どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百二十章

 

「まずは、どこにあるか見当をつけないことには探しようがないからな。

 だから今までのは、現実にあるだろう、あるならこの辺だろうって前提の話。

 俺はゲームから出た後、飛行船でこの島があると予測した地点を調べに行った」

 

 おぉー、そうか。確かにそれが一番見つかりそうだな。

 

 ……いや? でも本当にそんなことで見つけられるのか? 当然この島は現実社会から秘匿されてるだろうし、実際飛行船がこの島上空を通りかかるのなんて見たことないしな。

 

 ワクワク顔の姉弟に対し、ウラヌスは肩をすくめ、

 

「結果から言うと、空からこの島は見えなかった。

 遠くからだと海域全体に真っ白な(もや)がかかってる感じで、影も形もなかったよ。

 念能力で隠してたんだろうな。当たり前だけど」

 

 がくっと肩をコケさせる姉弟。忙しいな。

 

「でも俺の『目』は、この島があるであろう位置に強い気配を感じとった。

 だから、傍目にはボヤけた海にしか見えない場所へ、飛行船を近づけたんだけど……

 途端に異常な強風に煽られて、接近できなかったんだ。

 無理して飛行船を撃墜されちゃたまらないし、逆にそれで確証を得て引き返したんだ」

 

 なるほどね……ちゃんと外部からの侵入に対策してあるわけか。それも自然現象に見せかけて。まぁ偶然通りかかる可能性もある飛行船への対策をしないわけないもんな。

 

「なぁんだ。じゃあ外から入れたわけじゃないんだね」

 

 そう言って、つまんなさそうな顔をするシーム。

 

「アンタもムチャ言うんじゃないわよ。

 そんなことして飛行船落とされたら、シャレにならないじゃない」

「だってさぁ……」

「シーム、がっかりするのはまだ早いよ」

 

 ウラヌスの言葉に、きょとんとする姉弟。おお? まだ続きあるのか。

 

「空がダメなら、海から試すに決まってるだろ?

 なんせ空と違って、海は海水が邪魔して完全に内外の出入りを防げないはずだからな。

 だから小型高速船を用意して、俺はこの島があるだろう位置へと再度向かった」

 

 そこまで話すと、いったん言葉を切るウラヌス。シームは前のめりになり、

 

「え? え?

 どうなったの? 早く続き話してよ」

 

 急かしてくる声に、ウラヌスは楽しげに笑いながらコタツから出て、立ち上がる。

 

「それからのことは、もう少し詳しく話すよ。

 軽く飲み物とオヤツ買ってくる。希望ある?」

 

 やけに焦らすな。まぁ飲み食いちょっとしたかったし、それは歓迎だけど。

 

「みかんってありますかね? あと暖かいお茶を」

「あー。みかんはあるよ。

 おコタと言えば、やっぱみかんだよね。みんなのぶん買ってこようか。

 アイシャはお茶だね」

「アタシもお茶もらおうかしら」

「シームは?」

「そんなのいいから早く続きー」

「じゃあアンタ、自分で買ってきなさいよ」

「やだ寒い! ぼくもお茶!」

「はいはい、さっさと買ってくるよ」

 

 部屋を出て行くウラヌス。廊下の向こうへ足音が遠ざかった後、

 

「早く続き聞きたいぃー」

 

 見終わったアニメの続きを見たがる子供そのままに、うずうずとゴネるシーム。

 

「まったくアンタは……」

「気持ちは分かりますけどね。

 ただウラヌスも、そんな簡単には説明しづらいんでしょう」

「え? なんで?」

 

 きょとんとするシームに、私は苦笑を返す。

 

「ここが現実なのか、ゲームの世界なのか。

 長期間ゲーム内に留まって攻略を進める上で、とても重要なことです。

 今まで見てきた通り、現実だと有り得ないことがここではたくさんありましたよね?

