ここらで一気に巻いていきます|`ω)卍゙{マキマキー
第二百十章
──夜。アームストルの道場、とある私室にて。
「……なぁー、ゴンー」
「なに、キルア?」
ゴンはボコボコにされていた。──今やってる格ゲーの話だが。
「もう3週間だぞ、3週間」
「……そうだね」
「いい加減シャレになんねーだろ。
毎日毎日リィーナさんも兄貴もピリピリしてんじゃん。アレ、マジできちぃんだけど」
「そんなことオレに言われても……」
ピリピリしてるのはキルアも同じである。2人に一番接触してるのもキルアだからだが。なおクラピカも、度々リィーナに八つ当た──しごかれて、ストレスマッハな日々である。合掌。
まるっきり勝てもしない格闘ゲームにゴンが渋々付き合ってるのは、そうでもしないとキルアのガス抜きが出来ないからだ。ぐちぐち言いながらゲームでもしてないと、やってられないのだろう。キルアが1日に消費するチョコロボ君も増える一方だ。
「あのバカ、いつになったら帰ってくんだよ……」
「……」
そりゃ心配だろうなぁ──とゴンも思いはするが、尚更こんなキルアに教えるわけにはいかない。絶対グリードアイランドへ向かうのが目に見えている。
そして今度こそ性転換するつもりだと知れば、全力で妨害するだろう。それが分かっているから、教えられない。
「……ゴン」
「なに?」
「オレさ、ずっと考えてたんだよ」
「何を?」
「アイシャが見つからない理由。
……そりゃヒト1人が行方を晦ませて、そうそう見つからないのは分かるんだけどよ。
リィーナさんと兄貴が全力で捜索してんのに手掛かり1つ見つからないとか、ちょっと有り得ないだろ?」
「うーん……」
「ここまで見つからないとなると、アイシャはまず見つけられないような場所に行ったんじゃねーかなって思うんだよ」
「って言うと?」
「たとえば人が誰も住んでないような僻地なら見つけられないだろうけど、そんなトコにアイシャが行ってずっと留まる理由がないじゃん?」
「うん……」
「アイシャが行きそうな場所、かつ普通は見つけられない場所だと思うんだよ。
すぐ見つかるようなトコだったら、アイシャもわざわざ行方晦ませねーだろうし」
「……たとえば?」
キルアはしばらく口を噤んだ後、
「──暗黒大陸とか」
「ぁー……」
ゴンもなるほど、とは思う。そこならアイシャの行く理由が全くないとは言い切れず、いくら探しても見つからない場所ではある。
「アイシャのやつ、もうロクに全力で戦える相手が居ないんだろ?
なら、暗黒大陸へ武者修行にでも行ったんじゃねーかなって。もちろん1人じゃなくて、誰かに誘われてさ」
「……」
否定する言葉が思いつかず、黙り込むゴン。
「どうだ?」
「……どうだって言われても」
「ふぅん、そっか。
その様子だとなさそうだな」
「だからオレ、どこ行ったか知らないってば」
「言ってろ。
……まぁオレも荒唐無稽だとは思ってるよ。飛行船なんかで行ける場所じゃないしな」
「でも実際、暗黒大陸ってどうやって行くんだろうね?」
「電脳ネットで調べても、全く出てこねーんだよな。
飛行船で無理なら、海の上を船でのんびり行くしかなさげだけど」
「めちゃくちゃ時間かかりそうだよね……」
「多分な。少なくともオレらの知ってる世界地図の範囲にはないわけだし」
「……でもさ」
「うん?」
「もし仮にアイシャが暗黒大陸へ向かったとして、キルアは追っかけるわけ?」
「うーん……」
お互い言葉を交わさなくなり、ただ漫然と格ゲーを続ける。無闇に増えていくキルアのWIN数。
「……わかんねーよ、そんなの」
複雑な表情を浮かべるキルアを、ゴンは心配そうに見つめた。
10月7日。
昨日、ホルモンクッキーをネオンさん達から受け取ってきたウラヌスは、向こうで話し合った結果を私達に伝えた。
