──結局、ネテロと私達の話し合いは平行線のままだった。
協会は信用できる、できないの一点で揉めているのだ。私ですら、ハンター協会を擁護できない。いや、すっかり私も協会を疑っている。
ネテロにすれば、私達がこの2人を預かるよりも、協会で預かった方がいいと主張しているわけだ。これについては私も納得していない。なぜ私達が管理する形ではダメなのか、それをネテロは説明できていない。
……つまり、この状況を知る者が他にいる、と暗に言ってるわけだ。それならネテロが独断で決められないのも分かる。おそらく、私達の身を案じてくれてもいるんだろう。
だからと言って、私達も譲れない。懸かっているのは2人の命だ。協会に2人の身柄を預けて、結果死んだなどということが起きれば、悔やんでも悔やみきれない。
「ネテロ。もう分かってるだろ?
このまま話し合っても、時間の無駄だって」
「そうじゃろうな……」
「で、どうする?
2人の身柄を賭けて、殺し合いでもするか?」
「……」
「ウラヌス、待ってください。
私はネテロと殺し合いなんて……」
戦うのは別に構わない。むしろ望むところだ。結果、命を奪ってしまうことはあるかもしれないが、それも仕方ない。けど、ネテロと殺し合うことが前提の戦いなんて、絶対にゴメンだ。
「……アイシャ。イヤだったら降りてもいいよ」
「え?」
「極端な話、アイシャが今回の件に関わる必要はないと俺は思ってる。
だって、俺がこの2人をここまで連れてきたんだよ?
最初に言ったじゃん。この2人の同行を認めないと、アイシャを連れてくのは断るって。
俺が出した条件を、アイシャは無理やり飲まされただけだよ。
アイシャがグリードアイランドへ入るには、その条件を飲むしかなかったんだから」
「そうなのか、アイシャ?」
「それは……事実ですが」
「ふむ、そういう事情じゃったか……
であれば、お主が逃亡幇助しとるという話の流れにはならんかもな」
「むしろ、俺が率先して2人を逃亡させてるのが実情だからな。
アイシャはNGLの件があるから、ややこしくなっちまうんだろ?
だったら、無理に関わり合いにならなくていい」
「……なんですか、無理にって」
「アイシャや。こやつの気持ちも汲んでやらんか。
ワシも、お主とこんな形で敵対するのは望んでおらん」
「ネテロ……」
「だがの、ウラヌス。ワシとて殺し合いなんぞ御免こうむるぞ?
いざとなれば無理やりその2人を連れていくことも辞さんが、それは最後の手段じゃ」
「ああ、そう。
じゃあどうすんだよ……」
「ワシ自身疑われても仕方ないのは、重々承知しとる。疑いを晴らす材料も今すぐ用意はできん。
……それに、じゃ。
お主ら2人が、身を挺してまで庇いだてするくらいじゃ。ワシが見た限りでも、そこにおる2人が人間に危害を加えるような性格ではないことくらい、分かっておるわ」
ネテロ……
「じゃが現実問題として、このままではいかんじゃろう。
巨大キメラアントの逃亡幇助に加え、巨大キメラアントの捕縛任務の妨害までしようとしとる。ウラヌス、お主そこまでの罪を被る気か?」
「……ネテロが黙ってりゃ済むハズの話なんだけどなぁ?
まったく、白々しい」
……だよね。ネテロ以外に誰も現状を知らなければ、目をつぶってくれればそれで済む。
「じゃから、そうしたとて時間の問題だと言うとろうが。
ワシが黙っていても、逃亡の事実はいずれ知れること。今ならまだ間に合う。お主らが罪に問われんよう──」
「おい、ネテロ。
何度も同じことを言わせるなよ?
俺はそれで構わないっつってるし、アイシャもそう言ってるだろが。
信用できないって一点で、お互い平行線なんだよ。分かってるのか?」
「……そうじゃったな。
じゃが、それはお主らの意見でしかない」
「ん?」
「本人達に問うとしよう。
そこにおるシームと……もう1人」
「メレオロンよ」
「うむ……お主らに問いたい。
終わりの見えぬ逃亡生活などやめて、静かな土地で暮らすつもりはないか?