 その反面、現実としか思えないようなこともたくさんあります。

 念能力で説明がつく、と言うのは簡単ですが……

 もともと念能力は、実現に多くの制約が付きまとうモノで、そこまで融通の利く力ではありません。

 にも関わらず、この世界には指定ポケットカードに多くの不思議なアイテムがあります。

 念能力者やプロハンターであっても、この世界が現実だと証明してみせるのは難しいでしょう」

 

 長々と説明する私に、シームは納得していない顔を見せ、

 

「……でもウラヌスは色々できるし」

「そうですね……

 彼は念能力を補助する『神字』に精通しているからか、おそらくこのゲームの製作者に匹敵する技術と知識を有しています。

 ウラヌスは天才ですよ。掛け値なしの。

 だからこそ、この島が現実に存在するのかどうか調べ上げられたんだと思います」

 

 なんせ今ですら相当に弱体化していてアレだからな。以前はどれほどの使い手だったか……

 

 そういえば彼はいつからこのゲームを始めたんだろう。そこまで長期間プレイしていたわけでもなさそうだけど。

 

「アタシ達って本当に幸運ね。

 そんな天才と、初めてゲームクリアしたアンタと一緒させてもらえてるんだし」

「私なんて大したことはできませんよ。

 このゲームに関して言えば、はっきり足手まといだと思ってますから」

「アイシャで足手まといなら、ボクはなんなのさ……」

 

 役に立ってないと思い込んでるシームが、コタツにアゴを乗せてぶすっとしてる。

 

「シーム。あなたは私と違ってスペルで自由に移動ができますし、念も使えるんですから、ちゃんとウラヌスの力になってますよ。

 それに信頼できる仲間が多いことは、このゲームでは重要です。騙し騙されが当たり前、信頼関係を容易に築けないこのゲームをたった1人でプレイしてきたウラヌスにとって、私達がどれだけ助けになっているか」

 

 これは私の希望的観測も含んでいる。……そうであってほしい。

 

「そうねぇ。バインダーで持ち運べるカードが多いだけでも、全然違うものね。

 アイツが1人でプレイできてたなんて信じられないわ」

「ええ……私には真似できないです。

 だから、今でも充分に力にはなれていますよ」

「そうかな……」

「ふふ、そうですよ。

 どうしても力不足だと感じるなら、今まで以上に修行をがんばってくださいね」

「結局アンタはそれねぇ。はぁぁー」

 

 うんざりそうに姉弟。なんだなんだ、いい感じに締めたつもりだったのに。

 

 そんな空気の中、ウラヌスが戻ってきた。網袋に入ったみかんとヤカンを持って。

 

「お待たせ。お茶(い )れるからちょっと待ってて」

 

 お、やけに本格的だな。そこまでして焦らすか?

 

「ウラヌス、早く続きー」

「んな、せっつかなくても話すよ。

 すぐお茶煎れ終わるから、みかんでも食ってな」

 

 みかんの詰まった網袋をこたつ中央に据えるウラヌス。すぐ手を伸ばし、中のみかんを全部出してから、1つ貰う。

 メレオロンも手に取り、シームもしぶしぶみかんを手にする。

 

 皮を剥いて、一口。ふむ……甘いな。薫りも良い。これはなかなかの高級みかんだ。

 

 買ったのか借りてきたのか、湯気の立つ茶をこぽこぽ手際よく煎れているウラヌスが、その手を休めることなく話を再開した。

 

 

 

 

 

 ────1998年8月30日。

 

 

 

 その2週間前、俺はグリードアイランドへ初めて入った。

 

 必要なモノを現実に持ち帰るにはゲームクリアしなければならず、そのゲームクリアが相当に困難であると認識した俺は、別のアプローチを考えていた。

 

 すなわち──このゲームの中で研究できないか。

 

 俺の最大目標は、ゲーム内のアイテムを使って除念することだ。直接除念できなくても、力を取り戻せればいい。最終的に、除念へと持っていければ。

 

 まだどんなアイテムがあるか調べきれてはいないが、ある程度の調査は進められた。

 

 除念に繋げられる可能性のあるアイテムは2つ。

 

 『大天使の息吹』。そして『魔女の若返り薬』だ。

 

 これらはバッテラが求めているのではと噂されるアイテムで、入手難度も高いようだ。

 

 個人的に『大天使の息吹』で除念できるかは、かなり疑わしいと思っている。実際調査しないと断言できないが、除念の効果があるかどうか、あったとしても俺の念を外せるかどうか。アテにするにはあまりに不確実だ。

 

 むしろ、『魔女の若返り薬』で若返り、念の条件から外れた方が確実だろう。こちらも不確実な要素があることは否めないが、若返ることで本来の潜在オーラ量を取り戻せれば自力での除念が可能になる。

 

 ただし。安易に服用するのはあまりにも危険だ。

 

