どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百四十三章

 

 後払いでチェックインし、宿の一室でベシャっと潰れる私達。とにもかくにもコタツに潜り込む。

 

『……はぁー……』

 

 全員が一斉に息を吐いて、お互いに苦笑いする。控えめに言っても、雪山は地獄だったからね。それに比べたら、ここはパラダイスだよ。

 

「ここもコタツなのねぇ。全然OKだけどさ」

「畳部屋で暖房の管理コスト考えたら、コタツがベストだろうしな。

 ホテルとかだと雰囲気合わないからか、ヒーターとか床暖房だったりするけど」

「むしろ、コタツがある宿だからこそ選んだんじゃないですか?」

「……違うとは言わないでおくよ」

「ぬっくぬくぅー。

 ウラヌスー、桜出してぇー♪」

「ムチャ言うな。ちょっとはオーラ回復させてくれよ……」

 

 雑談を楽しむ私達。なんだかんだで、ひと冒険だったからな。休養は大事だ。

 

「なんか食べるモノないのー?」

「オマエも無理言うなよ。トレードショップ行ってないから、金ねーよ。

 軽く休憩したら、早速換金とか行かないと……」

「他にも用あるんですか?」

「えっと、ほら。最後に指輪取ったじゃん?

 アレを渡して、宝石カードを受け取らないと」

「あー。

 そういえばそうでしたね」

「今の状態で他プレイヤーとの遭遇は避けたいし、身体を少しでも休めないと……」

「ウラヌス、ここってお茶はタダで貰えますか?」

「あ、うん。ここも言えばくれるよ。

 むしろセルフサービスで不親切なぐらいだし」

「じゃあ私が貰ってきますね」

「あー……

 いや、アイシャはこの旅館に不案内だろうし、俺が行っ──」

「休んでてください。

 あなた達はオーラを回復させないといけないですから、こういう雑用は私がやります」

「……はい」

 

 身体的な疲労や負荷は私が一番小さいだろうし、オーラうんぬんは今の私には関係ないからね。3人の回復を少しでも促す為に、私が動かないと。

 

 

 

「かー……!

 あっついお茶うまぁー!」

「オッサンくさいぞ、メレオロン。気持ちは分かるけどな」

「そう?

 これもおいしいけど、雪山のお茶おいしくなかった?」

「あの状況で飲み食いしたら、大概のモンは美味しいわよ。

 けど、熱いお茶はそんなの関係なしに美味いわぁー」

「アイシャ、お茶煎れるの巧いね」

「あなたがやってるのを見てましたからね」

 

 今朝まで泊まってた旅館と同じ種類のお茶みたいで良かったよ。お茶によって美味しい煎れ方が違うから、ちょっと自信なかったんだよな。

 

「あんまりグズグズしてもいけないし、15分したら動こうか。

 ところで、今日の夕食は何がいい?」

『──鍋ッ!!』

「おおぅ!?

 ……な、なべはいいけど、その心は?」

「明日の朝、スノーフレイを発つんですよね?

 なら、朝食はここで食べるでしょうし、最後にお鍋を食べ納めたいじゃないですか」

「あんだけ寒い思いして、鍋食えないとか有り得ないわよ!」

「言いたいこと、全部言われちゃった……」

「おーけー、おーけー。

 ベルもサーモン食いたいとか言ってたし、例の鮭鍋の店でいい?」

 

 もちろん満場一致でした。じゅるり。

 

 

 

 一服し終えて、旅館を出た私達はトレードショップへ向かった。何をおいても、予算がないとな。

 

 さくっと売り終えるかと思えば、バインダーを眺めて考え込んでいるウラヌス。メモを取り出し、やけに慎重だ。

 

「どうしたんです?」

「んー。ドリアスに行くから、ここに金残しても仕方ないし、スペルカードも買いたくて。

 モンスターカードは1枚ずつ残さないといけないし、えーと……」

 

 あらら、ややこしいこと悩んでるよ。ベルさん達も絡んでくるし、面倒だろうな。

 

