どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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オータニア編10  2000/10/1
第百八十四章


 

「ウラヌスって忍者だったんですね」

「なんでやねん。

 ……いや、冗談抜きでさ。

 俺、忍者と違うからね? マジでやめて」

 

 嫌がるウラヌスに、メレオロンはニヤニヤしながら、

 

「そうよねぇ。

 アンタの場合、ニンニンっていうよりニャンニャンだもんね」

「オマエ、フザケンなよ」

 

 という馬鹿話をしつつ、お刺身でゴハンを食べる私達。このソウフラビもシーフードはなかなかなんだよね。というか、良いところがそれしかない。例の海賊イベントのせいか漁が活発じゃないらしくて、ちょっと種類が物足りないけど……

 

「でもウラヌスって、クノイチの格好したら似合いそうですよね」

『うんうん』

「ぜぇっっったい、イヤッッ!!」

 

 似合うと思うんだけどなぁ。あと着物とか。

 

 

 

 さて。お休みとはしたものの、何もしないのも芸がない。

 

 ウラヌスが身体を休めつつ出来る娯楽はないものかと話し合い、ウラヌスの提案で城下都市リーメイロへ映画鑑賞しに行くことになった。

 

 朝食後にオータニアへ戻り、旅館をチェックアウトして移動スペルでリーメイロに到着。すると何か街中が騒がしかった。

 

「あー、そうだった。

 ちょうど選挙の日だよ。忘れてた」

「選挙?」

「リーメイロは毎月1日・11日・21日に、この街の王様を決める選挙をするんだよ」

「……なんだか忙しない王様ですね。

 交替が早いというか」

「1日王様ならぬ、10日王様だね。タイミングによって、期間は前後するけど。ちなみに立候補はできない。

 プレイヤーは選挙候補の応援って立場で参加することができて、応援した候補が王様に当選すると、ご褒美に『大物政治家の卵』がもらえる」

「……そういうことですか」

「そういうこと。

 ま、選挙演説は映画館の中までは聴こえてこないし、無視していいよ」

 

 よかった……選挙に参加するとか言い出したら、どうしようかと思ったよ。選挙は当分ゴメンだしな。

 

 

 

 というわけで映画を観に行ったんだけど……

 

 映画鑑賞なんて久々すぎて、ワクワクしちゃったよ。主に買い物と本編開始前のCMで。ポップコーンとコーラはド定番だよね。ポテチも良い、外せないな。映画のパンフでネタバレに注意しながら予習し、薄暗くなった映画館の雰囲気にひどく懐かしい気分になった。

 

 見た映画は『ゾンビ』とかいう、まんまなタイトルだったけど、内容は悪くなかった。なるほど正統派だなーと思って、普通に鑑賞してた。……やたらキャーキャー騒ぐ姉弟に、ちょーっと文句言いたかったけど。

 ウラヌスいわく、廃墟都市ムドラの予習を兼ねてのつもりだったらしい。たぶん逆効果だよ……

 

 映画が終わった後、ビビり姉弟がご機嫌斜めだったので、別の映画も見ることに。

 

 自分が観たかったのか、シームの機嫌を取りたかったのかは知らないけど、ウラヌスが2つ目に選んだ映画はなんと『劇場版プニキュマファイブ』。

 

 えー。これって思いっきり女の子向けでしょ? と、我ながら自分のこと棚上げしつつ期待しないで観てみたら、むしろバリバリの格闘シーン満載で無闇に面白かった。なんかウラヌスやシームがこれにハマったのも分かる気がする……

 プニキュマ達がスーパープニキュマモードに変身して、合体必殺技を放つシーンなんか、年甲斐もなく興奮しちゃったよ。うむ……合体はいいものだ。

 

 映画館を出て、オータニアへ戻った私達。遅めの昼食の席は、映画の話題で大いに盛り上がった。ウラヌスも楽しそうにしてたけど、きっとユリさんのことで私達が重い空気にならないよう、配慮してくれたんだろう。特にシームはホント大喜びしてたな。店を出た後も「キューマニャーン♪ ぷにぷにー♪」とか言ってウラヌスに抱きついてた。

