや棒読みに全神経を注ぐかのようなダルツォルネさん。いかん、吹き出しそうだ。

 

「……」

 

 女の子は返事せず、不機嫌な顔でストローをくわえて、レモンティーにぷくぷく空気を送ってる。この気まずさよ。大丈夫なのか、これ?

 

「……じゃあ、どうしろって言うんですか?」

 

「…………

 コンタクトに変えればいい。……キミにメガネは似合わない。

 ……キミのお母さんも、無理にメガネをかけて怪我をするのは、望まないだろう」

 

「う……ん。

 それはそうかもだけど、でも……」

 

「……自分でもそう思ってるんじゃないのか?」

 

 はっとしたように俯き加減だった顔を上げる女の子。

 

「……

 バレちゃいましたか。……ええ、そうです。

 私、よく道で転んじゃって。自分でも危ないなって分かってたんですけど──」

 

 長々と1人語りを始める女の子。おっと、これはクリアできたんじゃないか?

 

「──でも、やっぱりそうですよね。

 後押ししてくれて、ありがとうございます。

 あの、よかったらコレ、受け取ってください。私はもう使わないんで……あなたに受け取ってほしいんです」

 

 外したグルグルメガネを、卓に置く女の子。

 ダルツォルネさんが後ろに目をやり、ウラヌスが小さく頷く。

 そのメガネをダルツォルネさんが手にした瞬間、ボンッ! とカード化した。

 

「それじゃ、私はこれで」

 

 席を立ち、メガネをかけないままスタスタとお店の外へ歩いてく女の子。うん?

 目が悪いんじゃなかったの? 度が合ってないメガネを無理にかけてたから、フラフラしてたってこと? まぁゲームのイベントにとやかく言っても仕方ないんだけどさ。

 

「ヒュー。なかなかのもんじゃねーか、リーダー」

「お疲れ様、リーダー。サマになってたわよ」

「隅に置けないじゃない。こういうデート、初めてってわけでもなさそうね」

「うるさいぞ、お前達!

 オレはもう絶対やらんからな!」

 

 完全にからかってるだけだもんな。そりゃ怒るだろう。

 バインダーを出してカードをしまい、不機嫌に席を立つダルツォルネさん。

 

「お疲れ、ダルツォルネ。

 悪いけどちょっとゆっくりしていってくれ。まだ食べてるから」

 

 ウラヌスがそう言って制止する。……って、げげ。食べてるの私だけか。早く食べよ。

 

「ダルツォルネさん、やるー!

 カード見せて見せて!」

 

 やるも何も、2人の指示通りに喋ってただけだしな。それでもイヤだっただろうけど。ていうかウラヌス、結局クリアできる解答覚えてたし。ちゃんと覚えてるか自信なかったのかもしれないけどね。

 雇い主を邪険にできず、耐えるような表情で席に着き直し、バインダーを広げたままにするダルツォルネさん。メガネの子がいた席に、ポスンと座るネオンさん。

 

 

 

『1626:鼈甲縁(べっこうぶち)の眼鏡』

 ランクF カード化限度枚数196

 鼈甲で縁取られた ぐるぐるメガネ

 度が強い

 

 

 

「ぷぷっ。ランクFだって。

 これってレアなのかな?」

 

 ぷるぷる震えるダルツォルネさん。ネオンさん、分かってて言ってるよな……

 

「このメガネって、売ったらいくらなんですか?」

「いくらだっけ、ウラヌス? 3万?」

「ん。記憶違いでなければ35000」

「あ、やっぱりそれぐらいなんですね」

 

 そのやりとりを聞いて嘆息するダルツォルネさん。まぁ一発クリアできただけマシだと思うけどね。

 ウラヌスが席を立ち、ダルツォルネさんの横辺りまで歩いて、止まる。

 

「だいたい今のが、この街でイベントクリアするまでの流れだよ。中には戦闘が絡むのもゼロじゃないから、いちおう気をつけてくれ。

 何か質問あるか?」

 

