どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百三十八章

 

 私はメニューを手に取り、

 

「えーと、次は……」

「ちょっちょっちょ。

 アイシャ、そろそろストップ、ストップで。このあと山登りだから。ね?」

「えー。

 分かりました……」

 

 なんだかんだで箸が進み、何杯目かのうどんの注文をウラヌスから止められてしまった。ちぇっ、まだ食べ足りなかったのに……。これで終わりなら、ネギとか揚げ玉とかもっとトッピング盛ればよかったよ。

 

 おにぎりも美味しかったんだけど、ウラヌスは登山中の携帯食として小さなおにぎりをたくさん頼み、包んでもらっていた。あと、無料のお茶を何杯も頼んで水筒に詰めるのがまたこすっからい。毎度のようにスペルカードの整理も終わらせ、マフラーを巻き直した私達はメシ処を出た。

 

 ウラヌスはもこもこマフラーで口許を隠しながら、

 

「トレードショップにお金を預けたら、もう雪山へ行くよ」

『えっ』

 

 もう行くのか。準備、これで大丈夫なのか?

 

「雪山に登るんでしょ? これで大丈夫なの?」

 

 私が考えていたのとほとんど同じ疑問を口にするシーム。

 

「昨日、服屋で言っただろ?

 これで雪山に行けるぐらいのつもりで整えとけって。

 せっかく今の格好で1日慣らしたんだから、このまま行くよ」

 

 うーん……それ自体は一理あるんだけど。

 

「こんな装備でホントに大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、問題ない」

 

 そこはかとなく危機感を覚えるフレーズだな……もこもこしてるし。

 

「……なんかさ。アイシャの俺を見る目が、妙な気がする」

「へ? いえいえ、別に何も」

「そう?」

「ええ……

 雪山へ挑みますから、不安なのは否めませんが」

「本当にこのまま登ったりしないよ。

 心配しなくても、登る直前にちゃんと小細工するから」

 

 なるほど。……それならそうと早く言ってよ。まあ、だったらお任せでいいや。

 

 

 

 トレードショップで貯金した私達は、スノーフレイの街の北側から出て、一路雪山へ。釣りに行った時と違い、行けども行けども降り積もった雪は薄くならず、むしろだんだん厚みを増していく。

 みんな言葉数が少ない。まだ疲れが溜まったわけじゃないだろうけど、それなりに緊張してきたんだろう。

 

「登山前に一服するから、それまでちょっと急ぎ足で行こう」

 

 ウラヌスの足が早まり、全員ペースアップ。私はまだオーラも纏ってないけど、荷物がないおかげで疲労もない。これぐらいなら、ちょうどいいウォーミングアップだ。

 シームの息が少し上がってきている。メレオロンはまだ平気そう。この辺りは予想通りかな。

 

 

 

 20分程度かけて、雪山の前まで到着した。

 

 ……地形的には、ここから雪山というのが分かるわけではない。ここまでもこの先も、なだらかな傾斜が付いてるのは分かるけど、どこが山と平地の境目なんだか分からない。なんせ真っ白だ。もう少し先を見れば、うんざりする傾斜があるから分かるんだけど。

 

 ともあれ、雪の積もった立て看板だけが、ここから山道だと示している。

 

『スノーフレイ山道 怪物と雪崩と滑落に注意!』

 

 ふふふ、イヤなフレーズだよ。怪物はいいとして、雪崩と滑落ってどう注意すればいいんだ。どちらかと言うと覚悟しとけよって感じだよね。

 

 ウラヌスは私達を見て、ぽむっと手を打ち、

 

「ひとまずここで休憩。

 休憩がてら、この雪山での目的を説明するよ」

 

 大きく息を吐いて座り込む姉弟。おや、シームは分かるけどメレオロンも疲れてたのか。単にポーズだけかもしれないけど。

 ウラヌスも、雪の上に座り込んで胡坐をかいたので、私も同じように座り込む。

 