 

 

 

 楽しい昼食を終え、いつもの旅館にチェックインし、ユリさんについての相談を始める。

 

 メレオロンは、自分の能力や素性をそのまま明かすことは避けたいと主張。それは当然だろうな。そうなると、当然シームも同じ扱いにならざるを得ない。

 

 で、私なんだよな……

 

 はっきり言って、私も能力は明かしたくない。この3人はやむを得なかったけど、ユリさんに教えるのはどうしても抵抗があった。彼女はウラヌスの味方ではあるけど、私とはどういう関係でもないしな。

 何よりあと半月で強制『絶』から解放されるんだ。最低でもそこまでは隠し通したい。

 

 つまるところ、ユリさんには嘘を吐くしかないということになる。

 

「ユリさんって、嘘を見抜いたりします?」

「姉貴、そういうとこはマジでポンコツだからなぁ……

 思い込みが激しいっつーか。

 里の連中にはあっさり騙されるし」

 

 嘘を吐こうという結論になった。

 

 

 

 旅館でゴロゴロしてるうちに、夕方を迎える。……仕方ないとは言え、運動不足だよ。襲撃に備えなきゃいけないから、迂闊に自主トレもできないし。トホホ……

 

 ウラヌスが『交信』を使うと、バインダーから嬉々としたユリさんの声が返ってくる。めっちゃ楽しみにしてたんだろうな……

 

 ある程度は協力を仰ぐ以上、拠点ぐらいは教えておかないと何かと都合が悪いだろうという結論になり、私達はオータニアの『秋の空』で、ユリさんと会食することにした。

 

 

 

 ユリさんはオータニアへ来たことはなかったそうなので、ウラヌスが迎えに行き、やや時間が経ってから2人で戻ってきた。

 

 ……ユリさん、また着替えてるな。朝の洋服もそれっぽかったけど、更に際どい洋服を着てるよ。スカートの丈がやたら短くなってるし。忍装束もそんな感じだったけどね。

 髪型はまたポニーテールに戻ってるけど、髪留めはお洒落な物を着けていた。

 

「またずいぶん、おめかしされてますね」

「アレ、似合わないかな?

 どっかヘン?」

「……いえ、よく似合ってますよ」

「やっぱりそうよね? よかったー。

 弟がなーんにも褒めてくれないから、ちょっと自信なくなってたのよ」

「うるせーよ。

 ……なんで姉貴が色気づいてんのを褒めなきゃいけないんだ」

「くノ一にとって、色香は術の基本だもの。

 アンタもちゃんとしなさいよ?」

「オ・レ・は!

 忍者でもくノ一でもないッ!」

 

 トゲトゲしいウラヌスに対し、ユリさんは愛おしそうに桜色の髪を撫で、

 

「そうよねー。

 アンタおめかししなくても、こうやって天然で充分可愛いもんねぇ。うらやまし」

「ヒトの話を聞けぇぇッ!!」

 

 仲のよろしいことで。

 

 

 

「美味しいわねー。このお店」

「だろ?

 リアルでもなかなか無いよな」

「美味しいだけのお店なら沢山あるけど、和風料理はねぇ。

 いつもここで食べてるの?」

「毎日じゃないけど、都合が良い時はここだよ。

 グリードアイランドは結構和食を提供するトコ多いけどな」

「へぇー」

 

 料理の味とウラヌスとの会話に、満足気なユリさん。……メレオロンはユリさんに顔を見せられないので、床に料理を並べて背を向けて食べている。シームもメレオロンに付き合ってるけど、時々こっちの様子を見てる。2人のことは後でユリさんに話すんだけどね。

 

 ユリさんが松茸のお吸い物に鼻を近づけて、「すぅー。はぁー……」と気分良さそうにしていると、シームは不思議そうに茶碗蒸しを床に置き、

 

