どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百三十二章

 

 アハハ……油断してたよ。お昼の時もサクラにバスタオル取られたりとかしたし、混浴だって意識がなかなか保てないな。楽しいからっていうのもあるんだけど。

 ていうか、お昼の時はウラヌスが先に上がってて、私それバッチリ見てたしなぁ。まあ……いいや。今回のことは気にすまい。

 

「ウラヌスのこれ、写真に撮って残したいね♪

 撮っちゃダメ?」

「ダメに決まってんだろッ!?

 なに言ってんだ!」

 

 3人とも私のすぐ後に上がってきて、脱衣所で着替え始めていた。で、シームの要望をウラヌスが一蹴した。ウラヌスの毛糸パンツ写真か……そういう写真が残るのはやっぱり問題あるな、うむ。裸見られたりするのとはまた別の恥ずかしさがある。誰に見られるか分かんないしな。

 

「シームもやるわねー」

 

 隣の変態がなんか言ってる。私は浴衣の帯を締めながら嘆息し、

 

「ホンットに、あなたはシームの教育に悪いですね」

「へっ!?

 いやいや、アタシのせいじゃないわよ」

「あなたのせいです」

 

 まぁウラヌスが普段穿かないから、からかわれてるんだけども。……そういう意味ではウラヌスも教育に悪いな。穿かないにゃんこ姫め。

 

「あークソッ!

 穿く必要なかった!」

 

 ん?

 

「え? なんで脱いじゃうの?」

「別にいいだろ!」

 

 んん? なんか向こう、妙な感じになってるな。

 変態が首を傾げた後、迷わず覗きに行く。

 

「あれ?

 アンタ、いつもの格好じゃないの」

 

 ……見に行ってもよさそうなので、私も気になってそちらへ顔を出す。

 おや、ホントだ。ウラヌス、いつものワンピース姿だな。……あ、なるほど。それで、穿く必要がない、ね。

 

 ……。

 

「……ウラヌス。

 下着は普通穿くものですよ?」

「知ってるよッ!! ほっといてよ!」

 

 いやまぁ分かるけどさ。そこまで穿くのイヤか?

 

 

 

 お茶とみかんを確保して、部屋に戻る私達。

 3人浴衣に対し、1人ワンピースで浮いてるウラヌス。落ち着かなさげにお茶を煎れてくれてる。

 

「アンタさぁ。……スースーしない?」

「うるせぇぇぇぇッッ!!

 いつも通りだよ、いちいち意識させんなッ!!」

 

 うーむ、本人の自由ではあるんだけども。……改めて考えるまでもなく問題あるよね。

 お茶を煎れ終え、こたつに入って「はぁー」と不機嫌に息を吐くウラヌス。

 

「その格好をしてるのは、出かけるつもりだからですよね?」

「……そうだよ。

 モタリケに相談してこいって言ったの、自分達じゃないか。

 だからこのあと行ってくる」

「あ、1人で行く気だったんだ」

 

 シームがいま気づいたように言う。みんなでゾロゾロ行くと、急な訪問だから向こうも応対困るだろうしな。かえって話が長引く可能性もある。

 

「それはいいけど、『交信』で連絡しないの?

 モタリケの都合が悪かったら、行かないかもしれないのに」

「行かずに済むなら着替えるだけさ。

 『交信』使ったら、すぐ行くことになるだろうし、躊躇ってるんだよ。……話す内容がまとまってない」

「……ウラヌス。時間稼ぎはヤメてくださいね?

 向こうでのお話も、長引かせる必要がないなら早めに切り上げていただけると」

「あっ、そういうこと。

 アンタ、マッサージされたくないから寝る時間まで粘りたかったんだ?」

「ち……

 ちがうよ。モタリケのやつと話に行くのが億劫なだけ」

 

 どうだか。話すことなんて分かりきってるんだから、小動物よろしくコタツでモゾモゾしてないで、さっさと行けばいいのに。

 

「あんまりグズるようなら、私も付いていきますからね?」

「いいってば……

 『再来』が2枚しかないし、俺これで往復する気なんだから。

 きっちり手短に相談してくればいいんだろ?」

「そうですね……

 では出かける前に、サクラを出してもらえますか?

