どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百二十三章

 

 シメのうどんでも舌鼓を(したつづみ )打ち、熱いお茶で一服する。量的には少し物足りなかったけど、みんなでお鍋するならこんなもんだろう。実に楽しいひとときだった。

 

 食事を終えて、お座敷でみんなまったりする中、

 

「──さて、そろそろですかねぇ?」

 

 ちょっと怒気混じりに言うと、ウラヌスがびくーんと反応した。

 氷像イベントの結果を確認しないと、ね。

 

「そ、そうだねー……」

「アイシャ、そんなにアレ嫌だったの?」

 

 助け舟を出すシーム。はぁ……触れなきゃダメか。

 

「……すっごい恥ずかしいです」

「ごめん……」

 

 目に見えてションボリするウラヌス。嘆息で返しておく。一生懸命作ったのは分かるんだけどね。それとこれとは話が別だ。

 

「さっさと結果を確認しに行きましょう。温泉にも早く入りたいですからね」

「う、うん……」

 

 ウラヌスにしてみたら、ダブルでキツイだろうな。私も氷像の借りは、温泉でキッチリ返してもらうつもりだし。……優勝できなかったら、ホントどうしてくれよう。

 

 

 

 鍋料理店を出て、氷像イベントを開催していた大通りへ戻ってきた。

 

 ふむ。見た感じ氷像は増えてないな。……目に入れたくない氷像がツヤツヤしてるのが目につくだけだ。

 

「俺達しか参加してないし、優勝確定だね。あと2分かな」

「これって、プレイヤーが誰も参加しなかったらどうなるの?

 ゲームキャラが優勝しちゃう?」

 

 シームの素朴な疑問。確かにね。あり得る話だ。

 

「ううん。優勝者発表イベントも発生せずに終わり。

 多分、雪像もそうなんだと思う。あっちは誰も参加しないなんて有り得ないけどね」

 

 ウラヌスの説明に納得する。そんなトコだろうな。

 

 私を模した氷像の近くまで移動する。私が気配をピリピリさせると、対照的におどおどしだすウラヌス。

 

 にしても……

 

 この氷像、よく出来てる。ムカつくなー……。私の運動着姿を見ただけじゃ、こんなの作れないって分かっちゃうんだけど? ちゃんと肉体の上に衣服を着ているような質感だ。『円』で確認したぐらいじゃ不十分だろう。

 

 つまり、私を脱がした時のことをしっかり覚えてるってことだ。……ぐぅぅぅ。

 

「これって氷の女神像みたいな感じだね」

「そうね。アタシも名前をつけるならそれにすると思うわ。

 次点でエロい女神像かしら」

「アハハハハハハ」

「……2人ともやめてくれ」

 

 私の乾いた笑いに慄くウラヌス。いらいらいらいら。

 

「せっかくだし、携帯で撮っといたら?

 もったいないじゃない」

「……と、とらないよ」

「そうですよね。ウラヌスなら想像で何度でも作れますもんね!」

「ぅぅぅ……」

 

 くっそ、言ってて自分で恥ずかしいぞ! オノレェ……

 

 

 

「優勝はP1、ウラヌスチームです! おめでとうございます!」

 

 雪像イベントに比べると静かな発表が行われ、そばに来ていた審査員がすぐアイテムを渡してくる。なんだかなぁ。勝って当然と言うか。……別にいいけど。

 

「おめでとう!

 優勝賞品の『ガラスの剣』です!」

 

 審査員の手から刀剣を受け取り、それがカード化する。

 宙にあるカードを摘み取り、私達へと見せるウラヌス。

 

 

 

『1717:ガラスの剣』

 ランクC カード化限度枚数31

 氷の剣の異名を持つ 透明な長剣

 アイスグラスと呼ばれる特殊素材の芯に大気中の水を纏い

 氷結して薄い刀身を形成する

 その刃はあまりに鋭く一撃で芯ごとくだけるほど脆い

 鞘におさめておくと一時間で再生する

 

 

 

 ふぅん。真実の剣みたいなもんか。氷の念能力とは珍しいな。

 

「じゃあ早速売って、お金にしますか。

 別にこの剣、使いませんよね?」

 

 いちおう確認しておく。ウラヌスは首肯し、

 

「まぁね……

 イベントで必要なアイテムじゃないし、換金もできる武器カードってだけだから。

 どうせみんな、こういうの使う気ないだろ?