「ウラヌス、ワ食って何?」

「ああ、ジャポン食のことだよ。

 ジャポンじゃ自国料理を和食って言うんだ。ジャポン風を和風って言ったりな」

「ふぅん。

 その、ワってなんなの?」

「んー……えっとな」

「なごむとか、のどか、平和の意味ですね。

 ちなみに和食は、世界でも有数の健康食と言われています」

「へぇー。そうなんだー」

「……ずいぶんジャポンに詳しいのね。

 あなた、ジャポン人?」

「いえ。そういうわけではないですが、昔住んでいましたので」

「なるほど、それで。

 黒髪だけど目は青いし、生まれが分かんないなとは思ってたのよ」

 

 

 

 デザートのマロンプリンを食べ終えたユリさんは、満足げに息を吐き、

 

「はぁー……久々に美味しいゴハンだったわぁ」

「ご満足いただけたようで。

 ならもう帰るか?」

「いやいや、帰ってどうすんのよ。これからが本番じゃない。

 私は、アンタの除念を手伝うって決めたんだから。

 でも私が持ってる情報だけじゃ、どう手伝えばいいか分かんないし」

「マメにアレしろコレしろって、頻繁にやりとりすんのも考えモンだしな。

 姉貴も、できれば自分で考えて動きたいだろ?」

「そりゃそうよ。

 ……私は里ともやりとりしなきゃいけないし。上手い具合に誤魔化さないと……」

「今はその辺どうしてるんだ?」

「えーとね。

 今のところ担当してる任務は何もないのよ。

 任務が来たらそっち優先で、ない時はアンタの行方を捜すってことになってる。それか里に戻って諸々の報告とか、休養、後は修行かな。

 だから現状はアンタの捜索中って里には連絡してあって、しばらく連絡できない奥地へ行くから、次の連絡まで間が空くって伝えてあるわ。

 ゲームの中へ入るから当分は連絡が取れない、……なんて言ったって里は理解できないでしょうし」

「……

 ンな正直に言ったって、あのジジババどもは姉貴をアホだと思うだけだろうな。

 ただ、ハガクシが入ってきてるからなぁ。……そこまで情報のやりとりはしてないかもだけど、ゲームに入ったことを伝えなかったのは賢明かもな」

「そうね……

 いずれにしても、ハガクシには要注意ね」

「あの、ちょっといいですか?」

 

 私が口を挟むと、ウラヌスとユリさんが揃ってこちらを向く。お茶を飲んで、少し喉を湿らせた後、

 

「2人とも月隠れの里の出身なんですよね?」

「そうよ」

「……まぁそれは間違いないよ」

「で、このゲームに入ってるハガクシさんは、えっと……」

「葉隠れの里だね」

「ですよね。

 別々の里なのに、やりとりってあるんですか?

 ……私の偏見かもしれませんが、あまり忍者の里って他の里と仲がいい印象はなかったんですけど」

「んー……」

 

 ウラヌスが渋い顔をする。これは説明したくない感じか。隣のユリさんが苦笑し、

 

「シノビの歴史に関わることだもんねー」

「そう言われると、別に教えたって構わない気はするけどな。

 でもなー……」

「……ウラヌスは、私があなたの里に干渉することを嫌がってるんですか?

 もしかして」

「まぁ……本音を言えばそうだけど。可能性として出てきちゃうからね。

 ただ、里の連中がアイシャにちょっかい出してくる可能性もあるからなぁ。言わなきゃダメかぁ……」

「ちなみに私、以前から知り合いの忍者が居ますよ。

 ハンゾーってヒトなんですけど」

「ハンゾー?」

「ええ。プロハンターの同期です」

「ふぅん……俺は知らないや。

 姉貴は知ってる?」

「まぁ……名前はね。

 雲隠れ若手のホープで、腕がいいんだかアホなんだか分かんないヤツだって。

 極秘任務のはずなのに、隠者の書を探してるとか喧伝してるバカなんだけど、腕は確かだって……」

「……最近のシノビは、ロクなの居ねーな」

「ねぇ、それって私まで含んでない?」

「むしろ筆頭だろーが」

「ひっどーい!

