どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二百二十三章

 

 ──結局、ネテロと私達の話し合いは平行線のままだった。

 

 協会は信用できる、できないの一点で揉めているのだ。私ですら、ハンター協会を擁護できない。いや、すっかり私も協会を疑っている。

 

 ネテロにすれば、私達がこの2人を預かるよりも、協会で預かった方がいいと主張しているわけだ。これについては私も納得していない。なぜ私達が管理する形ではダメなのか、それをネテロは説明できていない。

 

 ……つまり、この状況を知る者が他にいる、と暗に言ってるわけだ。それならネテロが独断で決められないのも分かる。おそらく、私達の身を案じてくれてもいるんだろう。

 

 だからと言って、私達も譲れない。懸かっているのは2人の命だ。協会に2人の身柄を預けて、結果死んだなどということが起きれば、悔やんでも悔やみきれない。

 

「ネテロ。もう分かってるだろ?

 このまま話し合っても、時間の無駄だって」

「そうじゃろうな……」

「で、どうする?

 2人の身柄を賭けて、殺し合いでもするか?」

「……」

「ウラヌス、待ってください。

 私はネテロと殺し合いなんて……」

 

 戦うのは別に構わない。むしろ望むところだ。結果、命を奪ってしまうことはあるかもしれないが、それも仕方ない。けど、ネテロと殺し合うことが前提の戦いなんて、絶対にゴメンだ。

 

「……アイシャ。イヤだったら降りてもいいよ」

「え?」

「極端な話、アイシャが今回の件に関わる必要はないと俺は思ってる。

 だって、俺がこの2人をここまで連れてきたんだよ?

 最初に言ったじゃん。この2人の同行を認めないと、アイシャを連れてくのは断るって。

 俺が出した条件を、アイシャは無理やり飲まされただけだよ。

 アイシャがグリードアイランドへ入るには、その条件を飲むしかなかったんだから」

「そうなのか、アイシャ?」

「それは……事実ですが」

「ふむ、そういう事情じゃったか……

 であれば、お主が逃亡幇助しとるという話の流れにはならんかもな」

「むしろ、俺が率先して2人を逃亡させてるのが実情だからな。

 アイシャはNGLの件があるから、ややこしくなっちまうんだろ?

 だったら、無理に関わり合いにならなくていい」

「……なんですか、無理にって」

「アイシャや。こやつの気持ちも汲んでやらんか。

 ワシも、お主とこんな形で敵対するのは望んでおらん」

「ネテロ……」

「だがの、ウラヌス。ワシとて殺し合いなんぞ御免こうむるぞ?

 いざとなれば無理やりその2人を連れていくことも辞さんが、それは最後の手段じゃ」

「ああ、そう。

 じゃあどうすんだよ……」

「ワシ自身疑われても仕方ないのは、重々承知しとる。疑いを晴らす材料も今すぐ用意はできん。

 ……それに、じゃ。

 お主ら2人が、身を挺してまで庇いだてするくらいじゃ。ワシが見た限りでも、そこにおる2人が人間に危害を加えるような性格ではないことくらい、分かっておるわ」

 

 ネテロ……

 

「じゃが現実問題として、このままではいかんじゃろう。

 巨大キメラアントの逃亡幇助に加え、巨大キメラアントの捕縛任務の妨害までしようとしとる。ウラヌス、お主そこまでの罪を被る気か?」

「……ネテロが黙ってりゃ済むハズの話なんだけどなぁ?

 まったく、白々しい」

 

 ……だよね。ネテロ以外に誰も現状を知らなければ、目をつぶってくれればそれで済む。

 

「じゃから、そうしたとて時間の問題だと言うとろうが。

 ワシが黙っていても、逃亡の事実はいずれ知れること。今ならまだ間に合う。お主らが罪に問われんよう──」

「おい、ネテロ。

 何度も同じことを言わせるなよ?

