どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百九章

 

 本修行の時間もこれ以上削れないので『きっかり1時間』と決めてイナゴ退治を姉弟にやってもらったけど、今までと比べてなかなか好成績だった。他のプレイヤーと接触する可能性を考えても長時間挑むべきではないし、明日以降もできればこうしたいところだ。

 

 まあ、へっとへとだけどねぇ。シームは(せ )かされた分、かなりギリギリまで消耗してるだろう。メレオロンも時間を区切られて、普段より飛ばし気味だった。

 

「お疲れ様でした」

「お疲れ、2人とも。ちょっと一服しな」

 

 私達はそれぞれ姉弟にタオルとペットボトルを手渡す。メレオロンはまだ余力あるようだけど、シームは受け取ってすぐ地面に腰を落とした。

 

 私とウラヌスは顔を見合わせ、

 

「さて、この後どうします?」

「そうだね……

 ちょっと回復がてら買い物しようか。リュックは俺達が預かったままで。メレオロンとシームは移動しながら回復。

 どうせなら明日の支度も済ませとこうか」

「冬の街の、ですね?」

「うん。白雪都市スノーフレイの。

 本格的な防寒着はその街に行ってから買うけど、まずデパートに行くまでが寒いからね。風邪引かないように、暖かい服を買っておこう」

 

 私達が揃って目を丸くする。それにウラヌスが「うん?」と反応し、

 

「なに? 俺、なんか変なこと言った?」

「……その服以外、着るんですね」

「そりゃあ……

 寒いのは流石に。いくらなんでもこのカッコじゃ無理だよ」

「裸1つ手前だもんね、アンタ。

 むしろ下着穿きなさい。いい機会だから」

 

 ウラヌスが「ぐっ」と呻く。顔赤くしてそっぽ向き、

 

「……そんなの俺の勝手だろ。ほっといてくれ」

 

 まぁそうだけど。そこまで固辞するのはどうなんだ。

 

「そっちはともかく、暖かい格好はちゃんとしてくださいね?」

「う、うん……もちろん」

 

 ホントに大丈夫か。

 

 

 

 何はともあれ、オータニアのショッピングセンターへ。

 

 いつもの修行用品に加え、暖かい服──と言っても本格的なモノはスノーフレイで購入するという話なので、ひとまず上に羽織るものを全員購入する。あんまり嵩張っても困るしな。

 

 そしてメレオロンの手袋なのだが……

 

「やっぱりコレっていうのがありませんね」

「うーん……」

 

 ウラヌスも同じ認識のようで、悩ましげに唸る。

 メレオロンの手は指が3本だ。本人に確認したところ、親指は前世と同じ親指の感覚で動くらしい。残り2本は、人差し指と中指、薬指と小指がくっついたような感覚とのこと。

 当然だけど、3本指の手袋なんてそう都合よくあるはずもなく。

 

 姉弟は、手袋コーナーの一角で悩み顔。やっぱりアレしかないか。

 私達がそちらへ歩いていくと、腕を組んでいたメレオロンがこちらに両手の平を向け、

 

「どう? これに合いそうなの、あった?」

「いえ……」

「んにゃ。やっぱ、こういう手袋しかなさそうだな」

 

 まぁあるだけマシだけどね……

 

 メレオロンがさっきから眺めているのは、ミトン手袋のコーナー。四本の指の部分を、まるっと包みこんだタイプの手袋。これならメレオロンの手を隠すには足りる。

 

 問題は、だ。

 基本的にモコモコしてて暑いところで付けるのには難があるのと、おそらく手がかなり使いづらい。

 使いづらいということは、カードの取り回しに困るということだ。これはグリードアイランドにおいて、かなりの大問題である。状況によってはコンマ数秒を要求されることもありえるのに、カードを手にしづらいのは相当マズイ。

 その辺りを私が指摘すると、

 

「まぁ……普段はイヤだけどさ。

 他のプレイヤーがいる時ぐらいは辛抱するわよ」

 