このまま逃亡を続ければ、お主らの討伐もやむなしと判断されるやもしれぬ。大人しく降伏し捕縛されれば、ワシが命を保障する」
「……いくら諭してもムダよ。
シームが人体実験されてたって聞いた時点で、アタシにその選択はないわ」
「ぼく、おねーちゃんと一緒じゃなきゃヤダ」
「はーい、ネテロあうとー」
「茶化すでないわ! ……まだ話は終わっておらん。
じゃが、現状でこやつら2人に多大な迷惑をかけとることは理解しておろう。
お主らに人の心があるなら、それを何とも思わんのか?」
「きったねぇ言い草……」
毒づくウラヌスを無視して、特にメレオロンを見続けるネテロ。
「……。
大変な迷惑をかけてる自覚はあるわ。
これ以上2人を逃亡に付き合わせたら、きっと更に大変なことになるでしょうね……」
メレオロン……
「でもね、ネテロさん。
今ここであなたの方を信じると言えば、この2人を信じてきたことがウソになるわ。
……アタシ、こんなナリだからさ。
誰かに信用してもらえるなんて思わなかったのよ。
施設に捕まっていたシームに逢えた時も、アタシがおねーちゃんだなんて信じられないって言われたわ。
でも、この2人はアタシの言葉を信じてくれたの。
だからアタシも、この2人を信じてるの。──友達だって言ってくれたから!」
「おねーちゃん……!」
ウラヌスは2人を見て、唇を噛み締める。手を振り上げ、バンッ! と床を叩く。
「分かったか、ネテロ。
もう試すような真似すんな」
「……
そうじゃな。すまんかった」
ウラヌスは軽く目をこすり、
「迷惑だのなんだの、うるせぇんだよ。まったく……
メレオロン、シーム。
いいからもう、迷惑かけてるとか気にしないでくれ」
「けど……」
「……俺達のこと、友達だと思ってくれてるんだろ?
友達はな、貸し借りとか気にしねぇんだよ」
「……。
分かったわ……」
「ウラヌスぅ……」
……ああ、もう。ここにネテロがいなかったら、私わんわん泣いてたよ……
「ウラヌスよ。ワシから提案がある。
殺し合いではなく、決闘で
ワシが勝てば、大人しくその2人の身柄をワシに引き渡せ。絶対悪いようにはせん」
「決闘ね……
で、もし俺が勝ったら?」
「……ワシは、この件から手を引こう」
「手を引く、ねぇ……
それで協会が引っ込んでくれるならいいけどよ。なーんか、引っかかるんだよなぁ」
「……」
「うん、まぁいいや。その条件──」
「──待ってくださいッ!!」
私を抜きにして話がまとまりそうだったので、大声で制止する。
「な……なに、アイシャ?」
「私を除け者にして、なに大事なこと決めようとしてるんですか……
2人とも赦しませんよ」
「ア、アイシャ……
待て、落ち着かんか」
「これが落ち着いていられますか。
降りてもいい? 無理に関わり合いにならなくていい?
────友達の命が懸かっているのに、そんなわけないでしょうがッ!!」
「アイシャ……」
「ネテロ。その決闘、私が受けます。
まさか怖気づいたりしませんよね?」
「……お主、本気か?」
「ええ。
よもやウラヌスが相手だったら勝てるなんて、甘い算段だったとは言いませんよね?」
正直言って、後のことなんて考えてない。けど、ここで無関係を装えば、私は一生後悔するだろう。──たとえ、どんな形で決着がついたとしても。
「……アイシャ、それは聞き捨てならないんだけど?
俺はネテロぐらいあしらう自信があるからこそ、この決闘を受けるんだからね。
アイシャこそ、勝つ自信あるの?」
「当たり前じゃないですか。
それこそ完勝してあげますよ」
「お主ら、さっきからずいぶん好き勝手ヌカしとるの。
「ほざけ、クソジジイ。
女子トイレに隠れるような変態のクセに、なに偉ぶってやがる」
「お、待てお主、それは……」
「あー。それはいけませんね、ネテロ。
プロハンターであるのをいいことに、そのような変態行為を……」
「まままま、まてアイシャ。話が逸れとるぞ?」
「私、ネテロに水浴びするところを覗かれてるんですよねぇ。
あの頃、私まだ13歳になったばかりだったんですけど……」
ウラヌスの目が『それ、地味に俺にもダメージいくんだけど?』って感じだったけど、無視する。
「この変態クソジジイが……
いい歳こいて、とんだスケベ野郎だな。早く死ねよ」
「ちょ、待ってくれぃ。
さっきまで真面目に話しとったのに、ワシ泣きそうじゃ……」
「まぁ少し言いすぎかもしれませんね。
確かにネテロは、エロスケベ変態クソジジイですが」
「更に酷くなっとる!?」
「しかも変身を後2回も残してるしな」
「ワシ、いったいどうなってしまうんっ!?」
とりあえずユリさんの冷ややかな視線が、とてもネテロに深く突き刺さってるようだ。うむうむ。
「どうしてこうなったんじゃ……」
シクシク泣くネテロに「アホー」と追い討ちするウラヌス。……流石に可哀想になってきたな。
「まぁ冗談はこれくらいにして、です。
決闘の件、どうするんですか? 私は譲る気ありませんよ」
「俺だってないよ」
「……なら、仕方あるまい。
ワシと、お主ら2人で決闘するかの」
「は?