 俺はそれで構わないっつってるし、アイシャもそう言ってるだろが。

 信用できないって一点で、お互い平行線なんだよ。分かってるのか?」

「……そうじゃったな。

 じゃが、それはお主らの意見でしかない」

「ん?」

「本人達に問うとしよう。

 そこにおるシームと……もう1人」

「メレオロンよ」

「うむ……お主らに問いたい。

 終わりの見えぬ逃亡生活などやめて、静かな土地で暮らすつもりはないか?

 このまま逃亡を続ければ、お主らの討伐もやむなしと判断されるやもしれぬ。大人しく降伏し捕縛されれば、ワシが命を保障する」

「……いくら諭してもムダよ。

 シームが人体実験されてたって聞いた時点で、アタシにその選択はないわ」

「ぼく、おねーちゃんと一緒じゃなきゃヤダ」

「はーい、ネテロあうとー」

「茶化すでないわ! ……まだ話は終わっておらん。

 じゃが、現状でこやつら2人に多大な迷惑をかけとることは理解しておろう。

 お主らに人の心があるなら、それを何とも思わんのか?」

「きったねぇ言い草……」

 

 毒づくウラヌスを無視して、特にメレオロンを見続けるネテロ。

 

「……。

 大変な迷惑をかけてる自覚はあるわ。

 これ以上2人を逃亡に付き合わせたら、きっと更に大変なことになるでしょうね……」

 

 メレオロン……

 

「でもね、ネテロさん。

 今ここであなたの方を信じると言えば、この2人を信じてきたことがウソになるわ。

 ……アタシ、こんなナリだからさ。

 誰かに信用してもらえるなんて思わなかったのよ。

 施設に捕まっていたシームに逢えた時も、アタシがおねーちゃんだなんて信じられないって言われたわ。

 でも、この2人はアタシの言葉を信じてくれたの。

 だからアタシも、この2人を信じてるの。──友達だって言ってくれたから!」

「おねーちゃん……!」

 

 ウラヌスは2人を見て、唇を噛み締める。手を振り上げ、バンッ! と床を叩く。

 

「分かったか、ネテロ。

 もう試すような真似すんな」

「……

 そうじゃな。すまんかった」

 

 ウラヌスは軽く目をこすり、

 

「迷惑だのなんだの、うるせぇんだよ。まったく……

 メレオロン、シーム。

 いいからもう、迷惑かけてるとか気にしないでくれ」

「けど……」

「……俺達のこと、友達だと思ってくれてるんだろ?

 友達はな、貸し借りとか気にしねぇんだよ」

「……。

 分かったわ……」

「ウラヌスぅ……」

 

 ……ああ、もう。ここにネテロがいなかったら、私わんわん泣いてたよ……

 

「ウラヌスよ。ワシから提案がある。

 殺し合いではなく、決闘で此度(こ たび)の件の決着をつけよう。

 ワシが勝てば、大人しくその2人の身柄をワシに引き渡せ。絶対悪いようにはせん」

「決闘ね……

 で、もし俺が勝ったら?」

「……ワシは、この件から手を引こう」

「手を引く、ねぇ……

 それで協会が引っ込んでくれるならいいけどよ。なーんか、引っかかるんだよなぁ」

「……」

「うん、まぁいいや。その条件──」

 

「──待ってくださいッ!!」

 

 私を抜きにして話がまとまりそうだったので、大声で制止する。

 

「な……なに、アイシャ?」

「私を除け者にして、なに大事なこと決めようとしてるんですか……

 2人とも赦しませんよ」

「ア、アイシャ……

 待て、落ち着かんか」

「これが落ち着いていられますか。

 降りてもいい? 無理に関わり合いにならなくていい?