 サクラがオーラ切れで消える前に帰ってきてください」

「……」

「ぼくもそーしてほしいなぁ」

「もう温泉で桜出したじゃないか……」

「寝る前に呼ぶって約束じゃありませんでしたっけ?

 今日もシーム、がんばってたじゃないですか。約束破りはいけませんよ?」

 

 コタツに突っ伏すウラヌス。はっはっは、観念したまえ。

 

「なんか俺、今日めちゃめちゃ疲れるんだけど……」

「仕方ないんじゃない?

 初日で汗フキフキした清算もしてるんだし、こういう日もあるでしょ」

 

 メレオロンの言葉に、ぷくーと頬を膨らませるウラヌス。仕方ないね、ウラヌス自身も望んだことなんだし。今夜マッサージがてら診断してあげたら、ホントに清算終了だな。

 

「で、なに預けるかアテはあるの?」

「んー。

 今のところ、直近で邪魔になってくるのは釣具と冬着、冬装備だな。

 スノーフレイの宿を引き払うまでは使うからいいけど、別の都市へ行く時には預けたい。

 できればカードも預けたいかな……。こっちは今のうちに預けたいくらいだけど」

「今日釣った白銀サーモンとか?」

「うん、一番かさばるのはそれかな。

 今すぐ持ち歩く意味がないカードで価値が微妙なヤツは、雪山のカード収集に悪影響が出るから預けたいと思ってる。

 ま、向こうがまともな条件で了承してくれりゃあね」

「預かってもらう対価は?」

 

 メレオロンの矢継ぎ早な質問に、ウラヌスは少し首をひねり、

 

「カネ、かな。

 預かってもらう期間を決めて、預かり賃を渡せばいいかと思ってるけど」

 

 ふむ。……まぁそんなトコか。いくら出せば、何をいつまで預かってもらえるかは交渉次第だからな。そこはウラヌスに任せるか。

 

「他に質問は?」

「……アタシからは無いわ」

「ぼくから。

 ウラヌス的には、お金をいくら払って、どれくらい預かってもらえたらOKなの?」

 

 ウラヌスは視線を逸らして、悩ましげな顔をする。

 

「……預けるモノにもよるけど、1ヵ月で10万なら文句なし」

 

 なるほどねぇ。私達からすれば、その条件なら喜んで預けるけど、モタリケさん夫婦がどうかは分からないからな。おそらくそれより安くはならないだろう。

 

「他に何かある?」

「ううん」

「私からは特にありません」

「うん。

 それじゃもう連絡するか。……ブック」

 

 バインダーを出すウラヌス。一口お茶を飲んでからバインダーを開き、最後のページを操作する。

 

「……ウラヌスだ」

『お? そっちから連絡してくるなんて珍しいな。

 日曜の話か?』

「いや、それとはまた別件だよ」

『あら? じゃあなに?』

「ベルか。

 えっと……ちょっと手荷物が一杯になってきたから、物を預ける相談がしたくて」

『ああ、そういう話?