……ジジイまさか、1対2でやるっつってんのか?
いじられすぎて、ついにボケ倒したか?」
「ネテロ、あなた正気ですか……?」
「……お主ら、マジでワシをなんだと……
ええいっ! ワシャ本気で言うとるんじゃ!
ワシは1対2でも構わんから、決闘を受けるのか受けんのか、はっきりせい!」
そう言われて、冷静になってしまった。いや……いくらなんでもネテロ、それは……
「……オマエ、ホントに勝つ気あるのか?
アイシャ1人相手でも、普通に負けんじゃねーの?」
「そうとも言い切れんわ。なぁアイシャよ?」
「それを私に聞きますか……
悔しいですが、必ず勝てるとは言えませんね。かと言って負ける気は全くしませんが」
「おぅ、ヌカしよって。
前のような手が通じると思うなよ?」
「あなたこそ、同じ手が通じるとは思わないことですね」
「ちょっと、俺をハブらないでよ……
まぁいいや。俺は1対2の決闘受けまーす。
アイシャはどうすんの?」
「そんな、軽いノリで……
……分かりました。その条件で決闘を受けます」
「だってさ、ネテロ。
よかったねー。勢いで申し込んだ決闘を受けてもらえて。
せいぜい震えて眠れよ?」
「好き放題言いおってからに……
まぁよいわ。決闘の日時はどうする?」
「──明日」
ん? また、えらく……
「ずいぶん急じゃな。
ワシャそれでも構わんが、理由はなんじゃ?」
「オマエが援軍を呼ばない保証がない」
「じゃから1対2で決闘すると言うとろうに……
ワシがそれを反故にすれば、お主らは身柄引き渡しを承知せんじゃろ?」
「決闘は、な。
でもメレオロンとシームを捕縛する別働隊を呼び寄せない、とも限らないだろ。
決闘までの日時を引き伸ばせば、俺はそういう疑いを持つぞ?」
「むぅ……」
「あと、俺達はゲーム攻略で忙しいんだ。
煩わしいから、さっさと片付けたい」
「……分かったわい。仕方がないのぅ。
明日のいつがいいんじゃ?」
「早朝か、夜中だな……
人目に付くのは避けたいし、出来るだけ早く片付けたいから早朝で。5時ぐらいな」
「ふむ……ちと早い気もするが、よかろう。
アイシャ、お主もそれでよいか?」
「……
異存ありません」
「あいわかった。
では明日の早朝5時、ウラヌスに向かって移動スペルを使うとしよう。
お主らはそれまでに決闘の場へ移動しておくがよい。決闘の場所にアテはあるか?」
「……私にあります」
「結構。では本日はこれにて失礼する」
ネテロはバインダーからカードを取り出し、
「──『再来/リターン』オン。マサドラじゃ」
バシュッ! とネテロの姿が消えた。
しばし、誰も動こうとしない。みんな一言も発しない中、
「はぁぁぁ……
めっっっっっちゃ、つかれた……」
ウラヌスが、ふにゃふにゃふにゃあ、と解けるように崩れ落ちる。私はウラヌスの方へ寄っていき、彼の腕に手を乗せる。
「お疲れ様でした。
すいません、ほとんど交渉させてしまって……」
「いや、いいよ……
アイシャは立場的に分が悪そうだったし、今回は俺がやりとりすべきだったんだよ。
罪に問われたとしても、アレなら俺1人で済みそうだし」
申し訳ないな……私が背負うべき負の遺産を、ほぼウラヌスに肩代わりさせてしまったようなものだ。ネテロにも悪いことしたよ……
「にしてもアイシャ、裸見られたって言ってたけど、それってネテロだったんだね……
アイツ、マジでとんでもない変態ジジイだな……」
「あ、まぁ……
その件はネテロがボコボコにされたんで、もう赦してますけどね」
「アイシャ自身が手を下さずに、ボコボコ?
