どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百六章

 

 ウラヌスとベルさんとダルツォルネさんの3人が、少し離れた所で分け前をどうするか相談しているようだ。

 私は何となく気が抜けて座ったままでいると、センリツさんが笑顔で話しかけてきた。

 

「なかなかのご高説だったわね。

 聞いていて、こっちまで勇気づけられたわ」

「……からかわないでくださいよ。

 あんなの適当に言っただけです」

「いいえ、心の底からそう思って話してたんでしょ?

 あたしもゲームのイベントだってこと、忘れそうになったもの」

 

 ……。私も話してる時は、余分なこと考えてなかったしな。相手はゲームキャラだから、なんて考える余裕なかったよ。まったく、恥ずかしいな……

 

 

 

「何度も言うけど、わたしは分け前なんて結構よ。

 仮に人数で山分けしても10分の1だし、大して役に立ってないもの。今のイベントで、充分すぎるほど楽しめたし♪」

「だが何もなしと言うのは……」

「ベル、ほんとにいいのか?

 お前はよくても、旦那が知ったら泣くと思うけど」

「ぅ……」

「旦那?」

「うん。こいつ、ゲームの中で結婚してんの」

「な、なに?」

「ちょっとウラヌス、なにバラしてるのよ」

「お前、ここで結婚式まで挙げておいて、バレるもバレないもねーだろ。

 分け前の話すんのに、連れがいること言わないわけにはいかないじゃないか。……このアイアイの情報集める時、旦那も協力してたんだろ?」

「……」

「ちなみに俺達は、言ってた通りあのカードを『複製』で増やしたもので充分だからな」

「あなた達だって、ゲームクリアを目指すのにお金は必要でしょ?」

「そういう約束だったし、肝心なカードさえ手に入ればクリアから遠ざからないさ。

 金を貯めるくらい、どうとでもするよ」

「……オレは以前にもお前の世話になってるから、またそうやって押し付けられると落ち着かないんだがな。

 そもそもあのカードはいくらするんだ?」

「自力入手したことないしな……当たり前だけど。

 ベルもだよな?」

「そうね。いくらで売れるかも知らないわ。

 相場はカードによってピンキリだし」

「ランクAだし、最低でもン十万にはなるかな。

 あれが繰り返し取れるカードなら、レートは下がるけど」

「あれって、1回取ったらもう取れないカードじゃない?

 多分アイシャがあいつ居る時にまた座ったら、次はデートイベントになりそうだけど」

「あー……ありそうだな。

 確かにさっきのだと説得してただけで、恋愛パートって感じじゃなかったもんな。……ここが恋愛都市だって忘れかけてたよ」

「いずれにしろ、売ってみなければ分け前の話はしづらいな」

「値段によっちゃ金カードでバインダー圧迫するし、今は売り値の確認だけかな。

 ま、トレードショップには行くか。

 ……いや、その前に最大の功労者に確認を取らないと」

 

 

 

 私が未だぼんやり座ったまま、シームとメレオロンが褒めてくるのを聞き流してると、ウラヌスもこちらへやってきた。

 

「お疲れ、アイシャ。改めておめでとう。

 まさかクリアしてくれるなんて思わなかったよ。なかなかやるじゃん」

「……あなたもですか。

 あんまり褒めないでくださいよ。私ああいうの、ホント苦手なんですから」

 

 得意だと思われて、また似たようなこと押しつけられても困るしな。……あんなの運がよかっただけだ。

 ウラヌスはなぜか嬉しそうに微笑みながら、

 

「途中でゲームってこと、忘れてたでしょ?」

「……

 恥ずかしながら。

 余裕もなかったんで、思ったことをそのまま口にしただけですね」

「会話を楽しむのが、この恋愛都市の本懐だろうからね。

 楽しめたなら何よりだよ」

 

 楽しむ、か。……そうだな。大事なことだ。

 

「それより、分け前の話はどうなったんですか?」

「うん。そのことで。

 ネオンさん達にお金を、俺達はカードを貰うでいちおう決着してる。

 その為に、カードを『複製』で増やして、オリジナルは売ってお金にしたいんだけど、それでいい? アイシャがせっかく頑張って取ったカードだけど……」

「あ、はい。

 それは構いませんよ? オリジナルか複製かにこだわってるわけじゃないんで」

「いいの、アイシャ?」

「ええ。もちろん」

 

