どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百十四章

 

「それじゃおやすみー♪」

「おやすみぃ」

「オマエラ、ホントにちゃんと休めよ? 『練』の修行も今日は無しだからな」

「お休みなさい」

「にゃーん」

 

 宿に戻った後。今日はお風呂も食事も遊びも済んでるので、明日に備えて休もうということになった。そしてシームが、どうしても一緒に寝たいと言って、サクラを連れ去った……

 

「よかったんですか?」

「俺的にはむしろ楽なんだけどね?

 充電させられなくて済むから」

「何を言ってるんだか分かりませんね」

 

 おかげで今日はにゃんこ湯たんぽ、お預けである。あーあ、あの話もしづらいなぁ……

 

「仕方ありません。

 今日はキュマニャンを愛でるだけで我慢しますか……」

「アイシャ?

 俺、どっからツッこめばいい?」

「カベにでも向かって、好きなだけつっこんでください。

 遠慮なくどうぞ」

「それは辛辣じゃないかな……

 本気で困ってるのにさ」

「何言ってるんですか。

 シームにキュマニャンって呼ばれて、まんざらでもないクセに」

「いやいやいや! あれマジで勘弁だから。

 何度も何度も拒否してるのに、定着されそうですっごぃヤなんだけど」

「もう手遅れだと思います。受け入れなさい」

「ぇー……やだぁ」

「せっかくだから、キュマニャンの衣装に着替えてくださいよ。

 なでなでしてあげますから」

「……冗談だよね?」

「冗談ですけど、やっぱりあの衣装は処分してないんですね?」

「ぐはっ!?」

 

 予想通りである。シームの気持ちを考えたら捨てづらいもんな。また着る気があるかは別にしても。

 お互い、自分の寝る布団の上であぐらをかきながら、話を続ける。

 

「あの衣装着た時もそうですし、今日のイナゴもですけど。

 どうしてあなたは、ああいうムチャするんですか。ちょっとはペース配分をですね」

「あーうん。

 それは俺のミスだね……反省してる」

「ミスなんかじゃないでしょ?」

 

 そう指摘すると、ウラヌスは片目をつぶり痛そうな顔をする。

 

「……って言うと?」

「とぼけないでください。

 自分のことをおざなりにしてるから、ああいう結果になるんじゃないですか。

 誰かの為なら暴走してもいいって思ってませんか?」

 

 目に見えてヘコむウラヌス。首を垂れている。

 

「……やっぱりダメ?」

「ダメです。いい加減怒りますよ?

 あの時も言いましたが、無理をする前にあらかじめ相談していたならまだ分かります。

 でも、突発的にやるじゃないですかアナタは。

 ……気持ちは分かりますが、あまり心配させないでください」

「……。ごめん」

 

 ふぅーと息を吐く。この人も分かってはいるはずなんだけどな。でも、こうして何度もクギを刺さないと、繰り返すの目に見えてるしな。

 

「……でもさ。

 それはそれとして、無茶させられるのには俺も文句言いたいんだけど?

 今日みたく3人がかりでメシ無理やり食わせたり、毎晩にゃんこ充電させられたり」

「ソレとコレとは話が別です」

「アイシャ、顔そらさない。

 いや、マジでキツいんだからね?」

「だったら断ればいいんですよ。

 なんでもホイホイ引き受けるのも、あなたの悪いクセです」

「ぐっ……

 じゃあ桜の充電は今後お断りする」

「それはダメです。

 充電器のクセに何言ってるんですか」

「アイシャがひどいぃぃ……」

 

 シクシクするウラヌス。それは私も譲れないな。今だってサクラを愛でられなくて結構ショックなんだぞ。

 

「それはともかく、今日もベルさんやダルツォルネさんに色々してあげたじゃないですか。よかったんですか? あんなに良くして」

「うーん……

 アイツラとは昨日今日の付き合いじゃないしな。

 ……そりゃ、プーハットはちょっとサービスしちゃったかなとは思ってるけど」

「ハメ組と接触して、こちらの情報渡してよかったんですか?」

「……。よくはないかもね」

 

