どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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オータニア編11  2000/10/4
第百九十五章


 

 ──10月4日。

 

 今日は朝から修行、ということで普段よりバタバタしていた。

 久しぶりにイナゴ退治を2人にさせ、急ピッチでハードなウェイトトレーニングで鍛えまくり。ふらっふらになった姉弟に、お昼をたらふく食べさせ。

 宿に戻り、お風呂で汗を流した後はお昼寝。……予定通りとは言え、すごいドタバタ感あるな。これを毎日とかはヤダな、流石に。

 

 

 

 昼過ぎ。カーテンを閉め切った、部屋の中。

 

「……。

 アイシャ、起きてる?」

「……なんです、ウラヌス? 早く寝た方がいいですよ」

「いや……

 やっぱり、なかなか寝つけなくって」

 

 だろうなぁ。カーテンを閉めていても微妙に明るく、室温も少し高い。お風呂に入ったから身体も暖まってるし。

 

「まぁそうですよね……

 でも横になってるだけでも違いますし、休んでた方がいいですよ。

 ……なんなら、寝つきやすいようにマッサージでもしてあげましょうか?」

「い、いや。

 いいです……」

「残念」

 

 思わず本音が漏れ、自分でも苦笑する。

 

「なにが残念なのさ……」

「それはもちろん、バカにゃんこをプニれないことをですよ?」

「……。

 アイシャって、なにげに口悪いよね」

「あなたに言われたくありませんよ」

 

 ……。むぅ。言ってたら、無性に揉んでやりたくなってきたぞ。

 

「……ウラヌス、やっぱりマッサージしてあげます」

「え?

 ちょっ──と!?」

 

 素早く掛け布団から出て、サササッと寝てるウラヌスのそばへ。ガッと掛け布団を掴む。どけようとするが、抵抗して布団を放さないウラヌス。

 

「こら、放しなさい。

 なんで抵抗するんですか」

「そりゃ抵抗するよっ!?

 なんなのさ、急に!」

「マッサージしてあげたくなっただけですよ。

 お姉さんにも、してもらってたんでしょ?」

「だ、だから姉貴は……

 寝てる俺に、嫌がらせでくすぐりに来てただけだってば!」

「ホントにぃ?

 お姉さんがどういうつもりか、本当にウラヌスは知ってたんですか?」

「ど……どういうつもりって」

 

 口ごもるウラヌス。……当時はともかく、今は分かってそうなもんだけどな。

 

「少なくとも嫌がらせじゃなかったと思いますけどね。

 もちろん、私もそうですよ?

 ほら、起きて起きて。そんなしっかり揉んだりしないですから」

「……約束だからね?

 眠気がなくなるくらい揉まないでよ?」

「はいはい、だから早く」

「ぅぅ……」

 

 観念して、掛け布団を除けて上半身を起こすウラヌス。乱れた浴衣をそそくさ直してる。ふふふ……

 

「昨日はモデルで座りっぱなしでしたし、少し足腰揉みますねー」

「ぁぅ。お手柔らかに……」

 

 

 

 ぷるぷる悶えるにゃんこの反応を楽しみつつ、足先から腰までプニプニと揉んであげ、

 

「……も。もぅぃぃ、もーいいから……」

「仕方ないですね……

 それじゃ座ってください」

 

 横たわっていたウラヌスが身体を起こし、「ふへぇー……」と息を吐く。

 仕上げとして、座っているウラヌスの背中から肩にかけて、まんべんなく揉んでいく。ぷにぷにぷにぷに……

 

「ぅー……」

「髪の毛と違って、あんまり慣れてる感じがしませんね。

 お姉さんがよくマッサージしてたんじゃないんですか?」

「いや、だから……

 マッサージとかそんな大層なモノじゃなかったってば。

 寝てる俺をくすぐったりとか、そんなんだよ?」

 

 くすぐるという(てい)で、可愛い弟をプニってたんだろうな、ユリさん。……熟睡している時の脱力してる身体を揉んだりすると、また一段とアレだもんな。

 

「姉弟、仲がよろしくて結構じゃないですか。

 ……ユリさん、あなたがいない時に、昔のことを懐かしそうに話してましたよ」

 

 言葉を返さないウラヌス。しばらく、ただプニプニと揉む時間が過ぎ、

 

「……姉貴は、さ。

 よく俺に、スキンシップしてきてたんだよ。何かにつけて、べたべたべたべた。

 親は全然俺に触れようともしないのに、やたら姉貴だけくっついてきてさ。

 それもあって、よく喧嘩してたんだけど」

「ダメじゃないですか、喧嘩しちゃ」

「無茶言わないでよ。

 だって、里じゃほとんど一緒にいたんだよ?

