どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百十三章

 

 格ゲー3本と、挙げ句に○カポンで姉弟が互いの首を絞めるまで無茶苦茶ゲームした後。

 

 予定通り、食事とカード補充の為に私達は外出した。

 

「シーム、ぜったいころす……」

「……ねーちゃん、次は百回なかす」

「あなた達、組手の時の配慮はどこに捨ててきたんですか」

 

 ひどいな。やっぱりこの2人に長々ドカ○ンやらすべきじゃなかったよ。散々やってた格ゲーで険悪になってたのもあるけど。

 

「もう2人とも忘れろよ。

 たかがゲームだぞ? 勝とうが負けようがどうでもいいだろ」

「違うわよ! こいつ、いちいちムカつくのよ!」

「ねーちゃんがアホだからでしょ。魔法使うたびにバシバシ叩くのヤメテよね」

「あーもう。

 2人ともそれ以上喧嘩するなら、もう私のゲームさせませんからね?」

 

 ぶすーっ、とした顔で黙りこむ姉弟。メレオロン、ワリと癇癪持(かんしゃくも)ちだからな。格ゲーやド○ポンみたいな腹が立つゲームは向いてないと思う。

 

 思ったより長時間遊んでしまったので、オータニアの町並みはすっかり暗くなっている。これはこれで風情があっていいけどね。

 

「ところで、食事とカード補充のどっちから行きます?」

「いま悩み中」

 

 ウラヌスに尋ねると、珍しくそんな返事だった。……なるほどね。散歩して2人の頭が冷えるのを待つつもりか。

 街灯は少なく、特に畑の回りは明かりがほとんどない。ウラヌスは夜もイベントがあるって言ってたけど、この暗闇で挑戦するんだったらなかなか骨が折れそうだ。

 

「……なんでアンタはゲームになるとそんな性格悪いのよ……」

「……おねーちゃんだってムキになるじゃん。もう嫌い……」

「……アタシもアンタのことなんて嫌いよ……」

 

 なにやら小声で言い争ってるのが聴こえてくる。まったく。

 それに紛れて、リリリリリ、リーン、リーン、と虫の音がどこかから響く。

 

「そういえば、ここって鈴虫が捕れるんでしたっけ?」

「ああ、レアな鈴虫のこと?

 捕れるけど、昼じゃないと厳しいかな。そいつが鳴くのは昼だけだから。

 夜鳴いてるのは普通の鈴虫だよ」

 

 ふむ。ということは、いま聴こえてるのは普通の方か。あ、聴こえなくなった。

 

「……もうおねーちゃんとなんかゲームしたくない……」

「……アタシも金輪際お断りよ……」

「……またそうやってムキになる……」

「……アンタだってそうじゃない。バカまるだしよ……」

「……アホなおねーちゃんに言われたくない。だから嫌いなんだよ……」

「……意見が合うわね。アタシもよ……」

 

 仲直りする気配ないな。もうドカポ○封印しようかな。

 またどこかから、リリリリリ、と──

 

 ウラヌスがヒュッと動いた。瞬く間に建物の陰へ。

 

「へ?」

 

 メレオロンが驚く中、数秒してウラヌスが戻ってきた。カードを手にして。

 

「なにか捕れたんですか?」

「うん、そうだよ。2人ともお手柄だな」

 

 含み笑いをするウラヌス。なに、お手柄って?

 

 バインダーを出し、カードを収めるウラヌス。そのバインダーをメレオロンの方に差し出す。怪訝そうにしながらも受け取り、シームと一緒にそのページを覗き込むメレオロン。どれどれ、私も──

 

 

 

『258:閻魔蟋蟀(えんま こおろぎ)

 ランクB カード化限度枚数26

 普段は物音一つ立てないが

 誰かが虚偽を口にすると その心理に反応して鳴き始めるコオロギ

 探す時はその習性を利用するといい とても美しい音色を奏でるだろう

 

 

 

「ぶはっ」

 

 思わず吹き出す。なるほど、そういうことか。確かに2人のお手柄だな。

 

「アイシャ、どうしたのよ?」

「いえ。

 ……ウラヌス、私てっきり鈴虫と勘違いしてたんですけど、これがさっきまで鳴いてた虫ですよね?」

「そうだよ。

 誰かさん達の口喧嘩に反応して鳴いてたね」

 

 それを聞いて、みるみる顔色が変わるメレオロン。シームはとっくに気づいてたらしく、顔が真っ赤だ。

 

「ふふ。もう、2人とも素直じゃないですね。

 仲直りしたかったなら、そう言えばいいんですよ?」

「ち、違ぅ! なに言ってんのよ!」

 

 ムキになるメレオロン。シームは顔を赤くしたまま、うつむいている。

 結局口喧嘩のなにが嘘だったかまでは分からないんだよな。それは口にした本人のみぞ知る、だ。予想はつくけどね。

 ウラヌスはニヤニヤしながら、バインダーをパタンと閉じ、

 

「さて。

 仲の悪い2人は置いといて、俺達だけでマサドラ行こっか、アイシャ」

「ほう。それはいいですね」

「ちょ、ちょっと待ってウラヌス!」

「んー? なんだ、シーム?」

「置いてかないでよ……」

 

 そりゃこんなトコに2人だけで放置されたら、さぞ気まずいだろうね。冷静に考えれば、置いてくはずがないって分かりそうなもんだけど。

 

「素直じゃない悪い子は連れて行けないなぁ」

「かぁーっ!

