どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百十五章

 

 がくぶるしながら目を白黒させるウラヌスに満足しつつ、矢継ぎ早に言葉を放つ。

 

「構いませんよね?

 だってあなた、いくら注意しても自分の身体を(いた)わらないんですから。

 私としては、自分の目できちんと『診断』しないと大丈夫だなんて信じられません」

 

「な、な、なになにいってるの?

 ちょ……ぜんぜんいってるいみ、わかんないよ?」

 

「にゃう?」

 

 顔まっかっかにして、動揺しまくるウラヌス。いやー、初日と違って私へのダメージがないから、遠慮なく責められて気持ちいいなー。

 私の言葉を待つウラヌスを(じ )らすように、彼の膝に乗ったサクラのアゴをくすぐってあげる。

 

「にゃ、にゃふ」

 

「えっと……アイシャ?」

 

「分かりませんか?

 身体に異常がないか、確認させろと言ってるんです」

 

「あ……うんうん。それはわかる。わかるけど……

 イヤイヤイヤ、必要ない必要ない! 俺、ちゃんと自分の『目』で確かめてるから!

 アイシャに診てもらう必要ないって!

 ……俺がアイシャのことを診たのも、この『目』の力があるからだし……」

 

 ちっ、少し冷静になったか。だけどそう返してくるのは想定の範囲だよ。

 

「いいえ。

 おっしゃる通り、あなたの『目』なら正確に健康状態を診断できているかもしれません。

 けれど、あなたの『言葉』を私は信用できません」

 

 引きつるウラヌス。居住まいを正し、私は真剣に尋ねる。

 

「私に全てを伝えていると。あなたは誓えますか?」

 

 ウラヌスは──喉を震わせ、言葉を呑み込んだ。

 

 無論、彼が私に健康状態を全て正直に伝える必要なんてない。基本的には自己管理してほしいし、伝えにくいこと、伝えるべきではないことも中にはあるだろう。

 

 ──だからこそ。信用できないと言われれば、どうしようもないはずだ。だって彼は、既に何度も裏切ってるんだから。突然の不調に陥って。……まぁ自分の体調に見合わない無茶をすることが一番の問題だろうけど。

 

「…………

 ごめん。全てを伝えてはいなかったし、これからもそれは誓えない」

 

 ……。まあ、そうだろうな。

 少し寂しい返事ではあるけど、私もそこまでは強要できない。逆の立場なら、私だってそう応えるだろう。

 彼に厳しい目を向け、それなりに重い声で、

 

「で、あれば。

 私が私なりにあなたを『診断』することに異議はありませんね?」

 

「ちょ、ちょっ。ちょっと待って! 異議アリ、異議アリ!

 そりゃアイシャが『診断』することまでは、俺も拒まないけど……

 それがなんで温泉で混浴しようって話になるわけ? 関係ないじゃん!」

 

 くっ。

 

 ……くっくっく。まさしく思うツボだよ、キミ。そうくることを私が予想しなかったとでも?

 

「では、別の選択肢を出しましょうか?

 

 ──『今』『ここで』。服を脱いでください。『診断』してあげましょう」

 

 ウラヌスが、背筋をピィーン! と伸ばして震え上がった。サクラがぴょんと飛び退く。

 

「イヤイヤイヤイヤイヤッッ!!

 なんでそーなんのッ!? ムチャクチャじゃないかっ!!」

 

「そうですか?

 だって他に肌を見せてもらう方法がないですし。入浴中なら自然ですけど、それはイヤなんですよね? じゃあ仕方ないじゃないですか」

 

「ち、ちが……そうじゃなくて」

 

「何が違うんですか?」

 

「し、『診断』するところまではいいよ。さっきも言ったけど、それは拒まないから。

 でも……ぬ……脱ぐ必要はないかなって」

 

「おやおや、おかしな話ですね。

 誰かさんは勝手に人を脱がせて『診断』したのに、自分の時は必要ないと?」

 

 口をぱくぱくさせるウラヌス。彼にも言いたいことがあるのは分かるけど、それは私も想定済みだ。

 

「もちろん、事情は理解していますよ?