 ────友達の命が懸かっているのに、そんなわけないでしょうがッ!!」

「アイシャ……」

「ネテロ。その決闘、私が受けます。

 まさか怖気づいたりしませんよね?」

「……お主、本気か?」

「ええ。

 よもやウラヌスが相手だったら勝てるなんて、甘い算段だったとは言いませんよね?」

 

 正直言って、後のことなんて考えてない。けど、ここで無関係を装えば、私は一生後悔するだろう。──たとえ、どんな形で決着がついたとしても。

 

「……アイシャ、それは聞き捨てならないんだけど?

 俺はネテロぐらいあしらう自信があるからこそ、この決闘を受けるんだからね。

 アイシャこそ、勝つ自信あるの?」

「当たり前じゃないですか。

 それこそ完勝してあげますよ」

「お主ら、さっきからずいぶん好き勝手ヌカしとるの。

 下手(したて )に出とったら付け上がりおって……」

「ほざけ、クソジジイ。

 女子トイレに隠れるような変態のクセに、なに偉ぶってやがる」

「お、待てお主、それは……」

「あー。それはいけませんね、ネテロ。

 プロハンターであるのをいいことに、そのような変態行為を……」

「まままま、まてアイシャ。話が逸れとるぞ?」

「私、ネテロに水浴びするところを覗かれてるんですよねぇ。

 あの頃、私まだ13歳になったばかりだったんですけど……」

 

 ウラヌスの目が『それ、地味に俺にもダメージいくんだけど?』って感じだったけど、無視する。

 

「この変態クソジジイが……

 いい歳こいて、とんだスケベ野郎だな。早く死ねよ」

「ちょ、待ってくれぃ。

 さっきまで真面目に話しとったのに、ワシ泣きそうじゃ……」

「まぁ少し言いすぎかもしれませんね。

 確かにネテロは、エロスケベ変態クソジジイですが」

「更に酷くなっとる!?」

「しかも変身を後2回も残してるしな」

「ワシ、いったいどうなってしまうんっ!?」

 

 とりあえずユリさんの冷ややかな視線が、とてもネテロに深く突き刺さってるようだ。うむうむ。

 

「どうしてこうなったんじゃ……」

 

 シクシク泣くネテロに「アホー」と追い討ちするウラヌス。……流石に可哀想になってきたな。

 

「まぁ冗談はこれくらいにして、です。

 決闘の件、どうするんですか? 私は譲る気ありませんよ」

「俺だってないよ」

「……なら、仕方あるまい。

 ワシと、お主ら2人で決闘するかの」

「は?

 ……ジジイまさか、1対2でやるっつってんのか?

 いじられすぎて、ついにボケ倒したか?」

「ネテロ、あなた正気ですか……?」

「……お主ら、マジでワシをなんだと……

 ええいっ! ワシャ本気で言うとるんじゃ!

 ワシは1対2でも構わんから、決闘を受けるのか受けんのか、はっきりせい!」

 

 そう言われて、冷静になってしまった。いや……いくらなんでもネテロ、それは……

 

「……オマエ、ホントに勝つ気あるのか?

 アイシャ1人相手でも、普通に負けんじゃねーの?」

「そうとも言い切れんわ。なぁアイシャよ?」

「それを私に聞きますか……

 悔しいですが、必ず勝てるとは言えませんね。かと言って負ける気は全くしませんが」

「おぅ、ヌカしよって。

 前のような手が通じると思うなよ?」

「あなたこそ、同じ手が通じるとは思わないことですね」

「ちょっと、俺をハブらないでよ……

 まぁいいや。俺は1対2の決闘受けまーす。

 アイシャはどうすんの?」

「そんな、軽いノリで……

 ……分かりました。その条件で決闘を受けます」

「だってさ、ネテロ。

 よかったねー。勢いで申し込んだ決闘を受けてもらえて。

 せいぜい震えて眠れよ?」

「好き放題言いおってからに……

 まぁよいわ。決闘の日時はどうする?」

「──明日」

 

 ん? また、えらく……

 