 第一、若返りの効能とやらが疑わしいし、俺の念にどう干渉するか未知数な部分もある。使うにしても、安全性もしくは危険性を確認できてからが望ましい。

 

 なので、持ち帰って研究したかったんだが……

 

 ゲームクリアに時間がかかるってのがマズい。ただでさえ著しい潜在オーラ量の減少に焦ってこのゲームへ入ってきたところなのに、更に何年もかけるわけにはいかない。

 

 であれば、現実的なのはゲームの中で研究してしまうことだ。

 

 だがその前に、1つ確かめたいことがある。

 

 この世界が、ゲーム世界なのか現実世界なのか、だ。

 

 もしこの世界がゲーム世界なら、研究は全くの徒労になる可能性もある。現実とは別の法則で成立している、特殊な念空間である可能性だ。だとしたら、やること(な )すこと全て夢の如く無かったことにされかねない。幻覚を見せられただけ、という可能性すらある。

 

 ここが、まんま現実世界なら。そんな不安は杞憂になる。

 

 なにより島の出入りが自在になれば、クリアせずともアイテムの持ち帰りが可能になる。指定3種と言わず、自由にいくらでもだ。これに勝るメリットはない。

 

 で、現実かどうか確かめる方法なんだが。一番確実なのは現実からこの島へ直接訪れることだろう。ゲーム機を介さずに。これほど分かりやすい確認方法も無い。

 

 この島から直接脱出ってのもアリかもしれないが、それは別の不安がある。ゲーム機を介して入島すると、必ず指輪を着けることになる。これが制約になって妨害してくるかもしれない。たとえば島からある程度離れた時点で、強制的に島の中へ戻されるとかな。

 

 現実か否か。確認方法として着眼したのは──フリーポケットカードのアイテム。

 

 それも極めて入手しやすい『お金』カードだ。

 

 グリードアイランドで流通している通貨はジェニー。国際通貨と同じものが採用されている。

 

 国際通貨紙幣には、偽造を含む諸々の犯罪対策として全ての紙幣にシリアルナンバーが振られている。原則的に同じ番号で同一デザインの紙幣は無い(シリアルナンバーが一巡したらインクの色を変えるらしいが)。

 

 お金はカード状態でなければ無価値と断じているグリードアイランドだが、カード化を解除した紙幣にも使い道はある。

 

 1つは、スペルカード『再生』による再カード化。紙幣の持ち運びやすさを考えれば、いちおう覚えておいて損はないだろう。

 

 もう1つは──現実に持ち帰る、だ。

 

 これは単純に、カード化を解除した金を荷物に紛れさせて島を脱出すればいい。荷物は現実から持ってこれたし、おそらく特殊なアイテムでもなければ持ち出せるのではないか。そう予想し。

 

 他にも服を小さく破いて、現実へ戻った時に同じ箇所が破けているかとか、色々細工を施してから一度島を出た。

 

 結果は全て『グリードアイランドは現実の島である』と示すものばかりだった。紙幣はシリアルを含む諸々の要因から、現実に流通してるものを使っているだけと結論が出た。これにより他の事実にも気づかされたが、今はいったん置いておく。

 

 現実に戻り。数日前、飛行船に乗ってグリードアイランドがある位置へと向かったが、これは空振りに終わった。島は目視できず、島があるはずの位置に近づくこともできない。

 無理をして迎撃されたらひとたまりもないので、飛行船での接近は諦めた。であれば、空がダメなら海からだ。

 

 モーターを積んだ小型高速船を用意し、再びヨルビアン大陸から島へと一直線に向かう。

 

 

 

 船がある程度の距離に近づいた途端、海上を漂う靄が晴れ、巨大な島影が見えた。

 

 潜入を意識した時間帯──夜間で見えづらいってのもあるが、『凝』でギリギリ見える距離だ。ようやくここまで辿り着いた。船の進行に対する妨害もない──潮流が邪魔してくるくらいで。

 

「……」

 

 さて。勢い任せでここまで漕ぎ着けたはいいが、実際島へ潜入すべきかどうか。

 

 正直言って、これで充分である。あれがグリードアイランドであることは間違いない。全ての条件がそうだと示している。

 だが、入島せずに引き返して、俺はグリードアイランドが現実に存在すると確信できるだろうか?