 そう言ってメレオロンは、一番薄手の手袋を選んだ。ふむ……慣れてもらうしかないか。

 

 

 

 買い物も終え、私達は町の入口の方へ向かう。修行場へ行くのにわざわざ入口に向かう必要はないけど、考えがあるのか迷わず歩くウラヌスに付いていく。

 ……ん? 向こうの方にプレイヤーの気配がするな。あっちは──

 

「広場で草野球やってるね」

 

 ウラヌスの言葉に頷く。『超一流スポーツ選手の卵』に挑戦してるみたいだな。

 

「どうする? 偵察しとく?」

 

 ……。

 

 そりゃ、この町に来るプレイヤーを知っておくことは、それなりに意味はあるだろう。なんせ指定ポケットカードが2枚しかない場所だ。つまり立ち寄るプレイヤーは少ない。

 拠点とする街は、他のプレイヤーが少ないほど基本好都合だ。反面、私達のように入り浸るプレイヤーが現れた場合、素性を知らないままだと不都合極まりない。隠しごと多いからな、こっちは……

 

「行きましょ。いいわよね、シーム?」

「……おねーちゃんがいいなら」

 

 姉弟がフードを目深に被る。メレオロンはご丁寧に、さっき買った手袋も付けだした。

 

「ウラヌス。2人もこう言ってますし」

「うん、行こう。

 1人は知ってるやつだと思う。多分、プーハット」

 

 あのヒトか……

 

 

 

 広場では予想通り、数人のプレイヤーが草野球に挑んでいた。

 

 ずいぶん接戦だったようだ。……が、9回の裏で12-10。2塁と3塁に走者はいるけど……

 塁にいる2人がプレイヤーだった。2塁にプーハットさんがいる。

 そしてベンチに1人。あの人に打順が回れば、まだ可能性はありそうだけど。

 

「ああー……。ダメなパターンだね、ありゃ。

 こういう状況だと、まずゲームキャラは打ってくれない」

「ベンチにいるあのヒトは、どうなんですか?」

「監督ポジだよ。本来ならあそこに座ってる監督キャラがいない。

 プレイヤーが3人しかいないし、あと2アウト食らってそのままジ・エンドかな」

 

 話しながら、ウラヌスは何事か考えている。

 私が何か問う前に、ウラヌスはベンチの方へ歩き出した。私達も後から付いていく。

 

「なぁ、アンタ」

「……なんだ?」

「手が足りないなら、手伝おうか?」

「…………」

 

 塁に出てるプレイヤー2人──片方はプーハットさんだけど、その2人もこっちを注視してくる。特にプーハットさんの表情は複雑そうだ。

 

「……手伝うも何も、途中参加できるのか?」

「できるよ。

 元々、草野球の助っ人を頼まれるイベントだしな。

 少なくとも代打なら、途中参加でも問題ない」

「アベンガネ!

 そいつだよ、話してたウラヌスってやつは。腕は確かだ!」

 

 声をかけてくるプーハットさん。言及されたウラヌスは、複雑な顔をする。

 

「──ットライー! バッターアウッ!」

 

 バッターボックスにいたゲームキャラが三振に討ち取られた。これで2アウト。

 アベンガネと呼ばれたプレイヤーは、鼻頭を摘みながら、

 

「……報酬は?」

「成功した後でいいさ。どうする、時間ないぞ?」

「タイム!

 ……アンタ、名前は? いや、ウラヌスだったな。──選手交代、代打ウラヌス!」

「OK。

 ただ、絶対の成功は保証しないぜ?