「ずいぶん急じゃな。

 ワシャそれでも構わんが、理由はなんじゃ?」

「オマエが援軍を呼ばない保証がない」

「じゃから1対2で決闘すると言うとろうに……

 ワシがそれを反故にすれば、お主らは身柄引き渡しを承知せんじゃろ?」

「決闘は、な。

 でもメレオロンとシームを捕縛する別働隊を呼び寄せない、とも限らないだろ。

 決闘までの日時を引き伸ばせば、俺はそういう疑いを持つぞ?」

「むぅ……」

「あと、俺達はゲーム攻略で忙しいんだ。

 煩わしいから、さっさと片付けたい」

「……分かったわい。仕方がないのぅ。

 明日のいつがいいんじゃ?」

「早朝か、夜中だな……

 人目に付くのは避けたいし、出来るだけ早く片付けたいから早朝で。5時ぐらいな」

「ふむ……ちと早い気もするが、よかろう。

 アイシャ、お主もそれでよいか?」

「……

 異存ありません」

「あいわかった。

 では明日の早朝5時、ウラヌスに向かって移動スペルを使うとしよう。

 お主らはそれまでに決闘の場へ移動しておくがよい。決闘の場所にアテはあるか?」

「……私にあります」

「結構。では本日はこれにて失礼する」

 

 ネテロはバインダーからカードを取り出し、

 

「──『再来/リターン』オン。マサドラじゃ」

 

 バシュッ! とネテロの姿が消えた。

 

 しばし、誰も動こうとしない。みんな一言も発しない中、

 

「はぁぁぁ……

 めっっっっっちゃ、つかれた……」

 

 ウラヌスが、ふにゃふにゃふにゃあ、と解けるように崩れ落ちる。私はウラヌスの方へ寄っていき、彼の腕に手を乗せる。

 

「お疲れ様でした。

 すいません、ほとんど交渉させてしまって……」

「いや、いいよ……

 アイシャは立場的に分が悪そうだったし、今回は俺がやりとりすべきだったんだよ。

 罪に問われたとしても、アレなら俺1人で済みそうだし」

 

 申し訳ないな……私が背負うべき負の遺産を、ほぼウラヌスに肩代わりさせてしまったようなものだ。ネテロにも悪いことしたよ……

 

「にしてもアイシャ、裸見られたって言ってたけど、それってネテロだったんだね……

 アイツ、マジでとんでもない変態ジジイだな……」

「あ、まぁ……

 その件はネテロがボコボコにされたんで、もう赦してますけどね」

「アイシャ自身が手を下さずに、ボコボコ?

 ネテロに制裁加えられるようなヤツ、そんなに居ないと思うんだけどな……」

 

 まぁそうだろうね。リィーナとビスケのツープラトンだったし。

 

「ぅー……おねーちゃーん……」

 

 シームがメレオロンにすがりついて泣き出す。かわいそうに……ずっとガマンしてたんだろうな。今後のことを考えると、更に気の毒になる。

 

「ついに、来るべきものが来たって感じかな……

 除念を急いで、ホントよかったよ。一手違いで大惨事になるところだった」

「全くですね……

 私の強制『絶』が解ける前だったら、本当にお手上げでしたよ」

 

 私とウラヌスが復活した以上、戦力的には申し分ない。あのネテロ相手なのが不安材料だけど、今さら言っても始まらない。

 

「私、ここにいちゃダメだったわね……」

 

 ユリさんが沈んだ様子で言う。首を突っ込んではいけないところにいた自覚はあったのだろう。ただ今回、ユリさんは何も悪くないしな。

 

「ユリ姉はむしろ被害者だよ。

 ごめんな、巻き込んじまって……」

「……いいわ。そんなの気にしてないから。

 お願いだから、私にも協力させてね?