 

 答えは否だ。単に似たような島が現実にあるだけかもしれない。この島をモチーフに、グリードアイランドを別空間に用意した、という可能性も否定できない。それも有り得るのが念能力の怖いところだ。

 

 つまり、何らかの歓迎を受けてでも島に乗り込むしかないということだ。まさに、鬼が出るか蛇が出るか。もし何もなければ……ありがたくアイテムを頂戴して回ろう。

 

 船を海岸近くまで寄せ、ひとっ飛びで砂浜に着地する。あー、正確な現在位置が分かんねぇな。地図もないし。船にある海図は大雑把だから役に立たないしな……

 

 いちおう持ってきた指輪をはめて、「ブック」を唱えた。

 

 ……反応なし。ここがグリードアイランドだという確認には至らない。

 

 が、もしグリードアイランド内であれば、異常な状態であることは確認できた。指輪が機能しないことが、現実から潜入出来ている何よりの証明になる。

 

 しかし、バインダーが出せないのはかなり不便だな。1分で発生するカード化の解除を防ぐ手がない。アイテム状態で持ち運ぶしかないとなると……1人じゃキツそうだ。もしアイテムを色々持ち出したいなら協力者が必要かもな。……まぁンな悪巧みは後にしよ。

 

 砂浜から草原へ移り、林の方へと歩いていく──途中で、歩みを止めた。

 

 突然、進行方向の先に強い気配が出現した。隠すつもりもないらしく、こちらに歩いてくる人影。間違いなく念能力者だ。このタイミング、この気配でプレイヤーやNPCでは有り得ないだろう。

 

 ────うわっ!? やっべ、尋常じゃなく強いぞ!

 

 潜在オーラ量が14万もありやがる……一流の念能力者に倍するほどだ。

 くそ……1ヵ月前なら俺も15万あったんだが、今12万5千だからな。持久戦になったら押し切られる。やっぱ、そんな甘い話あるわけないよな……マジでやべー。

 

 俺が立ち止まって待っていると、ある程度の距離まで近づいたところで、向かってきた男も足を止めた。

 

「招かざる客は何年ぶりだろうな……」

 

 細い眼で、薄い笑みを浮かべて語りかけてくる。肉体も相当鍛えこんでるな。やりたくねー。勘弁して。もう帰る。

 

「念のため聞くが、漂流者じゃあないだろ?

 潮流の関係で、波にまかせてるだけじゃ絶対に着かない島だしな」

 

 ふー、と息を吐く。いちおう話す余地はあるみたいだな。ここは向こうのテリトリーだ。無理はすまい。

 

「正直に言うよ。

 グリードアイランドが現実に存在する島か、確かめたかったんだ。

 それでここまで来た」

「ほう?

 少し前に飛行船がニアミスしてきたが、あれもオマエか?」

「……そうだよ」

 

 つぅかコイツ、あっさり嘘吐いてやがったな。飛行船がニアミスしてきた時点で、俺がいま来てるのに対して『招かざる客は何年ぶり』ってまるっきり嘘じゃねぇか。どうでもいいけど。

 

「わざわざご足労だな。

 薄々気づく連中もいるようだが、現実かどうか確かめる為だけに来たのか?」

「えっと……

 話してもいいけど、そもそもアンタ誰なんだよ?

 さっきから質問には答えてるんだから、それぐらい教えてくれ」

「フ……それもそうか。

 オレはこのゲームの製作者の1人だ。レイザーと言う」

 

 げぇッ!? マジか!

 いや、これだけの実力者だ。考えてみりゃ当然だな……

 

「あーうん……これは失礼しました。

 バレてるんだとは思うけど、ここが現実なら色々とアイテム持ち出しできるんじゃないかって、ちょっと確かめたくて。どうしても欲しい物があって」

「ふふふ……正直すぎやしないか?