「アンタ、そういうのは旅館で考えときなさいよ」

「……ごめん。うっかりしてた。

 そうしてたら、もうちょっとノンビリできたのにな」

 

 私がメレオロンを視線で咎めると、シームにも似たような目で見られてバツの悪そうな顔をするメレオロン。ウラヌスも疲れてるだろうに、そこまで要求するのは酷だろう。

 

 

 

 カードの持ち運びを考え、1万J未満の不要なカードだけを売り、トレードショップの預金を全額下ろす。これで所持金は50万ジェニー近くになった。

 

 トレードショップを出た後、未亡人の住む家を訪ね、しんみりする会話イベントの末に宝石をゲット。

 

 

 

『180:雪空オパール』

 ランクC カード化限度枚数40

 雪の結晶と信じられている 優しい純白の宝石

 雪に混じって まれに空から降り来ると伝えられる

 

 

 

「ようやく宝石3つ目か。先は長いねぇ」

「ランクSSの入手条件ですから、仕方ないですよ」

「アンタ、ランクSSって取ったことあるの?」

「ムリムリ。

 入手条件を満たすだけならともかく、取った後に守り切る自信がねーよ。四六時中警戒しないといけないからさ」

「そうですね……

 流石にランクSSともなると、入手後のカード管理の方が難しいかもしれませんね」

 

 だからこそ『堅牢』が欲しいんだけどな。トレードも期待できないだろうし、どうしたものか。

 

 

 

 帰りがけに軽く飲み食いしながらワイワイと宿まで戻り、忘れないうちに宿代を払って再びコタツにIN。

 お茶やポテチなんかをコタツに並べ、ぬくぬくとくつろぐ。雪山のことを思い返すと、ホント天国と地獄だよ。雪崩、かなり危なかったしなぁ……

 

「さーてと。

 億劫だけど、この後のことを考えないとね」

 

 いくぶん顔色の良くなったウラヌスが、そう切り出す。もう5時だもんな。

 

「あの2人に連絡しないといけないのよね?」

「まぁな。

 ただ2人と話す前に、こっちの方針を固めないと」

「むぐむぐ……

 一度合流したら、少なくとも明日いっぱいは一緒なんですかね?」

「どうだろなー。

 ドリアスに1日としか言ってなかったし、日帰りなのか泊まりなのか……」

「アンタ的にはどうしたいの?」

「俺的には日帰りしてくれた方が楽かな。少なくとも明日の宿代までたかられずに済む。

 ドリアスの攻略が長引いたら、ちょっとどうなるか分かんないけど」

「そうよねぇ……

 で、そこの焼き鳥モリモリ食ってるお嬢さんは?」

「むぐむっ。

 ……なんですか、その言い方は。

 私は別に、ベルさん達と日帰りでも一泊でも構いませんが。

 どちらかと言えば、私はあなたに聞き返したいですよ」

「アタシは……」

「どうせ、嫌だけど攻略は進めてほしいっていう板挟みだろ?」

 

 ウラヌスに指摘され、目を逸らすメレオロン。まぁそうだろうな。なんせ合流するのはこれからだし、仲間以外の人と一緒に行動する最長期間になるだろう。

 

「ドリアスで攻略が順調に進めば日帰り、難航したら続けて攻略する為に一泊。

 くらいしかないと思うけどな」

「ま、そうでしょうね」

「……イヤならイヤって言えよ」

 

 ウラヌスが優しい声音でそう伝える。困り顔を強めるメレオロン。ふと弟の方を見て、

 

「アンタはどうなの? さっきから黙ってるけど」

 

 シームは少し厳しい目を向け、

 

「おねーちゃん、ちょっとは自分で意思表示しなよ」

「ぁー……

 アンタにそんなこと言われると傷つくー」

 

 コタツに突っ伏すメレオロン。シームの目にも余るぐらいだし、よっぽどだよ。

 

「嫌でも何でも、状況に合わせて動くしかないじゃない……

 ガマンするわよ。すればいいんでしょ」

「おねーちゃんが悩んでるのは、そのことじゃないでしょ?」

 

 メレオロンがビクンと反応した。シームは静かに続ける。

 

「ガマンするかどうかなんて悩む必要ないじゃん。

 悩んでるのは、正体を明かすかどうかでしょ?」

 

 私とウラヌスが束の間、目を合わせる。……そうか、そのことか。

 

「バレないようにするのもしんどいし、もしかしたらどこかでバレるかもしれないから、それなら正直に話した方がいいかもって考えてるんじゃないの?」

「……アタシが楽になる為に話すわけにはいかないじゃない。

 迷惑かけるかもしれないし」

「でもおねーちゃんが悩んでる理由も一緒でしょ?

