どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第百九十三章

 

「でも、わたしの知ってる忍者は、捕まったら自害するとか言ってたんだけどねー。

 奥歯に仕込んだ毒で」

「私もその用意をしろって、上から言われたことはあるけど……

 結局は本人がするかしないかだし。毒耐性付けた理由の1つが、それが効かないようにする為なのよ。だから断ったわ。奥歯だと間違って噛むことあるもん」

「やっぱり?

 わたしも奥歯って危なくない? とは思ってたのよ♪」

「そもそも、ずっと仕込んでるわけじゃないもの。

 捕まる可能性がある任務中だけ仕込むのよ。普通、里に専門の歯医者がいるから」

「あ、そうなんだ?

 自分でやってるもんだと思った」

「ほら、毒を扱うわけだからやっぱり危ないしさ。

 それに仕込んだって嘘吐いて、実際には仕込んでないのを防ぐ為らしいわ」

「アハハハ♪

 そんな人いるんだ?」

「昔いたんでしょうねぇ。まったく、いい迷惑よ」

 

 ぶどうジュース片手に、物騒な忍トークしてるユリさんとベルさん。まぁとりあえずは流れに任せるか。

 

 

 

 

 

「はぁー……

 うん、キリがついた。休憩しよう」

 

 モタリケが休憩を宣言し、俺こそ「はぁー……」と深く溜め息を吐く。

 

「やっとかー。長ぇなあ……」

「にゃ」

「……桜。休憩したいから、今は消すぞ?」

「にゃん」

「また後でな」

 

 ふわりと光になって桜が消える。消費抑えめにしちゃいるけど、回復できないのは結構キツイからな。……長時間撫でた桜の記憶が入り込んでくる。ぐ……

 

「どうした。大丈夫か?」

「はぁ……いや、ちょっと疲れただけだよ。

 モタリケ、どれぐらい休憩するんだ?」

「15分くらいのつもりだ」

「もうちょっと休みたいけど、まぁしゃーねーか。

 長引くのもヤダしな」

「あんまり長引くなら、日を改めてもオレは構わないが」

「できれば今日中に済ませてほしい……」

 

 立ち上がり、モタリケの方へ歩いていく。絵を覗き込み──

 

 ぅ、うわ。

 

「誰だコレ?」

「オマエに決まってるだろ」

 

 いや、分かるけどさ。ぜったい男のつもりで描いてねーだろ、これ。だから笑いものにされるんじゃねーか。前の絵も──ぐ、見てない見てないぞ。

 

 ともかく、線は大体取れてるか。まだぼんやりしてるところもあるけど。桜が結構苦戦してるみたいだな。……初めて描くからか。俺が撫でてるし、多少は動くもんな。

 

「……もうモデルいなくても描けるんじゃね?」

「描けなくはないが、完成度が下がる。

 ちゃんと目に焼き付けないとな」

「へいへい、さいでございますか。……この変態め」

「変態とはなんだ!

 オレは純粋に──」

「あーはいはい。

 もういいから上行こうぜ。珈琲淹れてくれよ」

「それだと休憩が長くなりそうだけどな」

 

 言いつつ、モタリケも立ち上がる。身体をほぐさないと、地味に痛めそうだよ、ったく。

 

 

 

 

 

「あっはっはっはっは!

 マジで? それめっちゃ見たかった!」

「ホントホント! わたしもそれ見たかったわー♪」

 

 手を叩いて大ハシャギするユリさん、指でリズミカルにテーブルを叩くベルさん。

 

 お互い色々な情報交換をしてたんだけど、そのうちウラヌスの昔話が聞きたいとなり、それぞれ面白エピソードを披露することに。で、プニキュマコスでカラオケの1件は特に大ウケしたようだ。シームも嬉しそうに頷き、メレオロンは苦笑いしてる。

 

 ──あっ、やべ!? 戻ってきちゃった、もうそんな時間か!

 

 廊下から、顔面を蒼白にしたウラヌスがおそるおそる部屋を覗き込んだ。

 

「……な。

 なんで姉貴おるん?」

「あ、桜♪

 お早いお帰りでー」

「おはやいじゃねぇよ……

 いつからいたんだ?」

「あはは……

 1時間ぐらい前からですかね」

「いや、ちょっとアイシャ?