 エクリプスの魔剣もそうだったけど、俺たち武器持って戦わないからな」

 

 そりゃねぇ。大体使いこなせたところで、ゲームの外に持ち出せないからな。修行する意味すらないもの。

 

 

 

 ガラスの剣を37万ジェニーで売却し、ようやく軍資金を確保した私達は、軽い足取りで温泉宿に帰ってきた。約1名、非常に足取りが重かったが。

 

「……あのさ、アイシャ」

「いやー、みなさんお疲れですよね。

 早速温泉で疲れをとるとしましょうかイヤー楽しみだったんですよ」

「うぅ……」

 

 にゃんこが悪あがきしないよう、速攻で畳みかける。このあと釣りにも行くし、お互いぐずぐず引きずっても良いことないだろう。きりきり年貢を納めてもらおうか。

 

「ぼくも入るから、そんなビビんなくていいって」

「……それが何の慰めになるってんだ、シーム」

「じゃあ、アタシ達がお邪魔にならないよう、2人きりで入る?」

「頼むから一緒に入ってくれェェェー」

 

 往生際の悪いにゃんこだな。……私だって、2人でなんか入りたくないよ。

 

 

 

 男湯女湯と書かれた暖簾2つの近くにある、温泉マークが書かれただけの暖簾。よーく見ると、男女混浴と暖簾のすみっこに書いてある。

 

 なんとなく4人で、その前に立ち尽くす。

 

「こういうのって、注意書きとかないモンなんですかね?」

 

 誰にともなく聞いてみるが、当然誰も知らないだろう。私も入るのは初めてだから当然知らない。混浴ねぇ……

 

「なんかあっても自己責任ってことじゃないの?

 イヤなら入んなきゃいいんだし」

 

 メレオロンの素っ気ない返事。そりゃね……男湯女湯がそばにあるから、その通りではあるんだけど。

 

「でもさ。こういうのって何であるの?

 あんまり入るヒトいないと思うんだけど」

 

 素朴なシームの疑問に、一同難しい顔。うーん……どう答えればいいものやら。

 

「……多分アレだな。家族とか……恋人とか? が、一緒に温泉入りたいっていう要望を叶える為かな」

 

 ウラヌスの答えに、「へぇー。そっか」と返すシーム。深く考えないのがこの子のいいところだよ。さいわいメレオロンがいるから、その回答で納得できるだろうしな。

 

「ま、アンタの言う通りでしょうね。

 性別の違う赤の他人と入りたいヒトなんて、そうそういないでしょうし。

 で、いつまでここに突っ立ってるの? 早く入りましょうよ」

 

 催促するメレオロンに、そう言う本人を含めて誰も動き出さなかったりする。

 ウラヌスがいきなり方向転換し、

 

「ちょっと売店で、湯浴み着とか売ってないか探して──」

「無駄ですよ、そんなの着ても。

 隠そうが何しようが、『診断』の時には脱いでもらいますからね?」

 

 固まるウラヌス。「はぁー」と息吐くメレオロン。

 

「アンタも妙にガッつくわね……」

「な、なんですかガッつくって。

 私は真面目に『診断』するつもりで──」

「ハイハイ。

 お医者さんごっこ、お医者さんごっこ」

 

 くっ、こんな時だけ常識ぶって。……確かに半分は仕返しだけど、ちゃんと診るつもりではいるんだぞ。

 メレオロンはウラヌスの方を見やり、

 

「アンタもいちいちオドオドしない。

 アタシ達がいるんだから、間違いなんて起きるわけないでしょ?