 巻き込みたくないなんて、聞きたくないから」

「うん……助かる。

 正直言って、手が足りないからな。力を貸してほしい」

「ええ。可能な限り手助けするわ。

 ……それにしても、人生ハードなんてもんじゃないわね、あなた達……」

 

 ユリさんの視線が、抱き合う姉弟に向かう。メレオロンは、シームの頭を撫でて慰めている。

 

「まぁシーム君も薄々普通じゃないな、って気づいてたけどね……」

「あれ、そうだったのか?」

「念能力者でも、手練の子供なんて滅多にいないじゃない。

 シーム君は子供なんてレベルじゃないもの」

「あー、まぁな。

 そもそもそれ、俺が言ったセリフな気もするが」

「うん、あなただったわね。

 子供だったあなたがそんなこと言うから、なに言ってんだコイツって思ったけど」

「そういうイランことを正直に言うな」

 

 ははは……いや、うん。ウラヌス、やっぱりアナタおかしいからね?

 

 さっきまでのやりとり、ネテロですら真正面からやりこめるとか無茶苦茶してたからな……

 

「……そういえば、さっきの決闘の件ってさ」

「うん?」

 

 メレオロンの言葉に、ウラヌスが反応する。

 

「あれって、アイシャとウラヌスが戦うわけじゃないのよね?」

「ん? いや、戦うけど?」

「あー。イヤそうじゃなくて、えっと……

 アンタ達が決闘するわけ?」

「……なんか勘違いしてないか?

 ネテロと俺とアイシャで、三つ巴の決闘をするわけじゃないぞ?

 俺とアイシャが組んで、ネテロ相手に戦うんだぞ?」

「そうよね……

 でもなんか、途中でこんがらがっちゃって。

 アレ? 2人が決闘して、あのおじーさんとどっちが決闘するか決めるの? って」

「なんでやねん。

 ……まぁ確かにややこしかったけどな。普通決闘って1対1でするもんだし」

「やっぱりそっか……

 うん、分かったわ」

 

 ……なるほど。ハタから聞いてたら、混乱したかもしれないな。ネテロがおかしなこと言い出すからだな、うん。

 

「いや、でもさ……あんまりイメージできないのよ。

 世界最強とか言ってたけど、あんなお年を召したヨボヨボのじーちゃんが、ここにいる華奢な美少女とこーんなチビっ子相手に決闘とか」

「こーんなチビっ子とか言うなや」

 

 ウラヌスはむくりと起き上がり、なぜか胡乱げな目を私に向けてくる。

 

「けど、アイシャ。

 ホントにネテロと決闘すんの?

 今からでも、俺1人に任せた方がよくない?」

「なに言ってるんですか。

 2人の命が懸かってるのに──」

「それは分かってるよ。

 でも、相手はあのネテロだよ?」

「だからこそですよ。

 他の相手ならいざ知らず、あのネテロ相手にあなた1人で──」

「あー違う。そうじゃなくて……

 アイシャ、ぜんぜん状況わかってない」

「……何が言いたいんですか。

 ネテロの実力は充分把握しています」

「じゃあ聞くけど、アイシャはネテロと戦って『無傷』で勝てる?」

「……

 無理ですよ、そんなの」

「だよね。

 じゃあ何で戦うとか言っちゃったの?」

「待ってください。

 だったらあなたは、ネテロに無傷で勝てるとでも?」

「勝てるわけないじゃん。

 ……勝てるかどうかすら分かんないのに」

 

 続く言葉は、私にしか聞こえないくらい小声だった。……いや、それはどうでもいい。

 

「だったら、あなたも私も条件は同じじゃないですか。

 なら──」

「違う、そうじゃなくて!

 アイシャが『大怪我』したら、どうやって治すのッ!?」

「──っ」

「効かないじゃないか、念による治療がッ!