 そんなバカと一緒にしないでよ!」

「いや……

 むしろ姉貴なんて、ドジ・バカ・マヌケの三重苦だろ?」

「ぅわーん!

 桜に罵倒されたぁー!」

 

 まる分かりの嘘泣きをするユリさん。……ただまぁウラヌスも容赦がなさすぎる。

 

「ウラヌス、言いすぎですよ」

「えー……

 俺的にはまだまだ言い足りないんだけど」

「ぅわあーんッ!」

「……話が進まないんで、続けますね。

 っていうかハンゾーさん、雲隠れだったんですか。知りませんでした」

 

 と言うと、ユリさんは案の定ケロっとした顔で、

 

「そうよ、記憶違いじゃなければ。

 雲隠れって今一番隆盛を誇ってる里だから、注目度が高いのよね。

 ジャポンにある忍者の三大里が、雲隠れの里・葉隠れの里・月隠れの里なんだけど」

「少し昔まで四大里、だったんだけどね」

 

 へぇー、そうなんだ。……流石に長年ジャポンに住んでても、忍者の詳しい事情なんて知りようもなかったしな。

 

 ユリさんはしんみりした顔で、

 

「昔はやっぱり忍者の里同士って仲が悪かったのよ。互いに情報を盗み合ったり、いがみ合ったり。場合によっては殺し合いもしたって」

「忍者の任務って、基本依頼人がいて、その依頼を遂行することが前提だからね。

 だから当然別の依頼人でカチ合いになることがあって、その積み重ねでドンドン険悪になるんだよな」

 

 ウラヌスの説明に、なるほどと納得する。ハンター同士でも起こり得ることだろうしな。

 

「……桜、あのこと話してもいいの?」

「桜じゃねぇっつってんだろ……

 俺から話すよ。

 親……俺達の両親は、霧隠れの里出身なんだよ。元、ね」

「元、と言うと……」

「滅ぼされたんだよ。

 雲隠れ・葉隠れ・月隠れから一斉攻撃されて」

「どうしてまた……」

「忍者の四大里とは言われてたけど、昔は霧隠れほぼ一強だったらしい。

 それぐらい霧隠れの里は他と比べても発展してて、一大勢力を築いてた。

 で、まぁ……

 霧隠れの里の上層部が、何をトチ狂ったか他の里に併合を迫ったんだと。

 今こそ霧隠れの名の元に、シノビは1つになるべきだ、とかなんとか」

「従わない場合は、武力行使も辞さないとまで言ったらしくて。

 宣戦布告したも同然よね……」

「時代の流れで、忍者の里もどんどん衰退していってるからなー。

 合併自体は悪い話じゃなかったんだろうけど、併合を迫るのはダメだわな」

「合併と併合って、何が違うの?」

 

 シームが尋ねる。ウラヌスは少し考え、

 

「俺の知ってる解釈が正しければ、合併はお互いの合意があって、2つ以上の物が1つになること。併合は一方が強制的に他を吸収しちまうこと、かな。

 だからこの場合の併合は、雲隠れ・葉隠れ・月隠れは、これから霧隠れの一部になれ、って言ったことになる」

「うーん……?」

「ほら、シーム。あれよ。

 2つのゲーム会社がくっついて、1つの会社になったりするでしょ? アレが合併よ」

「うん……

 それは分かるけど」

「で、1つのゲームを出してた会社が消えて、他のゲーム会社がそこの出してたゲームの続きを出したりするじゃない。アレが併合よ」

「へぇー」

「……メレオロンのその説明だと、色々誤解を招くけどな。

 言いたいことは分からなくもないけど」

 

 私もメレオロンの説明は妙にズレてる気がするけど、話が逸れそうなので放っとこう。

 

「結局、霧隠れが滅びた後ってどうなったんですか?」

「滅びたって言っても、里の上層部が軒並み暗殺されただけらしいけどね。

 だから霧隠れの里が取り潰しになっただけで、里の住民はほぼ生き残ったらしい。

 で、生き残った住民達は、シノビとしての生き方を捨てて一般人になるか、3つの里のいずれかに鞍替えするか選べって迫られて。

 ……俺達の両親は、月隠れのシノビに移籍したらしい」

 