 どういうことさ。何の相談もなく──」

「違う違う。アイシャは悪くないわ。

 お姉さんがあなたのバインダーに『交信』してきたから、わたしがお誘いしたのよ。

 あなた達は絵を描いてるから、気を散らしたくなかったし♪」

「…………。

 バインダーを渡したのが間違いだったな」

 

 がくー、と肩を落とすウラヌス。あははは……正直すまんかった。

 

「おっ? お前のお姉さん?」

「……そうだよ」

「どうもー。

 こちらの旦那さんですよね」

「ああ、初めまして。

 ウラヌスの身内なら歓迎するよ。くつろいでいって」

「はーい。くつろいでまーす」

「……モタリケ。

 俺すんげー頭いたい……珈琲淹れて」

「分かった分かった。

 いいからオマエは座って休んでろ」

 

 お姉さんの隣に座り、「ないわー……」と項垂れるウラヌス。

 

「元気ないわねぇ。どうしたの?」

「……姉貴が疲労をもたらす元凶だからな?

 つか、やたら笑ってたけど、なに話してたんだ?」

「今してたのは、キュマニャンの話ー」

「ちょっとッッ!?

 よりによってソレッ!?」

 

 正直に言うシームに、過剰反応するウラヌス。にゃんこ、一気に顔真っ赤っか。

 

「きゃはははは! その様子だとマジ?

 うっそ、しんじらんなーい!

 プニッキュマ、プニッキュマ♪ アハハハハハ!」

「やめろやクソ姉貴ィィーッ!!

 あー、もうッ! 最悪のヤツに知られたぁぁッ!!」

 

 手を叩いて喜ぶユリさん。頭を抱えて悶えるウラヌス。惨状だな、こりゃ。

 

 ベルさんが手をパタパタしながら、

 

「心配しなくても、他にも色々話したわよ?」

「ふざけんなッッ!!

 心配どころか心労が急ピッチで溜まるわッ!!

 なんでンなこと、くっちゃべってんだッ!?

 ……ちょっとアイシャ! どういうことか説明してよっ!?」

 

 えー。私に振るの? 絶対怒ると思うんだけど。

 

「いやー、すいません。

 私達の親交を深める為に、あなたにまつわる面白エピソードを紹介しようという流れになりまして……」

「なんで俺だけピンポイント攻撃ッッ!?

 俺の親交、マッハでマイナスなんだけどッ!?」

「アンタ、色々愉快なことしてたのねー。

 私、ずっと笑いが止まんなくってさぁ」

「他人の前で、弟を笑い者にすんじゃねーよッ!!

 この薄情モンがッ!!」

「あれれぇー?

 私とあなたは他人じゃなかったっけぇー?」

「くっそ、ムカつくっ……!」

 

 ウラヌス、すっかりヤリこめられてるな。多分ユリさん、仕返しも兼ねてるし。

 

「ところで、絵を描いてるとか言ってたのって何?

 また面白そうな話の気配がするんだけど」

「ああ、アレよ。

 今、この子の絵を描いてるところなのよ」

「へぇー……

 アンタの絵ねぇ……」

「……」

 

 意味ありげに流し目をするユリさんに、冷や汗を流し始めるウラヌス。にゃんこ危うし。

 

「それ、私も見てみたいなぁ」

「いいんじゃない?

 いま描いてるヤツはまだまだ描きかけだと思うけど、昔描いた1枚が飾ってあるし」

「やめろやベルッ!?

 あんなもん見せんなッ!」

「あー。それだけ嫌がってると気になるなぁ。

 ぜひぜひ拝ませていただきたいなぁ」

 

 恥ずかしがるウラヌスを眺めて、恍惚とするユリさん。

 

「そこまで嫌がるってことは、きっとアレでしょ?

 ヌード、モ・デ・ル♥」

「ふ・ざ・け・ん・なッッ!!

 なんで全裸を描かれにゃならんのだッ!?」

 

 思わず「ぶふぅっ!」と吹き出す。ウラヌスがめっちゃ私をニラんでくるけど、笑いを堪えるのに必死で取り繕うこともできない。

 

「あぅー……

 どうしてこうなったんだよー……」

 

 顔を押さえてぷるぷるするにゃんこ。ユリさんは苦笑を浮かべ、

 

「アンタが私のこと、信用しないからでしょ?

 だからみんな心配して、私と仲良くしようとしてるわけで」

 

 おっと。ユリさん、気づいてたのか。

 

「……信用できないのは当たり前だろ?」

「それは分かってるけど、アンタ自身の問題でもあるでしょ?

 聞いた感じ、かなり具合悪そうじゃない。私としっかり協力して、もう少し急いだ方がいいんじゃないの?」

「……」

 

 なんだよな。ユリさんを全面的に信用するのは、確かにリスクがある。けど逆に、信用できるなら今の私達にとってこれほど心強い味方もいない。

 私が復活するまでの半月弱。ユリさんとどう接するかで、安全性は大きく変わるだろう。

 

「仮に……

 姉貴と協力するっつったって、一緒には行動しないぞ?