「この雪山での目的は大きく分けて3つ。

 1つ目は、温泉の発見。

 雪山のどこかにランダムで出現するんだけど、闇雲に探す必要はない。

 もう話したと思うけど、ここはモンスターが出現する地帯で、基本的に山へ登ってると色んな場所から出てくる。

 で、温泉に近づくとモンスターの出現頻度が上がるんだ。だから、出現が激しくなっていく方を道しるべに進んでいけば、温泉も発見しやすい。

 これの報酬はそのまんま、指定ポケットカードの『美肌温泉』。

 2つ目は、モンスターカードの収集。

 この雪山にはモンスターが10種類出現するんだけど、その10種類と交換で指定ポケットカードのランクS入手に必要なアイテムが取れる。

 温泉探しのついでで出来るから、こっちはカードの確保さえ忘れていなければ、達成は楽かな。さっさと交換しに行かないとフリーポケット圧迫するけど。

 3つ目は、指輪探し。

 スノーフレイで形見の指輪を探してほしいって依頼があって、雪崩多発地帯の雪の中に埋まってる。……だから雪崩が起きやすそうな場所を避けたくても避けづらい。

 これを見つけると報酬として、ブループラネット入手に必要な宝石カードが手に入る。

 以上、目的3つ。なんか質問ある?」

 

 ふむふむふむ、と。……色々聞かないとな。

 何から聞こうか考えていると、シームが早速手を上げる。

 

「なに?」

「お茶飲んでいい?」

 

 あらら。私とウラヌスが軽くコケ、メレオロンは溜め息を吐く。

 

「どーぞ」

 

 ウラヌスに許可を出され、リュックをごそごそするシーム。

 

「あと、みんなの分のカイロも出してくれ。1人2個ずつな。

 こっからは常に使いながら進むから」

「はーい」

 

 えーと……

 

「温泉探すのって、まんま雪の中に美肌温泉がポンとあるのを見つける感じですかね?」

「その通りだよ。

 山中の秘湯を発見する、みたいなイベントだからね」

「モンスターって強いの?」

 

 メレオロンが尋ねる。確かに出現モンスターの説明を全くしてないな。

 ウラヌスは腕を組んで首を少し傾げ、

 

「強さより、雪上での戦いってのが一番厄介かな。

 グリードアイランドの敵は、どれも手強さは似たり寄ったりだし。

 同ランク帯は、だけど」

 

 その辺も気になるけど、忘れないうちにこっちを聞いておこうかな。

 

「雪に埋まった指輪を探すって話でしたけど、どう探すんです?」

「うーん……

 雪崩の起きやすそうな場所は見れば分かるけど、具体的にどう探すかってことだよね」

「ええ。

 流石に範囲が広すぎますし、アテがないのでは……」

「ごもっとも。

 だからまぁ、俺の仕事」

 

 トントン、と自分の目の下辺りを叩くウラヌス。ああ、そういうこと……いや、できるのか?

 

「あなたの目って、そこまで万能なんですか?」

 

 きょとんとするウラヌス。……っと、私も突っ込んで聞きすぎだな。ついつい尋ねすぎちゃうよ。

 

「……どう答えれば納得するか分かんないけど、出来ることと出来ないことはあるね。

 万能かって訊かれると、どうだろな」

「はい、お茶」

「ん。もらうよ」

 

 シームからカップを受け取り、ウラヌスはマフラーをずらして茶を一口すすった後、

 

「俺の目は普通にオーラもよく見える。わざわざ『凝』をしなくてもね。

 だから『凝』をすれば、かなりの範囲にわたって高い精度で見極められる。

 で、お目当ての指輪はオーラを纏ってるんだよ。おそらく発見しやすいようにちょっとだけね。

 それでも地面に指輪が埋まってたらお手上げだけど、雪の中ぐらいなら何とかなる」

 

 うぅーん? オーラって基本遮蔽物は貫通しないからな……。『円』を使った時でも、ぐるっと覆い隠されたりして完全に遮断されると探知できなくなる。

 土中の深いところまで探知できないのは当然として、分厚く積もった雪もムリなんじゃないか?

 

「でも……

 雪って、積もると固くなりますよね?

 カチカチに固まった雪でも、そこに埋まってる指輪なんて見つけられます?」

 

 ウラヌスは、にこやかに笑いながら首を振った。横に。

 

「ううん。ムリ」

 

 おいおい。じゃあどうやって見つけるんだ?

