どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二章

 

 心地よい風に吹かれながら、少年と少女は並び座ったまま、視線を遠くへと向けている。

 

 ──このタマゴって、親がいるはずだけど全然見当たらないな。どこ行ってるんだろ?

 

 アイシャは背後のタマゴに目を向けた後、きょろきょろと見回してみる。周囲には鳥の気配も一切ない。

 

「そういえばアイシャ、もう身体は問題ないの?」

 

「え?

 ……まあ、特に問題はないですね」

 

 ゴンにそう尋ねられ、不思議な顔で返す少女。アイシャが前世のことを語り終えた後、ゴンは泣くだけで何も言わなかった。泣き終えた後も、黙って雲海を眺めている。

 

 ──何か言うかなと思ったけど、まぁいっか。私も話してすっきりしたし。

 

 前世の話はアレでお(しま)いだ。それより、なんで今さら身体の心配なんか……?

 キメラアントの王と戦い、瀕死の重体にまで陥ったとはいえ、あれからもう4ヵ月だ。とっくに全快している。それは一緒に修行するゴンも分かってたはずなんだけどな。

 

「うん、じゃあいいや」

 

 ゴンはそう言って、一方的に話を打ち切った。ホントになんなんだ。

 

「ん?」

 

 ゴンは立ち上がり、私のそばまで来て、また座り込んだ。足を前へ投げ出す。

 自然な動きで、長い髪を器用に避けながら私の背に手を当てた。おおぅ、綺麗な動作。思わず見とれて動けなかったよ。

 

 ゴンを見る。まっすぐに見返してくるゴン。うわ、近い近い。なになに?

 

「……リュウショウだった前世もアイシャにとっては大事なんだって、オレよく分かった。

 昔は昔、今は今なんて言っちゃったけど……ごめん。

 オレは、前世も受け入れた、今のアイシャでいいと思うよ」

 

 ニカっと笑いかけてくる。

 

 あぁ……

 

 私は、何を悩んでいたんだろう。

 みんなは、今の『アイシャ』だけしか受け入れてくれないんじゃないかと、不安で仕方なかった。結局私は、リュウショウを捨てられない。リュウショウであった時代に高めた武人としての精神は、戦いにおいて重要な要素。普通の女の子の精神では、戦闘へ充分に意識を向けられない。高度な念における戦いで、心の揺らぎは赦されない。

 

 ネテロと戦った時。巨大キメラアントと殺し合った時。私の心は、確かにリュウショウでもあった。

 

 そうやって戦っている私を見れば。やっぱり、きっとどこかで、みんなはリュウショウだった過去の私をイメージとして重ねてしまう──そう思っていた。

 

 男であったリュウショウと、女になったアイシャ。いびつな存在なんだと。

 

 それは……

 私がそう思い、そう振る舞っていたからでもあった。バレないように、見透かされないように。奇妙な存在であると自らに暗示をかけていた。

 

 私は──……まず、今の自分を認めなくちゃいけなかったんだ。

 

 今の私を、みんなに認めてもらう努力をするべきだった。

 ゴンが背中に当てる手の温もりを心地よく感じながら、私は答えを返す。

 

「ありがとう、ゴン……

 私の全てを受け入れてくれて。

 ……私は昔、リュウショウとして生きました。

 私は今、アイシャとして生きています。

 どちらも私です。私は、わたしとして生きていきます」

 

 背に当たる手が、ぎゅっと力を強めて私の身体を少し寄せる。

 

「つらかったんだね、アイシャ……

 ずっと悩んでたんでしょ?」

「……ええ、そうですね。

 大切な母さんに、女の子らしくと躾けられ。……それでも私は、男であった過去を捨てられませんでした。……そりゃそうですよね。男として生きた時間の方がずっと長かったわけですし。

 みんな私を女性として扱います。もちろんそれは、間違ってはいないんですけども……

 ずっと、男性であった心が、音を立てて軋んでいました」

 