 不正をする気だったと白状するとはな。排除してくれと言ってるようなものだぞ?」

 

 まぁなー。どうせバレてるからいいよ。俺は諸手を上げて降参を示す。

 

「グリードアイランドが現実だって確かめられた時点で満足だよ。アイテム持ち出しは、あわよくばだったし。俺をどうする気だ?」

 

 単なる漂流者か、悪意ある侵入者かで待遇が変わる可能性があるからな。無抵抗の意を示しておく。ヘタに不興を買って戦いになれば、1対1でもやばいしな。

 

「不正を働こうとする者への対処は決まっていてな。

 オレは主に放出系のシステムを担当している。

 スペルでの、移動とか外敵対策」

 

 言ってレイザーは、ゴソッと短パンのポケットから無造作に何かを取り出す。

 1枚のカード。その表側を俺に示した。

 

 

 

『-003:排除/エリミネイト』

 ゲームマスター専用

 遠距離特殊呪文 ランクなし カード化限度枚数なし

 G・Iに不当な方法で 侵入した者すべてを

 アイジエン大陸のどこかへ 飛ばす

 

 

 

「ゲームマスターだけが使える特別スペルだ。

 外法には外法……大人しく出ていってもらおう」

 

 はっはーん、完全対策済みー。こりゃ無理っすわ。つかアイジエンかよ、遠! しかもどこかって範囲アバウトすぎだろ。変な奥地に飛ばされたら笑えんぞ。

 

「その、アイジエンってキツくね? せめてヨルビアンとか、もうちょっと近くに……」

「ダメだ」

 

 断られた。いや、うん。言ってみただけだよ。

 しかし移動系は圧倒的に強いな、グリードアイランド。どんだけ凄腕なんだコイツラ。

 

「正しく入島すれば歓迎してやるさ。

 ちなみにオレを負かせば手に入るアイテムもあるからな。

 プレイするなら、そのうち戦うこともあるだろう」

 

 やだなー……勝てる気しないんですけど?

 

「えっと、ちなみに船は?」

「こちらで処分しておく」

 

 さいですか。無慈悲ぷげら。

 

「ま、分かったよ。次からはゲーム機経由でちゃんと入る。

 アンタとはやりたくないけどな」

「くく……本当に正直だな。

 オレはお前が来るのを楽しみにしておこう。

 ──『排除/エリミネイト』オンッ!!」

 

 その言葉を聞いた直後、俺の視界は暗転した。浮遊感────

 

 

 

 ほんの少しして、足元に大地の感触が甦る。同時に視界も。

 

 どこかから水のせせらぎ。風が吹いているのか葉擦れの音もする。遠くから獣の遠吠え。あとはよく分からない虫の音がやかましい。

 

 ……ふっふーん。ここどこ? 森? 山? めっちゃ険しくて暗いんだけどなぁ。上も下も周りも、人工物なんてカケラもない。これ、自然の真っ只中じゃね?

 

 少なくともグリードアイランドじゃねーな。密林都市でもここまで鬱蒼としてないぞ。アイジエン大陸のどこだよ、ここ。カキンの奥地とかだったらマジで泣く。

 

 土と緑のむせ返るような臭気に心の底からうんざりしつつ、まずは現在地を探り始めた。えっと、とりあえず星がよく見える場所まで──

 

 

 

 

 

 話し終えたウラヌスが、湯呑みに入ったお茶を口にする。

 なんだか疲れた顔で一息吐き、こたつの上のみかんに手を伸ばし、皮を剥き始める。

 

 メレオロンとシームは、面白いぐらい『ぽかーん』と口を開けていた。

 

 ……まぁ、なんだな。度肝を抜く話だったよ。私は別の意味でドキドキしたけど。

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
 いい機会なので、指輪とゲームソフトとセーブデータについて解説を。



 Q.
 ゲーム内で指輪をなくしたり、奪われたらどうなる?

 A.
 指輪を填めていないと、そのプレイヤーはブックとゲインが使えません。また、指輪を填めていない状態ではスペルも使用できず、ゲーム的なアクションも一切行えません。
 指輪を填めていることが、正しくプレイヤーとして認識される条件となります。
 厳密には『指輪を填めていないプレイヤー』として認識された状態になります。なので、指輪を外して他のプレイヤーの攻撃スペルから逃れるといったことはできません。
 ゲーム内で指輪を外すなどしても、その指輪の持ち主自体は書き換わりません。あくまでもその指輪の持ち主は、元のプレイヤーとなります。
 その為、ゲーム内で指輪を奪ってそのプレイヤーのバインダーを出そうとしても、出現することはありません。そして指輪を奪われたプレイヤーが死んだ場合、自動的に指輪も破壊されます。
 仮に指輪を外したプレイヤーが何らかの方法でゲーム外へ出た場合も、その指輪は破壊されます。