 困ったヒトだ。まぁウラヌスらしいんだけどな。

 

「クリアする気があるなら、もうちょっとシビアにならないとダメですよ」

「うん、そうだね。

 ……手始めに桜の充電をだね」

「だが断る」

「ちょっとぉ。俺しんどいって言ってるじゃん」

「寝言は寝てほざいてください」

「ぅぇー……」

 

 

 

「そういえば、秋の町なのに筍ゴハンなんて珍しいな、と思ったんですけど」

「……ぅぇっぷ。思い出しただけで……

 タケノコの旬は春じゃないの? って話だよね」

「ええ。ですよね?」

「よく出回ってる種類はそうだね。

 でも、秋が旬のタケノコもあるんだよ。アイシャが注文したのって、四方竹膳(し ほうちくぜん)だろ?」

「そんな名前でしたね」

「そのまんま四方竹って、角ばった形状の竹があってね。

 あの店でも、松茸ゴハンや栗ゴハンは単品注文できるけど、筍ゴハンは四方竹膳を注文しないと出してくれない。結構レアなんだよ」

「へぇー」

 

 

 

 

 

 そんな調子で2人が雑談していた頃──

 

 

 

 

 

「にゃあん♪」

「ぷにゅぷにゅうー♪」

「毎日毎日飽きないわねぇ……」

 

 布団の上でシームと桜がジャレあう様子を横目に、寝っ転がって本を読むメレオロンが呆れるように言った。

 

「飽きるわけないもん。可愛いし、ぷにぷにだし、最高じゃん」

「にゃん♪」

「……それ、その子のことだか、ウラヌスのことだか分かんないんだけど。

 いつまでも遊んでないで、そろそろ寝た方がいいわよ」

「おねーちゃんだって、まだ寝てないじゃん」

「……オーラが有り余ってて、目が冴えるのよ。『練』しちゃダメって言われてるし」

「ボクもかなー。

 修行途中で切り上げちゃったから、体力残ってるもん」

「やっぱりそうよね。

 まぁこういうのにも慣れなきゃいけないんでしょうけど」

「……おねーちゃんこそ、早く休んだら?

 今日は大変だったでしょ?」

「まあねー……

 なんかすっごい長く感じる1日だったわねぇ。

 別にアタシだけキツかったわけじゃないし、グチグチ言わないけどさぁ」

「ウラヌスもアイシャも大変だったろうね。

 おねーちゃん、見てて何も思わなかった?」

「ん? なにを?」

「ベルさんと……ネオンさんだっけ?

 アイシャとウラヌスのこと、あーでもないこーでもないって」

「あー。アイアイで話してたわね。

 あの2人お似合いだから、お節介焼こうとしてたやつ」

「2人の好きにさせたらいいのに、何とかくっつけようとしてさ。

 おねーちゃん、どう思った?」

「にゃう?」

「……そりゃね。

 ハタから見てて、気持ちのいいもんじゃなかったわよ」

「でしょ? だったらおねーちゃんも──」

「でも気持ちも分かるのよねー。

 ほら、すっごいジレったいじゃない? あの2人」

「おねーちゃん……」

「にゃんにゃん♪」

 

 

 

 

 

「へー。そんな方法だったんですね。

 ヒントあったんですか?」

「うん、ちゃんとあったよ。

 マサドラで卵を1個でも売ると、店員のメッセージが変わるんだよ。こいつを探してるヤツが居るから助かったって。

 結局のところ、入手の流れはもしもテレビと同じだね。37から45までの卵アイテムを、トレードショップで最低1枚ずつ売る。『複製』で増やしたカードでもいいんだけど」

「ふぅん。

 でもそれなら、強制予約券使った方が全然楽ですよね……」

「俺もそっちをオススメするかな。ついでにテレビの条件も満たせるし。

 いずれにしろ、買う為の300万用意する方が面倒だけど」

「誰もが行くマサドラの指定ポケットカードが、どうして限度枚数一杯じゃないんだろうって不思議に思ってたんですけど、元々取りにくかったんですね」

「確かに。

 まぁランクSだからね。他の指定ポケットカード必須だし。

 300万も金あったら、スペルの方が先に欲しいっていうのも痛いかな。900枚分だしさ」

「ええ、そう──ん?」

 

 部屋の前に気配が来る。戸が横開きし、

 

「やっぱり。まだ起きてたんだ」

「にゃん」

 

 シームと──その頭に乗ってサクラが現れた。

 

「おいおい、お前こそまだ起きてたのか?

