喉が渇いたので、3人の希望を聞いてから私の分と合わせて売店で飲み物を購入。まずゲームをしているシームのそばに置き、メレオロンとウラヌスにも配る。
「ありー」
野菜ジュースを受け取ったメレオロンが、美味しそうに飲みだす。羨ましそうに眺めるサクラ。
「ありがと。アイシャは、マッサージチェア使わないの?」
レモンティーを受け取ったウラヌスが、揺れながら尋ねてくる。くたーっとしてるな。
「うーん……
それも悪くないんですけど、別にマッサージが必要なコンディションじゃないんで」
「だってさ。
さっきの卓球なんて運動のうちにも入らないって。ぷぷー」
「オマエな。
……まぁ確かに、ろくに汗もかいてないみたいだけど」
別に汗をかいてないわけじゃないけどね。流石にお風呂上がりの運動だったし。ただ、そこまで負荷がかからなかったのは事実だ。……精神的には結構キタけど。
なので癒しをいただくとしよう。
「サクラ、預かっていいですか?」
「ん、いいわよ。
でもこの子、そろそろ消えちゃうんじゃない?」
「そうかもですね。……ウラヌス」
「イヤダカラネ。
オレ、ジュウデンキジャナイカラネ」
なぜカタコト。……まぁいいけどさ。お疲れみたいだし。
サクラを抱きかかえ、「にゃん♪」と心地よい鳴き声を聴いてから、遊んでるシームのところへ再び向かう。
シームがいる辺りはゲームコーナーになっていて、ゲーム機が所狭しと並べられている。
遊んでるのはシームだけだ。この宿にも、宿泊客としてのゲームキャラは1人もいない。──あちこち旅行してた頃、こういう感じのゲームコーナーはあったんだけど、必ず誰かいて何となく近づきにくかったんだよな。私が遠巻きに見てると逆に変な目で見られたし。
注視すると、いかにも古めかしいピンボールマシーンやもぐら叩き、故障中の紙が貼り出されたパンチングマシーンといったものが置いてある。後はドライブゲームかな。
シームが遊んでるのは、テーブルとゲーム機が合わさった、これも古い感じの代物だ。正直ジョイステーションのゲームに慣れてしまうと、手を出しがたい雰囲気のものばかり目につく。
「にゃん」
「あ、桜連れてきたの?」
「ええ。気にせず、遊んでていいですよ」
シームは先ほど飲み物を渡した時と同じく、こちらに目もくれずゲーム画面を見続けている。サクラを連れてきたからか、明らかにそわそわしてるけど。飲み物は手付かずだ。
画面を見る限り、シューティングゲームっぽいのを遊んでるシーム。ほぼ真っ暗な画面、原色な赤青緑の小っちゃい虫と、これまたアレなデザインの飛行船がしょっぱい弾を撃ちあってるだけなので、シューティング? といった感じではあるのだが。これ面白いのか……?
「……シーム、これって面白いんですか?」
「にゃう?」
「え? うん、まぁやってみると、って感じだけど。
見ててもそんなに面白くないかも」
そんなもんか。よく分からん。
「シームー。
おまえ、なんのゲームしてんのー?」
ウラヌスがマッサージチェアから声をかけてくる。
「えーと。○ャラガってゲームー」
「ああ。
……お前、トラクタービームって当たってるかー?」
「え? なにそれー」
「目の前まで来て、広がる光線を撃ってくるやつー」
「あれって、当たっちゃダメなんでしょー?」
「残機あるなら、いっぺん当たってみー?
残機ゼロならダメだけどー」
「わかったー」
そんなやりとりをして、シームがゲームに集中しなおす。
見ていると、確かに敵が止まって、広がる光線を撃ってきた。
シームがわざと当たりに行くと、いままでずっと下にいた飛行船がくるくる回りながら上に引っ張られて、敵に捕まった。
「捕まっちゃったけど!? どうしたらいいのっ!?」
「その敵が捕まえたまま飛んでくっから、それ倒せー。
動いてない時に、弾当てんなよー。捕まってる味方にも当てるなよー」
「うにゃ?」
「よく分かんないですけど、飛んできた時に敵だけ撃ち落とせってことでしょうかね」
「うん……」
ウラヌス、マッサージチェアに座ったまま声をかけてくるから、要領を得ないんだよな。こっち来る気もなさそうだし。
飛行船を捕まえたまま飛んできた敵に、シームが慎重に弾を2発ヒットさせて倒す。
と、捕まっていた飛行船がくるくる回り、降りてきた。
ガシャン。と飛行船が2機合体した。おお、そういうことか! なるほど。
「えっ!? なんかくっついたけど!」
「そのまま戦えるよー」
シームがボタンを押すと、今まで1発ずつだった弾が2発同時に撃てるようになった。そっか、シンプルだけどなかなか……ん?