 バショウさんがのっそりと手を上げる。そちらを見るウラヌス。

 

「今みたいなヤツなら元手もかからねぇみたいだが、他のイベントだとそうもいかねーんじゃねぇか? 女の機嫌とるのに、(おご)ったり(みつ)いだりは普通にやらされそうだが」

「ま、そだな。それは相手が男でも同じだけど。

 ただ、無闇に浪費を誘ってくる選択はミスリードの可能性もある。一見上手くいってるようで、単に貢がされただけってことも珍しくない。

 アイテムを取りに行かされたり、イベントが日またぎの進行だったりと、労力や時間を使わされるケースもある。

 とは言え、どういうケースでも結局会話で成否が決まってくるけどな」

 

 語り終え、ぐるりと全員を見回すウラヌス。向こうの席で視線を留めた。

 

「ウラヌスとベルさんはずいぶん詳しいけど、どうやって調べたの?

 さっきのイベントでも、あの会話しか正解がないなら、簡単に調査できたとは思えないけれど。だってこのイベントも1日1回しか挑戦できないんでしょ?」

 

 センリツさんの質問に、ベルさんは手を振り、

 

「わたしのは勘よ。後はひたすら繰り返し挑戦。

 ウラヌスとは少し答えも違ったし」

「どういうこと?」

「そいつは俺が説明するよ。あ、ちなみに俺も、勘とトライ&エラーだよ。

 こちらが喋った時、基本的にゲームキャラはセリフ中のキーワードで判断してる。

 たとえば『メガネが似合ってるか?』って質問が来た時に、『いや。似合っていない。メガネを外した顔の方がいい』って返しただろ?

 さっきのケースだと、『いや』『似合って』『いない』『メガネ』『外した』『いい』、大体この辺の言葉を拾ってる。その単語が入ってれば、否定されてるって判断できるからな」

 

 ベルさんが小首を傾げ、

 

「それさ。わたしの時、違ったんだけど。

 『似合ってるけど、メガネを外した方がもっといい』で通ったわよ?」

 

「うん、いけるだろな。

 『似合ってる』『けど』『メガネ』『外した』『もっと』『いい』、判断してる単語はこんなトコだろ。

 で、ある程度こういう融通が利くってことは、正答制と評価値制の合わせ判定なんだと思う。多分ベルの返答の方が、評価値は高いだろうな。

 正解となるキーワードを適切なタイミングで言うこと、これが正答制。イベントクリア条件に設定されてるはずのものだ。

 評価値制はキーワードごとに点数が振られてて、言うと評価値が上がる。正解そのものじゃないからキーワード全てを言う必要はないけど、評価値を一定以上にしておかないとイベントは失敗する。特定の単語はNGワード指定されてて、言うと評価値が下がる。

 だから極端に変なことを言えば、その時点でイベントが強制終了したりする。後、喋るべきタイミングで沈黙したり、答えるのが遅い場合も評価値は大抵下がる。

 俺がイベント作ってるわけじゃないから細かいことは分かんないけど、ある程度融通を利かせて会話や反応を楽しめるようにしてるんだろ」

 

 ……うん。もう途中で理解するの諦めた。なんとなくは分かるんだけど、どうにも頭が理解を拒む。みんなの顔を見ても、分かったような分かってないような様子。

 

「他に質問あるか?」

「はーい。

 このメガネって、お母さんに返してあげなくていいんですかね?」

「……」

 

 お? ネオンさんの質問に、ウラヌスが微妙な顔してる。

 

「え? これってメガネもらうだけのイベントでしょ?