 見られちゃマズイ状況には変わりないし、俺達は4人で行動したいんだから」

「あー、はいはい。それは分かってるから。

 4人でよろしく楽しくゲームしてるのを邪魔する気なんてないってば。

 でもアンタ今しんどいから、無理しないようにしてるんでしょ? そっちの姉弟さんは鍛えてる最中で、アイシャちゃんも調子悪いって話だし。

 だから先にキツイ攻略を私がやっといてあげるわよ。ゲームクリアは早い者勝ち、って聞いてるしさ。

 ……お願いだから私にも協力させて? 罪滅ぼししたいのよ」

 

 ウラヌスはお姉さんの顔を横目に見ながら、

 

「……。

 今でも姉貴は充分にやってくれてるよ」

「私を信用しない前提で、でしょ?

 もう少し護衛役とか、好きに使ってくれていいのよ?」

「……」

 

 私や姉弟の方に目をやり、テーブルに視線を落とすウラヌス。かなり悩みだしたな。

 

「ユリさん、ちょっとウラヌスに考える時間をください。

 急な話ですから」

「うん、別に急かさないわ。

 その気になったら、相談してくれればいいから」

 

 そこまで言ってくれると、有り難くて逆に申し訳ないな。……ほんとウラヌスの為なら、何でもしてくれそうだよね。

 

 ベルさんが笑顔でパンと手を打ち、

 

「それじゃ丸く収まったということで♪

 モリー、珈琲全員分ちょうだーい」

「そのつもりで用意してるよー」

 

 この夫婦にも感謝しないとな……。グリードアイランドで、信用できる仲間がいるってホントに心強いよ。

 

 

 

 ウラヌスが考えてる間、珈琲を飲みながら雑談する私達。で、ゲーム攻略の話ぜんぜんしてないのがウラヌスにバレて怒られた。うぅ……

 

 ユリさんによると、カード収集は思ったより手こずったらしい。というのも入手方法が変わってるカードに3度もカチ合ったらしく、ウラヌスの攻略情報と食い違って混乱したそうだ。

 それでも密林都市チャンタではカードを3枚入手したらしく、それを見せてもらった。

 

 

 

『22:トラエモン』

 ランクA カード化限度枚数22

 絶滅寸前の猛獣 腹の袋にモノをつめ込む習性があり

 超貴重なアイテムが複数入っているケースも少なくない

 

 

 

『35:カメレオンキャット』

 ランクS カード化限度枚数6

 絶滅寸前の珍獣 飼いならせば様々な動物に変身してくれる

 ただし体積を変化させることは出来ないので

 小さな象や大きなハムスターになってしまうが…

 

 

 

『294:フルココナッツ』

 ランクA カード化限度枚数15

 伝説の果実 とても果肉が柔らかく

 殻を強く振ることで 中がほぼ液汁になる

 美味ではあるが 迂闊に割ると こぼれてしまうので注意

 

 

 

「かー。よく見つけたなぁ……」

「大変だったわよー?

 急いで走り回ったら、スゴイいっぱい敵出てきたから」

「いやまぁ、急ぐのは姉貴がしたくてしたんだろうし……

 ただ、実際助かったよ」

「ランクS、ポーンと取っちゃうのねぇ♪

 あなた、やっぱり凄腕なんだ?」

「ふふーん。聞いた聞いた?

 凄腕だって」

 

 得意そうに、隣のウラヌスを肘でつっつくユリさん。うんざりした顔でウラヌスは、

 

「……姉貴のそうやってすぐ調子に乗るクセは、直すべきだと思うぞ」

「私が凄腕なのは事実じゃないの。アンタが認めないだけで」

「事実誤認じゃねーかな。ズコーな腕の間違いだろ」

「なにがズコーよっ!? もー……

 ちょっとくらい認めてくれたって──」

 

 また毎度のように脱線していきそうなので、私は強引に割り込む形で、

 

「あー、その。この果物ってアレですよね?