 俺が1人でゆっくりしたい時でも、暑かろうが疲れてようが、お構いなしでさ。いくらなんでも気を使わなさすぎだよ……」

 

 ……ユリさん、筋金入りのブラコンだな。昨日話してても、つくづく思ったけど。

 

「そのワリには、やっぱり揉まれるのに慣れてないじゃないですか」

「……小さい頃の話だよ。

 ある程度大きくなってから、身体が拒否するようになって。精神的な理由もあったけど。

 なんかその……触られると力が抜ける感じがしてさ。俺が弱りだしてからは特に酷くて。

 姉貴は、俺の体調を確認する為にやってたのかもしれないけど」

 

 んー……

 

「……すいません。私、勝手に思いこんでました」

「え。なにが?」

「あなたの身体が柔らかいのって、小さい頃からだったんですね」

「うん……そうだと思う」

「前に聞きましたが、できるだけ消耗しないように普段は力を抜いてるって話でしたから、その脱力具合で身体が柔らかいんだと思ってました。

 そもそも、触られると力が抜けちゃうんですね」

「ぐ……

 いや、その。……もちろん悪意を持って触れられたら、俺も抵抗するんだけど。

 俺、嘘とかそういうのが大体見抜けちゃうから……悪意なく触れられると、うん」

 

 なるほどなるほど。そりゃシームのこと、絶対邪険に出来ないだろうね。完全に好意で抱きついてるんだし。

 綺麗な桜色の髪を眺めつつ、肩をぷにぷに揉みながら、

 

「お姉さんと、エリルへお花見に行ってみるのも良いかもしれないですね」

「あー……

 花見かぁ。里の中にも外にも、桜はいっぱい生えてたからなぁ。

 懐かしい気分にはなるだろうけど……俺は昔に引っ張り戻されるから、微妙かな」

「そんなに昔はイヤだったんですか?」

「……。

 時間が経ったら、もしかしたら良い思い出に変わるかもしれないけど……

 まだ気持ちの整理がつかない。そもそも俺はあの里を潰したいんだし」

「今でもそう思ってます?」

「……思ってる。

 身体と一緒に気も弱ってるから、今はそんなに強く思えないけど……

 多分、復調したら里へ復讐する為に動くと思う」

 

 ……。よほど酷い目に遭ったんだろうな。念をかけられたことも含めて。彼の実体験が、恨みを風化させないんだろう。

 

 そしてその感情こそが、彼を幸福から遠ざけているようにも思える。

 

 なら、私が彼に出来ることは──

 

「……むかし」

「ん?」

「私が子供の頃。……故郷で迫害を受けたんですよ」

「……アイシャ」

「生活を邪魔されたわけでもないですし、(いわ)れのない迫害、とまでは言えませんでしたが。

 故郷を離れる直前に知ったのですが、悪魔の親子……なんて呼ばれていたらしいです。

 ウラヌスも知っての通り、私のオーラは禍々しい性質を持っています。だから、それが原因で私が悪く思われるのは仕方なかったんですが……

 でも……

 私を愛してくれた母さんのことまで悪く言うあの故郷を、今でも好きになれません」

「……」

 

 彼から、私に向ける同情の気配が伝わってくる。表情を見なくても、分かる。

 

「……ですが。

 だからと言って、故郷をどうこうしてやりたいとまでは思いません。

 そこまで酷い目に遭わなかったというのもありますが、私と母さんが過ごした思い出の土地でもありますから」

「……」

「あなたが里の人達や両親を憎む気持ちは、私にも少し分かるつもりです。

 でも……あなたにとって、お姉さんは必ずしも憎むだけの存在ではないと思います。

 ……お姉さんと一緒に過ごした思い出の地を、あなたは無くしてしまって本当にいいんですか?」

 

 触れている肩から、震えが伝わってくる。複雑な感情は、声に乗せて私に伝えられた。

 

「……勝手なこと言わないでよ……」

 

 その言葉に胸を締めつけられる。それでも、肩に触れた手だけは離さずに、

 

「ええ……

 自分でも勝手なことを言っているな、とは思います。

 復讐は何も生まない、ただ憎しみを募らせるだけ──そう言うことは簡単です。

 けれど、一度点いた憎悪の火を、簡単に消せないことも分かります」

「……」

 

 ウラヌスが軽く手を上げたので、私は続けようとした言葉を飲み込む。

 

「……仮に、ね。

 俺が復讐なんかしない、って言ったとしても。

 あの里が非人道的なことをしてきた事実を、俺はたくさん知ってるんだ。

 里が存続する限り、その非人道的な行為はこれからも繰り返される。

 ……それでも、ダメ?