 シームの念押しにも、頷いて応える。

 全く惜しくないと言えば嘘になるけど、ネオンさんのチームに報酬を渡すならそうするしかないからね。向こうは指定ポケットカードなんて、いらないんだろうし。

 ウラヌスが「ブック」でバインダーを出して、カードを1枚取り出す。

 

「──『名簿/リスト』オン。97」

 

 

 

 現在 97「3Dカメラ」を

 所有しているプレイヤーは

 3人

 所有枚数は

 3枚

 

 

 

「だってさ」

「……取ってる人はいるんですね。少ないですけど」

「安全なイベントだし、入手方法を知ってるかどうかだけだからね。そういう意味では、少ないと思うよ。

 さて。大丈夫って分かったし、もう増やしとこうか。

 アイシャ。指定ポケットカードをカメラ以外フリーに移して」

「はい」

 

 私は『真珠蝗』『千年アゲハ』『浮遊石』の3枚をフリーポケットへ移し変える。

 その間に、ウラヌスは指定ポケットのカードを1枚取り出し、聖騎士の首飾りで変身を解いて『複製』に戻す。

 

「アイシャ、準備できたらこれ使って」

「はい。

 ──『複製/クローン』オン」

 

 カードが変身、『3Dカメラ』のカードになる。

 

「紛れると嫌だから、複製したカードは俺が預かるよ」

 

 そうしてくれると助かる。今すぐ売りに行くならともかく、まだ何かするかもしれないからな。時間が経ってからじゃ、絶対間違えないとは言い切れない。

 

「もうカード増やしたの?」

 

 こちらの様子を、少し離れた場所から見ていたベルさんが問いかけてくる。

 

「ああ。オリジナルをアイシャが、コピーを俺が持ってる。

 とりあえずトレードショップに行くだけ行こうか」

「それはいいけど、もうアイアイの攻略終わり?」

「んー……

 でも指定ポケットのイベント、あらかた終わったんじゃないか?

 幸福通帳のツンデレパン食いは全滅、小悪魔のウインクのダンダ団はバトルがあるからやれないし、コネクッションは髪切りたくないってみんな拒絶して、ホルモンクッキーは恋愛イベントを3種クリアしてないから挑戦できない。

 指定ポケットはカメラ込みで5枚だから、やっぱりもう無いじゃん」

「他の金稼ぎイベントはやらないの?」

「……もう充分稼いだじゃないか」

「それはあちらさんのチームだけでしょ?

 あんた達はどうすんのよ」

「んー」

 

 なんかウラヌスとベルさんの会話、雲行きが怪しいな。え? まだやんの? 正直もういいんだけど。。

 

 

 

 何はともあれ、まずは買取価格を確認する為、アイアイのトレードショップへ。

 確認した結果、『鼈甲縁の眼鏡』はウラヌスが言っていた通り、35000ジェニー。

 そして肝心の『3Dカメラ』は、136万ジェニーだった。

 お金カードが嵩張(かさば )るのを避ける為、今はまだ売り払っていない。貯金するにしたって、ここじゃ不便だしな。

 

「流石にコレの総取りは躊躇われるんだが……」

「そういう約束だし、別にいいけどな」

「うん。わたしも構わないわよ」

「いや、しかしだな……」

 

 結局揉めるお三方。喫茶店の飲食代を差し引いても139万だからな。確かに、ポンと全額渡すのは気前が良すぎるか。

 

 

 

 協議した結果。

 カメラの収入はダルツォルネさん達とベルさんで6等分に山分け。私達は『複製』したカードを貰ってるから、金銭は受け取らず。

 メガネの収入は、飲食代を差し引いた残りを、全員の人数で山分け。

 これだと私達の金銭的な収入はほぼ0になる。だから──

 他にクリア条件を知っている金稼ぎイベントがあるので、それをクリアしてその収入を山分けしようという話になった。

 あああ。まだやんのか……

 

 

 

 トレードショップ前から移動、見晴らしの良い広場へやって来た。

 噴水前では、他の楽しげにしているカップルと対照的に、何やら喧嘩してる男女がいる。

 