 子供は早く寝ろよ」

「あー。ボクだけ子供扱い?」

「……そう言われると、みんな子供みたいなもんだな」

「ふふ、そうですね」

「で、どうしたんだ? 桜まで連れてきて」

「ウラヌス、そのままじっとしててね」

「?」

 

 布団に仰向けで寝転がったまま、ウラヌスが首を傾げる。

 

 ん? シーム、まさか。

 

「お、おい?」

 

 ウラヌスのそばに立ったシームが、おもむろに頭上のサクラを掴む。

 

「ちょっ──」

 

 危険を察して身を捻ろうとしたウラヌスの両腕を、私は咄嗟に押さえた。

 

「わっ、ちょタンマたんまタッ──!!

 ぎゃあああああああっぶぁぁぁぁぁッッ!!」

 

 抵抗むなしく、ウラヌスの顔面にサクラが鎮座した。

 

 乗るところまでは大人しかったが、流石にもがくウラヌスの顔は嫌だったらしく、胸の方へ移動するサクラ。

 

「うっぷへ……

 シィィィィムッッ!! なんでこんなことしたッ!?」

「え。だって面白いと思って」

「そんな理由でムチャすんなぁぁぁぁッッ!!

 アイシャもッ!! なんで俺とり押さえてんのッ!?」

「え? だって面白いと思って……」

「理由おんなじとか何考ぇ、っぷ、ちょ、桜てめぇぇぇッッ!!」

 

 胸に乗っかったサクラが、ウラヌスの顔面をしっぽでペチペチ叩く。

 

「ほら。そろそろオーラ切れそうだし、補充しようかなって」

「なんでそれが顔面に置く理由になるッ!?」

「どこでもいいんでしょ? なら顔でも」

「汚いとか息できないとか色々分かれぇぇぇぇッッ!!

 いい加減アイシャも離してよ!!」

「暴れません?」

「抵抗させてぇぇぇぇッッ!!」

 

 仕方ないなぁ。押さえていた両腕を離す。

 上半身を跳ね起こすウラヌス。飛び退くサクラ。

 

「はぁっ、はぁっ……

 はぁぁぁ……

 もーおぉぉぉぉ! 2人ともムチャしないでよッ!!」

「ごめーん」

「すいません。今のはちょっとひどかったですね」

「にゃんにゃん」

 

 サクラがウラヌスのそばに近寄り、脚の上に飛び乗る。そのまま身を丸くした。

 

「ほら、桜もウラヌスと一緒がいいって」

「……そういう理由じゃない。減ったオーラを補充したいだけだよ、コイツは」

「シーム、なんで連れてきたんです?

 一緒に寝るって言ってたじゃないですか」

「んー。

 目が冴えて、寝れなくってさ。

 今日はあんまり疲れてないし、寝るまで一緒に居られないかなって」

 

 ふむ。シームも限界まで疲労してから、ぐっすり休むスタイルが板についてきたかな。いい傾向だけど、今日みたいに体力を温存したい時には弊害になるか。

 

「確かにサクラと一緒だと、気が高ぶって眠れないかもしれませんね。

 でも、それでサクラを返しに来たまでは分かりますけど、オーラを補充させようとしたのはどうしてですか?」

 

 ウラヌスの頭にサクラを乗せようとするのはいつものことだけど、今日は明確にオーラ補充が目的って言ったしな。シーム自身はサクラを返しに来てるから、理由がないはず。

 

 そう思って尋ねたが、意味深な顔で私を見返してくるシーム。お?