 ──ああ、男として再び生を受けてさえいれば。

 もしくは、前世から女として生まれていれば! ……こんな思いをせずに済んだのに。

 

「……ねぇアイシャ。

 ほんとに、だいじょうぶ?」

 

 気遣わしげに聞いてくるゴンに、首を傾げる。まだ迷いがあると思われてるんだろうか。

 

「大丈夫ですよ。もう踏ん切りはつきましたから。

 私は──」

 

「あ、ゴメン。そうじゃないんだ。

 

 ……あの日、だいじょうぶ?」

 

 

 

 ぶほぉッ!?

 

 

 

 即座に意味を理解し、思わず吹き出して咳き込む。い、いや、え? あ、え? ゴン、この空気でなんてこと言い出すの?

 咳き込む私に、慌ててゴンは背中をさすってくれる。

 

「ご、ごめんアイシャ。いきなり変なこと聞いて」

「ごっほっ!

 ごほっ、ほん……とですょ。なんで、ぎゅぅにそんなごと……」

 

 まだ軽く咳き込みながら、涙目の掠れ声で返す。

 

「ホントはこういうこと、女の人に言っちゃダメだって言われてたんだけど……

 アイシャはレオリオの電話越しにオレの声、聞こえてたんでしょ?

 だったら別に聞いていいかなって」

 

 ああ、うん。そうでした……

 女性にそういうこと言うなとかなんとか、怒られてましたね……

 

 私が初めてあの日になった朝。急に具合が悪くなって、あんなところから出血し、何が起こったのか分からず気が動転した私は、レオリオさんに電話をかけた。

 きっと彼なら、私の変調を何とかしてくれる。そう信じて……

 

 

 

 その結果、わたしは男性の友人達にその日初めてを迎えたことを知られました、はい!

 

 

 

 ────ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! そうだった、思い出したぁぁぁぁ!!

 

 後で母さんに詳しく話を聞いて(父さんの耳を塞ぎながら)、どんだけ恥ずかしいことを知られたか思い知りましたぁぁぁ……!

 その日食べたお赤飯は、とってもしょっぱかったのさ、ぢぎしょぅ……

 

 背中を丸めて両手で顔を覆うしかない私に、流石にゴンも触れてこない。

 

 ぐ、く……

 

 ぎぎぎ、と首を向け。

 両手の隙間から、困ったゴンの表情を覗きつつ、声を絞り出す。

 

「……で……で、ゴン?

 どうして、そんなことを……?」

 

 ぶるぶる震えすらしている私の様子に、少年はやや慄き(おのの )つつも、

 

「えっと、その、えっと……

 ……女の人があの日だと、オレ分かるんだけど……

 アイシャからいい匂いしかしないから、あ、違うのかなって」

 

 

 

 ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!

 

 

 

 こんなときにいいニオイとかいうなやゴルァァァァァッッ!!

 

 

 

 ぐぅぅぅ……。

 そう、か。そういうことかっ……!

 ゴンは、私があの日を迎えたタイミングを知ってるから、あの日が来るのが大体今ごろだって分かったんだ……!

 あの日の周期まで知られて心配されるとか、どんな生き恥だぁぁぁ……うぅぅぅ……

 完全に身体を折り曲げて、がくがく痙攣する私に、ゴンがまだ何か言ってくる。

 

「あはは……

 そういえばアイシャって、使ってる石鹸とシャンプー変えた?

 結構いいニオイするよねって、オレたち話してたんだけど」

 

 ゴン……

 

 いま……いま、それを言うな……。そうですよ、最近母さんオススメのに変えたよこのヤロウ……

 

 ……そうか。この子の素直さは、こういう時は凶器にしかならないのか。恐ろしい物の片鱗を味わったぜ、おっふぅ……

 

「ほら、そういうのって普通はもっと早い歳からって言うしさ。

 アイシャは今14歳だっけ? 結構遅いから、ほんとに大丈夫なのかなって」

 

 

 

 ────ヵチカチカチカチカチカチッ!