 Q.
 プレイヤーの死亡以外で、指輪が壊れたらどうなる?

 A.
 ゲーム内とゲーム外で処理が変わります。
 ゲーム内で壊れた場合は、即座に修復されます。指輪は念で具現化されたものであり、島内では即座にオーラが供給されて復元します。実質、破壊は不可能です。
 ゲーム外で壊れた場合は復活しません。島外ではオーラの供給源がなく、G・Iを起動したゲーム機のような状態にはなりません。そもそもG・Iのゲームソフト自体、攻撃し続ければいずれ神字に籠められたオーラが消えて、ゲーム機もろとも破壊されるでしょう。
 但し、指輪自体は相当に頑強な造りで、並みの攻撃力では破壊できません。それに多少壊れたところで、ゲーム内ではすぐ修復してしまいます。
 仮にゲーム外で指輪が破壊された場合、以前のセーブデータからゲームを再開できなくなります。



 Q.
 ゲーム外で、セーブデータの入ったメモリーカードが壊れたらどうなる?

 A.
 指輪とメモリーカードは一対の関係で、そのどちらかを欠いた状態でゲームを再開することはできません。つまり、二度と同じセーブデータでログインできなくなります。



 Q.
 指輪を填めて、その指輪と対ではないセーブデータの入ったメモリーカードでログインしたらどうなる?

 A.
 指輪とメモリーカードは一対の関係で、そのどちらかを欠いた状態でゲームを再開することはできません。
 このケースでは前のセーブデータが認証されず、新規のセーブデータに上書きされます。



 Q.
 プレイヤーが入ってるゲーム機が壊れたらどうなる?

 A.
 本来はそれを避ける為に、プレイヤーがインしているゲーム機には、破壊されないよう防護措置が働きます。
 が、当然念でガードしているだけですので、たとえば攻撃し続ければいずれ破壊できるでしょう。その結果、中のプレイヤーとセーブデータはどうなるか?
 ゲームソフトが破壊されたことを報せるシグナルを発して、G・I運営側がそれを察知、救済措置が取られます。
 まず破壊されたゲーム機内のゲームソフトは、何の機能もないゴミになります。これを使ってG・Iへ入ることは以降できません。
 そして、破壊されたものと同じ状態にした代替のジョイステーション・メモリーカード(マルチタップがあればそれも)・予備のゲームソフトを用意して、運営が管理。
 プレイヤーがゲーム外へ出たタイミングで、同じ場所へゲーム機も一緒に設置します。
 港から出た場合は同じ港に。『離脱』だった場合は、破壊されたゲーム機が元々あった場所から最も近い港に(プレイヤー自身も同じ港へ移動)。
 例外としてプレイヤーが死亡した場合は、破壊されたゲーム機が元々あった場所へ死亡したプレイヤーは移動、ゲーム機は再破壊されるのを避ける為に同じ場所へは配置されず、ゲームソフトが誰かの手に渡るよう市場へと流します。
 要は、ゲームをするのに支障がない状態になるよう処置されます。



 Q.
 ゲーム外に出て、10日(240時間)以内にゲームへ戻らないと、セーブデータは消える?

 A.
 消えません。
 まず大前提として、フリーポケットのカードデータはセーブされません。厳密には外へ出た瞬間に消えます。
 10日経過で消えるのはカードデータ、つまり指定ポケットのカードデータだけです。
 それ以外のイベント進捗、訪れたことのある都市、貯金、遭遇したプレイヤーなどなど、多くのデータが残ったままとなります。
 現に、原作でハンター試験の為に外へ出たキルアは、10日以上経過してから戻ってきています(出たのが12月29日、試験開始と終了が1月7日、むしろゲームへ帰るのに時間がかかったという発言をしていることから)。
 そしてそのキルアは、奇運アレキサンドライトの山賊イベント時に居合わせ、山賊から「無償で我々に全てをささげてくれたお方々」と複数人の形で認識されています。
 山賊にカード諸々を渡したのは、ゴンとキルアの2人。ゲームから出て10日以上経って戻ってきた後に、ゲームキャラから以前のイベントに参加していたと認識されている──すなわちセーブデータが残っているということになります。そもそも戻ってきた初っ端、「キルア」の名前確認をされていたわけですから、カードデータ以外は丸々残っているんでしょう。
 ゴンが最初入ってきた時に填めていた指輪にもセーブデータが残っていました。あれはゴンだけの特別な処置というわけでもなく、メッセージと『ニッグ』との遭遇を仕込んだデータに過ぎなかったものと思われます。




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