 ウラヌスが溜め息混じりにそう言い終えると、ユリさんも疲れた表情で、

 

「その霧隠れの一件以来、3つの里である程度連携を取るようになったんだって。

 相互監視しとかないと他の里を出し抜いて何やらかすか分からないし、そうでなくてもあっちもこっちも人手不足で、他の里に依頼を回したりとかするのよね」

「いちおうは商売敵でもあるから、そこまで密にやりとりはしてないはずだけどな。

 ただ、ユリ姉が俺に対して敵対していないところをハガクシに見られたら、里に報告が行く可能性はゼロじゃないって話。

 ……まして、俺の除念を手伝ってるなんてバレたら、ヤバすぎる」

「あー、それはマズすぎるわ。

 私だけならともかく、お父さんお母さんまでどんな目に遭うか……」

「……なるほど」

 

 確かに軽視できないな。ウラヌス自身はそれなりに有名人みたいだし、ハガクシさんがウラヌスやユリさんに気づけば、月隠れに居場所を報告される恐れもあるわけか。

 あくまで可能性があるって話でしかないけど……。それを言いだすと、私を探してるであろうリィーナ達に、私が今ここにいることを誰かが教える可能性だってあるわけだしな。

 

 メレオロンとシームのこともあるから、あまり現状を楽観しない方がいいか……

 

「そろそろ聞いていい?

 どうやって除念するつもりか」

「……そうだな。

 確実とは言えないんだけど、かなり見込みはあると踏んでる。

 姉貴はまだ知らないかもしれないけど、このゲームには──……」

 

 

 

 ──魔女の若返り薬の効果で、加齢によって弱体化する念を無効化し、念自体がそれで外れれば万々歳、外れずともオーラ量さえ回復すれば、強引に神字による除念を行う──と説明されたユリさんは、しばらく考え込んでいた。

 

「そうね……

 多分、だけど。

 それでいけると思うわ」

 

 私達は「はぁぁぁー……」と一斉に安堵の息を吐いた。よかったぁ……これで無理とか言われたら途方に暮れるところだったよ。

 1人、難しい表情をしたままのウラヌスは、

 

「……そう言ってくれるのは、ありがたいんだけどさ。

 確証はないんだろ?」

「私1人でかけた念じゃないからね……

 アンタにかけた念の効果って、分かってるとは思うけどアンタの認識を利用してるのよ。

 自分が何歳か、当然本人は自覚してるから、その認識を引き金に弱体化を起こしてる。

 それに一時的じゃなくて、ずっと効果のある念だから、アンタが若返り薬とやらで10歳未満になったら、その時点で念が外れる可能性も充分にあるわ。

 ……でもアンタが若返った時、自分は何歳だって元の年齢を意識しちゃったらダメかもしれないけど……」

「念は暗示に近いモンがあるからな。

 ま、だいじょうぶ大丈夫。

 実際見た目が若返ったら、自然そっちに引っ張られるさ」

「だといいんだけど……」

 

 うんうん。肉体年齢に精神が引っ張られるのは、ごくごく自然なことだ。……私がそうだったからね。

 

「無闇に不安がってちゃ、上手くいくモンもいかないよ。

 念には念を入れて、若返り薬はきっちり調べ上げるつもりだから、研究用に現実へ持ち帰る為にも、姉貴にはゲームクリアの協力を頼みたいんだよ」

「それは分かったわ。

 出来る限り協力する」

「ん。

 ……で、姉貴が気にしてるのは俺の仲間のことだろ?」

「まあねぇ……

 アンタなら1人でやってそうなもんなのに、珍しいなって。

 ずいぶんと仲よさそうな感じだし?」

 

 何やら勘ぐってくるユリさん。うぅむ……

 