 違うの?」

 

 ベルさんの認識はそうなんだろう。ウラヌスの表情は判然としないけどNOを示してる。

 

「……前にいちおう確認したことはある。

 メガネを持ったまま、あのメガネの……まぁかけなくなるんだけど、あのメガネの子に聞くと、母親がソウフラビにいるって教えてくれる」

 

 ベルさんがパチンと指を鳴らす。

 

「あ、そうなんだ! あの子、付き合えないからヘンだと思ってたのよ。続きあったんだ。

 アンタ、実際行って確かめたの?」

 

「……いや。

 別に続き興味ないし、毎日メガネ売った方が手早く稼げるしな」

 

「じゃあじゃあ! あたし達が──」

 

「お嬢様。……そのアイテムは売却しますので。

 資金確保が先決です」

 

 ダルツォルネさん、ぴしゃりとシャットダウン。ネオンさんを食い止めた。

 

「えー……」

「売却します」

 

 ウラヌスが2人のやりとりを見下ろしながら肩をすくめ、

 

「んじゃ、一旦この場はお開きにして次のイベント行くか。

 全員の会計は俺が済ませておくよ。

 ダルツォルネ、後で分け前決める時に清算してくれ」

「分かった」

 

 ……にしてもソウフラビか。いたのかな、あの子のお母さん。言われてみれば、あんなメガネかけたキャラがいたような……うーん。

 

 

 

 喫茶店を出て、例のパンをくわえた子が待ち構える建物の曲がり角へ。

 男性4人が集まって、やいのやいの言ってる。

 

「オレはもうやらんぞ」

「……今回は別にいいけど、4人しかいないんだから、1周したらまた強制参加だぞ」

「で、どうするんだ。

 またジャンケンで誰が行くか決めんのかよ」

「……ぼく、いつの間にか強制参加になってる……」

「諦めろシーム。俺だって嫌だ。

 えっと、このイベントは指定ポケットのランクAだから流石に失敗するだろうし、繰り返し挑戦するならジャンケンで決めるのは順番だけだよ。……まぁダルツォルネは可哀想だから、このイベントは不参加でいいけど」

「そういう気の使われ方は不愉快なんだがな」

「じゃあ、お前もやる? 4番手で」

「だが断る」

 

 申し訳ないけど、こういうのを高みの見物できるって面白い。……相手が男のイベント、どうしよっかな。参加したくないけど、言いづらい空気。メレオロンが絶対無理だから、それ以上人数削りにくいし……

 

 

 

 ──バショウvsパン食い娘──

 

 

 

 口の悪い女の子と、雑な口調のバショウさんが、妙にウマが合う感じで会話を弾ませる。意外に上手くいきそうな気配だけど──

 

「ったく、だっせーチェック柄の服なんか着やがって。

 お前ならもっと似合う服あんだろーがよ」

「なっ!?

 なによソレ……これお気に入りの服なのに。

 もう知らない!」

 

 タッタッタ、と走り去る女の子。

 取り残されるバショウさん、その後ろで首を横に振るウラヌス。

 

「……おい? これはイベント進んだのか?」

「んーにゃ。失、敗」

「おいおい……

 俺は指示通りに喋っただけだぜ」

「……いやさ。

 お前、まんまじゃなくてアレンジ加えて喋ってただろ? だから想定の評価値になってないんだよ。

 あいつ評価値の高い低いでツンデレが切り替わるから、思ったより評価が高くなってて、知らないうちにデレてたんだよ。今のタイミングで褒めなきゃいけなかった」

「なんだよ、それ……

 どうしろってんだ」

「まんま指示通りに喋るか、自分で気づくかだな。

 微妙な表情や仕草の変化で分かるかもしれないけど、あいつ難しいんだよな……

 明日以降にまた挑戦するなら、同じように喋ってあのタイミングで褒めれば進むさ」

 

 

 

 ──シームvsパン食い娘──

 

 

 

 自信がないからだろう、教えられた通りに話せばいいだけなのにオドオド喋るシーム。時々噛みそうになったり、危なっかしいったらない。

 

「ボクはキミの服、可愛いと思うよ……」

「フン、あんたはダッサイ服よね。

 話しててもツマんない。もう一緒にいたくないわ。さよなら」

 