 だから俺、いっつも気をつけてるのに! この島に病院がないって分かってるッ!?」

「……」

「先に言っとくよ。

 アイシャが何らかの理由で大怪我とか大病を患ったら、必ず島の外に出てもらうからね。

 治療が完了するまで、俺達との合流は認めない」

「……そんな」

「そんな、じゃないよ。これはリーダー命令。

 絶対遵守、いのちだいじに! ……分かった? お願いだから」

「……。はい」

「ぶっちゃけ俺は、どんな大怪我したって、大天使の息吹で治せるからさ……

 俺とアイシャは、条件が同じじゃないんだよ。だから俺は、1人でネテロと戦うつもりだったんだ。……それをまず分かってほしかった」

 

 ……。くそっ……

 

「アイシャが弱いなんて思ってないよ。むしろ俺よりずっと強いさ。

 けど、ネテロに勝ってそれで終わりじゃないんだ。

 目的はゲームクリアなんだから、アイシャにここで脱落なんてしてほしくない」

「……それは私も望んでいません」

「だよね。

 だったら、ネテロとの決闘は──」

「いえ。申し訳ないですが、それは反故にしたくありません。

 ネテロとは私も戦います」

「……じゃあ、これだけは約束して。

 大怪我するような戦い方はしないこと。

 もし大怪我したら、治療が完了するまで島の外へ出ていること。

 いい?」

「……はい」

 

 難しい条件だ……

 1対2だから有利だなんて、とても言えないほど厳しい戦いになるだろうな。

 

「今さらだけど、アイシャはネテロと戦ったことあるんだよね?」

「ええ……

 結果は引き分けぐらいに思っていただければ」

「引き分けかぁ……

 アイシャですらそれだもんなぁ。かーっ、面倒くせぇ……」

「……

 ウラヌスは、ネテロと戦ったことがあるんですか?」

「あるよ。1度だけね」

「……どうでした?」

「既に念がかけられてて弱ってた時期だったのもあるけど、俺の完敗かな……

 どうやっても、あの百式観音が厄介すぎる」

 

 やはり知っていたか。ウラヌスの警戒の仕方は、完全に百式観音を意識したものだったしな。

 

「ネテロも前やり合った時よりオーラ増えてるし、俺が復活してるのを加味してもキツいだろうな……」

「それじゃあ、また完敗するかもしれないじゃないですか。

 尚更あなた1人に任せられませんね」

「いや。つっても俺、あの能力初見だったんだよ? ……言い訳にしかならないけどさ。

 知ってたら百式観音の対策くらい練れるよ。

 ……つか対策は立てたんだけど、俺がどんどん弱っちゃって結局戦うことはなかったんだよな」

 

 ふむ。イヤ、でも対策なんて出来るのかアレに? 私の百式観音破りも、相当苦し紛れだったからな……結果的にかろうじて破ったというだけだ。

 

「はぁー……

 とりあえず、もうみんな疲れてるだろうし、一度お開きにしよ。

 ユリ姉、明日の早朝こっちに来てくれる? 2人の警護を任せたいんだ」

「でしょうね。分かった。

 必ず守り抜いてあげるわ」

「……あんま無理しないでくれよ?

 他のヤツならともかく、ネテロが来たらまず勝てないと思ってくれ」

「……」

「ユリさん。

 この2人のこと、よろしくお願いします。けど、決して無理はしないでください」

「もぅ、2人して……

 言われなくたって、あのネテロ会長と戦ったりなんてしないわよ。

 あなた達こそ無理しないでね」

「私はウラヌスにも怪我しないよう言われてるんで……」

「無理しないで勝てりゃ苦労しねーけどな……

 とにかく、すぐ作戦は立てるよ。アイシャ、ちょっと付き合ってね」

「もちろんです」

「メレオロンとシーム、あとユリ姉も今日は早く休んでくれ。

 明日は朝早い上にしんどいだろうから、とにかくオーラ回復を優先で」

「はいはい」

「ウラヌスも、早く休んでね?」

「……努力するよ」

 

 シームが心配するのも当然だよ。一番無理しそうなんだよな、この子は……

 

 ……とはいえ、ウラヌス流の百式観音破りがどんなものか、楽しみでもあるな。とくと聞かせてもらうとしようか。

 

 

 

 

 

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