ネテロに制裁加えられるようなヤツ、そんなに居ないと思うんだけどな……」
まぁそうだろうね。リィーナとビスケのツープラトンだったし。
「ぅー……おねーちゃーん……」
シームがメレオロンにすがりついて泣き出す。かわいそうに……ずっとガマンしてたんだろうな。今後のことを考えると、更に気の毒になる。
「ついに、来るべきものが来たって感じかな……
除念を急いで、ホントよかったよ。一手違いで大惨事になるところだった」
「全くですね……
私の強制『絶』が解ける前だったら、本当にお手上げでしたよ」
私とウラヌスが復活した以上、戦力的には申し分ない。あのネテロ相手なのが不安材料だけど、今さら言っても始まらない。
「私、ここにいちゃダメだったわね……」
ユリさんが沈んだ様子で言う。首を突っ込んではいけないところにいた自覚はあったのだろう。ただ今回、ユリさんは何も悪くないしな。
「ユリ姉はむしろ被害者だよ。
ごめんな、巻き込んじまって……」
「……いいわ。そんなの気にしてないから。
お願いだから、私にも協力させてね?
巻き込みたくないなんて、聞きたくないから」
「うん……助かる。
正直言って、手が足りないからな。力を貸してほしい」
「ええ。可能な限り手助けするわ。
……それにしても、人生ハードなんてもんじゃないわね、あなた達……」
ユリさんの視線が、抱き合う姉弟に向かう。メレオロンは、シームの頭を撫でて慰めている。
「まぁシーム君も薄々普通じゃないな、って気づいてたけどね……」
「あれ、そうだったのか?」
「念能力者でも、手練の子供なんて滅多にいないじゃない。
シーム君は子供なんてレベルじゃないもの」
「あー、まぁな。
そもそもそれ、俺が言ったセリフな気もするが」
「うん、あなただったわね。
子供だったあなたがそんなこと言うから、なに言ってんだコイツって思ったけど」
「そういうイランことを正直に言うな」
ははは……いや、うん。ウラヌス、やっぱりアナタおかしいからね?
さっきまでのやりとり、ネテロですら真正面からやりこめるとか無茶苦茶してたからな……
「……そういえば、さっきの決闘の件ってさ」
「うん?」
メレオロンの言葉に、ウラヌスが反応する。
「あれって、アイシャとウラヌスが戦うわけじゃないのよね?」
「ん? いや、戦うけど?」
「あー。イヤそうじゃなくて、えっと……
アンタ達が決闘するわけ?」
「……なんか勘違いしてないか?
ネテロと俺とアイシャで、三つ巴の決闘をするわけじゃないぞ?
俺とアイシャが組んで、ネテロ相手に戦うんだぞ?」
「そうよね……
でもなんか、途中でこんがらがっちゃって。
アレ? 2人が決闘して、あのおじーさんとどっちが決闘するか決めるの? って」
「なんでやねん。
……まぁ確かにややこしかったけどな。普通決闘って1対1でするもんだし」
「やっぱりそっか……
うん、分かったわ」
……なるほど。ハタから聞いてたら、混乱したかもしれないな。ネテロがおかしなこと言い出すからだな、うん。
「いや、でもさ……あんまりイメージできないのよ。
世界最強とか言ってたけど、あんなお年を召したヨボヨボのじーちゃんが、ここにいる華奢な美少女とこーんなチビっ子相手に決闘とか」
「こーんなチビっ子とか言うなや」
ウラヌスはむくりと起き上がり、なぜか胡乱げな目を私に向けてくる。
「けど、アイシャ。
ホントにネテロと決闘すんの?
今からでも、俺1人に任せた方がよくない?」
「なに言ってるんですか。
2人の命が懸かってるのに──」
「それは分かってるよ。
でも、相手はあのネテロだよ?」
「だからこそですよ。
他の相手ならいざ知らず、あのネテロ相手にあなた1人で──」
「あー違う。そうじゃなくて……
アイシャ、ぜんぜん状況わかってない」
「……何が言いたいんですか。
ネテロの実力は充分把握しています」
「じゃあ聞くけど、アイシャはネテロと戦って『無傷』で勝てる?」
「……
無理ですよ、そんなの」
「だよね。
じゃあ何で戦うとか言っちゃったの?」
「待ってください。
だったらあなたは、ネテロに無傷で勝てるとでも?」
「勝てるわけないじゃん。
……勝てるかどうかすら分かんないのに」
続く言葉は、私にしか聞こえないくらい小声だった。……いや、それはどうでもいい。
「だったら、あなたも私も条件は同じじゃないですか。
なら──」
「違う、そうじゃなくて!