 普通に入って、普通に出てオシマイよ。無駄に緊張しない」

「……俺にすりゃ、オマエも警戒対象なんだけど?」

「いつも通りでしょうが。

 アタシは機会があれば好き勝手やるわよ。今さら気にすることじゃないでしょ」

「もうやだー」

 

 私もメレオロンとお風呂入るの、もうやだよ。ずっと機会窺ってるってことじゃないか。多分そうだろうとは思ってたけど。

 

「おねーちゃんが変なことしないように、ぼくが見張ってるから大丈夫だよ」

「……俺にすりゃ、オマエも警戒対象なんだけど?」

「へ?」

 

 シーム……やはり姉弟ということか。ていうかウラヌス、私も同列の警戒対象なのか? ふーん。

 

「はいはい。ダラダラ話して、他のヤツが来たらもっとイヤでしょ。

 さっさと入る!」

 

 言い放ったメレオロンが勢いよく暖簾をはたいてくぐる。続いてシームが入る。

 

 躊躇するウラヌスに、私はアゴで『行け』と指し示し、渋々入らせる。

 

 さて。私も覚悟を決めないとな。どうしたって多少は恥ずかしい思いもするだろうし。

 その分、きっちり『診断』させてもらいましょうかね。くっくっく……

 

 

 

 脱衣所で男性チーム・女性チームに別れて、お互いに見えない位置で脱ぎ脱ぎしていたところ、

 

「わぁー! これ、めっちゃ可愛いっ!!」

「うわちょっ、シームさわんな! 引っ張んじゃねぇぇッ!」

 

 隣で脱衣してたメレオロンと顔を見合わせる。

 ニヤリとした後、その表情のまま男性チームの方へ歩いてく変態。

 

「ちょっと、メレオロン……」

 

 引き留めはするが、強くは言わない。まあ、気になるしな。私が直接見に行くのは抵抗あるし、私も脱ぎかけだし。

 

 やがて、

 

「ぇ……

 ぶはぁーっ!! アーハッハッハッハ!

 アンタ、それ! それ!

 毛糸のパンツッッ!!

 アひゃひゃひゃひゃッ!」

 

 響き渡る変態の大爆笑。

 

「おまぇ、来んな!! なに来てんだ、大声で言うんじゃねぇッッ!!」

「ふひゃひゃひゃひゃ!」

「いいじゃん、コレ。キュマニャン、すっごぃ可愛い♪」

「シーム、やめろっ!!」

「ぶふぅっ! あっはっはっはっはっは!」

 

 流石に私も吹き出す。あのはいてないウラヌスが毛糸のぱんつ!? 無駄に女子力高くて倍率ドンだよ、ぽんぽんイテェ!

 

「ほら、アイシャも爆笑してるわよ?」

「聴こえてるよ、くそっ! いいからオマエあっち行け!」

「アンタこれ、お子ちゃまパンツだとアタシ思ってたんだけど、一周まわって勝負パンツよね」

「なにが勝負パンツだ、ぶッ殺すぞッ!!」

 

 おかしすぎて思わずロッカーをバンバン叩く。息、息できねぇ!

 

 

 

 ひとしきり笑って落ち着いた後。……なんかすすり泣く声は聴こえてたけど。

 

 バスタオルをぐるぐるっと巻いて、髪の毛もしっかりとまとめあげる。普段はここまでしないけど、いちおう温泉のお湯だからね。適当に湯船へ髪を浸けて問題があったら困る。

 ようやく支度を終えて、入浴セットを片手に曇りガラスの先へ向かう。もうみんな先に行っちゃってるよ。

 

 ガラリと開け。

 

 外の冷気と、独特の臭気を伴った湯気が流れ込んできた。

 

「はぁー……」

 

 露天温泉。いいなぁ……遠くに雪化粧された山が見える。湯気越しに眺められるなんて、最高の景色じゃないか。

 

 ツルツルの石床をヒタヒタと音を立てて歩き、真っ白な湯船に浸かった3人の姿を見る。私もすぐ入ろうかと思ったが、踏みとどまる。掛け湯ぐらいしないとな。

 3人から距離を開けて、まぁ見えないだろうなという位置で腰かける。……湯気さんが仕事してくれるだろうと信じて、身体に巻いていたバスタオルを外す。

 蛇口をひねり、桶に湯を溜めて適温であることを確かめてから、ザバァと肩から一浴び。うーん……いい湯だ。せっかくなので、反対の肩からも湯を浴びる。

 