当分ネオンさん達は現実に戻らないそうだけど、戻る時が来たらもしもテレビを私達に預けて全員帰るそうだ。私達は、預かったテレビをモタリケさんに預け、ネオンさん達がこちらへ来た時に返せばいい。
もし戻ってくる前に私達がゲームクリアしていたら、それはもう諦めてくれるそうだ。どうしようもないしな。アイテムも消えちゃうし、ゲーム内で待ってるわけにもいかない。いつ使えなくなっても困らないように、もしもテレビの研究は急いでするつもりらしい。
今朝ユリさんが尋ねてきた。寝る前に情報交換しておきたいと思ったらしく、こちらも渡したい情報が色々あったので、ちょうど都合が良かった。千里眼の蛇のことや、ネオンさん達のことも伝えておく。
ただ珍しくユリさんが何も取れずにヘコんでいたので、ウラヌスは1つ提案を出した。昼夜逆転させた方がいいんじゃないかって。
要は、夜狙いのカードを集めるのがそろそろ難しくなってきたから、一度昼活動に切り替えて別のカードを狙った方が──という話だ。
ユリさんも少し悩んでたけど、その案を飲むことにしたようで、昼夜を切り替える為に今日の夜は休むことになった。
私達はと言うと、忘れないうちにアレを取っておこうという話になり、アントキバから北へ進み、メレオロンが山賊の村で奇運アレキサンドライトをゲット。
ついでに実戦修行として、更に北の岩石地帯まで行って、そこのモンスター達を相手にメレオロンとシームを戦わせる。
流石にまだまだ経験不足は否めないが、それでも日々の修行の成果は見て取れた。私としては納得の結果だ。ウラヌスは終始ヒヤヒヤしてたけどね。
昼からはオータニアでいつも通り修行。くったくたになるまで姉弟をしごき、おおむね満足な1日を終えた。
10月8日。
今日も朝からユリさんが来た。
情報交換うんぬんとか言ってたけど、多分ウラヌスの顔を見たいだけなんだろうなと、内心ニヤニヤしながら姉弟のやりとりをハタから眺める。
ともあれ話し合いの結果、ユリさんは千里眼の蛇とマッド博士の整形マシーンの入手を目指すことになった。それがあると、私達もかなり助かるからね。
で、まだ行ってない残り2つの都市を埋めるべく、私達は城塞都市ジャロへ。
ここの指定ポケットカードは、取るのに時間のかかるモノが多く、午前中にイベントを終わらせるのは厳しいらしい。ただ、素早く取れる可能性があり、かつ優先して取りたいカードが1枚あったので、ここへ来たそうだ。
剣や鎧で武装したNPCが多くうろつくジャロの街中を見て回った後、射的訓練場へ。そこでウラヌスは見事な腕を披露して、挫折の弓をゲット。これで『離脱』が使い放題だ。確かにこれは優先して取らないとマズいアイテムだな。
ここまでは順調だったけど、午後からの修行で──トラブルがあった。
メレオロンとシームの組手中、シームの腕にある鱗がメレオロンに変な角度で当たり、シームの鱗が1枚剥がれて、メレオロンの受けた腕に鱗が刺さる事故が起きてしまった。
2人の治療はウラヌスが済ませたけど、今後の修行方針で私とウラヌスが対立。まあ、前にもあった問題をぶり返した形だ。
せっかく順調に修行のレベルを上げてきたのに、ここで緩くされては困ると、しつこく私は食い下がった。結果、勝手にしろとばかりに、ウラヌスは口も利いてくれなくなってしまった。
私もこれはマズイと謝ったのだが許してもらえず、結局その後の修行はグダグダに……
意気消沈しながら夕方を迎え、連絡してきたユリさんが心配してこっちへ来てくれた。
うん、まぁ……事情を話したら、2人とも怒られた。
ウラヌスは毎度のように、もっとリーダーらしくとか、アイシャちゃんにそういうこと言わせるなとか、そんな話だ。