 バレて騒ぎになったら、もっと迷惑かけるかもって」

「……。

 はぁー……

 そう、よ」

「……オマエな。相談しろよ、そういうことは」

「そうですね。

 1人で悩むことじゃありませんよ」

「相談するつもりではいたわよ。

 ……その前にシームにバレただけで」

「バレバレじゃん」

 

 いや、シームよく気づいたよ。……ちゃんと見てるんだな。

 

「正直に話せないなら、誤魔化せばいいだろ?」

 

 ウラヌスがそう提案する。うん、私も同じこと考えてた。

 

「たとえば……そうですね。

 新種の魔獣なんてどうです? 全くのウソでもないですし」

「魔獣ねぇ。

 ……それで納得するかしら?」

「人目につくのが嫌で、姿を見られないようにしてるって言えば理由としちゃ充分だろ。

 それなら、アイツラだけに顔見せる理由にもなるしな」

「んー……」

 

 シームが何か考える素振り。

 

「シーム、気になることでも?」

「えっと……

 ボクどうしようって」

 

 ん? ……あ。

 

「あーダメだ、うっかりしてた。まずいな」

「マズイですね。

 2人とも全く見た目が違うのに、姉弟って……」

 

 4人で『うーん』と唸る。難しいな。シームはパッと見、普通の人間だからな。なのにわざわざ人間じゃないなんて言うのも……

 

「……。

 義理の姉弟とか?」

「シーム、それ根掘り葉掘り聞かれたらどうするんだ?」

「あー、うー……

 お父さんとお母さんが死んじゃって、困ってたところを助けられた──とか?」

「全くのウソではないですし、それでいいんじゃないですか?」

「……なんかそれだと、アタシが両親殺したみたいでイヤなんだけど」

「まぁそうだな。勘繰られるとマズイか。

 ……家族で車での旅行中、山中で交通事故に遭って両親亡くして、アテもなく山の中を彷徨ってたところを助けられた、なんてのは?」

「うーん……

 アタシは別にそれでもいいと思うけど」

「でも、ボクのこの鱗とか、もし見られたらどうしよう?」

「その問題もありましたね……

 ……それはいっそ、多分念能力でそうなってしまった、でいいんじゃないですか?

 念能力はまだ未知数の部分がありますし、説明できない不可解な現象くらい充分起こり得ますから」

「アタシぐらい見た目変わっちゃうと、その手は使えないだろうけどねぇ」

「まぁ……そうですね。

 シームは変化が小さいですし、整形手術でもっと見た目を変えてる人達もいますから」

「ああ、十二支んとかは確かにそうだったね」

「あの人達は分かりやすいですね。

 実例もあるんで、大丈夫だと思いますよ」

「大丈夫かなぁ……」

 

 

 

 しばらく相談を続け、あらかた決め終えたところで、

 

「方針も固まったし、そろそろ連絡するけどいいか?」

「どーぞどーぞ」

「ボクもいいよ」

「私も構いません」

「じゃあベルに連絡するよ。ブック」

 

 バインダーを開いて操作し、少し待つウラヌス。

 