 それくらい別にいいけど』

『ちょっと待て。

 荷物ってカードか? アイテムか?』

「……両方。特にアイテム」

『物置で預かるくらい、構わないわよ』

『だからちょっと待て。

 あそこは物置じゃないって何度も言ってるだろ』

「おぉい、揉めるな。時間切れになるだろうが。

 俺が聞きたいのは、物を預ける相談がしたいから、今そっちに行っていいか? だよ。

 揉めるなら、俺がそっち行ってからにしてくれ」

『わたしはオッケーよ♪』

『……話くらいは聞くけど、オレは乗り気じゃないぞ』

「金は払うって言ってもか?」

『……』

『モリー。あんまり甲斐性ないのは感心しないわよ。

 いいじゃない、お金なんて貰わなくても』

『お前こそ、見栄を張るなよ……

 浪費するのはお前の方じゃないか』

『ちょっとモリー』

「やめろっつってんだろ、バカップル。

 行っていいかダメか、きっちり返事くれよ」

『だからわたしはオッケーだって』

『さっきも言ったけど、話ぐらいは聞くよ。

 ホントにすぐ来るのか?』

「アントキバの入口に『再来』で飛ぶから、5分か10分したら行くつもり」

『何人で来る?』

「俺1人だよ。別に身構えなくていい。

 晩も食ったしな」

『分かった。

 それなら、あまり遅くならないうちに来てくれればいつでもいい』

「助かる。じゃあ、また後で」

『ああ』

『日曜の話もしたいし、待ってるわね。バイバーイ♪』

「……。ブック」

 

 バインダーを消し、コタツにあごを乗せるウラヌス。

 

「あいつらと話すの、つかれる……」

 

 そこは同意する。

 

 

 

「にゃうん?」

「わーい♪」

 

 ウラヌスの頭上にお呼び出しされて、コタツに飛び乗ったサクラを、嬉しそうに両手で迎えるシーム。嘆息するウラヌス。コタツから出て、立ち上がる。

 

「そんじゃま、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

「あんまり遅くなっちゃダメよ。

 不機嫌になったこの2人の相手とか、アタシ嫌だからね」

「おねーちゃんこそ、今日はビール禁止!」

「えーっ!」

「アハハ……

 もし遅くなるようなら、連絡してくださいね。

 やむを得ない場合もあるでしょうから」

「うん、出来るだけ早く帰るよ。

 3人を長時間ほっとくわけにもいかないからね。

 それに、あっちはあっちで疲れそうだし……」

 

 部屋を出ていくウラヌス。玄関口で靴を履いてから『再来』を使うのだろう。

 

「ふにゃあん」

「んー♪」

 

 さて。サクラはシームに取られてるし、ウラヌスが帰ってくるまでどうしようかな。

 

 

 

 

 

 アントキバの入口へ飛んできたウラヌス。

 

 なんとなく夜空を見上げ、「ふぅ」と息を吐いた後、1人寂しげに歩きだす。

 

 モタリケ夫婦宅へ到着。回復する為の『絶』をやめると、しばらくして屋内から足音が聞こえてきた。

 ガチャリと扉が開き、

 

「おう。よく来たな」

「ああ、また来たよ」

 

 いつも通りのモタリケを見て、ウラヌスはなぜかほっとする。

 

 

 

 ダイニングへ通されるウラヌス。食卓に着いていたベルが「いらっしゃーい♪」と軽く声をかけてきた。可愛らしいカーディガンを羽織っている。

 

「コーヒーいるか?」

「ありがたくちょうだいするよ」

 

 キッチンへ行くモタリケの背を眺め、知らず息を吐きながら食卓へ着くウラヌス。長い髪を両手で梳いた後、頬杖をつく。

 

「あらら。なんだかお疲れねぇ」

「んー……

 まぁな。疲れるのはいつものことだけど、今日はめちゃめちゃ疲れたよ……」

「今日はどこ行ってたの?」

「……スノーフレイ」

「ああー。それは疲れるっていうか、寒くてキツかったでしょ。

 この間ソルロンド行ったんじゃなかったっけ? ポンポンあちこち行き過ぎよ」

「あんまりのんびりしてられないしな。

 別に慌ててアチコチ行ってるわけじゃないさ。半分は観光だよ」

「……寒いっていうより、やっぱりお疲れって感じね。

 その格好で観光したわけじゃないんでしょ?」

「当然。ガチガチの冬仕様だよ。

 だからスノーフレイで色々荷物が増えすぎて……」

「そういうこと♪

 なに預けるとか、いつから預けたいとか決めてるの?」

「おーい。

 オレ抜きでそういう話はじめるなよ」

 

 キッチンから苦言を呈するモタリケ。

 

「だとよ」

「面倒ねぇ。どうせ預かるのは決定事項なのに」

 