 ゲームキャラ任せじゃ失敗確実だから声かけたんだ」

 

 喋りながらリュックを下ろすウラヌス。そのリュックを手に取り、背負うメレオロン。……早速手袋が役に立ったな。

 ベンチにあったバットを手に取り、カラカラ引きずりながらバッターボックスへ歩いていくウラヌス。

 

 大丈夫なんだろうか……野球はTVゲームでするくらいだって言ってたし、スポーツは好きじゃないとも言ってたんだけどな。

 バッターボックスに入って、ぶんっぶんっと素振りするウラヌス。少し首を傾げてる。うぅむ……私も詳しいわけじゃないけど、なんかイマイチな気がする。

 

 構えを取るウラヌス。

 

 ゲームキャラのピッチャーが振りかぶる。ボールを投げ放つ。

 

「──ットライー!」

 

 ウラヌスは何もせず、ただ見送った。……見に徹したな。傍から見た感じ、彼の視線は完全にボールを捕らえていた。

 

 おそらく打てるとは思う。問題は、だ。ここで求められてるのは、逆転できる3点ってことだ。ただ打っただけじゃ、結局負けることになる。最低でも延長戦になる2点は必要だろう。延長戦なんてあれば、だけど。

 

 ゲームキャラのピッチャーが、再び振りかぶり──ボールを放つ。

 

 

 

 動くウラヌス──バントッッ!?

 

 

 

 バント姿勢のまま、強烈な勢いでバットをボールに叩きつけた。

 

 ゴッッ!! ──ががががががッッ!!

 

 低い打球は猛烈な速度でピッチャーの脇を抜け、地面に跳ね──返らず、土砂を削っていく!

 

「走れぇぇぇッッ!!」

 

 ウラヌスが叫ぶ。慌てて走り出す2塁3塁。彼も相当な速さで歩き、プーハットさんのすぐ後ろに迫る。

 

 ボールは広場の土を抉り、深く埋まってしまっていた。なんだこれ……めっちゃゲームキャラ困ってるけど。

 

 3人が本塁に帰ってくる。

 

 ……まさかの、代打逆転サヨナラスリーランバントランニングホームラン。

 

 

 

「────ゲェーーーーム、セェェッッッッ!!」

 

 

 

 これはひどい。

 

 ウラヌス以外のプレイヤー全員が目を丸くしていた。

 

 当のウラヌスは、なんか照れ笑いしてた。

 

 

 

 広場は草野球イベントが終了し、閑散としていた。私達は一箇所に集まり、立ち話している。

 

「おどかすんじゃねーよ、全くよぉ……」

 

 後ろ頭をぼりぼり掻きながらプーハットさん。ホントにねぇ。

 

「いーじゃん、勝ったんだしさ」

 

 気楽そうにウラヌス。結果を出してみせたことは、素直に称賛したいけども……アレはないだろう。いくらなんでも。

 

「さて、報酬の話なんだが──」

 

 監督をしていたプレイヤーがそう切り出すと、もう1人のプレイヤーが、

 

「おい、ちょっと待ってくれよ。

 そもそもオレはそいつら知らないんだぞ。紹介ぐらいしてくれよ」

 

 と苦言を呈する。筋骨隆々の、明らかに強化系な雰囲気の男性だ。実際どうか知らないけどね。意外に強化系って少ないみたいだし。他に有り得そうなのは放出系か。

 

「……だそうだ。

 オレも彼らとは初見だから、紹介したくても出来ない。よければ名乗ってくれないか? オレはアベンガネだ」

「オレはジートだ。アンタ達は?」

 

 除け者にされて、ぶすっとしてるプーハットさん。まぁ私達も名前知ってるしな。

 

「俺はウラヌス」

「アイシャです」

「シームです」

「……メレオロン」

 

 筋肉質な男性はうんうんと満足気に頷き、

 

「オウ、よろしくな。

 ……で、アンタ達。なんでいきなりオレ達に協力したんだ?」

 

 当然ウラヌスに視線が集まる。彼はちょっと唇をへの字にし、

 

「そりゃまあ……」

「単刀直入に言ったらどうだ? 『超一流スポーツ選手の卵』が目当てなんだろ」

 

 アベンガネさんの指摘に、ウラヌスは頬をかく。

 

「正直言って、一打席立っただけでそれは貰いすぎだろ?