 

 

 

 あまりの羞恥プレイに、震えて歯の根が噛み合わない。余すところなく責め立てて来る……! どんだけ追い討ちかけんの!? ゴン、いっそ殺せぇ。これ以上、死体同然の私を蹴らないで……

 

 きっといたいけだったゴンに、こういう知識を吹き込んだヤツ絶対にゆるさん。子供になんてこと教えるんだ!

 

 …………あれ? でも、そういえば。

 

 アレから3ヵ月は経つけど……

 

 再び両手の隙間から、ゴンの方を見る。心配そうに見てくれているゴン。

 

 聞く……べきなんだろうか。

 どうせなら聞いておいた方がいい気もする。なんか新たな過ちを犯しそうな予感もするけど……

 少なくとも、口止めだけはしておかないとマズイな。

 

「……ゴン。

 ここで話したことは、絶対に、他言無用に願います。約束してください」

「う、うん。大丈夫、約束する」

 

 ちょっとビビってるゴンの返答を聞き、ようやく落ち着いてきたので、顔から手を離し、上半身をただす。子供相手になんて醜態だ……

 

「知ってる範囲でいいので、教えてください。

 ……。

 そういうのって……大体一ヵ月周期、ですか?」

 

 ゴンは腕を組んで、んん? と首を捻る。

 

「えっと……

 オレも聞いただけだから、ちょっと自信ないけど……」

 

 そりゃ聞いただけだろうさ。ゴンにそういうこと吹き込んだヤツが、どんだけくわしく話しやがったかってことさ。

 

「個人差はあるけど、大体それくらいだって。

 体調不良とかでズレることもあるらしいけど」

 

 うんうん。私が元いた世界とその辺は変わんないのか。(私が父さんの耳を塞ぎながら)母さんから聞いた話とも一致してる。

 

「ほら、月のものって言うらしいし」

 

 月のもの言うなし。

 

 私が額をかいて次の句に悩んでいると、ゴンは気づいた様子で、

 

「──アイシャ、もしかして」

 

 ……。

 

 母さんに、周期を早めに知っておいた方がいいから、アレが来た日をメモしておくようにと手帳を渡された。大体の周期が分かれば、ズレた時すぐ気づけるからって。父さんの耳を塞ぎながら。……父さん、めっちゃ嫌そうにしてたな。

 

 その手帳に書かれてるのは……最初の日付だけ。

 

「来て──」

 

 そこまで口にして、喉が詰まる。

 また顔が赤くなっていくのを自覚しながら、何とか声を出す。

 

「……ません。まだ、最初の一回だけです」

 

「アイシャ、初潮から次が来てないの?」

 

 

 

 ────ぎゃあああぁぁッッ!! ショチョーって言いやがったなぁチッキショオォォォッ!!

 

 

 

 直接的な表現を一生懸命避けてたのにぃ……ぅぅぅ。

 

「……アイシャ。もしかしたら何かあるかもしれないし、病院で診てもらった方がいいんじゃない?」

「い・や・です」

 

 全く躊躇なく心の声が出た。

 

「アイシャ……」

 

 これ以上の生き恥を晒せと? いや、そりゃ、ゴンの言うことが正しいんだろうけどさ……

 友達に知られるだけでもこんな嫌なのに、知らない人にとか……!

 

 ……レオリオさんになら、いいか?

 そういえば、患部に【掌仙術/ホイミ】をかけるとか言ってたっけ。ああいうのって、ホイミで回復するものなの? ……ていうか、私ホイミ効かなくない?

 

 んん? 【掌仙術/ホイミ】って確か……

 

・対象に触れていない場合回復効果は著しく減少する。

・患部に直接触れないと回復効果は減少する。

 

 ──この場合の患部って──

 

 あの時、私がレオリオさんに口走った内容を思い出す。

 

 ……

 

 ぐひあああああぁぁぁぁッッ!!