 ふぅ。……まぁ心の準備はできた。

 

 バスタオルを巻き直し、今度こそ煙る湯船へとヒタヒタ近づく。この濡れた石床の上を裸足で歩いていく感触が堪らない。

 ふちから湯船を見下ろすと、やや広い温泉の湯船中央から、変態が笑顔を向けてくる。

 

「おー、真打ち登場ー。やっぱ美少女は格が違うわねぇ。

 ほら、アンタ達もごらんなさい。ここまで美しいと芸術的よ」

「なにが真打ちですか。

 それと、勝手に勧めないでください……」

「ひゅー! アイシャ、めっちゃエロエロなんだけど。

 ウラヌス? 見なくていいの?」

「……」

 

 普段見てるくせに、わざわざ持ち上げるメレオロン。無邪気に煽ってくるシーム。……まぁシームはいいよ。からかってるだけだって分かるし。

 

 湯気越しでも余裕で分かるぐらいソッポ向いてるウラヌス。髪の毛を上げてるのは私と同じなんだけど、なかなかうなじが色っぽい。

 

 ……別に見せたいわけじゃないけど、そう露骨に無視されるとな。フンだ。

 

 私も温泉の湯へと足を浸ける。……これは良さげな感じだ。

 

 一気に湯船へと身体を沈める。

 

 …………。ふぅー……

 

「いい湯ですねぇー」

「そうよねぇ。アタシも疲れが一発で吹き飛んだ気がするわ。

 もしかしたら、そういう念能力なのかもね。美肌温泉とかあったしさ」

「まぁ湯治という治療法は普通にありますから、能力でなくても癒し効果はありそうですけどね」

 

 今の私にはそのへん良く分かんないんだよな。もし念能力による治療効果があったら、ボス属性で打ち消し待ったなし。マジでうざい。もちろん今は気にしなくていいけど……

 

「お外でお風呂って、なんかすごいよねぇ」

「露天風呂の醍醐味ね。

 アタシも入るのは初めてだけど、解放感がなんとも言えなくて……

 そうね、ウキウキする感じかしら」

 

 姉弟の会話に、知らず笑みがこぼれる。そうだね。普段のお風呂もいいけど、こういう空気ってなんだか楽しいな。

 

「ウラヌスはどう? 楽しくない?」

「そいつの場合はウキウキというより、ドキドキじゃないかしらね」

「……」

 

 耳まで真っ赤にゃんこが、姉弟につつかれても何も言わない。

 

 じわじわとそちらへ近寄っていく。

 

「ウラヌス」

「……」

 

 頑として喋らない作戦か? なら、こっちにも考えがあるぞ。

 

 ウラヌスのうなじから髪が湯船に垂れているので、一本摘まんでキュッと引っ張る。

 

「っいたぁ!?

 なっ……に、すんの」

 

 思わずグルッとこちらを向いたウラヌスが、途中で気がついてそのまま360度回転する。ちらっと見えたけど、気難しい顔して、まぁ。

 

「……別にこっち見ていいんですよ?

 湯船の中ですし、お湯も白く濁ってますし。バスタオルも巻いてますから」

「…………」

 

 ようやく観念したか、たっぷり10秒ほどかけて、こちらを向くウラヌス。

 後ろで結んで髪を上げてるせいで、いつもと雰囲気違うな。それはこっちも同じだけど、多分変化の度合いはウラヌスが上だろう。

 

「アイシャ……やっぱりこういうの良くないよ」

 

 はぁ。正論で来ましたか。ホント往生際の悪いにゃんこだな。

 湯船から手を伸ばし、ちっちゃい鼻を摘まんでやる。

 

「ふごっ!?」

「固っ苦しい人ですね。

 そんなこと言ったら、私達が毎日二人部屋で寝泊まりしてるのだって良くないじゃないですか」

「ほ、ほんは……はにゃっ、はにゃーっ!」

「にゃーにゃーうるさいです。

 あなたは私を守ってくれるんじゃないんですか。寝てる時もお風呂の時もしっかり私を守ってください」

「はにゃひへー!」

 