 だからアレは、交渉を受けてくれる手付け金代わりだと思ってくれればいい」

 

 考えるアベンガネさん。プーハットさんは肩をすくめ、

 

「オマエさんも謙虚すぎて気持ち悪いな。

 素直に、貢献したんだから分け前よこせでいいじゃねぇか」

 

 そちらを見てアベンガネさんが不快そうに、

 

「……そもそもお前達が点を取り損ねたから負けかけたんだが」

「おいおい、今そんなこと言うなよ。

 仕方ねぇじゃねーか。そうきっちり何度もホームラン打てるかよ」

「終盤に出てきたピッチャーが強かったんだ。

 オレはちゃんと、序盤中盤のピッチャーと同じ感覚で打ったぞ」

 

 なんか揉めてる。……けど、なるほど。試合の終盤になると相手が強くなるのか。また面倒な。

 

「待て待て、喧嘩なら後にしてくれ。

 先に交渉させてくれよ。俺達も暇じゃないんだ」

 

 ウラヌスがそう言うと、アベンガネさんは怪訝な目を彼に向け直し、

 

「それはいいが、いったい何と交渉するんだ?

 ……いや、先に聞いておきたい。

 アンタ達、オータニアにいたなら真珠蝗を持ってないか?」

 

 あ。思わず反応しかける。シームが目を見開いたからバレたな、多分。

 

「真珠蝗ねぇ……

 ソレと卵なら交換してくれるのか?」

「午前中に挑戦したんだが、取れず仕舞いでな。

 そいつ目当てで来たのに取り損ねちまって、困ってたんだよ」

 

 アベンガネさんが、そう話すジートさんの方をイヤそうに見る。なんというかグダグダだな、この交渉。お互いに、見せない方がいい手札ダダ漏れなんだけど。

 

「……まぁそういうことだ。

 真珠蝗と、超一流スポーツ選手の卵とのトレードなら受けよう。

 持ってないなら、せめて他の指定ポケットカードにしてくれ」

「いや、真珠蝗は余分に持ってるよ。

 それでトレードは構わないけど、卵は『複製』で増やすってことでいいんだよな?」

「いま手に入れた1枚しかないから、そうなるな。

 もし聖騎士の首飾りを着けているなら、今のうちに外してくれ」

 

 ウラヌスは小さく肩をすくめ、

 

「その辺は心配しなくていいよ。

 『複製』はどうする? こっちで用意すればいいのか?」

「それくらいはこちらで用意しよう。

 プーハット。俺の指定ポケットに入ってるから、『複製』で増やしてくれ」

「おうよ。ブック」

 

 プーハットさんがカードをバインダーから取り出し、

 

「──『複製』オン、アベンガネ!」

 

 スペルカードが変身する。カードの表をこちらに向けるプーハットさん。うん、超一流スポーツ選手の卵だ。間違いない。

 

「ほれ、お前さんも出してくれ」

「ああ。ブック」

 

 ウラヌスも、フリーポケットのページから真珠蝗のカードを出す。

 そして2人が、カードを同時に交換する。

 

「そっちは間違いなくオリジナルだから、首飾りでも何でも調べてくれていい。

 今こっちもカードを改めるから、ちょっと待ってくれ」

「分かってると思うが、『複製』したカードは──」

 

 アベンガネさんが怪訝そうに注意を促してくる。ウラヌスは一度バインダーにカードを収めてから外し、

 

「大丈夫だよ、そんなヘマしないさ。

 アイシャ。ちょっと、このカード手に持ってて」

「はい」

 

 ……どうするんだろ。状況的にこれが『贋作』カードってことはまず無さそうだけど、可能性はゼロじゃないしな。もし何かの能力ですり変えられたとしても、今の私が見破るのは難しいだろう。

 ウラヌスはカードを1枚取り出し、

 

「──『名簿/リスト』オン。37」

 

 

 

 現在 37「超一流スポーツ選手の卵」を

 所有しているプレイヤーは

 2人

 所有枚数は

 3枚

 