「ウラヌスだ」

『はぁい♪ 待ってたわ。

 首尾はどうだった?』

「そういう話はまた後でな。

 とりあえず、こっちは片付いた。いつでも合流できるけど、そっちは?」

『モリーは仕事から帰って来てるし、着替えて出る準備が済めばいつでもいけるわ。

 どこで待ち合わせするの?』

「スノーフレイでメシ食う前に、スペルを補充したいんだ。

 だから準備が終わったら、マサドラの入口に飛んでくれ。そこで合流しよう」

『分かったわ。

 ウチで預かってるヤツ、持っていった方がいい物ってある?』

「いや、特にないからそのままにしといてくれ。

 明日ドリアスへ行く前、不要になった冬装備を預けに行くしな。その時に持ち出すよ」

『りょーかい。

 スペルを補充ってことは、できるだけフリーポケットは空けた方がいいのよね?』

「ああ。

 今日の分の予算はこっちで賄うから、金も持たなくていい。必要な物は手荷物にして、フリーを空けてくれると助かる」

『うんうん。会う時間はどうする?』

「さっきも言ったけど、いつでもいいさ。

 そっちの都合だけだよ」

『そうね……今が5時20分だから……

 余裕見て、5時45分にマサドラの入口でどう?』

「いいけど、それで間に合いそうか?」

『着ていくモノとか、必要そうなモノの用意は予めしてあるから。

 カードの整理にちょっと時間かかるくらいよ』

「そっか。じゃあ5時45分にマサドラな」

『うん♪ 用件はそれだけ?』

「ああ。それじゃあ後でな」

『はーい♪

 温泉楽しみにしてるわ。バイバーイ♪』

「……。ブック」

 

 交信を終えて、パタンと閉じたバインダーを消すウラヌス。

 

「はぁー。……アイシャ」

「なんです?」

「誰かと協力するのって、色々面倒だけどさ。

 やっぱりやらないとダメだね。時間効率が全然違うもん」

「ふふ、それはそうですよ。

 バインダーの枠に限りがある以上、1人じゃ効率が悪すぎますから。

 ゆっくり時間をかけられるなら、クリアできるかもしれませんけど」

「確かにね……

 他人との競争なのに、のんびり1人でクリアできるわけないもんね。まして、他人から積極的にカードを奪わずに単独で集め切るなんて……そんなやり方じゃゼッタイ勝てっこない。

 それは認めるよ」

「カードを独占していればまだやりようはあるかもしれませんが、ただでさえ余裕のないフリーポケットを更に圧迫してしまいますからね」

「……

 こっちは認めるのに抵抗あるけど、ハメ組の連中がなんだかんだで上手いことやってたって分かっちゃうな。俺と違って、コンプ寸前まで集めてたわけだし。

 プーハットが妙に自信あったのはそういうことだろうね」

「彼らの中にもし充分な実力者が揃っていたら、私達も彼らを差し置いてクリアできたかどうか……。人数がいるチームは、やはり侮れませんね」

「まぁ実力者は徒党を組みたがらないから、なかなかそうはならないだろうけどね。

 結局バッテラの懸賞金が、妙な塩梅にしてたんだよなぁ」

 

 そうだろうな。バッテラさんはクリア報酬を求める一心で、懸賞とゲーム収集をしてたんだろうけど、結果的にそれがゲームクリアを遠ざけてた気もする。ゲームの内情を充分知らないバッテラさんにしてみれば、他に手が思いつかなかったんだろうけど。

 

「そういえば、いま他プレイヤーの攻略ってどこまで進んでるんでしょうね?」

「……気になってきたね。

 まだ始まったばかりではあるけど、割とクリア前の攻略法がそのまま使えるイベントも多いし、思ったより順調にカード集めてるチームも多いかもね。

 明日のドリアスがひと段落ついたら、一度ランキングを確認しようか。今後ランキング対策しそうなチームが、今なら分かるかもしれないし」

 

 

 

 約束の時間が近づいてきたので、名残惜しくコタツから離れ、宿の玄関へ。リュックはいくらか回復した姉弟がいつも通り背負っている。預かろうとしたけど断られてしまった。だいぶ軽くなってるし、大丈夫だとは思うけど。

 

 宿の外に出て、携帯電話で時間を確認するウラヌス。

 

「もう時間だから飛ぶけど、準備いい?」

「はい」

「ちょっと待って……いいわよ」

「うん」

 

 メレオロンがフードを目深に被り、全員が承諾する。

 