 アンタ性格悪いわぁ」

「メレオロン。素直じゃないのはあなたもですよ。

 お姉さんなんですから、お手本を見せてあげないと」

 

 言われて、顔をくしゃりと歪めるメレオロン。

 見上げてくるシームに、メレオロンは視線を返す。

 

 やや震える手を伸ばし──シームの頭に触れる。

 

「……ごめん。アタシが悪かったわ」

「……。

 ぼくも……ゴメン」

 

 うむ、美しきかな。○カポンなんかで壊れる姉弟愛ではなかったということだ。危ういところだったけど。

 

 ウラヌスは柔らかく微笑みながら、ポンと手を鳴らし、

 

「そんじゃ。

 丸く収まったところで、マサドラへスペルカード買いに行くか」

 

 まずは進路変更し、オータニアのトレードショップへ。結構貯まっていたお金を下ろし、ようやく私達は『同行』でマサドラへ飛んだ。

 

 

 

 マサドラに着いて、すぐトレードショップへ向かう。

 トレードショップの入口近くでウラヌスは立ち止まり、

 

「あ、ごめん。うっかりしてた。

 ちょっとカード整理するから待ってて」

 

 あー。いつもの『解析』『道標』『名簿』消化か。そういえば、普段はゴハン食べてる時とかにしてるもんな。今日は順番が逆だから忘れてたのか。

 

 

 

 建物の陰でメモメモしてるウラヌスをヨソに、私達はお喋りに興じる。『解析』が時間かかるんだよね。カードテキストもメモるから。

 

「明日行くスノーフレイって、どんなトコだろうね」

「アタシは漠然と雪国イメージだけど」

「私もそうですね。温泉と雪景色を想像してます」

 

 四季の街ラストだからな。(いや)(おう)でも期待してしまう。エリルとオータニアがジャポンテイストで、ソルロンドが常夏リゾートだったからな。自然に冬の観光地のイメージしか湧かない。

 

「ん。終わったよ」

 

 スノーフレイを知っているはずのウラヌスに聞けば、どんな場所か容易く知れるだろう。が、誰も無理に聞いたりはしない。先に聞いたら楽しみがなくなるもんね。……というか、話だけ中途半端に聞いても、すっかり忘れてる私がいるわけで。百聞は一見に如かずだ。

 

 

 

 閻魔蟋蟀と余分なスペルを売却し、お金を貯金してようやくスペルカードショップへ。待ち時間なくお店に入り、35パックを購入。スペルカード合計174枚。

 

 

 

 『盗視/スティール』6枚

 『透視/フルラスコピー』5枚

 『防壁/ディフェンシブウォール』13枚

 『反射/リフレクション』1枚

 『磁力/マグネティックフォース』2枚

 『掏摸/ピックポケット』2枚

 『窃盗/シーフ』1枚

 『交換/トレード』4枚

 『再来/リターン』10枚

 『擬態/トランスフォーム』4枚

 『複製/クローン』2枚

 『左遷/レルゲイト』4枚

 『初心/デパーチャー』3枚

 『離脱/リーブ』3枚

 『念視/サイトビジョン』3枚

 『漂流/ドリフト』6枚

 『衝突/コリジョン』2枚

 『徴収/レヴィ』2枚

 『城門/キャッスルゲート』20枚

 『贋作/フェイク』1枚

 『強奪/ロブ』1枚

 『堕落/コラプション』5枚

 『妥協/コンプロマイズ』2枚

 『暗幕/ブラックアウトカーテン』5枚

 『聖水/ホーリーウォーター』3枚

 『追跡/トレース』2枚

 『投石/ストーンスロー』4枚

 『凶弾/ショット』3枚

 『道標/ガイドポスト』2枚

 『解析/アナリシス』3枚

 『宝籤/ロトリー』10枚

 『密着/アドヒージョン』1枚

 『浄化/ピュリファイ』1枚

 『神眼/ゴッドアイ』1枚

 『再生/リサイクル』1枚

 『名簿/リスト』8枚

 『同行/アカンパニー』16枚

 『交信/コンタクト』12枚

 

 

 

 また『離脱』が1枚引けてる。どうせならその運を『堅牢』を引くのに回してほしいんだけど……そっちは相変わらずだな。

 

「揃わないわねぇ。

 ホントに『堅牢』って引けんの?」

「引けなかったら詐欺だけどなー。

 今日『名簿』で確認したけど、相変わらず全体で所持してるのは1枚だけだったよ」

 

 私達だけじゃないことを考えると、『堅牢』だけ引ける確率が異常に低いんだろうな。『離脱』もランクBにしては引きにくいけど、『堅牢』ほどじゃない。

 