 

「アイシャ。

 指輪って、どういう風に置いてあると思う? ゲーム的に」

 

 ……。ゲーム的に……

 

「雪山のどこか、雪崩が起きやすそうな雪の中にランダム、とか?」

「まぁ実際、ランダム配置されるアイテムもあるからね。浮遊石みたいに。

 でも、今から探す指輪って別に指定ポケットカードでもないからさ。ランクDだし。

 そんなのが雪山のどっかにランダム配置とか、難しすぎるじゃん?」

「それはそうでしょうけど……」

 

 あらかじめランクを教えてくれてたら考え直したんだけどな。ちょっと情報不足だよ。

 

「アイシャの前提条件じゃ、俺には無理かな。

 積もり固まった雪の中なんて見つけようがないし、雪山なんて雪崩の起きそうな場所がいっぱいあるのに、そこをアテもなく掘り返して回るなんてキツすぎる。

 で、そもそものイベントの説明なんだけど、スノーフレイの街に雪崩で旦那を亡くした未亡人がいて、旦那が嵌めていたはずの指輪が見つからないって話が聞けるんだ。

 その指輪の捜索依頼を受けることで、本来はイベントがスタートする」

「……お得意の先回りですね」

「そ。

 旦那が亡くなった理由が雪崩だから、雪崩が起きやすそうな場所を探せばって話になる。でも、詳しい場所は教えてくれないんだ。不親切だと思わない?」

「……。

 ランクDの入手イベントにしては妙ですね」

「うん。だから俺の推測はこう。

 場所を教えてくれないんじゃなくて、教えられないんだ。──どこでもいいから」

「……ランダムだから教えられないってことじゃないんですか?」

「それだとランクDにしては難しすぎる、って話に戻っちゃうね。

 でも、考えられる理由はもう1つある。

 条件を満たせば、出る。

 このケースで考えられる条件って、なに?」

 

 しばらく考え──ひやっとする。まさか……

 

「……雪崩が……起きる?」

 

 ウラヌスはウインクしながら、軽くポージング混じりに私を指差した。アイドルか。

 

「YES、その通り!

 ぶっちゃけ雪崩を起こせば、この指輪は雪崩後の雪の中に配置されるんだ。

 それなら崩れた雪の部分は全然固まってないし、俺の目でも充分探し出せる」

 

 思わず姉弟と顔を見合わせる。2人とも目を丸くしていた。

 

「ひゃー……

 過激ねぇー……」

「雪崩なんて起こして、大丈夫なの?

 って言うか、どうやって起こすの?」

「このあと説明するよ。ちゃんと雪崩を起こすトリガーは用意されてるんだ。

 実際雪崩が起きた時は、俺が対処するから大丈夫だよ」

 

 この様子だと実践済みだな……。よくやるよ、ホント。

 

「ちなみに雪崩が起きると、その雪から指輪以外にも色々変な物が出てくるんだ。

 そういうハズレまでオーラを纏ってるから、ワリとヤキモキさせられる。

 ……帽子や手袋ならまだしも、凍ったタワシとか出てきた時はマジでビビッたよ」

『ぶッ!?』

 

 なんだ、凍ったタワシって。

 

 

 

 休憩がてら、雪山で出現するモンスターの説明をつらづらとするウラヌス。合間合間でシームがお茶を差し出すかたわら、長々と話し続けている。

 

 

 

 ──ホワイトラットは、リモコンラットの亜種で、物陰じゃなく雪の中に隠れてるから──

 

 ──このスライムは、攻撃こそしてこないけど、身体はかなりの低温を保っていて──

 

 ──普段のように警戒してるだけだと、雪の中から白いのが飛び出してくるから反応が──

 

 ──ちゃんとオーラを纏って攻撃しないとすり抜けるのは、こいつも同じだから──

 

 ──やっぱり集団って言う点が厄介で、白い体毛も相まって──

 

 ──雪山特有の脅威は持ち合わせてないけど、空から攻撃されると反撃が──

 

 ──こんなふうに飛び道具を飛ばしてくるモンスターが結構いるから、基本的に警戒は怠らないように──

 

 

 