「シーム。
もしかしてコレ、避けるのも難しくなったんじゃないですか?」
「えっ!?」
「ふにゃん」
だよね。だって飛行船2機が横にくっついてるんだから、単純に2倍当たりやすくなる。
必死に避けだすシーム。しかし案の定、今まで避けられた弾をかわしきれずに1機爆発してしまった。元の1機状態に戻ってしまう。あーあ……
「ウラヌスッ!!」
シームの怒声に、ウラヌスの「げらげらげら」という笑い声が返ってきた。ひっでぇ。
それでペースを崩したシームは、あっけなく残機を失いゲームオーバーに。
「んもう!」
「にゃう」
私からサクラを奪い取り、ずかずかウラヌスへ歩いていくシーム。
「ひどいじゃん!」
「にゃん!」
私もそちらへ近づくと、まだ笑ってるウラヌス。
「いや、だってそういうゲームだもん、アレ。
俺はゲーム始めたら、すぐデュアルシップにして遊ぶけど?
ぷちぷち1発ずつ撃ってたら、敵倒すのに時間かかるじゃん」
「いいでしょ、別に!
ていうかちゃんと教えてよ!」
「ごめんごめん。
でもアレなら、途中のボーナスステージやりやすいのは分かるだろ?
普通にやってて、パーフェクト取れたか?」
「う、うぅん……
なんかヘンな動きして、全然当たんなかった」
「だろ? だからデュアルシップ推奨なんだよ。
だらだら遊ぶだけなら、単機推奨だけどな」
「ぅー」
やりこめられてるシーム。口だけで翻弄してるなー。……私も卓球で結構やられたし。
「それは分かったけど、教えるならちゃんと教えてってば」
「んー。だって俺マッサージ中だし」
「だから私がマッサージしますってば」
「……今はお断りしまつ」
ちっ。今ならシームのお墨付きで、揉みくちゃにしてやれるのに。
「ニャン!」
「わっ!?」
シームの手から飛び出すサクラ。マッサージチェアのウラヌスに飛びかかった!
「うぉっ!? ちょ、桜やめろ!」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
ウラヌスのお腹でドタドタするサクラ。……まさかマッサージのつもりじゃないよね?
「ぶへっ!? ぉふ……いててて、ちょっ、どけって、いい加減にしろよ!」
「にゃにゃにゃにゃ!」
「いたい、いたい! あー、くそっ! もう消えてろ!」
サクラの背を手で押さえ、ウラヌスは消してしまった。ありゃりゃりゃ。
その瞬間、顔色を変えるウラヌス。両手で顔を覆い、
「ぐわあぁぁッ、こいっつ……!!」
足をピーンと伸ばして身悶えするウラヌスに、私達は何事かと注視する。いや、予想はつくんだけどね。
「あー。これって例のやつ?」
「だと思うけど」
姉弟も気づいたらしく、ウラヌスを見た後、私を見る。う、うん……
「ウラヌス、大丈夫ですか?」
「い、いい、うん。きにしないで……
ちょっ……と、こっち、かまわない、で……」
すっかりへにゃへにゃで大丈夫ではなさそうだが。……今回はかなり刺激的だったかもしれないな。
「お疲れのようなら、マッサージしましょうか?」
「ひぃっ! やめてやめてっ!!」
悲鳴が返ってくる。これは重症っすな。
顔を覆ったまま息を荒くするウラヌスに、気の毒そうな目を向けるメレオロン。
「……落ち着くまで、ちょっとアタシ達あっちで遊んでるわね」
「う、うんうん。たのむ……」
マッサージチェアから立ち上がり、私とシームを促すメレオロン。……やや痙攣気味なウラヌスが気になるけど、仕方なしに距離を置くことにした。
ゲーム機のある辺りで、メレオロンは小さく溜め息。
「アイシャ。
アンタあの子に無茶するの、ほどほどにしときなさいよ?」
「え? ……だって」
「そりゃアレだけ馬鹿みたいに可愛がって、その記憶ぶちこまれたら妙なことにもなるでしょうに。今回は他にも色々あったからでしょうけど」
「ボクはいいの?」
「……まぁアンタは大して毒がないからいいんじゃない?」
「私がサクラ可愛がるの、毒だって言うんですか?」
「多少ならともかく、すぎれば毒かもね。
あの様子だと」
むぅ……。本気でウラヌスが嫌がるようなら考えるけど、サクラはむしろ喜んでるしな。意識が繋がってるなら、もうちょっと間を取れないものか。
「……なんかチラっと見ただけでも、古そうなゲームばっか並んでるわね。
面白いのあるわけ?」
メレオロンがゲーム機を見回しながら尋ねる。私は「んー」と一声唸り、
「私もここまで古いと、詳しくないんですよね……」
「いっぱいやったことないのあるし、なんかオモシロそうじゃん」
シームはそう言うけど、私は今ひとつワクワクしない。分かんないしな。せめて格ゲーくらいあればいいのに、全然ないしさ。
「私はさっきみたいに、シームが遊んでるのを見物してます」
「アタシも良く分かんないし、そうするわ」
「ええー。ぼくも誰かが遊んでるの見たいんだけど」
ぶーたれながらも、ゲームを吟味するシーム。飲みそびれたジュースのパックを手に、うろうろしている。
「これなんかどうです?