 スタスタと立ち去る女の子。

 ショックを受けたように固まり──がばーっと、突然後ろのウラヌスに抱きつくシーム。うろたえるウラヌス。

 

「おっ、おいシーム」

「もうやだボクあの子キラーイ!!」

「あーうん……お前にあのツンはキツかったかもな……お前の喋り方だと、俺も評価値がどう動いてるか読みきれないよ。

 ……いや、じゃなくて離れろシーム」

「ぷにぷにー♪ ボクこっちがいい」

「だーっ! は・な・れ・ろ!」

 

 そんな2人もアレだけど、メレオロンが複雑そうに溜め息を吐いてるのが何ともだった。

 

 

 

 ──ウラヌスvsパン食い娘──

 

 

 

 2人並び歩きながら、デートを続ける2人。ほぼ喧嘩みたいなやりとりだけど……

 

「チェック柄の服なんて今時流行(は や )らないよ。

 もっと流行を追わなきゃ」

「なにそれっ!? 私が何着ようと勝手じゃないの!

 ……

 で? たとえば、今は何が流行ってるの?」

「なんだ、気になるのか?」

「聞くだけよ!

 流行りを追うなんて、私ミーハーじゃないんだから!」

 

 お、さっき2人が撃沈したトコを突破したな。バショウさんとシームが耳を立ててる。

 

 しばらく会話した後、急に方向転換するウラヌス。どうやら服屋さんに向かうらしい。

 

 所変わって、ブティック。やや小さなお店なので、流石に9人も近寄れない。挑戦権を持つ男性3人が至近距離で、デート中の2人の会話を聞いてる。

 

「説明はもういいわ。結局どの服がいいのよ?」

「……」

 

 何とか聞き取れた言葉に、初めて沈黙を返すウラヌス。うん? 悩んでるのか。

 

「どうしたのよ? 早く教えてよ」

「…………

 ………………これ」

「はぁっ!?

 いやよ、こんな服! ほんとに流行ってるの!?

 もう、あんたセンスないわね! 聞いてソンした! バイバイ!」

 

 あー。ウラヌス撃沈。足音を立てて出て行く女の子。やっぱ難しいのか……入手難度Aだもんな。

 

「おいおい、デケー口叩いてたワリに結局ダメだったじゃねーか」

「仕方ないだろ……

 あれ、正解がバラけるんだよ。流行の服がその時々で変わるから、それに応じてさ。

 何択もあるから、パッと思い出せなかったんだよ」

「ウラヌスでもダメか。手強いな」

「……何度も挑戦すりゃ、そのうちいけるよ。

 初っ端ならまだマシだった方さ。ちなみに後3シーン残ってるけどな」

「うげ」

「ウラヌス、元気出して」

「……シーム、なんでお前そんな嬉しそうなんだ。つか背中なでるな」

 

 男性陣が和気藹々(わ き あいあい)と話す中、ネオンさんが軽く笑みながら、

 

「ウラヌスさんとシームくん、仲良さそうですね」

「わたしもそう思う。

 で、あの2人ってどうなの?」

 

 ベルさんが、私とメレオロンを見ながら尋ねてくる。

 

「まぁ……仲良いと思いますけど?」

 

 そう返すと、首を傾げるベルさん。いったい何を聞きたいのか。他に言い様もないしな。

 

「シームが一方的に気にいってるのよね。

 ウラヌスは、からかわれてるのか好かれてるのか分かんないみたいで、困ってるけど」

 

 メレオロンの言葉に、何か考え込むベルさん。ネオンさんは変わらずニコニコしてる。

 

「で、ダルツォルネはこのイベントやらないんだよな?」

「やらん。そういう約束だっただろう」

「まあな。

 じゃ、男ばっかやらされんのも不公平だし、そろそろアチラさんにもやってもらうか」

 

