今回は巻いていきます|・ω)卍゙{ぐるんぐるん
第百七十九章
9月28日。
朝からウラヌスが高い地図を用意、3人で『うわー』と言いながらそれを眺め。
色々と雑談で盛り上がった後、肝心のどこへ行くかという話は、迷宮都市で決まりかと思っていたらメレオロンが大反対。
姉弟で行く行かないの大喧嘩になりそうだったので、ウラヌスがそれを止め。
シームを説得し、迷宮都市にはいずれ行くということで決着。話し合いの末、目的地は牧農都市ハイループになった。
とてものどかで、晴天に恵まれたこともあって、シームも機嫌を直してくれた。高原を気持ちよく散策がてら、情報収集とイベントを開始。
『美を呼ぶエメラルド』は少し情報が出てきたものの、結局あの宝石店でイベント発生させないとダメらしいということが分かり。
晴天時にイベントが発生する『7人の働く小人』を入手して、私達はハイループを後にした。
昼からは、もちろんオータニアでみっちり修行。充実した1日だったな。
9月29日。
念・願・の! 飽食都市グルセルへ!
前日のうちにモタリケさんとベルさんへ話を通し、6人で訪れた。
いま挑戦できる指定ポケットカードのイベントは実質1つだけで、3人でファミレスの全メニューを制覇するというものだった。
これに私とモタリケさんとベルさんが挑んで、みごと完食。『バーチャルレストラン』入手に成功した。そのイベントしか挑戦しないのもアレなので、あまり意味はないものの『強制予約券』のイベントにも参加。
私とウラヌスとベルさんの3人で、レストランに用意された食材をふんだんに使って、競うように料理を乗せた皿を並べていく。
結果、私が9皿、ベルさんが7皿、ウラヌスが14皿でフィニッシュ。『強制予約券』のオリジナルカードを入手した。
はぁ……負けた。また賭けで負けた。次にソルロンド行った時、スク水で釣りだよ……やだなぁ。
────9月30日。アームストル、風間流合気柔術本部道場。
今日はリィーナ直々に会食を、ということで朝から道場に呼び出しを受けていた。
またあの話だろうな……とゴンはうんざりした気分で、本部道場を訪れる。
道場の受付に案内してもらい、「こちらでお待ちです」と促された一室へ入ると、
「おはようございます、ゴンさん」
「う、うん。
おはよう、リィーナさん」
和風な室内には、既に食卓へ食事が並び、リィーナを始めとする面々が席に着いていた。
キルア、クラピカ、レオリオ。それにミルキ。
5人が四角い食卓を囲んで座り、沈黙のままゴンを見やる。まだ食事にも手を付けずに。
いずれもアイシャに対して特別な思い入れのある人間だ。それだけで、一体これが何の集まりかゴンでも確証が持てる。
今までも色んな相手から詰問を受けてきたが、これだけの人数から一度には初めてだ。しかもクラピカは、この件ではまだ電話でやりとりした程度で、面と向かってはこれが初。嫌でも緊張感が増してくる。ゴンを案内した受付の人は、室内の空気に慄いて挨拶もせず立ち去ってしまった。
どこに座ろうか迷っていると、キルアが隣の席を手振りで勧めてきたので、助かったとばかりにそこへ座るゴン。よく考えれば空席に食事が並んでる場所はそこだけなので迷いようがないはずなのだが、今のゴンはそれほど冷静さを欠いていた。
リィーナが立ち上がり、不機嫌そうに和室の戸を閉め、着席し直した後、
「みなさんお揃いですので、食事を始めましょう」
こうして、ゴンにとっては針のムシロに他ならない朝食が始まった。
意外に朝食は大人しく終わり、食後の飲み物が運ばれてきた後。
ドレスを着たリィーナが静かにお茶を口にし、湯飲みを音も立てずに置く。
「ゴンさん。
すでに察していることとは思いますが、例のお話を始めてよろしいでしょうか?」
日に日に冷ややかさが増してくる目を向けられ、
「うん……
アイシャのことだよね?」
溜め息を吐くのも躊躇う空気の中、ゴンが尋ね返す。リィーナは固い表情で頷き、
「先生がアームストルで消息を絶ってから、半月が経ちました。
現在の居所はおろか、9月15日の朝から一切の足取りが掴めておりません」
うつむくゴン。内心ほっとするものの、ここで自分が口を割れば全て終わりだ。
「ミルキさん。
アームストルの飛行船発着場から先生がどこへ行かれたか、調べはつきましたか?」
「いや……無理だった。
本当ならもう少し調べられたんだろうが、ハッカーハンターがまだ警戒を弛めていない。仕方無しにそれ以外の手段で移動した線をしらみつぶしに調査したが、そちらも手掛かりなしだ」
「そうですか……
引き続き調査の方、よろしくお願いします。もちろん無理はなさらずに。仮にハッカーハンターがあなたを突き止めたとしてもワタクシの方から手を回しますが、あなたの力が真に必要になった時、十全に動けないという事態は望ましくありませんので」
「ああ……」
ゴンが沈黙のまま、その会話を俯き加減に聞いている。ごほん、とレオリオの咳払いが聞こえる。
「あー。
オレから1つ聞いていいか?」
「どうぞ、レオリオさん」
「どうも。
正直ここまで
リィーナさん。その気になればアイシャを見つけられたんじゃないか?」
「と言いますと?」
「ほら、アレだよ……バッテラさんの時にやったやつ。
恋人に病気っぽい念をかけた犯人、発見してみせただろ?