「だからそう言ったじゃないか!」

「言ってないわよ!」

「お前が聞いてなかっただけじゃないか! ちゃんと頷いてたぞ!」

「一体いつ話したのよ! 全然そんな記憶ない!」

「バカ! 俺が何度も話したのに!」

「バカなのはアンタでしょ!」

「お前だろ! バーカバーカ!」

「このっ……! アンタみたいなバカ見たことない!」

 

 ……うん。聞くに堪えませんな。

 ウラヌスは涼しい顔で説明を始める。

 

「この典型的な言った言わないで喧嘩してる2人は、この後それぞれバラける。

 で、プレイヤーは異性に当たるキャラに話しかければ、会話イベントが始まる。

 基本的には本人を持ち上げて、喧嘩相手を貶すように話せば大体クリアできるよ」

 

 えーと。つまり喧嘩別れしたカップルの片方を、宥めるフリして奪っちゃえってこと? 何だかイヤなイベントだな。

 

「ウラヌスが言ってるのは女性キャラの話ね。

 男性キャラは普段から鬱憤(うっぷん)溜めこんでる設定だから、できるだけ吐き出させてスッキリさせるのが基本かな。どっちのキャラも感情変化激しいから、見れば分かる点ではクリアしやすいわ」

 

 ベルさんの説明に、ネオンさん達女性陣がうんうん頷く。メレオロンは参加しないのもあって、反応してない。私はその……どう反応すればいいか分からない。

 話してるうちに、噴水前のカップルがそれぞれ逆方向に別れて歩き出した。

 

「じゃ、始めるぞ。

 時間も惜しいし、前に決めた順でやろうぜ」

「ええ、いいわ」

「……」

 

 ウラヌスの言葉に、センリツさんは快諾し、ダルツォルネさんは渋面で応えた。

 

 

 

 つまずくこともなく男性キャラの攻略を、センリツさん、ヴェーゼさん、ネオンさんとクリアしていく。うう、みんな簡単にやってるから結構プレッシャーなんだけど。

 

 女性キャラの方も引っかからなかったようだ。シームまで難なくクリアしてる。

 

 こうやって男性と女性を1人ずつ同時攻略するのは、かなり効率いいらしい。喧嘩別れしたカップルは、時間が経つと元の場所に戻ってまた喧嘩し始めるそうだ。けど、片方がプレイヤーと会話イベントを始めると、それが終わるまでもう1人に連続で話しかけてもダメなんだとか。喧嘩1回に対して、イベント発生も1回ということだ。

 つまり同時にそれぞれ相手すれば、待ち時間なく攻略できるわけだ。

 

 ……なんだけど、今ベルさんが男性キャラ攻略中で、女性キャラは順番的にウラヌスのはずなのに、なぜか放置されてる。

 気になったので、そちらへ行ってみる。男性陣が固まって話してるトコを見ると、多分私と同じ疑問をウラヌスにぶつけてるんだろう。

 

「どうしてこっちはやらないんですか?」

「ああ、ホントは俺の番なんだけど、ちょっと他にやりたいことがあってね。

 今は待ってる」

「? 何をですか?」

「男性キャラ攻略が全員終わるのを」

 

 うん? よく分からないな。

 

 

 

 で、私の挑戦中。ひたすらぐちぐち言う男性の話に頷き、宥め、時には褒めつつ、

 

「──……そうですね。でも、あなたの態度にも問題があったと思いますよ?」

 

 言った途端、調子よく話してた男性の表情が豹変、ヒヤっとする。周囲も『うわっ』と反応。しまった、またやっちゃった……!

 

「……そうかよ。お前もあのバカ女と同じかよ。

 話してソンしたぜ、じゃあな!」

 

 あああああっ!? やらかしたぁ……。ハイハイ聞いて同意してるだけでよかったのに、思ってたことがクチを突いちゃったよ。

 ……いや、私も初めて聞いた話なら流せただろう。でも、私の番で5回目なんだよな。いい加減、物申したくもなるよ。……あ、はい。言い訳です。なんかイライラしたんです。なんでか。

 

 立ち去る男性を見送りつつ、失敗したことを責められるかとおそるおそる女性陣の方を振り向くと。

 

 みんな目を丸くしていた。その後、感心するような表情に。ほあ?

 ベルさんがずかずか歩いてきて、私の背をパンと叩く。ひゃ! やっぱ怒ってる!?