 そりゃお前の中ではな、と思うウラヌス。少なくともあんまり足元を見られるようなら、ウラヌスは提案を引っ込めるつもりではいた。

 

 

 

 ベルの話相手を適当にしてるうち、うとうとしだすウラヌス。

 

 ふと気がつくと、目の前からコーヒーの薫りが漂っていた。これで目が覚めたらしい。

 両肩と背中に違和感を覚えて見ると、ベルのカーディガンを羽織らされている。

 モタリケは食卓に着きながら、

 

「本当に疲れてるみたいだな。顔色悪いが、大丈夫なのか?」

「疲労が溜まってるんでしょ。

 どっかでまとまった休み取った方がいいわよ」

「……。

 このカーディガン……」

「羽織ってなさいな」

「話をするって言ってたけど、後日でもいいぞ。

 すぐ預けたいって言うなら別だけど」

 

 夫婦から気遣われ、疲労と眠気もあって何だか眩暈を覚えるウラヌス。

 

「あー……

 いや、大丈夫だよ。心配しなくていい」

「そんなナリで、くたくたな顔して、心配しなくていいなんて言われてもねぇ。

 いつも通りなら、わたしが近くへ来てソレ着せる前に絶対目を覚ましたでしょうに」

「……」

 

 全くもってその通りではある。ただウラヌスも、疲労のせいばかりとは思えずにいた。

 

「……さっきまで温泉に入ってたからな。

 ちょっと気が抜けてたんだよ」

「温泉!

 そっか、スノーフレイだもんね。

 いいわねぇモリー……温泉だって。羨ましいわー」

「ほら、こうやって浪費しようとする」

「ははは……」

 

 乾いた笑いで返すウラヌス。この夫婦は終始この漫才である。

 

「スノーフレイって、確か混浴なかったっけ?」

「……あるな。

 指定ポケットカードのイベントだし」

「じゃあ混浴に入ったわけ?」

「……。

 はいったけど」

「きゃー! だいったぁーん♪

 ねぇねぇ。もちろんあの子とよね?」

 

 言うと思ったよ……

 

 きゃっきゃと騒ぐベルに、ぶすっとしながらウラヌスは、

 

「4人でだよ」

「あ、4人……なるほど」

 

 急に盛り下がるベル。直後、また盛り上げ直し、

 

「で、で。

 あの子、やっぱりナイスバディーだった?

 興奮した?」

「……ベル。

 お前が期待してるようなことなんて、何もなかったからな?

 ちゃんと身体は隠してたよ。当たり前だろ」

「なぁんだ」

 

 なんでお前が興奮しとるんだ、と不機嫌になるウラヌス。モタリケは2人の顔色を窺うだけで、口を挟んでこない。

 タタタン♪ とベルは食卓を爪で小突き、

 

「せめて温泉土産とかないわけー?」

「みやげなぁ。いま宿泊してる真っ最中だから、土産って感じでもないだろ。

 ……まぁそんな気の利いたもんじゃないが」

 

 ワンピースのポケットから、みかんを2つ取り出して食卓に置くウラヌス。

 

「オレンジ?

 なんでこんなの持ってたの?」

「オレンジっつーか、厳密にはミカンな。

 俺達が泊まってる温泉旅館で売ってたもんだよ。

 どうせなら持ってきてやろうと思って」

 

 ベルはミカンを手に取り、

 

「へぇー。可愛い果実ね♪

 これって、皮は手で剥けるの?」

「子供でも余裕で剥けるよ。

 手軽に食えるオヤツみたいなもんさ」

 

 カップを手に取り、コーヒーを口に含むウラヌス。「ふぅん」と言いながら、ミカンを手にするモタリケ。食卓に置き直し、

 

「それはいいけど、相談しなくていいのか?」

「よくねーよ。

 相談始めていいのか?」

「ほいほーい♪」

 

 剥いたミカンを早速口にして上機嫌なベル。手で話を促し、コーヒーを飲むモタリケ。

 

 ウラヌスは一息吐き、話を切り出した。

 

 

 

 

 

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