さっきのと似たような感じですけど」
「んー。スペース○ンベーダーは別にいいかな……
ギャ○ガの方が面白いもん」
「アンタ、これは? ○界村。
ていうか前にやってなかった?」
「……あるよ、やったこと。
そのゲーム30秒で死ぬからイヤ。進んでも赤いヤツで絶対死ぬし」
「……実はシーム、結構やったことあります?」
「他のは知らないよ。
見かけたり、人がやってるのを見たことはあるかもだけど」
「うぅー……」
唸り声のした方を見ると、ウラヌスが複雑な表情で頭をかきながら、こちらへ来ていた。
「もう大丈夫なんですか?」
「……大丈夫じゃないから、気を紛らわしに。
なんか遊ぶアテあんの?」
「知らないゲームばっかりで、選びにくてて」
「そう?
……結構有名どころが揃ってるみたいだけど」
ウラヌスが改めてゲーム機を一瞥し、
「いや、マイナーなのもあるけど、俺はいちおう全部知ってるゲームかな……
でも俺がやると長引きそうだし、ちょっと遠慮しとく」
「じゃあオススメある?
今度はちゃんと教えてよ」
シームの質問に、浴衣をひらひらさせながら考えるウラヌス。
「うーん……
妖怪○中記は、内容がマニアックすぎるし……
○ビウスは、隠しキャラの位置覚えてないし……
ドラゴンバ○ターは、2段ジャンプと兜斬りマスターしてないと論外だし……
○ィグダグは、俺も攻略法よく分からんし……せめてⅡならなぁ。
フォー○ーションZは、くっそマイナーで謎のゲーム性だし……
ド○アーガの塔は、操作にクセがありすぎる上に長引くと死ねるし……」
「じゃあ、なに? ほとんどダメじゃない」
メレオロンが怪訝そうに指摘すると、ウラヌスは手を振り、
「消去法だよ。勧めるとすれば、ざっくり4つかな。
シームがやるなら……
その、向こうにあるやつ。シティ○ネクションやってみ」
ちなみに、ウラヌスが無視したゲーム機が1つある。ちらっと見ただけで分かるようなアダルトゲームだから、話題にすることすら避けたんだろう。
「アタシ、これやってみたいから教えてよ。
ルール全然分かんないし」
そのゲームを指差すメレオロン。完全に無視するウラヌス。うむ、やると思った。
平常運転の姉に冷たい視線を向けながら、○ティコネクションとやらをプレイし始めるシーム。
「始まったけど、どうやって遊ぶのっ!?」
「えーと、基本はジャンプとオイルで敵をどうにかする。
ひとまずジャンプで敵を避けたり、上の段に登ったりしてみ」
「どうやったらクリア?」
「自分の車が走った地面が塗りつぶされてるだろ?
全部の地面を塗りつぶしたらクリア」
「このちっちゃいのも避けるの?」
「それはオイル。当たれば取れるから、取って」
ふむ。なんか警察車両から逃げまくるゲームなのか? ワリとアレなゲーム内容だな。
「あ、なんか出た」
「オイル発射してる。
それがパトカーに当たるとスピンするから、その状態だと体当たりで吹っ飛ばせる」
「あーあー、そういうことか!」
……ほう。オイルを撒いて、体当たりで警察車両をぶっ飛ばすと。バイオレンスだな。
見ていたメレオロンも、ちょっと嫌そうな顔をしてる。
シームが不慣れながらも車をピョンピョンさせて進めていると、一番下の邪魔な位置に猫が出現した。なんだろ、これ?
「ねぇ。この猫なんなの?」
「……当たってみ」
「えっ。いや、なんかそれって」
「どうなるかは、当たったらのお楽しみ」
なんかウラヌス、にやにやしてるな。嫌な予感しかしないぞ。
やっぱり嫌な予感がするのか、猫を頑張って避けるシーム。しかし下の段に降りてからなかなか上に戻れず、ジャンプ練習をしてるうちに猫と衝突。
チャチャチャーチャッチャー♪ チャチャチャーチャッチャー♪
独特のサウンドとともに、猫が斜めへ飛んでいった。そして1ミス扱い。
直後、爆笑するウラヌスに対してシームがぷりぷり怒ったのは言うまでもない。
ちなみに残り3つのゲームは、ス○ーフォース、○ラムス、フィール○コンバットです。
筐体の○ィールドコンバットとか、見たことないですがw
なお、ギャラ○の内容が微妙に変化しているのは、この世界の高速航空機規制に影響を受けた為です。