その時と同じ手、使えないかな?」
ドキッとするゴン。そうだ、確か風間流には人探しの念能力を持った人がいて、それで見つけ出したんだった──と思い出す。非常にマズイ。
その質問に対し、リィーナは眉をひそめ、難しい表情を返す。
「結論から申し上げると、無理でした」
「そっか、その手は無理か……
──ん? 無理
レオリオが拾い上げた言葉尻に、頷き返すリィーナ。
「ええ、そうです。
過度の期待や誤解があるといけませんのでお教えしますが、バッテラさんの恋人に念をかけた犯人探しをした時は、人探しの能力だけで居場所を突き止めたわけではありません。
秘匿すべきことなのでワタクシから詳細は明かせませんが、特定の人物の居場所を突き止めるには、相応の情報とそれなりの条件を揃える必要があります」
「ということは……
今回は揃わなかったってことか?」
「そうですね……残念ながら。
ただ、仮に人探しの能力を用いたとしても、無理だった公算が大きいのです。
先生にはあの能力がありますから」
「……あ」
全員の脳裏に、アイシャが持つ能力【ボス属性】のことが浮かび上がる。──アイシャ自身を対象にした能力であれば、まず間違いなく無効化されただろう。
ゴン以外は知る由もないが、現在のアイシャはボス属性が使えない状態だ。であれば、居所を突き止められたかというと……実は無理だったりする。
その手の調査能力は、グリードアイランドに居る間は全て弾かれてしまうからだ。あの島は外部からの調査能力を、徹底的に警戒している。島の座標を容易に特定されることに繋がるからだ。……島の内外を自由に行き来できるようになった、レオリオが異常なのである。
「ゆえに、今のところ先生の居所を知る手掛かりは、ゴンさんだけということです」
「オ、オレも知らないってば……」
「ゴン。
私の能力を使うまでもなく、それは嘘だと分かるぞ」
それまで沈黙していたクラピカが差し込んでくる。ぐっ、と呻きかけるゴン。
クラピカには【導く薬指の鎖/ダウジングチェーン】がある。これを使われたら、何を言っても嘘か本当か見抜かれる。
ただゴンも、これについては対処法を考えていた。
肝心要の居場所さえ特定されなければいい。自白しない限り、そうそうバレはしないのだから、そこさえ気をつければいい。
なによりクラピカがもし能力を発動したら即逃げるつもりだ。耳を塞いで。何も聞こえなければ、何も嘘を吐くことはない。
本当に強引な手を使われたら危ないことは承知していたが、ここは踏ん張りどころだとゴンも覚悟していた。最悪、本気で仲間と一時的に敵対しかねないが、アイシャのことを思えば無理を通したいのがゴンの心情だった。
そして、そんなゴンの覚悟をある程度見抜いているクラピカやリィーナは、強硬手段に出ることを躊躇していた。無理やり聞きだそうとすれば、ゴンを相当に痛めつけることになるだろう。レオリオに後で治療を頼むにしても、骨の1本や2本折ったところでゴンが口を割るとも思えず、それこそ拷問までして吐かせていいものか悩むのは当然だった。
つまるところ、たかがまだ半月だ。単にアイシャがこっそり旅行を続けてるという線も消えない以上、そこまで強引な手には出づらかった。
ただ……
「あらかじめのお話もなく、先生は半月もの期間、連絡を絶たれています。
もちろん連絡すれば居所を知られると警戒されているのかもしれませんが、ワタクシがこれほど心配することも先生なら察していたはずです」
「うん……」
「そこまでする理由が思い当たらないのですよ。
お1人で旅行をしたいという理由だけで、徹底的に行方をくらませて。
……ゴンさん。先生に何かあったら、あなたは責任を取れるのですか?」
「そんなこと言われても、オレほんとに知らないんだってば……」
「ゴン」
クラピカが首を横に振る。しらばっくれるのは通じないと言いたいのだろう。確かに今【導く薬指の鎖】を使われたら即アウトだ。
「平行線だねぇ……
こいつはいくら聞いても時間の無駄だと思うけどな。ゴンも頑固だからよ」
「レオリオさん。
あなたは先生のことが心配ではないのですか?」
「いやいや、そんなわけないだろ?