 めっちゃ私の手を掴んで抵抗してきたので、指から力を抜く。解放される鼻。

 

 真っ赤なお鼻のにゃんこはヘナヘナの表情で、

 

「ぃたぁいー……! さっきからヒドイ!」

「なんですか、そのくらい。

 無視される方がよっぽど頭に来ますよ。

 ようやく喋ったと思ったら、こういうのは良くないとかグチグチ言って」

「だ、だってぇー……」

「だってじゃありません。了承したのはあなたじゃないですか。

 それともなんですか。今さら反故にする気ですか?」

「そ……

 そんなつもりはない、けど」

「まだまだ序の口ですよ。そんな調子であなた、診断される時どうするつもりですか?

 途中でぶっ倒れたりしないでしょうね?」

「それはさすがにないと思いたい……」

 

 どうだか。照れ屋にゃんこは、この程度の刺激でも強すぎるみたいだからな。

 

「アンタもグイグイいくわねぇー」

「アイシャ、すっごい大胆だよね。見てるこっちがドキドキするんだけど」

 

 姉弟が何か言ってるが、聴こえませんな! 今それドコじゃないんだよ。

 ウラヌスにぐぐぃと顔を近づけ、指を突きつける。

 

「いいですか?

 私だって恥ずかしいのはイヤですよ?

 でも今回の目的は、あなたがやったことの罪滅ぼしと、身体に異常がないかの確認です。

 それより優先することが他に何かありますか? ありませんよね?」

「ぅ……うん」

 

 のけぞり気味のにゃんこの鼻っ柱に、指先を押し付け、

 

「混浴に入ると決めた以上、多少見られるのは許容しますよ私だって。

 水着だの氷像だの着替えだの、覚悟してない時に見られるのに比べたら全然マシです。

 なのに! 男のあなたが私より恥ずかしがるのは、どういう了見ですか!? 私の身体を見て、あなたが恥ずかしいって意味分かんないですけどっ!?」

「イタイイタイあいしゃ鼻イタイ!!」

「……しつれい。こほん。

 メレオロンも言ってましたが、普通にしてればいいんですよ。普通に。

 変に意識しないでください」

「……はぃ」

「大体あなた、心は女じゃないんですか?

 だったら私の裸なんて見たところで、どうってことないでしょうに」

「アイシャー。それは無理あるってー」

 

 なんか言ってきた変態に一瞥をくれる。なんでだ?

 

「アンタ、そんなエロイ身体して意識するなとか無理だってば。

 女のアタシから見てもそう思うのよ? 健全な男なら一発KOだって」

「ぼく、別にKOされてないけど……」

「お子様は黙ってなさい。

 まぁそこにいるのは健全な男とは言いがたいけど、それでもキツイと思うわよ」

「メレオロン、お前それ全っ然フォローになってないからな?

 完全に罵倒と受け取るからな」

「中途半端は黙ってなさい。

 女なら気にする必要ないし、男ならさっさと襲えばいいでしょうが。

 まったく、どっちつかずなんだから」

「……メレオロン、さっきから話題がおかしい気がするんですけど。

 私、そんな話はしてませんよ?」

「トウヘンボクは黙ってなさい。

 だいたいアンタはそっち方面ポンコツすぎんのよ」

「ちょっ……なんですかソレ!

 誰がポンコツですかっ!?」

「ちょっとおねーちゃん、やめなよ……」

 

 私とウラヌスが揃って睨みつけても、対する変態は怯まず、

 

「ふん。じゃあ言ってみなさい。

 あなた達、なんでホルモンクッキーが欲しいの?」

 

 ぐぎっ!? ……い、いま言いやがるか、そんなことを……

 

 私が勢いを失い、黙り込んでいると、同じく静かにしていたウラヌスが、

 

「……だから言っただろ。

 俺は性同一性障害で、心が女だから。その……」

「そうよねー。

 アイシャみたいにナイスバディな女性になりたいのよねー」

 

 振り向くと、アゴを沈めてぶくぶくぶく……と湯船で泡をふくウラヌス。

 

 そ……そうだったね、確か。その、胸がうらやましいとか言ってたもんな……

 

「で、アンタは?」

 