 

 もうやだぁぁぁ。このまま転げ落ちて死にたいぃぃぃ!

 

 足をじたばたジタバタ。ぐぎぎぎぎ……

 

 

 

 ────羞恥に任せて、ひたすら悶えた後。

 

 両足を、パタンと垂れる。

 

「……。ゴン」

「えぇぇ、なに?」

 

 私の声から何か感じ取ったのか、軽く震えながら聞き返すゴン。

 

「レオリオさんに……

 ……

 …………。……ぃぇ。

 なんでも、ありません」

 

 もう、もうやめよう。私はレオリオさんに何も言ってない。何も聞いてない。知らない知らない、もう全部忘れた!

 

「この話はこれでオワリニシマショウ」

 

 カタコト。

 

「ちょ、ちょっとアイシャ!

 だから一度お医者さんに診てもらった方が……!」

「だからイヤダっていってるでしょうぅぅウワァァァァン!!」

 

 羞恥心リミットブレイク。ほんとに下らないことで涙が出てきた。

 

 ……ゴンが正しい。正しいけど、嫌なものはイヤなんだよ……

 

 

 

「ヤなんだってばぁ……

 ほんっとに恥ずかしいんだってばぁぁ……」

 

 ぐすぐす涙声でいつまでもグズる私を、ゴンはよしよしと頭を撫でてくる。

 

「まぁイヤなのは分かるけどさ……

 でもほら、やっぱりちゃんとした方がいいと思うよ……。

 なんかあってからじゃ遅いかもしれないし」

「ぃぃょ、もうずっとこのまま来なくて……」

「……アイシャ、子供とか産めない身体になるかもしれないよ?」

「いりませんんん、そんなのぉぉぉ……」

 

 どんなに親友が心配してくれても、もう拒絶の言葉しか出てこない。ゴンにそんなこと心配されること自体イヤすぎる。

 

「その……オレの勝手な予想言うね?

 前世のこと詳しく聞いて思ったんだけど、アイシャって結構特殊な身体なんでしょ?

 もしかしたら念能力で、なんか変な感じになっちゃってるのかな……って」

 

 ──うっ!

 

「だから、せめてそういうこと詳しそうな人に、話を聞いた方が……」

 

 ぐ、ぅ……!

 

 それは、医者に診てもらうことと、何も変わらない。私的には。

 

 けど、ゴンの言いたいことは分かる。確かに何かおかしい。今まで来てなくて、今ごろ来て、次がいつまでも来ない。

 

 来た日も……考えてみれば、タイミングがあまりに良すぎた。私が、父さんと母さんに全てを話して許された、次の日の朝だったから。

 

「私が……」

 

 まだ話さなければいけない苦痛に耐えながら、声を絞り出す。

 

「私が、あの日になったのは……父さんと母さん、2人に許された次の日でした。

 母さんに、これからは女性として生きていくようにって。言われて……

 もしかしたら、それで……」

 

 ゴンが、ん? という顔をする。どしたんだろ?

 

「なんか……

 それだとタイミングがおかしくない?」

 

「へ?」

 

 タイミングがおかしい? 良すぎるというならともかく、女性として生きてと言われた次の日に初めてが来るのって……まぁおかしいと言えばおかしいかもだけど。

 不思議がる私に、ゴンが頭を捻るように「うーん」と考えている。何だろ何だろ。

 

 私の方をちらりと見て、

 

「……アイシャ。

 オレとこういう話するの、イヤだったら言ってね?」

 

 そう言われると、なんだかとっても嫌な予感しかしない。

 

「そりゃ……イヤはイヤですけど。

 それはゴンだから、じゃなくて、誰とだってイヤです。

 ただ、まぁ……続けてください」

 

「うん……オレも流石に自信ないんだけど……

 女の人の生理って」

 

 ゴンの口から、そんな言葉ききたくなかったよ……

 

 脱力感と戦いながら、意識をかろうじて保たせる。

 