「──こいつが度々あげる咆哮が、低確率で雪崩を引き起こす。わざと狙う時はいいけど、雪崩を起こされるとマズい場合は要注意。

 ふぅ……

 以上、こんなトコかな」

 

 ふむ……なるほどねぇ。よく出てくるモンスターの亜種が多いな。雪国仕様のマイナーチェンジってところか。

 

「いつも思うんだけど、よく覚えてるよね」

「そうやって立て続けに話されても、正直ほとんど忘れちゃうんだけど」

 

 シームが感心半分呆れ半分、メレオロンが呆れ半分諦め半分な顔でそう言う。

 

「つっても、まるっきり情報なしの初見で戦うより、いくらか知ってた方が動きも変わるだろ? とりあえず初動さえ気を付けてくれればいいさ。

 あと、こういうのは動かない情報だからな。流動的な情報だったら俺もいちいち覚えてないよ。ランクSの指定ポケットに絡むからでもあるけど」

 

 律儀に答えるウラヌス。登る前から御苦労様だよ、ホント。

 

「さて、そろそろ登り始めようか。

 アイシャ、後ろ向いて」

「はい」

 

 ウラヌスが立つのに合わせて私も腰を上げ、背を向ける。これもすっかり慣れたな。

 しばらく待つが、彼は何もしてこない。なんだ? 焦らすようなことでもないし。トントンと踵を上げ下げして催促する。

 

「……あの、アイシャ。悪いけどマフラー……」

「ああっと! ごめんなさいっ」

 

 慌てて巻きつけたマフラーをくるくる巻き取る。そうだった、ちょうど隠れる位置なんだよな。ダウンに収めた髪の毛も外へ出しておく。

 

「毎回思うけど、アイシャの髪って良い色艶してるよね。

 温泉に入ったおかげか、いつもよりちょっといい感じかも」

「そうですか?

 それなら、あなたの方も見せてくださいよ」

「ん? 別にいいけど」

「おーい、アンタ達。

 イチャイチャすんのはいいけど、さっさとそれ済ませなさいよ」

「うるさいですね。

 いいじゃないですか、ちょっと話すぐらい」

「軽く雑談してただけじゃないか。すぐやるよ」

 

 メレオロンが嘆息して肩をすくめる気配。

 

「おねーちゃん、アレってイチャイチャしてなかったの?」

「アタシはしてたと思うけど」

「してませんってば」

「あーもう、気が散るだろ。

 オーラごそっと減るから、気軽に出来ないんだぞコレ」

「なぁに言ってんだか。

 アンタなら、鼻歌混じりに雑談しながらでも出来るんでしょ?」

「……やろうと思えば出来っけど、そういう問題じゃねーよ。

 しくじったらシャレにならないって言ってんだよ」

「それは分かりましたから、そろそろしてくださいよ」

「はいはい……」

 

 ウラヌスのオーラが身体を包みこむ。そうそう、これだよ。ようやく戦えるな。

 

「あと、靴に神字描くから。

 俺以外全員ね」

「それって滑り止めの為ですか?」

「うん。……よく分かったね?」

 

 私は髪の毛を収め直し、マフラーをくるくる巻きながら、

 

「あなたの特殊な歩法が、ずっと気になってまして。

 正直、滑り止め付きの靴ぐらいで雪山に登るのもどうかと思ってましたから。

 小細工するって言ってましたし、雪の上でも滑らず歩けるようにする技術を持ってるんだろうなと」

「……全くもってその通り。ぐうの音も出ないよ。

 やりながら説明するから、靴底を俺に向けてくれる? しゃがみこんだ方がいいかな」

 

 うん。もう私にオーラを纏わせたし、確かにのんびりしてられないな。

 腰を下ろした私が膝を曲げて靴底を向けると、

 

「んー……ごめん。ちょっと触るよ」

 

 ウラヌスは私の靴の足首を持ち、トントンと踵を叩いて、靴底の雪や泥を落とす。

 

「あ、すいません」

「いいよいいよ。俺もいま気づいたし。

 すぐやるから少し待ってて」

 

 靴底に指が触れ、なぞる。そこから目を逸らさず、

 