 その声に、私は振り向けない。

 

 視線の先にいるウラヌスは……知りたそうな顔をしてる。

 

 い……言えるわけないだろ、そんなの。

 

 本当の目的はもちろんだけど、前世がどうたらなんて話もできない。

 温泉のせいか心拍数が上がっている。断言してもいいが、嘘を吐けば確実にウラヌスは見破るだろう。まともに嘘を吐き通せる自信がない。

 

 どうしよう……まさかこんなところで窮地に陥るとは。

 嘘を吐けないなら、沈黙するしかないけど。変に勘繰られてもマズイんだよな……正直、絶対バレないような秘密でもない。

 

「やっぱりアタシには良く分かんないのよね。

 そんなに可愛く生まれたんだから、普通に女として生きるだけでも充分だと思うけど。

 男ってそんなに憧れるようなもんなの? おしえて男性諸君」

「ぼくに聞かれても、分かんないよ……」

「あー。アンタはそうでしょうね。

 で、そっちは?」

「……俺だって分かるかよ。

 少なくとも俺は、男の自分が嫌いだからな」

 

 あ、そうなんだ。……改めてそう言われると、思うところがあるな。

 

「参考にならないわねぇ」

 

 言いながら、背後から変態がスススと寄ってくる。

 

「アンタさ。別に性同一性障害ってわけじゃないのよね?」

「……

 ええ。そのつもりですけど」

「そうよね。

 アンタ、なんだかんだで女の自分を楽しんでるものね。ちょっと変わってるけど」

 

 楽しんでるか? よく分からないな……変わってるって自覚は多少あるけど……

 

 湯船にお湯が注ぐ風情ある音にまぎれ、メレオロンが耳元でそっと囁いた。

 

 

 

「……アンタさ。もしかしてアレがしたいだけ?」

 

 

 

 温まっていた背筋が急激に凍りついた。こ、こいつッッ──!?

 

「……アレってなんですか」

「さぁ、なんでしょうね?

 でもホルモンクッキーって、確か1日しか効かないんでしょ?

 つまり、元々そういう目的のアイテムなんじゃないの?」

 

 ぐぅッッ!? ぐ、く、いや動揺するな。絶対顔にも声にも動きにも出すな、私ッ──!!

 

「……言っている意味がよく分かりませんね」

「そ。ならいいけど。

 でも、もしアタシが想像してる通りなら。

 うってつけの相手が目の前にいるなーって。……思っただけ」

 

 私の視線の先にはウラヌスがいる。

 

 ……あ。

 

 

 

 ────あああああああああああああああッッッ!!

 

 

 

 なるほど、そういう意味かッッ!! 確かにうってつけすぎるぞッ!! 彼なら、母さんが言ってた問題もクリアできるんじゃないかッ!?

 

 いいい、いやいや待て。慌てるな私。変態の口車に乗せられて、何か大変な見落としをしてるかもしれないぞ。2・3・5・7・11・13・17・19……えっと次は……?

 

 

 

「……妙な誤解をしていませんか?

 私がホルモンクッキーを使いたいのは、純粋に男性の身体に憧れてるからですよ。

 武術を極めんとすれば、男性の筋肉や骨格は理想の──」

「ほんとにぃ?

 アタシでも嘘って分かるんだけど」

「……」

「メレオロン、いい加減にしろよ。

 なに話してるか知らないけど、あんまりアイシャを困らせるな」

「へいへーい」

 

 ススス……、と私の背後から変態が遠ざかる。

 

 …………ふぅぅぅぅー、助かったぁ。ウラヌスの助け舟がなかったら、おそらくボロが出てたな……変態おそるべし。予想外のタイミングで致命傷を負うところだったよ……

 

 あー、でもウラヌスかぁ。……女の子になったら、まんま可愛いんだろうなぁ。でも、今の私がそういう対象として見れるかどうか判断できないんだよな。無事男に戻ってから考えてもいいんだろうけど……ちょっと都合がよすぎる相手な気がする。

 

 んー。考えがまとまらないな……

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
|ω´)9m{当然のごとく『つづく』!! 次回も、混・浴・回ッッッ!!



|ミ サッ




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