 ウラヌスの言葉と視線に、コチラ側がざわっとする。ついに来たか……

 

 

 

 ブティックの外で10人固まり、相談開始。

 

「アタシは絶対やらないわよ? 分かってるわよね」

「まぁメレオロンはダメだわな……

 残り5名様は参加ってことでいい?」

「乗りかかった舟だし、別にいいけど」

「ベルはOKと。そちらの方々は?」

「あたしも何か楽しそうだったんで、やってみたいです」

「はー、断りにくい。

 リーダー、じーっと睨んでるし……」

「仕方ないわよ、ヴェーゼ。

 ボスも参加するのに、あたし達が参加しないわけにはいかないもの」

 

 視線が私に集まる。んー、ほんとヤなんだけどな……

 

「えっと……

 カットモデルのやつだけはイヤですよ? 髪を切りたくありませんから」

「そんなのあるんですか?

 それはあたしも嫌かなぁ」

「ボスがしないなら私もパス」

「あたしも……。大して切る髪もないけれど」

「誰も参加しないなら、わたしもやらない。髪は切ってもいいけど、あんまり好きなヘアスタイルなかったのよね、選べる中に」

「カットモデルは全員不参加か……しゃーないわな。

 とは言え、じゃあ何かオススメあるのか、ベルは?

 俺は女性プレイヤーができるイベントあんま詳しく知らないし、選り好みされると困るんだけどな」

「うーん。そうねぇ……

 出会いを求める女性ハンター向け、なイベントだったらアレよね。

 自信をなくした男性ハンターを勇気づけるやつ。あれも指定ポケットだし、悪くないんじゃない?」

「やっぱアレか。

 ベルが(すす)めるなら、俺は反対しないけど」

 

 まぁそれならまだマシか……。抵抗ないわけじゃないけどね。

 私はウラヌスに目を向け、

 

「ちなみに何のカードが取れるんですか?」

「ハンターのイベントのやつ?

 えっと、ランクAの『3Dカメラ』だったと思う。

 コネクッションはランクBだし無理にやる必要ないけど、これは出来れば取っときたいかな」

「ウラヌス。

 聞いておきたいんだが、指定ポケットカードを取った場合どう配分する気だ?」

 

 ダルツォルネさんが質問する。確かに、いかにも揉めそうなところだ。ただ、現時点でクリアの見込みは薄いけど……

 

「皮算用だけど、もし取れたら『複製』で増やしてオリジナルは売却かな。俺達はカードさえ確保できれば充分だから。

 売って手に入れた金は、ベルとダルツォルネ達で配分決めていい」

「わたしは別にいいわよ。充分楽しんでるからね♪

 そちらのファミリーさんの総取りでいいんじゃない?」

「いいのか?

 我々は情報を与えられている立場で、あまり権利を主張できないんだが」

「構わないさ。

 手伝ってもらってるし、俺は情報持ってても自力で取るのは大変だしな。

 カードさえ確保できりゃ俺達は充分、ベルも楽しめれば充分、ダルツォルネ達は予算を確保できりゃ万々歳だろ? 利害は一致してるさ」

「うむ……

 いずれにしろ、クリアできなければ分け前も何もないがな」

「まぁな……」

「わたしは失敗も含めて楽しんでるわよ♪」

「っせーな。人の不幸を楽しむな。

 せめてンなこと言うんじゃねーよ」

「てへぺろー♪」

「ったく……

 今度はお前が笑われる立場なんだぞ。分かってんのか。適当すんなよ。きっちり助言もしろよな」

「あーはいはい。

 ちゃんと真面目にやるってば」

「……ウラヌス。

 やはり、きちんと報酬を約束した方がいいんじゃないか?」

「いや、こいつ報酬なんか蹴ってでも楽しむ方を選ぶタチだから。

 どうやっても信用できない」

「ちょっとちょっと。

 ちゃんとやるって言ってるじゃない」

 

 揉めてるなー……

 

 

 

 

 

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