 

「やるじゃない! 言いたいこと言ってくれてスッとしたわ!」

 

「は、はい?」

 

 なに? 褒めてるのかソレ? 失敗したんだぞ私は?

 あまり好意的ではなかったヴェーゼさんまで、私に皮肉げな笑みを見せ、

 

「みんな思ってても言わずに我慢してたことを……

 悔しいけど確かにスッとした」

「ですよねー。あの人、女を見下してるような態度で気分悪かったんですよ」

 

 ネオンさんもそんなことを言う。

 

「あなた、私達の時もずっと我慢して聞いてたのよね。

 爆発しちゃっても仕方ないわ」

 

 優しい声と言葉で慰めてくれるセンリツさん。う、うわ、ちょ……泣きそうなんだけど。

 

 呼吸を整え、なんとか心を落ち着ける。

 

「えっと。とにかく、これでコチラは全員終わりですね。

 ……みなさん、私の不注意で失敗してしまい、申し訳ありませんでした」

 

 メレオロンは一歩離れてるけど、何も言ってはこない。彼女は不参加だから、声をかけづらいのかもな。

 同じように遠慮していた男性陣も、こちらのワイワイ騒ぎが収まったのを見て、そばへ来る。

 

「アイシャがさっきクリアしてみせたことを考えたら、余裕でお釣りが出るよ。

 1人分くらい気にしなくていい」

 

 ウラヌスがそう言って締めくくる。まぁ……そりゃそうかもしれないけどさ。そもそもこのイベントのクリア報酬っていくらなんだ?

 にしても、この街のイベントって結構手強いな。クリア方法を知ってるイベントでも、ここでこう言ったらどう反応するんだろう? って好奇心が湧いてくる。製作者の術中にハマってる気もするな……

 

「で、あんたまだやってなかったみたいだけど、なんで?」

「見せたいものがあってね」

 

 ベルさんの質問を、またそうやってはぐらかすウラヌス。なんだろうな。

 そうこうしてるうち、元の位置に戻ってきた男女キャラが例の如く口喧嘩を始める。

 喧嘩別れするまで待たないといけない、はずなのに、ウラヌスは喧嘩してる真っ最中の2人に歩み寄った。

 

「あー、2人とも。

 こんなところで大声出してどうしたんだ?」

 

 ……! 仲裁か! そうか、何か納得いかないなと思ったら、2人の仲を取り持つのが本命のイベントなのか。

 交互に言い分を叩きつける2人に、ウラヌスが1つ1つ丁寧にほぐして説明していく。

 

「会話は両者の相互努力なんだから、片方だけ一生懸命言ってもダメなんだよ。自分だけ理解して話してるつもりでも、相手が理解できなきゃ意味がない」

「……オレはちゃんと理解できるように話してるよ」

「私だってそうよ!」

「でも、相手が理解できたか確認はしてないだろ?」

『……』

「もちろん言葉で、理解できたか? なんて聞いたら喧嘩になりかねないけど、そういうのって相手の様子を観察してたら分かるもんだからさ。言っただけで終わらずに、相手のことをしっかり見ないと。

 普段から聞く側話す側それぞれが意識して、相手に気持ちを伝える為にはどうすべきか──」

 

 ……なんだな。幼稚な喧嘩をしてた2人だから、それこそ子供を諭すように話さないといけないわけか。面倒なことには変わりないな。

 けどウラヌス、よくこんなの気づいたな……。ベルさんも興味ありげに話を聞いている。やっぱりウラヌスも納得いかなくて、よく調べてみたんだろうか。

 

 

 

「ほら、ホントは2人とも仲直りしたいんだろ?」

 

 その言葉で締めくくり、2人の手を取って握手させるウラヌス。む、なんと言葉だけでなく、そういう行動まで要るのか?