 

 

「アイシャ、自分のバインダーにそのカードを入れて」

「はい。ブック。

 ……指定ポケットに入れればいいですか?」

「指定でもフリーでも好きな方に」

 

 ふむ。じゃあ邪魔にならない指定ポケットに入れておくか。

 

「収めました」

 

 ウラヌスが再びカードを取り出し、

 

「──『名簿/リスト』オン。37」

 

 

 

 現在 37「超一流スポーツ選手の卵」を

 所有しているプレイヤーは

 3人

 所有枚数は

 3枚

 

 

 

「OK、確認できた。トレード終了だ」

 

 ──なるほど、そういう見極め方か!

 

 『贋作』カードなら、『名簿』で調べた時の枚数や人数にはカウントされない。

 

 そして『名簿』で表示される『所有しているプレイヤー人数』は、今バインダーにそのカードを入れているプレイヤー人数なわけだ。つまりバインダーから出し入れした前後で所有人数が変われば、そのカードは本物。

 

 所有枚数の方が、手に持っててもバインダーに収めても変化しなかったのは、カード化限度枚数で判定してるからだな。判定が別になってたわけだ。……盲点だったよ。

 

 アベンガネさんが何事か考えている。多分、今のでどうやって真贋の判断ができたのか分からないんだろう。実際に数字の変化を見てなかったら、おそらく分からないだろうな。

 

「おい、アベンガネ。

 交換はもう済んだし、さっさと行こうぜ。ずいぶん手間取っちまったからな」

「……ああ」

「じゃあな、アンタ達」

 

 プーハットさんに促され、渋々アベンガネさんも動き出す。気さくに別れの挨拶をするジートさんに、私も会釈した。

 

 20メートル以上離れたところで、スペルカードの効果で飛んでいく3人。

 

「さて。

 より道しちゃったけど、俺達も修行場に行こう」

 

 ウラヌスが促し、私達も歩き出す。今度は街の入口ではなく、修行場にやや近い方向へ。

 

 メレオロンがこれ見よがしに溜め息を吐く。

 

「はーっ。……あんたもアッサリ取るわよねぇ」

「ランクBだしな。

 その気になれば時間かけて取れたけど、ああいうトコに差し込むのが一番手間がない」

「それだけじゃないですよね?」

 

 尋ねてみる。ウラヌスはチラリと口許に笑みを浮かべ、

 

「分かった?」

「ええ。

 彼らをこの町に長居させない為、ですね?」

「せーかい」

 

 私達の会話に、シームが目をぱちくりさせる。メレオロンは何か考えている。

 

「ホントは真珠蝗を1枚持ってかれるとカード化限度枚数的に痛いんだけど、あいつらが変に味占めてこの町でうろうろしだしたら、俺達やりにくくて仕方ないからね。

 さっさと目的達成させて、追っ払ったのさ」

 

 やっぱりそうだったか。じゃなきゃ、関わらずに放置しておいた方がよかったもんな。無理してランクBのカードを狙う必要もない。さっき見せた技量で、少なからず向こうに警戒されただろうし。ウラヌスの場合、元々警戒されてるだろうけど。

 

 ただ……

 

「ウラヌス。

 さっきの交渉、ずいぶん気前が良かったようにも思いましたけど……

 あの人達に同情したから、じゃないですよね?」

 

「……そんなんじゃないよ。

 ただ、プーハットには悪いことしたからね。ちょっとした罪滅ぼしさ」

 

 はぁー……

 

 私と同時にメレオロンも息を吐き、顔を見合わせる。

 

 シームはとても機嫌よさそうに、

 

「ウラヌスって、ほんと優しいよね」

「……そんなんじゃないって言ってるだろ、シーム。

 今後の交渉を円滑にする為にだな」

「またまたー」

 