 俺はあの里を潰しちゃダメなのかな?」

 

 息を吐きたくなるのを堪える。まるで以前のクラピカと話してるような気分だ。状況もおそらくかなり似ているだろう。

 

 幻影旅団に対して、私も彼らの非道を許すべきではないと考えていたし、実際父さんが殺されかけてクラピカの気持ちはよく理解できた。

 

 ……つまり、私はクラピカの復讐を止めることはできなかった。幻影旅団を止めること自体は正しいことだ。けれど復讐はその延長線上の話だ。何より私自身、旅団員の1人にトドメを刺す寸前までいってしまった。……殺さずに済んだのは僥倖で(ぎょうこう )しかない。

 

 だから……とてもではないが、復讐なんて間違っていると言える立場ではない。少なくとも、ウラヌスに復讐を思い留まるよう、説得できる気がしない。

 

 でも……

 

「あなた自身に正義があることは分かります。

 復讐なんてするべきではない、ということは私には言えません。

 私があなたに伝えたいのは……

 あなたが心配だ、ということだけです」

 

 背中越しにウラヌスが、「すぅー……」と息を吐くのが聞こえてきた。

 

「……ん。わかった。

 アイシャ、もうマッサージは充分だから」

 

 半ば拒絶するような響きに、私の手が自然と離れる。

 

 ウラヌスはこちらに顔を向けず、ゴロンと掛け布団の上に横たわる。

 

「もう寝よ。……夜、ツラくなるから」

「……はい」

 

 ……。失敗した。言葉選びを間違えたようだ。

 

 彼にとって、里への復讐は一番干渉されたくないことなんだろう。……クラピカもそうだった。私達を巻き込むことを特に嫌がっていた。

 

 それは私達に対する気遣いでもあったんだろうけど、干渉されたくないという拒絶でもあったんだと思う。彼は自身の憎悪を持て余している。自らも苦しんでいるその毒性に、誰も触れさせたくないのだろう。

 

 それが分かっていただけに、私もどう声をかければいいか分からなかった。だからこそ、思いつくままに話してしまったけど……

 

 寝転がり丸くなった彼は、そばにいる私に対して何も反応しない。私も寝るしかないか……

 

 意気消沈しながら、私は自分の布団に潜り込む。

 

 

 

 ──眠りが浅かったのか、中途半端な時間に目が覚める。まだ夕方まで時間があるな。もう一眠りしないとダメか……

 

 ふと目をやると、掛け布団の上に寝転んでいたウラヌスは、ちゃんと布団に潜っていた。様子が気になり、音を立てないよう近づく。

 

 覗きこむと──

 

 力のない顔つきで、ウラヌスは静かに眠っていた。……涙の痕を残して。

 

 やっぱり……思いのほか、私の言葉が堪えてしまったんだろう。

 

 なぜ私は『心配だ』なんて言ってしまったのか……。それは私の感情でしかなく、彼の感情を完全に無視した言葉だ。彼の考えを肯定もしていなければ、否定すらしていない。

 

 ……父さんと仲直りするのに、時間がかかったのも当然だな。どうして、私はこう……他人の心の機微が理解できないんだろう。これじゃ母さんに顔向けできないよ……

 

 泣き疲れたようにしか見えない、彼の表情をじっと見つめ、

 

「……傷つけて、ごめんなさい……」

 

 聞こえないぐらいの声で囁き。私は再び布団に戻る。

 

 

 

 ──気配に目を覚ます。見やると、ウラヌスが半身を起こして身繕いをしていた。

 

「おはよ、アイシャ。……この時間に、おはよってのも変か」

 

 思わず「ふふ」と笑ってしまった後、

 

「いえ、おはようございます。

 ……ウラヌス。

 無神経に、昔のことを掘り返してしまい、すいませんでした……」

「ああ、うん。気にしないで……

 俺自身、まだ気持ちの整理がついてないだけだから。姉貴のこともあるし……

 アイシャに言われて、ようやく気づけたよ。

 俺は本当にどうしたいのか、もうちょっと考えないといけないなって」

「ええ……

 もし良ければ、結論が出たら教えてくれませんか?」

「……ん、分かった。

 それは約束する。……心配かけてごめんね?」

「いえ……」

 

 力なく苦笑するウラヌスから軽く目を逸らし、時計を確認する。午後5時か。ちょうどいい時間だな。

 