アイシャが『大怪我』したら、どうやって治すのッ!?」
「──っ」
「効かないじゃないか、念による治療がッ!
だから俺、いっつも気をつけてるのに! この島に病院がないって分かってるッ!?」
「……」
「先に言っとくよ。
アイシャが何らかの理由で大怪我とか大病を患ったら、必ず島の外に出てもらうからね。
治療が完了するまで、俺達との合流は認めない」
「……そんな」
「そんな、じゃないよ。これはリーダー命令。
絶対遵守、いのちだいじに! ……分かった? お願いだから」
「……。はい」
「ぶっちゃけ俺は、どんな大怪我したって、大天使の息吹で治せるからさ……
俺とアイシャは、条件が同じじゃないんだよ。だから俺は、1人でネテロと戦うつもりだったんだ。……それをまず分かってほしかった」
……。くそっ……
「アイシャが弱いなんて思ってないよ。むしろ俺よりずっと強いさ。
けど、ネテロに勝ってそれで終わりじゃないんだ。
目的はゲームクリアなんだから、アイシャにここで脱落なんてしてほしくない」
「……それは私も望んでいません」
「だよね。
だったら、ネテロとの決闘は──」
「いえ。申し訳ないですが、それは反故にしたくありません。
ネテロとは私も戦います」
「……じゃあ、これだけは約束して。
大怪我するような戦い方はしないこと。
もし大怪我したら、治療が完了するまで島の外へ出ていること。
いい?」
「……はい」
難しい条件だ……
1対2だから有利だなんて、とても言えないほど厳しい戦いになるだろうな。
「今さらだけど、アイシャはネテロと戦ったことあるんだよね?」
「ええ……
結果は引き分けぐらいに思っていただければ」
「引き分けかぁ……
アイシャですらそれだもんなぁ。かーっ、面倒くせぇ……」
「……
ウラヌスは、ネテロと戦ったことがあるんですか?」
「あるよ。1度だけね」
「……どうでした?」
「既に念がかけられてて弱ってた時期だったのもあるけど、俺の完敗かな……
どうやっても、あの百式観音が厄介すぎる」
やはり知っていたか。ウラヌスの警戒の仕方は、完全に百式観音を意識したものだったしな。
「ネテロも前やり合った時よりオーラ増えてるし、俺が復活してるのを加味してもキツいだろうな……」
「それじゃあ、また完敗するかもしれないじゃないですか。
尚更あなた1人に任せられませんね」
「いや。つっても俺、あの能力初見だったんだよ? ……言い訳にしかならないけどさ。
知ってたら百式観音の対策くらい練れるよ。
……つか対策は立てたんだけど、俺がどんどん弱っちゃって結局戦うことはなかったんだよな」
ふむ。イヤ、でも対策なんて出来るのかアレに? 私の百式観音破りも、相当苦し紛れだったからな……結果的にかろうじて破ったというだけだ。
「はぁー……
とりあえず、もうみんな疲れてるだろうし、一度お開きにしよ。
ユリ姉、明日の早朝こっちに来てくれる? 2人の警護を任せたいんだ」
「でしょうね。分かった。
必ず守り抜いてあげるわ」
「……あんま無理しないでくれよ?
他のヤツならともかく、ネテロが来たらまず勝てないと思ってくれ」
「……」
「ユリさん。
この2人のこと、よろしくお願いします。けど、決して無理はしないでください」
「もぅ、2人して……
言われなくたって、あのネテロ会長と戦ったりなんてしないわよ。
あなた達こそ無理しないでね」
「私はウラヌスにも怪我しないよう言われてるんで……」
「無理しないで勝てりゃ苦労しねーけどな……
とにかく、すぐ作戦は立てるよ。アイシャ、ちょっと付き合ってね」
「もちろんです」
「メレオロンとシーム、あとユリ姉も今日は早く休んでくれ。
明日は朝早い上にしんどいだろうから、とにかくオーラ回復を優先で」
「はいはい」
「ウラヌスも、早く休んでね?」
「……努力するよ」
シームが心配するのも当然だよ。一番無理しそうなんだよな、この子は……
……とはいえ、ウラヌス流の百式観音破りがどんなものか、楽しみでもあるな。とくと聞かせてもらうとしようか。