 

 

 スペルカードショップを出て、適当な場所で『宝籤』を使用する。今回は私が担当だ。

 10枚あるうちの8枚目で、私は「おや?」と声を上げた。

 

「なんか引けたの?」

「いえ、別に大したものが引けたわけではないんですが」

 

 言いながらウラヌスにカードを渡す。

 

 

 

『261:魔女の風邪薬』

 ランクD カード化限度枚数65

 風邪によく効く 魔女の特効薬

 1日に1回までの使用が適量 1ビン100粒入り

 

 

 

「ジェイトサリさんが、風邪を引いた時用にその薬を薦めてくれました」

「へぇー。アイツ知ってたんだ。

 森の魔女から買える薬なんだけど、買うと結構するんだよ。

 スノーフレイ行く前だし、ちょうどよかったかな」

「買うといくらすんの?」

「15万」

 

 げ。風邪薬の値段じゃないな。

 

「なら店で売っちゃった方が得じゃない?」

「これが元『宝籤』じゃなけりゃあ、ね」

 

 うむ。売り値は変身前の『宝籤』と同じだからな。指定ポケットカードを引いた場合を除けば、使ってしまう以外にないんだよね。それか二束三文で売るか、だ。

 

 

 

 大して荷物にならないからという理由で風邪薬はゲインし、他の外れ『宝籤』と一緒に不要なスペルカードをトレードショップで売却。

 マサドラかオータニアか、どちらで夕食を摂るかの相談もしたが、最終的に満場一致でオータニアに決定。すぐ『再来』でオータニアへ移動した。

 

 

 

 そして本日二度目の来店、料亭『秋の空』。

 

「何度も来なくたって、他の店で食べてもいいのに……」

 

 メニューを広げながら、まだブチブチ言ってるウラヌス。オータニアのここで食べるの、最後まで渋ってたからな。

 

「だってここ落ち着くじゃないですか。美味しいですし」

「そうよそうよ。

 マサドラだと他のプレイヤーが入ってきたら、アタシが食べにくいじゃない」

「他の安いお店だと入って来るかもしれないし、慣れてるここが一番だと思うよ?」

「……分かってるよ。

 でも、納得できない俺がいる」

 

 あっはっは。ここ高いもんね。だからこそ他プレイヤーも寄り付かないんだし。私達が常泊してる時雨紅葉もそうだろうし。何よりここは、個室のお座敷で食べられるのがいい。

 

「だんだん贅沢の度合いが強まってなけりゃ、俺も文句言わないけどさぁ」

「気にしない気にしない。

 アタシ達も、そのぶん稼ぐようになったじゃない」

「そうですよ。

 それにしっかり食べないと回復しませんよ」

 

 言いながら隣の脇腹を指でプニった。

 

「ひゃうんっ!?

 やめてってば!」

 

 びくーんっ、と横に反るウラヌス。いちいち反応が面白すぎるな。

 すっごい嫌そうに、プニられた脇腹をさすさすしつつ、

 

「もぅー……

 大体、宿で6000ジェニーも飲み食いしてんだし、軽くでいいのに」

「なに言ってるんですか。

 あなた、あまり食べてなかったじゃないですか。しっかり栄養を摂ってください」

「おーっと。

 一番モリモリ食ってた誰かさんがエラそうなこと言ってるぞー」

 

 うるさいぞメレオロン。

 

「毎日あんな食べてて、どうして太んないの?」

「修行で消費してるからに決まってるじゃないですか」

「……だって。どう思う、おねーちゃん?」

「1に修行、2におっぱい全振りだと思うわ。

 人体の神秘よね」

 

 ぶっとばすぞメレオロン。

 

 

 

 腹立ちまぎれに色々注文して、遠慮がちな小動物の口にエサ突っ込んだりしつつ食事を終えた私達は、料亭を出てのんびり歩いていた。

 

「っう……ぷ」

「大丈夫ですか?」

 

 ふらふらしてるウラヌスの背を軽くさする。うむ、ヤワいヤワい。手の甲や指に触れる髪も良い感触だ。

 

「食わせまくった張本人が何を今更……」

「なにか言いましたかメレオロン」

「イイエなにも」

 

 まったく。いや、その通りだけど私だけじゃないぞ、餌付けしてたのは。断りきれずに限界まで食べたウラヌスが悪いんだ。

 

「まぁ……もう宿に戻るだけだし大丈夫だょ、っう」

 

 何が大丈夫なのか。料亭でしばらく留まった方がよかったな。ウラヌスが帰りたがったから早々にお店出たけど。

 

「でもあそこ美味しくて、ついつい食べすぎちゃうよね」

「そうよねぇ。何度食べても飽きないわよねぇ」

「ですよね。私もあのお店、すっかり気にいっちゃいましたよ」

「ぅぇっぷー。

 栗ゴハンと筍ゴハンと松茸ゴハンいっぺんに食べるなんて初めてだよ……」

 

 ふふふ。……すいません、食い合わせは考慮してませんでした。

 

 

 

 

 

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