「そろそろ動こっか。

 隣の部屋、起こしてくるね」

「はい。お願いします」

 

 

 

 ややグズグズと起きてきたらしい隣の姉弟を焚きつけ、再び入浴。

 

 一緒に入ったメレオロンは、お昼はクタクタで元気なさげだったけど、今は流石に回復したようで顔色は良かった。

 

「ん?」

 

 湯船に浸かっていたはずの、メレオロンの気配が消えた。目を向けても姿がない。

 

 髪を洗ってる真っ最中だった私の両胸が、ぐにゅっと踊った。

 

「ちょっ──!?」

 

 シャンプーが飛び散るのも構わず、肘を振り回す。感触がした直後に見えた、三本指の手をはじく。

 

「おおっと。

 ……まぁたまた、いい感触じゃないのー♪ 一段と大きくなったんじゃない?」

「そんなすぐ大きくなるもんですかッ!!」

 

 くっそ、まるっきり油断してたぞ。最近全然セクハラしてこないなと思ってたら……! 揉み方も一段と悪質になってる。ぐぅぅ……そっち方面まで器用になりやがって!

 

「覚えてなさい!

 まったく、油断も隙もない……!」

 

 変態を一睨みした後、洗髪を再開する。いちおう私も警戒は解かないが、メレオロンは私の背後から動こうとしない。

 

「……なんですか?」

「それはこっちのセリフ。

 アンタ達、なんかあったの?」

 

 この場合のアンタ達って、私とウラヌスのことか? ……とぼけてみるか。

 

「アンタ達って、誰のことです?

 私は別に何もありませんけど」

「あー。

 アンタ達って、アンタとウラヌスのことよ。

 どっちかって言うと、あんたウラヌスになんかした? って聞いてるんだけど」

「……してません」

「ウソおっしゃい。

 アタシ達を起こしに来た時、あの子の様子ヘンだったわよ?

 シームが『ウラヌス、もしかして泣いてたの?』って聞いたから、アタシも分かったんだけど……」

「……」

「正直に言ってくれないと、なにかあってもフォローできなくて困るでしょうに。

 それとも、どうしても話せないようなことなの?」

「……」

 

 どうしよっかな。話しておいた方がいい気もするけど……ウラヌスの気持ちを考えると、私が勝手に話すのもな……

 悩みながら、黙ってシャンプーを洗い流していると、

 

「もしかしてアレ? ついにアンタ達……」

「……あなたがなに想像してるか知りませんが、そういうのじゃありません」

 

 溜め息混じりに妙な疑惑を否定し、じっと見てくるメレオロンの方を振り向いて、

 

「……。

 ウラヌスが寝付けなかったみたいなんで、軽くマッサージしてあげながら、お姉さんのことを話しただけです」

「なぁんだ。

 ……でもないか。アンタ、アタシのこと言えた義理じゃないでしょうに。

 泣くまで揉むとか、どんだけエロいことしてんのよ」

「ち、違いますっ!

 ……ウラヌスが泣いたのは、お姉さんの話で……」

「やっぱり泣かしたんだ。

 ふぅん……

 そりゃあの子、今お姉さん絡みはナーバスなんだから、そんなのつついたら泣きもするでしょうに」

「ぅぐ……」

 

 言われてみれば……。そうだよな、今はまだ触れるべき話題じゃなかった……時期尚早だったか。

 

「そんな調子だと、そのうち嫌われてシームに取られちゃうわよ?」

 

 ……またそういう話をする。

 

「あなたはどっちの味方なんですか?」

 

 目をパチクリさせるメレオロン。……ん? 私、今なんつった?

 

 メレオロンは驚きの表情を崩し、イヤらしくニヤニヤ笑いながら、

 

「えー。そんなこと聞いちゃうー?

 どっちの味方なんだと聞かれましても、ねぇ? いったい、味方って何の話かしら?」

「い、いえ!

 違います、言い間違えただけです!

 あなたはシームを応援したいのか、したくないのか、どっちなんだと聞きたかったんであって……」

 

 言い繕いながら、顔の熱が引かない。うぅぅ、なんでそんな言い間違いしたんだ。

 

 クチの端にイヤらしい笑みを残しながらも、メレオロンは真剣な目で、

 

「アタシ的には、アンタの味方したほうが結果的にWIN-WINなのよ。

 それは分かる?」

「……まぁ」

 

 シームを取られなくないなら、そうだろうな。このブラコンめ。

 

「でもさー。新たなライバルも登場したじゃない?