 あー、うん。きっとシームが正解だろうな。まったく……お人好しなんだから。

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
・新ハメ組3名の個人近況



【プーハット】
 操作系能力者。1999年9月10日の選考会に合格し、古城からグリードアイランドへ。アントキバでハメ組加入。そして5ヵ月後、クイズイベント後に発生したハメ組内の仲間割れで、争いに加わることなく無傷でアジトを脱出した。

 本来なら、ハメ組全員を裏切ったゲンスルーに取り入ろうとし、不興を買って殺されるはずだったが、ゲンスルーがハメ組を離脱した為に、その事件は発生しなくなった。また選考会でゴン達に声をかけるはずだったが、こちらも話さず仕舞いになっている。

 現在はハメ組内でも比較的温厚な者達が(つど)った、新ハメ組に参加している。
 人手が足りないので、カード収集、情報収集、仲間集めと忙しい日々を過ごす。



【アベンガネ】
 具現化系能力者。1999年9月10日の選考会に合格、古城からグリードアイランドへ。プーハット達とともに、アントキバでハメ組加入。そして5ヵ月後、クイズイベント後に発生したハメ組内の仲間割れで、隙を見て素早くアジトを脱出した。

 本来ならゲンスルーによるハメ組爆殺事件で除念能力を用いて1人難を逃れ、その後はヒソカの導きでクロロの除念を行うはずだった。ゲンスルーはハメ組を離脱し、ヒソカもクロロもグリードアイランドに関わらなかった為、アベンガネも彼らとは無関係のまま。

 現在はプーハットの説得を受け、新ハメ組に参加している。主に参謀を務める。
 ……もっとも、彼自身はこのままゲームに留まるか現在悩み中。この先クリアに至って、億以上の金を握ることができる確率を考えると、リスクリターンが合わない気がしている。



【ジート】
 強化系能力者。少なくとも、1999年9月10日の選考会に最も早く挑戦し、合格するだけの力は持ち合わせていた。

 本来なら入島して間もなくの、1999年9月11日にアントキバで、ゲンスルーに殺害されるはずだった。
 ……が、それより3日前の9月8日、リィーナと接触したゲンスルーが捕縛された為、死の運命から免れた。
 その後、プーハット達とともにハメ組に加入。それから5ヵ月後、クイズイベント後に発生したハメ組内の仲間割れで、いち早くアジトを脱出。そこでも難を逃れた。

 現在はプーハットの説得を受け、新ハメ組に参加している。主に怪物退治による金稼ぎ、身体能力を要するバトルイベントやアクションイベントに駆り出される。





・爆弾魔の謎



 ゲンスルーはグリードアイランド内において、爆弾魔として活動していました。原作でゴン達がゲームを開始した直後、同様に参加したジートを殺害しています。

 ゲンスルーが使用できる能力は2つ。【一握りの火薬/リトルフラワー】と【命の音/カウントダウン】です。他に能力を持つ可能性は、ほぼありません。【命の音】の制約が『能力の説明をきちんとすること』なので、ゲンスルーは自身が使用できる能力について全て語る必要がありました。その為【命の音】を発動させる相手に対しては、【一握りの火薬】の説明も必ずしています。もし制約でなければ、ハメ組に対して危険を冒してまで【一握りの火薬】の説明はしなかったでしょう。……まぁメモリがキツかろうというのもありますが。ゴンに対しては【一握りの火薬】の説明をきちんとしていなさそうですが、相手が知っているとゲンスルーが認識していれば説明済みの扱いになるのでしょう。

 ところが、ジートを殺害したであろう爆破能力は、この2つの能力では困難です。

 まず【一握りの火薬】ですが、手で掴んだモノを爆破するこの能力では、遠隔で誰かを爆殺することはできません。ジートのケースだと、突然内から爆発したという証言があり、腹部が破裂したような死体であったことから、掴んだものを爆破する【一握りの火薬】の性質とは異なります。