「じゃあ行くね。

 ──『同行/アカンパニー』オン。マサドラ」

 

 

 

「ほぉら、やっぱり来てない」

 

 マサドラへ飛んできて、開口一番そう口ずさむウラヌス。うん、知ってた。

 

「ヨソならともかく、ここで待つのはイヤなんだけどな。暑いし」

「どうします? 入口から少し離れましょうか」

「うーん……そうだね。

 飛んできたら分かる程度には離れようか。最低20m以上」

 

 いつ来るか分からないしな。ぼんやり入口に突っ立って他プレイヤーと無駄に遭遇するとか、今は避けたいからね。

 

 

 

「おっせーよ」

「ごっめーん! ギリギリでバタバタしちゃって!」

「だから多分キツイってオレ言ったのに……」

「だってモリーが後から忘れ物アレコレ言うから!」

「忘れる方が悪い──」

「あーもー。初っ端からウルセーよオマエラ。

 こっちは待ってたんだから、さっさと行くぞ」

「はいはーい♪」

「……遅れて悪かったよ」

「別にお前は謝らなくていいさ。聞いてる感じ、悪いのはベルだろ」

「えー」

 

 うむ、来て早々ドタバタしてるな。この夫婦はこれが平常運転なんだろう。ぶっちゃけ、所構わず暴走するバカップルよりマシだしな。

 

 

 

 入口近くで話していても仕方ないので、マサドラの街中を移動し始める。

 

 夫婦2人ともスノーフレイを意識した格好で、なかなかにモコついていた。ベルさんの可愛らしい格好は何となく分かるけど、モタリケさんがしっかり着込んだ姿は何だか新鮮だな。困ったことに、このメンバーで一番男性らしい姿である。……次にそれっぽいのがメレオロンだからな。

 

「なに、アイシャ?

 さっきから俺の方チラチラと」

「あ、いえ。ちらちら見てたのは事実ですけど……

 別にあなただけでなく、みなさんの冬服を眺めていただけですよ?」

「ふぅん。ふぅん……」

 

 あまり納得してないウラヌス。……だってねぇ。マフラー外してるのに、こんなんだし。

 

 

 

 暑い思いをしてトレードショップに到着し、1万ジェニー以上するモンスターカードを不要なぶんだけ処分、枚数調整に『城門』1枚を合わせて売却して、スペルカード購入の予算を残して全額預ける。

 

「あなた達、こうやって計算ちゃっちゃとやってくれる人がいるから楽よねー」

「アハハ……」

 

 乾いた笑いを返しておく。楽だけど、申し訳ないんだよね。……まぁ前回のプレイでもやらなかったけどさ。もちろん全くやってなかったわけじゃないけど、誰もウラヌスほどきっちり計算してなかったんだよな。私も含めて。

 

 

 

 で、スペルカードショップへ。

 

「いったんわたし達のスペルも混ぜたら?

 最終的に戻せばいいんだし」

「うん、そうするよ」

「あー……もしかして『窃盗』も?」

「俺達も1枚取っておいてるカードだし、あんま気にすんな。

 ちゃんと最後に返すから」

「……分かったよ」

 

 分けて考えるとややこしいもんな。どうせしばらく同行するんだから、お互いその方がいいだろう。モタリケさんは不服そうだけど仕方ない。

 45パック購入した結果、私達のスペルカードは計227枚になった。

 

 

 