「俺も元々は1人でやってたさ。

 でも、それで前回はゲームクリア、先越されちゃったからな。

 反省して、今回は最初から仲間と組んで挑戦してるんだよ」

「へぇー。

 ……ずいぶん気も弱ってるのかなって、心配してるんだけど」

「そりゃどうも。

 まだまだ大丈夫さ。現に姉貴は俺に負けただろ?」

「それは……

 弱ってるはずのアンタが、あんな無茶するとは思わなかったから……

 油断してた私が悪いんだけど」

「へっ。

 油断してなくても勝ってやんよ。甘く見んな。

 ……とにかく、信用できる仲間が運良く見つかったし、今度は上手くやるさ」

「アンタが、自分にかかった念のことまで話すぐらいだもんね……

 信用してるのは分かるんだけどさ。妙に仲よすぎない?」

 

 私とシームを交互に見てくるユリさん。……何か妙なこと疑われてる気がする。

 

「その辺は、プライベートなことだよ。

 縁を切った他人に、話すようなことでもないと思うんだけどな?」

「うぅん……桜のいけず。

 でも、アンタ1人でもクリアできそうな気はしてるんだけどね、私は。

 だってここ、あんまり強いヤツいないでしょ?」

「大半の連中は取るに足らないとは俺も思ってるけど、束になりゃ別だよ。

 結構手を組んでるプレイヤーも多いしな」

「そういえばアッサムって人も、60人ぐらいでチーム組んでたって言ってたわね……

 そこまでやってもクリアしそこねたらしいけど」

「間違いなくハメ組だな。

 確かにゲームクリアの筆頭候補だったけど、残念ながら烏合の衆だったってこった。

 それならまだ、ツェズゲラの方が勝算あったよ」

 

 う……なんか嫌なところに話が逸れてるな。誰がクリアどうこうの話はしてほしくない……

 

「ツェズゲラかぁ……」

「姉貴は知ってんの?」

「そりゃね。

 プロのシングルハンターで、マネーハンターだから商売敵に近いし?

 実際里でも、アイツに暗殺任務失敗させられたー、なんて報告あったみたい」

「まぁ20数年ハンターやってるらしいからな。

 どっかで衝突もするだろ」

「アイツ、富豪の護衛やってることが多いらしいわね。

 だから暗殺依頼の多い忍者と衝突するんだと思うけど」

「いい金になるだろうしな。……護衛も暗殺も。

 な、姉貴?」

「……何が言いたいわけ?」

「任務の報奨金でグリードアイランドのソフト買ったんだろ?

 一体どんだけ暗殺依頼成功させりゃ、そんなに稼げんだか」

「……機密だから言えない」

「聞きたくもねーよ。

 ……姉貴、なんで俺に負けたか分かってるか?」

「え?

 ……なんで?

 ホントに分かんないんだけど?」

「どうせ姉貴、実戦で使える殺し技ばっか磨いてたんだろ?

 俺に対してそれを使わないんじゃ、実力発揮できなくて当然じゃないか」

「そんなの当たり前でしょ……

 殺す気なんてなかったんだし」

「姉貴の得物を改めたから、それは分かってるよ。

 殺傷力の高い忍具が全然なかったしな」

「……。

 その気になったら具現化できるもん」

「にしたって、刃物の類を携行しない理由にはならんわな?

 いちいち具現化するより、オーラで刃物を強化した方が強いわけだし」

「……勝つ自信があったからよ。

 普通に体術と念の技量でアンタに勝ちたかったから……」

「ったく。

 そうやって私情をごっちゃにするから、俺に負けんだよ」

「あーもー!

 分かったから、そう何度も負けた負けたって言わないでよ、腹立たしい!」

「OKOK。

 話が逸れまくったけど、姉貴の念能力を説明していいか?」

「……この子達に?