そして私は、もう少しリーダーを立てるべきとか、ウラヌスの気持ちを考えなさいとか、当然のことを言われた。うん……そこまでは分かる。けど、あなたには協調性が足りない、と指摘されたのはかなりこたえた……
メレオロンとシームにも言葉をかけられ、とりあえず私とウラヌスの喧嘩は収まった。これについては、正直助かったという他ない。
明日は一度気分転換も兼ねて、ソルロンドへ向かうことに。……スク水とか着たくないんだけど、ここで流れに逆らう勇気はなかった。ぐぬぬ……
ユリさんのカード集めは、昨日と打って変わってかなり好調なようだ。
メインに頼んでいた千里眼の蛇とマッド博士の整形マシーン──だけではなく、モノのついでとばかりに、黄金るるぶ、超一流作家の卵、発香少女、マッド博士のフェロモン剤まで取ってきた。……いや、6枚て。1日で取りすぎだろう。
流石に呆れ返る私達に、ランクSとか入手方法が変わってるとかじゃなければ、どうとでもなると豪語するユリさん。さいですか。
どうせ明日ソルロンドへ一緒に行くので、ユリさんも私達と寝泊まりすることになった。……ウラヌスが随分警戒してたけど。
ともあれ、これで私達が当初目標にしていたアイテム3種が全て揃った。ここに来て、ようやくウラヌスはアイテムの研究を始めるらしい。
せっかくなので、言う機会を逸していた、神字を教えてほしいというお願いをしてみたけど……
オーラの見えない私には教えることができない、と返された。……そりゃそうだ。仮に無理やり教えてもらったって非効率に決まってるしな。アイテム研究の邪魔もしたくない。
でも私のオーラが復活したら教えると約束してくれた。今はこれで充分だろう。
にしても、指定ポケットはもう61種か……。試しにお店で買えるカードは何枚か教えてもらったけど、12枚あるらしい。つまりお金さえあればすぐ73種になる。まあ、聖騎士の首飾りもカードにしてないから実際は74種。ただその12枚を買うには2000万ジェニー以上かかるそうで、ある程度は自力で取らないと結局ダメなんだけどね。
さて、ウラヌスのアイテム研究が上手くいくといいな。ここからが本番だからね。私にとって唯一の希望だから、ホントがんばってほしい……
10月9日。
朝起きたら、笑顔のユリさんが目の前にいた。……一緒に寝た覚えはないのに、なぜか同じ布団の中にいる。何もされた気配はないけど……
真意を問うと、可愛い顔して寝てたから、とのこと。よく分かんないんだけど、この人。潜る布団を間違えてないか? どうしてこうなった?
後から起きてきたウラヌスが「なんでやねん」と一言。それは私のセリフだよ……
何かされたわけでもなく私も怒るに怒れないので、ウラヌスも必要以上には追及せず、朝食を摂りながらウラヌスはモタリケさんに連絡。ソルロンドへ行くなら夏服とかも要るからね。
その話を伝えると、ベルさんが『私も! 私も泳ぎに行きたい♪』とか主張しだした。あー……
荷物を預かってもらってる手前、ウラヌスも強く断れず、ベルさんもソルロンドへ同行することに。……モタリケさんは来ないのが救いか。スク水を見られる相手は減らしたいからな……万が一スク水姿を絵に残したいとか言われたら、その場で暴れる自信がある。モデルの件、忘れないでねとクギ刺されたし……
諸々の準備を終え、アントキバへ。モタリケさん宅に寄り、更に荷物を整理。というか、もう着替えさせてもらう。すぐソルロンドへ直行するからね。その方が都合いい。
ベルさんはすっかり夏服を着こんで、準備万端だった。うぅむ……ちなみにユリさんもめっちゃ気合い入った格好だったりする。……ワンピース着るの恥ずかしいんだけどな。この2人と比較されるの、なんかヤダ。
……その2人から、私のワンピース姿がやたらと好評だったけどな! モタリケさんも描きたいとか言い出すし! もうほんとヤダ!