「さっきの続きだけど、俺の歩法は体術と念のミックスだね。

 とは言え大抵は素で動いてるし、わざわざ能力発動するのは稀かな」

「そう? アンタ結構やってない?」

「ぼく、しょっちゅう能力使ってると思ってたけど」

「いやー……

 歩法絡みだとそんなには。

 こうやって神字を使ってる時と、本気で後ろ歩きする時くらいかな」

「樹を垂直に登ってたじゃないですか。

 アレは?」

「いいトコ気がつくね。いま俺がやってるのが、まさにソレだよ。

 流石に他人(ひと)の靴にかける時は神字を使うけど、これは俺が応用以上能力未満でやってることだよ」

「……あれを念の応用レベルでやってたんですか?」

 

 聞いたことないよ、そんなの。私が知らないだけかもしれないけど。

 

「うん。……アイシャ、終わったよ。

 次、メレオロンかシーム」

「アンタ、先にやってもらいなさいな」

「おねーちゃんが先でいいよ」

「いいからアンタが先に──」

「おねーちゃんが──」

「あーもう、オマエラこそイチャイチャしてんじゃねーよ」

『どこがっ!?』

 

 してるじゃないか、思いっきり。

 

「わーったから。

 適当にやっから、2人ともさっさと靴底向けろ」

 

 そんな感じでドタバタしながら、2人の靴にも神字を刻んでいくウラヌス。

 

「で、コレどういう効果なの?」

「俺が樹を歩いて登ってただろ。要は滑らなくなるんだ。

 厳密には、靴底と接地面の摩擦係数を高い水準に引き上げる。だから滑らなくなる」

「へー!

 じゃあアタシも樹を歩けるようになるんだ?」

「ならねーよ。

 アレは俺の歩法と組み合わせてやってんだから。

 短時間の壁走りぐらいなら出来るけど、慣れないうちは勧めない」

「やっぱり練習しないとダメなんですかね?」

「慣らすぐらいはした方がいいと思う。

 普通の地面を普段の靴で歩くより滑らないから、ヘタすると足首や膝を痛める。

 ……よし。2人とも、もういいよ。

 みんな、歩いたり小走りしたりわざと滑ろうとしたり、その辺で色々試して。

 さいわい雪も降ってないし、早く登りたい」

「これって、どれぐらい効果持続するんですか?」

「半日かな」

 

 神字の効果で半日なら、相当短いな。その分オーラを節約してるんだろうけど。

 

 

 

 しばらくウラヌスが仕込んだ神字の靴で動いてみたけど、なるほど全く滑らないな……。滑らなさすぎて、逆につんのめってコケないように気をつけないと。

 

「これはこれで歩きにくくない?」

「そりゃな。だから慣れがいる。

 雪山登りの定番装備で、靴に装着するアイゼンっていう鉄の爪があるんだけど、普通の地面を歩きにくくなるから色々面倒なんだよね。

 その神字なら全然軽いし、どこ歩いても問題ないし、慣れれば楽なもんさ」

「でも、ちょっと気になることがあるんですが……

 少し飛び上がりにくくないですか? 妙に雪がくっつくというか……」

「あー、確かに。

 ちゃんと説明してなかったね」

 

 ウラヌスは片足を上げて、自分の靴底を指し示す。その靴底にも、雪がいくらかこびりついてる。

 

「そもそもの話として、オーラっていうのは何もしなくても少しだけ粘着性があるんだよ。

 有機物に対してだと特にその効果が強くて、後は液体もそうかな。だから雪に対しても少し粘着性がある。たっぷり水分を含んでるからね」

 

 靴底の雪がひとりでにパラパラ落ちた。足を下ろし、ウラヌスは軽く手振りしながら、

 

「俺が樹を登った時は、今やったみたいにオーラの粘着性を強弱させて制御してたんだよ。

 でも神字でやった場合、俺も靴を履いてる本人もオーラを制御しようがない。だから、それについてはどうしようもないかな。マメに爪先をトントンして雪を落としてほしい」

 

 なるほどね……。ひょっとしたらヒソカのバンジーガムも、オーラが有してる粘着性を能力にまで昇華させたのかもな。

 

 

 

 

 

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