 私の時は汗を拭くついでの上、能力の副作用が見た目に現れてないかの確認でしたから。多少の緊急性もありましたし、あなたが私を脱がせたことは納得しています」

 

「ぅ……うん……」

 

「ただ私が診断するとなると、あなたのような便利な『目』はないですし、ましてや今はオーラの流れすら見えませんからね。

 正直、服を着たままでは正しく『診断』できませんので。

 申し訳ないですが脱いでいただけますか? もし自分で脱げないと言うなら、脱がせてあげますが」

 

 私が『はよ脱げ』と言わんばかりに衣服を脱がせるジェスチャーをすると、ウラヌスはイヤイヤと首を振り、

 

「あ、ぅ……その……

 ほ、ほら。なんていうかさ。

 さっきから騒いでるし、ひょっとしたらシームとかメレオロンが心配して見に来るかもしれないじゃん? そうなったら、うん、アイシャもイヤでしょ?」

 

 うむ、その可能性はゼロじゃないな。『今』という選択をしないことは私も分かってる。

 

「そうですね。

 あらぬ誤解を受けてもいけませんし、やめておきましょう。

 では、今からこの宿のお風呂へ一緒に入りましょうか? そこで『診断』しましょう」

 

「えぇぇーっ!?

 ……あ、いや、それは、ちょっ──」

 

「た・だ・し。

 

 『女湯』に入っていただきますが。構いませんね?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」

 

「はぁぁぁ、じゃないですよ。当たり前じゃないですか。

 それとも私に『男湯』へ入れとでも言うんですか」

 

「いぃぃぃっ!? いやいやいや、そんなこと言わないけど!

 で、でも、無茶苦茶なのは同じだよ……やめようよ、そんなこと」

 

 私はニッコリと笑い、

 

「ですよね。これで分かりましたか?

 明日、『混浴』の温泉へ一緒に入るのが、一番マシな選択肢なんですよ?

 それが嫌なら。

 今ココで脱ぐか。『女湯』へ入るか。

 選んでいただきましょうか?」

 

 すっかり血の気が引いた様子のウラヌス。サクラですら、不安げにその顔を見上げてる。

 私はサクラの白い身体を捕まえ、胸元に抱き寄せる。

 

「にゃあん……」

「ふふ、この子は素直でいいですね。

 サクラも明日、一緒に温泉入りますか?」

「にゃん!」

 

 元気のいい返事だ。これくらい景気よく、目の前の顔面蒼白にゃんこも返事してほしいんだけどな。

 

「……。

 アイシャ……

 その……えっと…………」

 

「なんです? 聞きたいことがあるなら、どうぞ」

 

「それ……しないと……絶対に、ダメ?

 えっと……

 できれば他のことで……」

 

「ダメですね。他のことじゃ償いになりません。

 さっき自分で言ったじゃないですか。できることなら、なんでもするって。

 できないことなんて要求してませんよね? なんでもするって言ったじゃないですか。

 それとも私の聞き間違いでしたか?」

 

「……ううん、そう言ったよ。確かに言ったけどさぁ。こんなのって……」

 

「というかですね。

 他のことでなんて、フェアじゃありませんから」

 

「……フェアじゃない? 不公平ってこと?」

 

「ええ。

 ウラヌスは、なぜ私が怒っているか分かりますか?」

 

「それは……

 さっきも言ったけど、キミの承諾もなく、汗拭きとかの為に脱がせたから……」

 

「……そうですね。

 私の意識がない時に、無断でそういうことをしたからです」

 

「はい……

 反省してます……」

 

「……。

 そういう意味で、私が埋め合わせとして要求したことは、完全に同じとは言えません。

 あなたの嫌がることを無理やりしようとしている、という点で帳尻を取ってます」

 

「……」

 

「言っておきますが、単なる意趣返しでこんなことを要求してるわけではありませんよ?

 私があなたを『診断』したいのは本心です。実際にあなたを『診断』した後、私なりの見解を偽りなくお伝えします」

 

「はぃ……」

 

「あなたが大丈夫だと言っているのを信用する為にも、必要な措置です。

 そうそう、1つ確認ですが。

 スノーフレイに『混浴』できる温泉って、ありますかね?」

 

「……」

 

「ご存知ないですか?

 私はほぼ間違いなくあるだろうと確信してるんですが」

 

 予めそういう情報があったわけではない。現実に照らし合わせた場合、混浴可の温泉はさほど多くないことは承知している。

 

 が。ここはゲームの中だ。そういうベタなのを用意してないとは思えないんだよなぁ。記憶は曖昧だけど、誰かがそういうところもあるってコソコソ話してた気がするし。

 

 ウラヌスは視線を逸らして、頭をカリカリ掻き、

 

「……あるよ。いくつかね。

 そもそも指定ポケットカードのイベント開始条件に、混浴の温泉に入るってそのまんまのがあるから……」

 

 やっぱりね。イベントもついでにこなせるなら、私としても好都合だよ。でも……

 

「そのイベントが『診断』の妨げになる可能性はありますかね?」

 

「うぅん……

 1人で入浴しても発生するイベントなんだけど、発生する場所は毎回ランダムなんだ。

 だから、NPCが入ってきたらそっち優先した方がいいかな」

 