 そうすると残るは【命の音】になるわけですが……

 当然の問題として、【命の音】は起動後6000からカウントして0になるか、サブとバラが一緒にいる場で『解放』する必要があります。
 こちらであれば遠隔での爆殺は可能ですが、当然ながら説明しなければならないという性質上、隠密性はカケラもありません。これでは、ゲンスルーが爆弾魔であることを隠し通せないでしょう。実際一度使っただけで、アベンガネに能力を暴露されるというミスをしています。

 詰みです。原作のことだし、別にいいですけどね。



 ……とまぁそこで話を終わってもアレなので、じゃあどうすれば可能かという話を。



 ①ゲンスルーは別の能力を持っていて、そちらで爆弾魔の活動をしていた

 ……書いておいてなんですが、正直一番ないと思ってます。
 やはり【命の音】は、所持している能力を全て説明しなければならないというリスクを加味することで、あれだけの特性を持たせられたと考えるべきなので(サブバラを使ったジョイント型能力にしてまで完成させている)、そんなメモリの余地はないでしょう。
 何よりガソリンを被った際、使い勝手の悪い【命の音】を使おうとしたので、遠隔爆破できる能力を他に持っていたなら、あのタイミングで使っていなければ不自然ですからね。



 ②サブかバラが、グリードアイランド内で爆弾魔の活動をしていた

 ゼロではないでしょうが、サブバラが戦闘で一切『発』を用いなかったことを考えると、やはりゲンスルーの【命の音】を完成させる為に、メモリを全振りした可能性が高いです。個々に爆破能力を持つ余地はまず無いでしょう。
 遠隔爆破をしたい時だけサブとバラがグリードアイランド内にいた可能性もなくはないですが、『解放』の為に3人で固まれば隠密性が著しく下がり、現実的ではありません。



 ③【一握りの火薬】が実は遠隔爆破可能で、それで爆弾魔の活動をしていた

 ゲンスルーが【一握りの火薬】を使う際、爆破に20%、『凝』による手のガードに25%顕在オーラを回しています。
 もし遠隔が可能なら、手のガードをする必要はありません。原作におけるゴンとの戦いでも、ガソリンを被っただけで使用を諦めたぐらいなので、やはり遠隔爆破は不可能なのでしょう。
 超スピードで移動して、誰にも対象への接近を気づかせずに爆殺していた可能性も……まぁないでしょう。手から煙が出ますからね、アレ。自らが爆破したことを、完全に隠し通すのは厳しいです。
 ジート以外のケースでは【一握りの火薬】を使ったかもしれませんが、ジートのケースのみ説明しようがないといった感じです。



 ④【命の音】のカウントを調整していた

 能力の説明でも、このカウントについてゲンスルーは言及していないので(ゴンに対しタイマー式であるという説明はした)、カウントの値は任意設定できる可能性があります。
 ハメ組のケースでは、カードを取引する為の時間が必要だったから6000という値に設定していただけであれば、即座に爆破させることも可能と推測できます。

 で、仮に6000という値が、動かせない固定値であったとしても。

 実際にゲンスルーが【命の音】を発動させたシーンを見ると、6000から始まったであろうカウントが予め進んだ状態から開始しています。5942、5897など。
 心拍数に個人差があるとは言え、6000カウントから始まるはずのものが発動直後にそんな値になっているのは妙な話です。

 ありえるとすれば、説明中に【命の音】の名称を聞かせた時点からカウントが開始していた可能性です。つまり発動して爆弾が可視化する前に予めカウントを進めることができ、カウントが0の状態で説明を完了させることで、発動即爆破も可能。ということであれば、説明はつきます。これならジートのケースでも、説明のタイミングを調整することで遠隔でも爆破ができたことになります。
 【命の音】を取り付ける前に対象の心拍数をどうやってカウントするのかという問題もありますが、このカウントにそこまで意味がないのなら、ゲンスルーの心拍数でカウントするなり、単純に時間経過で一般的な心拍数分をカウントするなりで、説明がつきます。
 ……と言うか、カウント調整できないと【命の音】があまりにも融通が利かない能力になってしまうので……

 まぁ、④かもなぁと。




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