「その……まず赤ちゃんの元が出てきて」

 

 はぁ。まぁかわいらしい表現で、少し安心しましたが。

 

「しばらくして、いらなくなったものが出て行って。

 で、その繰り返し、だったと思うんだけど」

 

 うんうん。そのはず。

 

「じゃあ、女の人の最初って……初潮じゃないんじゃない?」

 

 ……。

 

 また聞きたくない単語を聞かされて、思考が回らない。確かに違和感はある、けど……

 

 ん、んん? え? あー……

 

「だから。アイシャが女の子として生きるって意識したのがきっかけなら。

 ……半月後なんじゃない? その日が来るのは」

 

 えっ……あれれ?

 

 混乱する私に、ゴンが少しいらいらしながら、

 

 

 

「ほんとに分かってる? アイシャ。

 

 女の人の生理って二段階あって。一番最初は、あの日じゃないって言ってるの」

 

 

 

 コキン。

 

 

 

 私の身体が、まるで音を立てたように冷え固まった。

 

 つまり……

 

 つまり、それって。

 

「……あ……もしかして、ゴンが言ってるのって。

 女性としての最初は、あの日じゃなくて。

 その……前兆がない、半月前、から?」

 

「って……思うんだけど。オレは」

 

 

 

 

 

 ────意外と誤解されがちなのだが。

 

 女性特有の生理開始は、『初潮』→排卵→月経→排卵→月経……

 

 ではなく。

 

 『排卵』→初潮→排卵→月経→排卵、なのだ。

 

 実は女性としての準備が整うのは、初潮の半月ほど前なのである。

 

 当然最初の排卵タイミングは、予め知る術がない。出血も不調も、何もないのだから。周期などないから、予測しようがない。本当に、突然始まる。

 

 

 

 

 

 と、いうことは……本当のきっかけは、あの半月前?

 何かあっただろうか。えっと……

 考える私に、ゴンも考えてみせ、

 

「アイシャ、まだ入院してたんじゃない?」

 

 ……まあ、それはそうだ。退院直後に父さんの家へ向かい、その次の日がアレだったんだから。

 あー、あの時かな。ネテロのクソエロジジイのせいで入った、2回目の緊急治療室から出てきて。みんなにお見舞いしてもらった日、かな。

 

 あれも幸せな日だった……

 

 みんなに私の秘密を話して、認めてもらえた日。困惑していたけれど、黙っていたのが申し訳ないくらい、がんばってみんな私を受け入れようとしてくれた。

 そうだなぁ……あの日がきっかけっていうのもいいよなぁ。

 私がぼんやりそんなことを考えていると、ゴンはなぜか不安そうな表情を見せる。

 

「半月前がきっかけだったら、もちろんオレもいいと思うんだけど……」

 

 私も表情を曇らせる。とっても不安を誘ってくるゴン。え、え、なにそれ? こわい。

 あのゴンですら、言いにくそうにしている。ああ、なんで私はこういう話にトンと(うと)いんだろう。彼が何を気にしているのか、ちっとも見えてこない。

 

「お父さんとお母さんに、アイシャは許してもらったんだよね。

 それでこれからは、女性として生きていこうって。

 ……ホントに、それがきっかけだったら?」

「きっかけだったら?」

 

 思わず聞き返す。えっと、その場合……

 赤ちゃんの元が出てくるのが最初なんだから……

 

 

 

 『排卵』→『すぐ初潮』→『以降月経なし』

 

 

 

「────ッッ!!」

 

 ぎょっとして背筋を伸ばす。あ、え、それ……メチャクチャ異常じゃん!! どうなってんの、私の身体!?

 

 

 

 

 

 ──彼女の場合、来ていなかった理由が『女性として生きることを拒んでいた』意識がオーラとして作用し、女性機能を停止させていたことに起因する。

 で、それが女性として生きようと決めた途端、急に動き出したのだ。異常が起こったとしても不思議ではない。まさに人体の神秘である!