 心情的に、アタシはユリさん寄りなのよねぇ」

 

 ぐぬぅ、このブラコンどもめ。似た者同士、気持ちは分かるってか。

 

 しかめっ面の私に、メレオロンはクスクス笑いながら、

 

「冗談よ。

 ……みんなが幸せになれないのは分かってるけど、誰かが不幸になってほしいなんて、アタシは思えないから。

 だから、みんなのこと応援してるわ」

「……」

 

 言葉もない……。彼女みたいなヒトを救えなかったら、私は一生後悔するだろうな……。絶対に見捨てるつもりはないけど。

 

「よっと。アンタも早くあったま──うわっと!?」

 

 立ち上がって背を向けたメレオロンのしっぽをガシッとワシ掴む。それはそれとして、だ。

 

「なになにッ、イキナリなにすんのッ!?

 コケるかと思ったわよ、危ないじゃない!」

「ふん、あなたもやったことじゃないですか。

 ヒトの胸、おもちゃみたいに揉んでくれちゃって……

 いくら言ってもヤメる気がないなら、仕返しするまでです」

「イヤちょっと、待ってってば!

 ヘンな持ち方したらバランス取れないから! 放して!」

 

 返事の代わりに、力を入れて両手でぐにぐに揉んでやる。これは独特の感触。なかなか楽しいぞ。

 

「あぁーっ!?

 待った待った待った、乱暴にしないで! 謝るからヤメテッ!」

「やめません。

 ウラヌスを悶えさせたみたいに、あなたのしっぽも存分にマッサージしてあげます」

「まっさーじ!?

 いや、はな、はなしてって!

 イタタ痛いッ! なんか腰ひきつった感じする!」

「それはいけませんね。

 しっかりほぐしてあげませんと」

 

 ぐにぐにと、つぶすように。

 

「ひぁあああああああーーーーーッッッ!!」

 

 

 

 

 

「ぷにぷにぃー♪」

「……あのなぁ。シーム」

 

 男湯にて。

 

 ここ数日、折を見てはプニプニプニプニしてくるシームに呆れ返りつつも、俺は邪険にできずにいた。……まぁ色々心配かけたりキツイ目にも遭わせてるしな。多少なら大目に見たいけど……

 

「ぷにぷに♪」

「……ちょっと、くっつきすぎじゃね?」

 

 身体が洗えんのだけど。そして、こんなとこ誰かに見られたらコトなんだが。……絵のモデルなんざしたせいで、どうも身体の反応が過敏だしな。力抜けまくる……

 

「んー。だってウラヌス、なんか元気ないしー」

「その無い元気を更に奪われとるわけだが」

「桜はこうすると元気になるよ?」

「……だから桜と一緒にすんなってば」

「えー」

 

 まぁそりゃ? ここまで好かれりゃ悪い気はせんけど……でも、甘えすぎな気もするんだよな。これから修行もどんどん厳しくなるのに、どうにもやりにくい。

 

 ん? なんか叫び声が聞こえたような……

 

「シーム、なんか声聞こえなかった?」

「ぷに?」

「プニじゃねーよ。

 ……まぁいっか。緊急事態なら『交信』使うだろうし」

 

 最悪『同行』で緊急避難するだろうしな。……いま来んのはマジ勘弁してほしいけど。

 

「ほれ、シーム。

 今日は忙しいんだから、さっさと身体洗えって」

「はぁい」

 

 

 

 

 

「はぁー、はぁー……」

「あいしゃ……たんま、たんま。

 もうやめましょ……アタシがわるかったから……」

「ええ……

 そうですね……」

 

 途中からお互いムキになって、胸とシッポの掴み合いになってたけど、冷静に考えたらどんだけバカなことやってんだ……

 

 ぐぁー。胸イタイィ……うわ、まっかっかじゃないか。なんてことしやがるんだ……

 

 胸を押さえながら恨みがましく見やると、メレオロンはシッポをへなへなにして身体をくねらせてる。

 

「あぅあー、いでででで……

 ……あれ? アンタ、そんなにオッパイ痛かった?

 そりゃそっか、まだ子供だもんね。ごめん……」

「まったくですよ、っとにもー……

 メレオロンも痛いんですか?」

「なんか、腰やら背中やら太股やらアチコチ痛くて……

 普段使わないトコだから、不自然に突っ張っちゃうのかしら」

「……よく分かりませんが、人間には無い器官ですし、無理に動かすと違和感があるかもしれませんね」

「そうそう。

 まだ1年も生きてないせいか、どうにもこのシッポに慣れないのよねぇ……アイタタ」

 

 はぁぁぁ。……早く汗流して、あがろ。あいたたた……

 

 

 

 

 

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