あんなこともあったしな……いくらアイシャが強かろうと、不安がないって言やぁ嘘になる。
けどよ。もしあの時と同じような理由なら、ゴンにだって伝えないはずだろ?」
「それは……
そうかもしれませんが」
もしアイシャの身に危険が迫るとゴンが知っていれば、助けに行かないのは不自然だ。ゴンの性格を知っている者なら、当然その結論に至る。むしろ仲間に声をかけて、一緒に助けに行こうとするだろう。
そのゴンが動かないのだ。少なくとも差し迫った事態にはなっていないと判断せざるを得なかった。
「ゴンに伝えたのは、やっぱ心配するなって意味だと思うんだけどな。
……ま、オレだって居場所が分かれば、今すぐにでも飛んでいきたいさ。できればな」
もちろん神字のマーキングなしに【高速飛行能力/ルーラ】で飛ぶことはできないが、これは心情から出た言葉だろう。
腕を組んで沈黙を守っていたキルアが、腕組みを解く。
「ゴン。
よっぽどの理由があるみたいだし、無理に聞き出すつもりはないけどよ。
正直に話す気になったら、遠慮なく言えよ? 理由があるなら、怒ったりしねーから」
「……」
本当は、キルア1人くらいになら教えてしまいたいという衝動はゴンにもあった。が、実際はそういうわけにもいかなかった。なにせアイシャの性転換に強く反発していたのもキルアだからだ。というより、この場にいる顔ぶれで賛同を得られる可能性があるのは、クラピカだけだったりする。
そのクラピカも、アイシャの性転換には理解を示すかもしれないが、現状を黙認せずに安否確認を優先する可能性が高い。ボス属性の弱点を知っていれば、むしろ当然のことだ。
ゴンとて不安が拭えない以上、逆に説得されたら押し切られるかもしれない。だから、誰にも話せないという結論になる。
諦め切れないリィーナとミルキは、尚もゴンに対して詰め寄るが、ゴンも何とかのらりくらりとかわし続ける。
そうしながらも、ぼんやり考え事をしていた。
──2人とも、アイシャのことがホントに心配なんだろうな。……ミトさんも島を出たオレのこと、こんなに心配してくれてたのかな。
しばらくミトに連絡もしていなかったことを申し訳なく思うゴン。たまには手紙くらい出そうと心に決める。
この後も詰問は続いたが、結局ゴンは何もまともに答えることはなかった。
────地上からの雨音が響く、湖底都市アクエリア。
ここを訪れた私達は、1週間に1日しかない雨天時のみ入手できるアイテムを求めて、地下に広がるこの湖底都市を奔走。都市に点在する、イベントクリアに必要な文字を全て発見し、ウラヌスが1つの文章に組み立て、都市に住む賢者に回答を伝える。
それで見事出題に正解し、私達は『賢者のアクアマリン』を入手した。
誰かが入手すると同日中は取れなくなるカードだったらしく、イベントに挑戦していた他のプレイヤー3組が、私達と交渉。
結果、『酒生みの泉』『睡眠少女』『不死の大金槌』の3枚を交換で一気に入手。大躍進だよ。いいなぁ、こういうの。
具合よく他のプレイヤーが都市を去っていったので、シームの修行を兼ねて、水に潜るイベントに挑戦。都市内で発見した長大な地下水路を、ウラヌスが先導、それにシームが見事な泳ぎっぷりで付いていった。
私とメレオロンは、水路の入口に当たる水溜まりの前で、2人が戻るまで待機中である。
「やっぱりシーム、泳ぎ上手でしたね」
「かもなー、とは思ってたんだけどねぇ。
リアルに人魚姫だったとか、笑っちゃうんだけど。ぷーくすくす」
「笑っちゃダメですよ。
絶対怒らせちゃいますから」
「分かってるって。
……あの子、気にしそうだもんね」
うん、シームにしても複雑な気分だろう。手足の鱗と無関係じゃないだろうしな。
「ぷふぁっ!」
長い水路を泳ぎ終え、水面に顔を出すシーム。例の飴玉を口にはしていたが、それでも緊張の度合いは相当だった。かなりの速さで泳ぎつつ、5分も潜水していたのだから当然だろう。
「お疲れ、シーム。
だいじょうぶか?」
「ほぅ……ほぅ……
ほぅん」
「飴玉は捨てちゃっていいぞ。また出すから」
もう岩場に上がっているウラヌスの手を借り、水から上がるシーム。
ちなみにウラヌスの格好はソルロンドで着ていた水着、シームは水着がないのでパンツ一丁にタオルを巻いただけである。
「はぁー……
ウラヌス、やっぱり可愛いよね」
「うぅん?