 豊作の樹の……」

「そ。ドリアスのカジノで集めた果物系カード、最後の1つ。

 これがあれば、グルセルで豊作の樹が入手できる。

 いや、マジで助かるわ。フリーポケット圧迫してた6枚も片付くからな」

「そうですね。

 ……ランクSのカメレオンキャットはどうします? 独占ってしますか?」

「いやぁ……どうだろう。

 6枚だから独占はしやすいけど。まだ他に誰も取ってなければね。

 でもゲイン待ち対策がしづらいしなぁ」

「ゲイン待ちって何?」

「んー? 姉貴にはまだ説明してなかったか。

 カード化限度枚数に達したアイテムを取ると、カードにならずアイテムのままなんだよ。

 で、カードのどれかがゲインされると、取ったのが早い順にアイテムがカード化する」

「うん、それは分かるけど……」

「アイテム状態のまま確保して誰かのゲインを待つのが、ゲイン待ち。

 その対策として、1チームでカードを限度枚数まで確保して、更にアイテムも取っとくわけだよ。そうしたら、他のプレイヤーはちょっとやそっとじゃカードをゲットできなくなる」

「まぁそうね……

 そこまでされたら厄介ね。奪うか交換するしかないかも」

「だな。

 でも、姉貴は取ったから分かるだろうけど、アイテム状態で持ち運ぼうにもカメレオンキャットって結構かさばるだろ?」

「うん。普通の猫サイズだったわ」

「ゲイン待ち対策しづらいなら、独占する意味も薄いかな。

 何よりフリーポケットをどうしても圧迫するし」

「でもここに7人いるじゃない♪

 6枚だから、指定ポケットカードに全部収まるわよ?」

「ベル、そうするとオマエかモタリケのどっちかが1枚持つことになるぞ?

 ランクSカードを守り切れるのか?」

「あー、うーん……」

「カードの独占なんて、そうポンポンするもんじゃないんだよ。

 ヘタすりゃ自分の首を絞めるからな。固まってるところに『徴収』食らったら、かなりヤバイし。もう1つ、姉貴が取ってくれたランクSの盗賊の剣も限度10枚だし、独占には不向きだな」

「でも何かは独占しておいた方がいいんじゃないの?

 クリアが早い者勝ちなら、抑止になるわけだし」

「もちろん対策済みだよ。

 ランクSの浮遊石を限度7枚まで確保して、アイテムで1個ゲイン待ちもしてる。

 だから俺達をどうこうしない限り、誰もクリアできないよ」

「へぇー。……その浮遊石、私も預かった方がいい?」

「ん? んー……

 まぁそうすると、こっちのフリーが1枚空くしな。……分かった、姉貴に1枚預けるよ。他のランクSにも言えるけど、死守してくれよ?」

「分かってるわよ。

 基本逃げに徹するから」

「特に税務長の籠手で、集団『徴収』が一番ヤバイからな。

 相手がしつこかったりしたら、こっちに救援頼んでくれ。最悪『同行』で来てもいい」

「はいはーい」

「その時は必ず俺を指定しろよ?

 俺の名前呼びにくいからって、アイシャとか指定して飛んできたら怒るからな?」

「あー。

 それはちょっと私も困りますね……」

「大丈夫大丈夫、アイシャちゃんに飛んだりしないから。

 カードのトレード持ちかけられたら、どうしたらいい?」

「基本、話を聞いて受けるか断るかすればいいけど、ランクSはやめといた方がいいな。

 トレードに使うなら、タイミングよくしないともったいない。相手も更にトレードして出回ったりするからな」

「なるほど、確かにそうね」

 

 うん? ウラヌス、結局お姉さんのコトどうするか考えてないな。このままなし崩しにガッツリ協力関係結びそうな感じだ。

 

 

 

 予想通りというか、珈琲を片手にすっかり攻略話に花を咲かせる3人。モタリケさんは諦め顔で2杯目の珈琲を淹れに行く。ウラヌスとベルさんとユリさんが途切れなくお喋りしていた。

 

「ええええーっ!? よんじゅういっしゅるいぃーッ!?

 ……何日か前、20種類ぐらいとか言ってなかったっけ……?」

 

 めっちゃ驚くベルさん。そうそう、ここ数日で一気に増えたんだよね。

 

「グルセルに行った時は、取った分ふくめて21種だっけな。

 あの後、俺達も結構集めたし」

「なにより私よね? ね? ね?」

「姉貴、役に立ったアピールうざい。

 まぁゲーム始めて20日近く経ったけど、41種はなかなかハイペースだろうな。

 特につまづきやすいランクSが21種中4種確保できて、更に1枚豊作の樹もじき取れるのはデカい」

「豊作の樹はすぐ取りに行くの?」

「俺達が明日グルセルに行って取ってきた方がいいんだろうけど……

 予定はまだ決めてない」

「私が代わりに行ってこようか?」

「あー。でもいいんだけどな。

 ただ俺達も結構苦労して必要カード集めたからなぁ。任せるのもツマランと言うか」

「わたしもまた買い物行きたいなー♪」

「ええ? そんな大所帯で行くのヤなんだけど。

 目立つだろ」

 

 なんだかんだ言って、ゲーム攻略の相談してるウラヌスは楽しそうだよね。機嫌直してくれて良かったよ。

 

 

 

 

 

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