 

「……悪かったよ。バカだなんて言って」

「ううん。……私もちゃんと話を聞いてなかったんだと思う」

 

 今まで一度たりとも口にしなかった謝罪が飛び出て、2人が穏やかに言葉を交わしだす。おおお、クリアだ。これはもう明らかにクリアだ。

 

「ありがとう。あんたのおかげだ。

 ……そうだ、これを受け取ってくれ。仲良くするお守りとして持ってたんだけど」

「そうね。私達にはもう必要ないわ。

 ……ばらばらに持っていたのがいけなかったのかもね。一緒に持っておいて」

 

 そうして、2人から同時に何か受け取るウラヌス。ボンっとカード化した。

 

「じゃあな。感謝するぜ」

「ばいばーい♪」

 

 仲睦まじく手をつないで歩いてくカップル。……なんだろ。これはこれで納得いかない気もしなくはない。

 

 

 

『376:(いか)れるキャッツアイ』

 ランクE カード化限度枚数108

 赤く彩られた猫目石 強い怒りを感じさせる

 

 

 

『379:(こじ)れるタイガーアイ』

 ランクE カード化限度枚数108

 黄色く彩られた虎目石 深い憤りを感じさせる

 

 

 

 この2枚が、女性キャラクリア時、男性キャラクリア時に取れるカードだ。

 そして、ウラヌスが入手したカードは──

 

 

 

『381:結ばれるブルーアイズ』

 ランクC カード化限度枚数33

 青く穏やかな猫目と虎目の石を並べて提げた

 肌に優しい糸で紡がれるネックレス

 人結びのおまじないが施されている

 

 

 

 なるほどねぇ……このお守りを2人で分けて持ってたから仲違(なかたが)いしていたと。でも普通、分けて持つんじゃないか? 何となく罠っぽいアイテムな気もするけど。

 あーでも、そういう制約とかかな。人間関係を操作するアイテム、指定ポケットカードにもあったもんな。

 

「その2種類の宝石は、それぞれ4万ちょいで売れる。

 に対して、俺が取った宝石は28万」

 

 ざわっとする。エ、エラい額違うぞ……

 

「おいおい、それならハナからそっちの取り方教えてくれりゃよかったのによ」

 

 当然ながらバショウさんが苦言を呈する。ウラヌスは涼しい顔で首を横に振り、

 

「一度この仲裁エンドを迎えたプレイヤーは、二度とこのイベントができなくなる」

 

 あ。……そういうことか。

 

「1日1回しかできないけど、喧嘩状態を宥めるクリアを繰り返せば毎日稼げる。

 けど、仲裁したら一気に稼げる代わりに、もうこのイベントで稼げなくなる。

 ……どっちがいいとも言えないだろ?」

 

 指摘したバショウさんが「むぅ……」と唸り、ダルツォルネさんが腕を組んで考え込む。確かにどちらが正解とも言い切れないな。急に大金が必要になったら、この仲裁エンドも選択肢に含む必要があるだろうし。

 

「このゲームには、こういう甲乙つけがたい選択を迫ってくるイベントもあるんだよ。

 ま、よくよく考えてくれ」

 

 ……それを教えたいが為に、ウラヌスはわざわざ皆の前で最後にクリアしたのか。まぁこの街で稼ぐ気がないからだろうけどさ。

 

「はー……

 あんたもつくづく恋のキューピッドよね」

 

 ベルさんが半分呆れ、半分感嘆の声を洩らす。

 

「んん? なんでそんなこと言うん……あ」

「そうでしょ?

 あんたがいなかったら、わたし結婚まで踏み込んでなかったかもしれないし」

「なにかしたのか、ウラヌス?」

 

 ウラヌスとベルさんのやりとりに、ダルツォルネさんが関心を示す。

 

「えっとね。どうしよっかなー♪」

「やめろベル! あんな話、ヒトにすんな!」

 

 あー、ウラヌス。そういう言い方はよくないな。ネオンさん達、女性陣がめっちゃ興味持ったぞ。私だって知らなかったら気になっただろう。

 

「なぁんだ。なかなかやるじゃない。

 そんなナリして、あなたも隅に置けないのね」

「違ぁう! そんなんじゃねぇ!」

 

 ヴェーゼさんの誤解とも取れる言葉を、首をぶんぶん振って必死に否定するウラヌス。うぅむ、話してほしくない態度示してる時点で、あながち誤解とも言いきれないってバレてるんだよな。

 ネオンさんがスススとベルさんに近づき、

 

「内緒にしますから、あたしにだけでもこっそり」

「ええー。……こいつね、わたしの旦那に──」

「やめろぉぉぉぉッッ!!」

 

 ベルさんの肩つかんで、強引にネオンさんから引き剥がすウラヌス。まっかっかの涙目ですな。やってることのパワフルさはともかく、見た目が乙女すぎて吹く。

 

 

 

 

 

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