 ふむ。まぁそれは仕方ないな。もし初っ端で発生したら、仕切り直すだけだ。

 

「それは承知しました。

 で、まだお答えをいただいてませんが? どうします?」

 

「……それさ。

 俺の言質とってるだけで、選択の余地ないよね?」

 

 私はフフーンと笑うだけで、言葉を返さない。今このやりとりも含めてのお返しである。助け舟なんて出しませんよっと。

 

「……。まさか、こんなこと言い出すなんて思わなかったよ……

 どうやって、こんなの思いついたの?」

 

「ああ、きっかけはメレオロンに聞いた話ですね。

 ゲームへ入る前、3人でお風呂に入ってましたよね? アレ、すっごく楽しかったって。

 私も入ろうか迷ったんですよね。面白そうだったんで」

 

「…………

 それ、楽しかったの、メレオロンとシームだけ。

 俺、あれ……」

 

 ウラヌスから目の光が消える。あー……かんぺきトラウマになってるな。

 

「……あのさ、アイシャ。

 仕返しに俺の裸見たいのは、まぁ分からなくもないけど。

 でも一緒に入るってことはさ……」

 

 ああ、それも気にしてるか。そうだな、私だって改めて見られるつもりはない。

 

「勘違いしないでください。2つ誤解してますよ。

 あなたやメレオロンじゃないんですから、別にハダカを見たいだなんて思ってません。

 私は、変態じゃありませんから、ね」

 

「ぅぅ……」

 

「それに、私はちゃんとタオルを巻いて隠しますよ。当然ですが。

 ……あなたも別に、隠すなとまでは言いません。

 ただし。私が『診断』する時に隠そうとして邪魔するのは、ダメです」

 

 水着の時と同じミスを繰り返すつもりはない。1人負けだったからな、あの時は……

 

「……アイシャ、それでも結構恥ずかしいと思うよ?

 せめてタオル巻くとかじゃなく、水着着用で──」

 

「ふざけないでくださいッ!!

 私にまたアレを着ろって言うんですかッ!?」

 

「わぁっ!?

 いやいや、ううん、言わないゴメン!」

 

 くっ、あんな水着で温泉混浴とかバカ丸出しじゃないか。なんてこと言いやがる。まだハダカの方がマシってぐらい恥ずかしいんだぞ、あれ……

 

「まったく……

 ああ、あと1つ。別にあなたと私だけで、じゃないですよ。

 シームとメレオロンも一緒にです」

 

「ぅ……

 なんで?」

 

「なんでって。

 ……2人きりとかイヤですし。

 私も一緒に入りたかったって言ったじゃないですか。仲間外れにされたみたいで面白くなかったです。

 だから私は、みんなでワイワイ温泉を楽しみたいんですよ。

 それって、そんなにおかしなことですか?」

 

「……

 …………わかったよ。

 4人で、一緒に、混浴の温泉に入る。……それで、アイシャの『診断』を受ける。

 それでいい?」

 

 ────っしゃあああああああッ!!

 

 言ったな、聞いたぞ、覚えたぞ! くくく……という心中は巧妙に隠し、

 

「ええ、問題ありません。

 あ。後、サクラもお願いしますね?」

 

「にゃん!」

 

「……おっけー。

 わかったけど、桜にあんまムチャしないでね?

 その……」

 

 ああ、そだね。サクラの記憶が最終的にウラヌスへ行っちゃうなら、あんまり変なこと出来ないな。

 

「覚えておきましょう。

 今の約束を果たしてくれたなら、ゲーム初日にされたことは水に流します」

 

「うん……」

 

 そう返した後、くたーとウラヌスは布団の上につぶれた。到るところ、まっかっかだな。ぴくぴく痙攣すらしてる。

 

「ぅぁー。

 すんごぃ、つかれた……

 おれ、もうあしたおきたくなぃ……」

 

「アハハハ。

 そんなこと言っても、明日の朝は数時間後に訪れますよ?

 ……それにですね。

 あなたにとっても、悪くはない話のはずです」

 

 横たわるウラヌスが、こちらに目をやる気配。

 

「多分これぐらいしないと、あなたは自分を許せなかったんじゃないですか?