 まぁ……私は信用ないだろうし、それは構わないけど」

 

 ユリさん、ほんとウラヌスには甘いな。許してもらいたくて仕方ないんだろうけど……赤の他人に能力知られるとか、普通は許容できないと思うんだけどな。

 

「姉貴の系統は具現化系。

 さっき姉貴も言ってたけど、武器を具現化してそれに特殊効果を付随させてる」

「……やってみせた方が早いわね」

 

 ユリさんが、自分の荷物袋からジャラジャラと鎖を取り出す。

 手にした鎖の片一方をブランと垂らし、

 

「桜と戦ってた時に出してたのはコレ」

 

 鎖の先端に、長細い円柱状の金属が出現する。あー、これ鎖分銅か。

 

「これに触れた相手は、神経毒として作用するオーラが体内に浸透して、麻痺させられる。毒性の強さは籠めたオーラ量で調整できるから、結構重宝してるわ」

「昔っから姉貴の得意技だわな。

 鎖は構造が複雑だから具現化させにくいけど、鎖の先端に結びついた分銅を具現化するだけなら、分銅自体の構造は簡単だし、コストも安くつく。

 麻痺させる神経毒も、実在する毒の成分を元にしてるから、こっちも具現化しやすい」

「ていうか、毒に耐性付ける訓練がしんどいんだけどね……

 毒物の具現化は、それに付いてきたオマケみたいなもんだし」

 

 あ、なるほど。ウラヌスに毒効かないって、まんま耐性付ける修行したって意味だったのか。ゾルディックと同じだな……

 

「俺の助言通りやったら、ずいぶんメモリ少なくて済んだだろ?

 まぁ刃物も複雑な造りでなければ、そこまでコストかからないハズだしな」

「実物があると楽なのは確かね。能力開発はあっさりできたわ。

 ほら、私ってば天才だし?」

「はっ。

 俺が教えたまんまやっただけで天才とか、ヘソで茶が沸くんだけどな?

 ちったぁ自分で考えろよ。……俺の忠告は聞きやがらねぇし」

「それって、ダブルのこと?

 アンタだってヒトのこと言えないじゃない」

「……

 ンなことより、他に開発した能力はあるか?」

「先々のこと考えると、あんまり開発する気にならないのよね……

 具現化系に絞ってるし、【忍細工/シノビクラフト】と【影分身/ドッペルゲンガー】くらいよ。今のところは」

「それが賢明だろうな。

 大抵のことは忍具でも間に合うし、わざわざ開発する必要ないもんな……ん?

 姉貴、1個忘れてるぞ」

「え? なんかあったっけ?」

「ほら、【遮音泡/サイレンサー】。アレ、だいぶヤバかったぞ」

「あー! そうだった、そうだった。

 いや、アンタの技まるパクリだし、どうかなーって」

「どんな能力なんです?」

「特殊な泡で相手を包みこんで、泡の内外で音や空気の行き来ができないようにする。

 ほら。グリードアイランドだと、それでカードも使えなくなるから……」

 

 うわ、えぐい。ていうかソレ、普通に窒息するじゃないか……ちょっと待て。それってまさかボス属性でも防げないんじゃ……?

 私がヒヤリとした感触を味わっていると、不満げな顔をユリさんが見せ、

 

「……愚痴になるけどさ。

 最近、火器とか化学兵器も使えって上がうるさいのよ。

 でも私、銃とかグレネードとか嫌いなのよね。くノ一じゃないっていうか」

「それを使い出したら忍者失格かもな。

 ジジババどもは自分が使うわけじゃねーから、現場のプライドなんかどうでもいいのさ。ほっとけほっとけ。いざとなったら、姉貴はアイツラ殺せるんだしな」

「唆さ( そそのか )ないでよ、物騒な子ね……」

「むしろ忍者らしいだろうに、謀反起こして引っくり返すなんて。

 ……別に、姉貴にやってくれなんて言う気はないさ」

「アンタがそういうことしようとしたら、私はどっちにも付かないかな……

 最後まで傍観してると思うわ」

「その方が俺にとっちゃ気が楽だよ。

 ぜひそうしてくれ」

「……」

 

 ……それはどうだろ? ユリさん、もしウラヌスがピンチになったら、絶対助けようとしそうだけどな。

 

 

 

 

 

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