 

 ……もちろんアイシャにそのへん自覚がないので、どうしようもないのだが。

 

 

 

 

 

「だから、ちゃんとしたお医者さんに……」

「うっ。けど、それって……念能力を持った、ですよね?」

 

 私が確認すると、ゴンは首肯し、

 

「その方がいいと思うよ。可能性がありそうなの、そっちだし。

 アイシャって、むしろ健康体じゃん。なんか普通の理由って気がしないけど」

 

 そう……私は大怪我こそしたりするけど、基本的に体調はかなりいいことが多い。

 だからこそ、いつもはりきって修行に打ち込める。無理もできる。身体は資本。

 

 ……けれど、この件に関してだけは謎すぐる。なんでよりによって、こんなことで……

 

「アイシャ。

 そういうこと相談できそうな念能力者、心当たりいる?」

「……」

 

 そりゃ……いる、けどさ。

 

 要は、医者の念能力者を紹介してくれそうな人ならいいわけでしょ。

 あ、レオリオさん除外。別に医者の卵だからとかじゃなくて、除外。うん。

 

 リィーナは、こういうことでは余計なことしかしない気がする。

 私に関係無いことなら頼りになるけど、関係あることになった途端ぶっ壊れるからな。今回の場合もどうなるか予想が付きすぎて、絶対に頼りたくない。もし風間流の関係者に知れ渡ったりなんかしたら、恥も外聞(がいぶん)もなく私は泣く。道場に近づくの一切やめるぞ。

 

 ビスケは……うーん……あの子の立場と経歴(キャリア)なら、ハンター協会か心源流関係の医者の知り合いくらい多分いるだろうし、彼女の念能力も有効かも……

 いや、ダメだ。私の【ボス属性】が打ち消すな。てか念で治療しないといけなかったら、ボス属性やばくね? どんだけ私の邪魔するの? ふざけてんの?

 どっちにしろビスケは高く付きそうなんだよな。もう着せ替えアイシャちゃんはゴメンすんません許してイヤー。アレじゃないと依頼受けてくれないんだよな、くっそー……

 

 風間流関係者もダメだな。大体リィーナの権力下は、内緒にしてと頼んでも、あの子の耳に入れてしまいそうだ。私の身体に関わることなら尚更。

 

 そうなると後は……

 

 私は腕を組んで「んんー……」と悩み続けていると、

 

「オレ、心当たりあるよ。

 多分とびきり腕のいい念能力者、教えてくれると思う」

 

 ほ? ダレそのスーパーなひと。

 

「オレが電話して聞いてみよっか?」

「えっ?

 ……いや、ちょっと待ってくださいゴン。

 私まだ、お医者さんに診てもらうとは──」

 

「……アイシャが医者に診てもらうまで、オレぜぇーったいココから降りないからね?」

 

 ぐ、はっ!?

 

 そ、そう来たか。ゴンの性格だったら、私がここから逃げても、ずっと待ち続けそうだ。レオリオさんが【高速飛行能力/ルーラ】で迎えに来たって、(がん)として降りようとしないだろう。

 私がどうするか逡巡していると、ゴンは素早く携帯電話を取り出し、PiPoPa♪ とやり始めた。あ、う、くそっ……!

 

 私を場に縫い付ける真剣な眼光をぶつけながら、ゴンは電話が繋がるのを待つ。

 

 どうする、もう一刻の猶予もない。逃げるか、それとも……!

 

 ゴンが突然ニコッとした。

 

 

 

「あ、ネテロ? オレだよ、ゴン」

 

 

 

 おおおおおおおおっっっ! アンタ、なんばしょっとねぇぇぇぇぇっ!?

 

 

 

「ごめんね、いきなり電話して。ちょっと相談があって。

 

 ……あ、ううん。オレじゃなくてアイシャが」

 

 

 

 ────ぎにゃああああああああッッ!!

 

 

 

 

 

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