何だよ、改まって。潜る前もさんざん見てただろ?」
「アイシャもそうだけど、ほら髪の毛がさ。
濡れると、ぴたーって身体に貼りつくじゃん。それが可愛いなって」
「……
いや、それも風呂場で見てるだろ?」
「水着だからいいんじゃん。ウラヌス、すっごいエロいんだってば。
キューマにゃーん♪」
「……さいですか」
会話を打ち切ってウラヌスは岩場の奥へ歩き出す。耳まで真っ赤にして。
シームは後ろから付いていき、
「こっちにいるの?」
「ああ。足元、気をつけろよ。
そのうち歌が聞こえてくるから」
薄暗い岩場だが、ところどころ外へ繋がっているらしく僅かに明かりが入ってくる。が、外はそもそも雨なので、岩場を歩くには心許ない明るさだ。
雨天時にここへ来ることは、本来難しいとシームは聞いていた。都市に点在する大きな水溜まりが急増し、入口の発見が困難になる。しかも水量が増えた分、水路も長くなってしまう。
だからこそライバルが少ないと判断し、ウラヌスはここへ来ていた。本来は1人で充分だが、シームを伴って泳いできたのは、シーム自身が望んだからだ。この都市に来てから、シームはずっと泳ぎたくてうずうずしていたらしい。
──うっすらと、綺麗な声が聴こえてくる。
問いかけようとしたシームは、ウラヌスが口許に指1本立てるのを見て口をつぐむ。
そろそろと足音を殺して更に歩を進めると、向かう先から光が射し込んできた。
「あっ」
曲がり角から顔を出したシームが、うっかり声を上げた。同時に歌声がやむ。
最後の直線は外に繋がっていた。どうやらここは湖にある岩場の洞窟らしく、湖側からだとここが入口に当たるようだ。
その外にほど近い場所、盛り上がった岩場の上に小さな影。
ウラヌスがぺたぺたと足音を立て遠慮なく近づき、シームも慌ててそれを追う。
間近まで来ると、
「うわぁー……ちっちゃあー」
「手のひらサイズだからな」
高い岩場に上半身を起こして腰かけるような姿勢で2人を見る、金髪の人魚。下半身は見事に魚で、上半身は人間の女性にしか見えない。
「可愛いねー」
「そうだな。まるでシームみたいだろ?」
「ちょっ、ウラヌス!」
「ハハッ」
キョトキョト、2人を交互に見るミニサイズの人魚。それを見ているとシームも笑いが込み上げてきた。
ウラヌスは
「それでは人魚姫様、お手を伸ばして彼女をお迎えくださいませ」
「やめてよ、もぅ!」
顔を赤くしながら、シームが人魚の身体に手でそっと触れる。ボン! とカード化した。
『49:手乗り人魚』
ランクB カード化限度枚数23
その名の通り 手に乗るほどの大きさの人魚
棲み心地が良い場所だと機嫌が良くなり とても美しい声で歌うことがある
「じゃ、ちと面倒だけど戻るか。
スペルで戻った方が多分早いけど、これも修行だ」
「ぇー……」
不満げに返しながら、シームはバインダーにカードを収めた。
30分ほどして、ウラヌスとシームが戻ってきた。
2人にバスタオルを渡し、身体を拭いてもらう。……シームに至っては、メレオロンが徹底的に拭いてあげてる。
「ちょっちょ、おねーちゃん……」
「はーいはいはい。
人魚姫は黙って拭かれてなさいねー」
「やめてってばー……」
そちらの仲睦まじい様子に私が微笑んでいると、
「これで26種類集まったね」
「ええ、そうですね。
……今日のゲーム攻略は、これで終わりですよね?」
「うん。
開始半月で26種なら、かなりのペースだよ。充分充分」
「はーい、脱いでくださいねー」
「きゃあぁぁーッ!?
お、おねーちゃん!! ちょっとッ!!」
「なーによ、別にいいでしょ?
そんな隠すほど大したもんじゃなし」
「おねーーーーーちゃんッッ!!」
「メレオロン……」
ウラヌスが眉間を摘まんで耐えるような顔。うん、ホントね。あの変態しばきたい。