 『盗視/スティール』4枚

 『透視/フルラスコピー』4枚

 『防壁/ディフェンシブウォール』8枚

 『反射/リフレクション』2枚

 『磁力/マグネティックフォース』3枚

 『掏摸/ピックポケット』2枚

 『窃盗/シーフ』2枚

 『交換/トレード』1枚

 『再来/リターン』22枚

 『擬態/トランスフォーム』4枚

 『複製/クローン』3枚

 『左遷/レルゲイト』6枚

 『初心/デパーチャー』2枚

 『離脱/リーブ』3枚

 『念視/サイトビジョン』1枚

 『漂流/ドリフト』10枚

 『衝突/コリジョン』5枚

 『徴収/レヴィ』2枚

 『城門/キャッスルゲート』21枚

 『贋作/フェイク』1枚

 『強奪/ロブ』4枚

 『堕落/コラプション』5枚

 『妥協/コンプロマイズ』3枚

 『看破/ペネトレイト』1枚

 『暗幕/ブラックアウトカーテン』3枚

 『聖水/ホーリーウォーター』3枚

 『追跡/トレース』1枚

 『投石/ストーンスロー』3枚

 『凶弾/ショット』3枚

 『道標/ガイドポスト』4枚

 『解析/アナリシス』14枚

 『宝籤/ロトリー』18枚

 『密着/アドヒージョン』4枚

 『浄化/ピュリファイ』1枚

 『神眼/ゴッドアイ』1枚

 『再生/リサイクル』6枚

 『名簿/リスト』10枚

 『同行/アカンパニー』18枚

 『交信/コンタクト』19枚

 

 

 

 不機嫌にカードを数えるウラヌス。ベルさんは不思議そうな顔をし、

 

「んん? これ全部そろってんじゃないの?」

 大天使取れるんじゃない?」

「揃ってねーよ」

「え? でもメチャクチャそろってるじゃない。

 あなた達の手持ちも合わせたら」

「39種だよ。

 ……『堅牢』がない」

「あー。そっか、それか。……またソレ?

 1枚くらい無理やり取れないの? トレードとか」

「ム・リ。

 トレードで出るようなカードじゃねぇし、そもそも持ってるヤツが分かんねーよ。

 逆に『堅牢』が引けたら、他の39種なんて速攻で集めてる」

「ほんっと、あのカードだけは出ないですよねぇ……」

 

 私が嘆息混じりに告げると、ウラヌスは頭をカリカリかき、

 

「1枚あれば、だいぶ楽になるんだけどなぁ……

 今回『擬態』も引けてないし、腹立つわー」

「そう?

 けっこう高ランク引けてるじゃない」

「……いや、俺達にとって有用なカードが少ない。

 逆にいらないカードがやたらダブついてる。

 今こそ欲しい『同行』が2枚しか引けてないのに、『再来』は15枚も引いたし……」

「別に『再来』は使えるでしょ?

 いいじゃない、たくさん引けたって」

「普段はな。

 でも俺達はしばらく6人で移動するから、当然使うのは『同行』だ。

 有効に使えるタイミングまで取っとくなら、それまで『再来』は邪魔になる」

「あー……」

「今さら『漂流』が10枚も引けてるし、もー」

 

 あらら、ピリピリしてるな。……6人分のカード管理だし、ナーバスにもなるか。まだ疲れてるだろうしな。

 

 

 

 ウラヌスがプランを立て終えたので、ぞろぞろとスペルカードショップを出る。

 18枚ある『宝籤』を、ちょうど6人いるので3枚ずつ分けて持ち、道すがらクジ引き。うーん、芳しくない。みんなの顔色を見てもやっぱりそんな──

 

「あっ」

「どうしたベル? なんか引いた?」

「あ、えっと。うーん……」

 

 ウラヌスの問いに、珍しく口ごもるベルさん。隣を歩くモタリケさんが覗き込み、

 

「……なるほど。ちょっと煙たいのが出たな」

 

 それは気になるな。私は歩みを緩め、横からカードを覗き込む。

 

 

 

『266:通行チケット』

 ランクB カード化限度枚数150

 G・Iから出る時に必要な券

 所長から金で買うか所長を倒すと入手できる

 ちなみに無理難題をいくら聞いてもチケットはくれない

 

 

 

「それは……

 港から出る時の」

「ああ、通行チケット引いたのか。お前、すごいトコ引いてくるな」

「……別にいらないんだけど」

「もらっとけよ。俺達は当分使わないし、自力で取れるから必要ない。

 それはアイテム状態で使うから、持っててもフリーポケットを圧迫しないよ」

「んー」

 

 ゲーム外へ出る気のない人がこういうの引いちゃうって、すごい皮肉だな。2人を説得するキッカケとしては有り難いんだけどね。

 

 

 

 

 

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