 

「だって、アイシャも桜と遊びたいんでしょ?」

「……えっと」

「桜だって、今日もアイシャと遊びたいよね?」

「にゃうん♪」

 

 ありゃま、バレてたのか……

 

「気づいてたんですか?」

「だからボク、ウラヌスに桜乗せてたんだよ?」

 

 ふむ、言われてみれば結構前からやってたな。とっくに知ってたのか。

 ウラヌスはポリポリと頬をかき、

 

「シーム、桜に聞いてたもんな」

「あ、それウラヌスも知ってるんだ。なんで?」

「……こいつの記憶は、俺も共有してるから。

 もちろんすぐにじゃないけどな。桜が戻ってきた時に、俺が後追いで体験する感じ」

 

 それを聞いたシームが、満面の笑みを浮かべる。身を引くウラヌス。うむ、見事な墓穴。そりゃシームも喜ぶだろうさ。

 

 

 

 シームが退室した後、何とも言えない顔でサクラの背を撫でるウラヌス。

 

「私、もうちょっとシームが怒ると思ってたんですけどね。

 シームが苦労してサクラ呼んでもらってるのに、お(こぼ)れを私が内緒でもらってるの」

「……。

 こいつさ。シームと遊んでる時、まぁ楽しそうではあるんだよ。

 でも、それなりの時間遊んだ後に、何か物足りなそうにするんだよな。オーラが減って元気がなくなってくるのもあるんだけど」

「それが、サクラも私と遊びたがってるってことですか?」

「昨日か一昨日か、直接シームが聞いてたよ。

 桜、アイシャと遊びたいの? って」

「返事は?」

「そりゃ……にゃん、だけど」

「ええー。翻訳してくださいよ」

「何となく分かるでしょ?

 あんまりコイツのこと、甘やかさないでほしいんだけどな。調子に乗るし」

「そんなこと言って。

 その子、あなたそっくりじゃないですか」

「全力で否定する」

 

 サクラのしっぽがゆるんと動き、左右に揺れる。やっぱりそっくりじゃないか。

 

 しかしまぁ。せっかくシームがチャンスを復活させてくれたんだ。この機は逃すまい。

 

「ウラヌス。

 大事なお話があります」

「えっ? なに、また改まって」

 

 距離を置いたままでは押しが弱いと判断し、腰を上げてウラヌスの前に行き、きちんと正座する。丸くなるサクラに手を伸ばし、その背を撫でる。落ち着くなぁ。

 

「ゲームへ入ってきた日の晩にお話ししていた、埋め合わせの件です。

 あなたにやってほしいことが決まりましたので、それをお伝えしたくて」

「あ、うん……

 俺にできることなら、なんでもするけど」

 

 なんでもって言ったね? くくく、その言葉忘れるなよ。

 

 さて。……いざ伝えるとなると緊張するな。しくじるなよ、私。ここが正念場だ。

 

「あの件で何が納得できないか、私なりに考えてみたんですよ」

 

「うん」

 

「あなたが私を……その……

 脱がせた理由は、要は身体の心配をしてくれたからですよね?」

 

「う、うん。

 汗びっしょりだったし、能力の副作用が出てないかとか気になって……」

 

「ええ、それは重々承知してます。

 私はそのことに感謝すらしていますから。

 

 ──でしたら。

 

 同じことをされても、文句はありませんね?」

 

「へ?」

 

 間の抜けた声を出すウラヌス。異変に気づいたサクラが、私とウラヌスを交互に見る。

 

「ここのところ、あなたずいぶん無理をしていますよね?

 あなたの身体が心配なので、『確かめ』させてもらっていいですか?」

 

「え。……その……ぇ?」

 

 見事に混乱している。よし、このまま一気に押し切る!

 

「明日、スノーフレイで温泉に入りますよね?

 いい機会じゃないですか」

 

「ぁ、あ、あいひゃ? なにいっへ……」

 

 呂律(ろ れつ)が回らないほど怯えた哀れな小動物に、私は実に愉快な気分で告げた。

 

 

 

「────明日。『混浴』の温泉に、一緒に入ってください」

 

 

 

 

 

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