 私が言葉で許しても、軽い罰で許しても、あなたは勝手に自分を責めたでしょうに」

 

 だからこそ私は、できるだけ公平な罰を考えたのだ。……無駄に自分を追い込むからな、この人。わざわざ免罪符を引っぺがすようなおバカさんだ。そんな気は起こさせたくない。

 

「…………

 ……まいった……俺の完敗だわ……」

 

 絞り出すようにつぶやかれた敗北宣言に、私は心地よく身震いしてサクラを抱き締めた。

 

「にゃーん♥」

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
・2000年9月21日終了時点で4人が所有するカード

 『1003:防壁/ディフェンシブウォール』4枚
 『1005:磁力/マグネティックフォース』1枚
 『1007:窃盗/シーフ』        1枚
 『1009:再来/リターン』       6枚
 『1010:擬態/トランスフォーム』   4枚
 『1011:複製/クローン』       2枚
 『1014:離脱/リーブ』        3枚
 『1018:徴収/レヴィ』        2枚
 『1019:城門/キャッスルゲート』   20枚
 『1020:贋作/フェイク』       1枚
 『1021:強奪/ロブ』         1枚
 『1022:堕落/コラプション』     5枚
 『1023:妥協/コンプロマイズ』    2枚
 『1026:聖水/ホーリーウォーター』  3枚
 『1029:凶弾/ショット』       3枚
 『1030:道標/ガイドポスト』     2枚
 『1031:解析/アナリシス』      3枚
 『1033:密着/アドヒージョン』    1枚
 『1036:神眼/ゴッドアイ』      1枚
 『1038:名簿/リスト』        8枚
 『1039:同行/アカンパニー』     16枚
 『1040:交信/コンタクト』      12枚

 『176:狂気のガーネット』1枚
 『179:神樹コハク』   1枚
 『604:1000J』     1枚
 『605:2000J』     1枚
 『606:5000J』     1枚
 『607:10000J』     21枚

 『1:一坪の密林』         1枚 ※複製贋作
 『2:一坪の海岸線』        1枚 ※複製贋作
 『3:湧き水の壺』         1枚 ※複製贋作
 『4:美肌温泉』          1枚 ※複製贋作
 『5:神隠しの洞』         1枚 ※複製贋作
 『6:酒生みの泉』         1枚 ※複製贋作
 『7:身重の石』          1枚 ※複製贋作
 『8:不思議ヶ池』         1枚 ※複製贋作
 『9:豊作の樹』          1枚 ※複製贋作
 『10:黄金るるぶ』       1枚 ※複製贋作
 『11:黄金天秤』        1枚 ※複製贋作
 『12:黄金辞典』        1枚 ※複製贋作
 『13:幸福通帳』        1枚 ※複製贋作
 『14:縁切り鋏』        1枚 ※複製贋作
 『15:きまぐれ魔人』      1枚 ※複製贋作
 『16:妖精王の忠告』      1枚 ※贋作
 『17:大天使の息吹』      1枚 ※贋作
 『18:小悪魔のウインク』    1枚 ※贋作
 『19:遊魂枕』         1枚 ※贋作
 『20:心度計』         1枚 ※贋作
 『21:スケルトンメガネ』    1枚 ※贋作
 『22:トラエモン』       1枚 ※贋作
 『23:アドリブブック』     1枚 ※贋作
 『24:もしもテレビ』      1枚 ※贋作
 『25:リスキーダイス』     1枚 ※贋作
 『26:7人の働く小人』     1枚 ※贋作
 『27:顔パス回数券』      1枚 ※贋作
 『28:移り気リモコン』     1枚 ※贋作
 『29:強制予約券』       1枚 ※贋作
 『30:コネクッション』     1枚 ※贋作
 『31:死者への往復葉書』    1枚 ※贋作
 『32:ウグイスキャンディー』  1枚 ※宝籤贋作
 『33:ホルモンクッキー』    1枚 ※贋作
 『34:なんでもアンケート』   1枚 ※贋作
 『35:カメレオンキャット』   1枚 ※贋作
 『37:超一流スポーツ選手の卵』 1枚 ※複製
 『40:超一流ミュージシャンの卵』1枚
 『45:大社長の卵』       1枚
 『52:真珠蝗』         4枚
 『54:千年アゲハ』       1枚
 『78:孤独なサファイヤ』    1枚 ※宝籤
 『80:浮遊石』         7枚 ※うち複製6枚
 『97:3Dカメラ』       1枚 ※複製

 所有する有効指定ポケットカード種類数:8種



・ゲイン待ちアイテム

 『80:浮遊石』1つ



・所有するカード化解除アイテム

 『84:聖騎士の首飾り』4つ
 『100:島の地図』   2つ
 『261:魔女の風邪薬』 1つ
 ※雑貨品は割愛



・店舗貯金額

 アントキバ飲食店 :1890J
 アントキバ交換店 :767万8500J
 マサドラ交換店  :571万2910J
 エリル桜茶屋   :600J
 オータニア定食屋 :1700J
 オータニアSS  :1000J
 オータニア秋の空 :1万0700J
 オータニア時雨紅葉:1万2000J
 オータニア交換店 :49万7960J
 トラリア交換店  :4800J
 トラリアデパート :600J

 所持金と貯金合計額:1414万0660J




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