褒められたり笑われたりで恥ずかしい思いをしつつ、少しの荷物とゲイン済みの釣具を持ってソルロンドへ。
あー……。覚悟はしてたけど、やっぱりあぁっっつぃなぁ……着替えといてよかったよ……
そんな予想通りの感想を抱きつつ、まずは磯釣りをしに浜辺へ。
釣りといっても、別に遊びでやるわけじゃない。ブループラネットに必要な9つの宝石、そのうちのルリを取る為に必要なアイテムの1つ、黒曜タイガーを釣りに来た。まぁ海老釣りだな。
で、水着に着替えた。……といっても、もう下に着てたしワンピースを脱ぐだけだったけど。スク水を着て釣りする約束だし……
ベルさんはやたら「可愛い」と連呼し、ユリさんはクッソ笑ってくれた。……おのれ。慣れてきたとはいえ、改めて『ちきしょう』と言いたい。2人とも私に付き合って水着に着替えたけど……目のやり場に困るユリさんのふんどしは考え直してほしい。ていうか、ビックリするじゃないか。どうもウケ狙いだったらしく、ウラヌスにめっちゃ怒られてた。
ともかく罰ゲームをさっさと終わらせる為に、釣りを開始。釣り竿2本を交代交代で。敵も出ないし、大物が来た時に補助できる役がウラヌスとユリさんの2人いるから、終始お気楽ムードの釣りとなった。
目的の黒曜タイガーは開始十数分で釣れてしまい、せっかくだからと全員1回10分ずつ、2巡するまで釣りを楽しむ。
1時間でなかなかの釣果だった。シームなんて、ガルガイダーを釣り上げたしな。私は黒曜タイガーを3度も釣り上げたけど、ウラヌスなんて1度も釣れずにブツブツ言ってた。ふふ。
磯釣りが無事終わり、せっかくだから近くの砂浜で泳ぐことに。まったく、浮かれすぎだと思うんだけどな。ユリさんがいるおかげで、防衛戦力的には充分だけどさ。
暑い思いをしながらシームとメレオロンが泳がずに砂浜で荷物の番をしてたんだけど、ついにガマンできなくなったか、メレオロンがシームを連れて海に特攻。でも、シームはまだいいよ。パンツ一丁だから。メレオロン、あなた何も着ずに……
何やらメチャメチャながらもみんな楽しみ、陽が高くなり暑さがじわっと増してくる中、海水浴も終了。
シャワーを浴びて夏服に着替え、途中までになっていた食べ物を女性に運ぶイベントを、買い食いがてらすることに。
カキ氷や魚介類、海の家の定番を色々堪能させてもらう。運動した後の食事は最高だな、うん。イヤがる小動物の口に、貝の身を突っ込んだり焼きソバ食らわせたり、楽しすぎる。
お使いイベントを最後まで終えて、踊るマラカイトを入手。これでブループラネットに必要な宝石を9種中6種まで揃えた。残り2種は私達だと取りにくいらしいが、ランクDなのでスペルでどうとでもなる。だから黄金イクラも釣ってルリをゲットすれば、ブループラネット入手に挑戦できるわけだ。やっとここまで来たよ……
これでソルロンドのイベントは一通り完了。私達はアントキバへ帰還し、ベルさん達の家で荷物を再度整理。次に黄金イクラを釣りにスノーフレイへ行く時は夫婦も誘う約束をして、私達はマサドラを経由してオータニアへと無事帰還。さて、今日も張り切って修行するぞー!
……のつもりだったんだけど。
ユリさんも付いてきた。なんでも、一度修行してるところを見てみたいということで、今回だけ参加するとのこと。……まぁ修行方針の件で叱られたしな。断れないか。
彼女自身は修行せず、私達の修行を見てくれたわけだけど、ウラヌスと違ってなかなか手厳しい。シームとメレオロンは特にやりづらそうだったみたいだ。私については、念を使えないのもあって何も言われはしなかった。私の体術を見た限り、自分に言えることは何もないとまで言われた。ウラヌスが『当たり前だろ』と、なぜか勝ち誇ってた。うーむ……
それにしても、ウラヌスとユリさんの流々舞はなかなか見応えあったな。オーラの流れこそ私には見えないけど、それが透けて見えるくらいに洗練された動きだった。……いや、アレは技術の高さと言うより、昔からずっとやってきたからだろうな。2人とも、どこか懐かしそうにしてた。
──今後のゲーム攻略の相談も終えて、夕食後にユリさんと別れた後。日が暮れていくオータニアの街並みを歩きながら、
「……はぁ」
息吐くウラヌスに、私は苦笑しながら、
「寂しいですか?」
「やっと離れてくれた、って溜め息だよ。修行にまで付き合わなくていいのにさ。
……くたびれるんだよ。一緒にいると」
「またまたー。そんな憎まれ口なんか叩いて。
顔にはそんなこと書いてないですよ?」
「ウラヌス楽しそうだったのに、今は寂しそうだもんね」
シームにまで言われ、渋面を作るウラヌス。
「……仮にそうだとしても、ずっと一緒に居るわけにはいかないよ。
今日だって、すごい周り警戒しながらだったしさ」
「誰かに見られるわけにはいきませんもんね……」
それが一番のネックなんだよな。アントキバやマサドラでも、ユリさんだけは私達から離れて移動してたし。他のプレイヤーが多い場所だと、どうしようもない。
「いつか気兼ねなく、一緒に居られる日が来るといいですね」
ウラヌスは何事か考えた後、今度は言葉を返さなかった。