どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

241 / 300
第二百二十六章

 

 オータニア近くの林までウラヌスに運んでもらい、そこへ着地する私達。

 

「ありがとうございます」

「ううん。寒くなかった?」

「……いえ、そんなことなかったですよ」

 

 逆に暖かったとは言いづらい。でもウラヌスの温もりは何とも言えない心地なんだよな。

 

「どうする? どっちが買いに行く?」

 

 ウラヌスに問われ、ハタと気がつく。

 

 私はスポーツブラと短パン。ウラヌスはダボダボのシャツ1枚。……どっちもどっちだ。むむむ、と私が悩んでいると、

 

「……アイシャ。

 これ返すから、適当に着るもの買ってきて」

 

 言って、シャツを脱いで裸になるウラヌス。恥ずかしそうにシャツを渡そうとしてくる。

 

「……」

「い、いやアイシャ。見てないで早く受け取ってよ……」

 

 おっと、いけない。慌ててシャツを返してもらうと、ウラヌスはぷいっと後ろを向いた。……オシリがぷりちーっすわ。

 

 ウラヌスの温もりと匂いが染みたシャツを、私が着直していると、

 

「……ねぇアイシャ。

 俺とネテロが大火傷したこと、みんなには黙っててもらってもいい?」

「……いちおう聞きますけど、どうしてですか?」

「うん……

 自分達の為にそんなことしたって聞いたら、あの姉弟は傷つくかなって」

「……

 それが建前で、ホントはそのことでこっぴどく叱られるのがイヤなんでしょ?」

「……バレた?」

「まったく、情けないですね……

 まぁあなたがどうしてもと言うなら、私の胸の(うち)に仕舞っておきます。後でネテロにも口止めしておかないといけませんね」

「うん、そうだね」

「大天使の息吹を2枚使いましたから、引き換え券が残り1枚なので、それも『擬態』で増やしておかないと。ただ『擬態』の枚数が減るのはどうしようもないですから、うまく誤魔化しましょう」

「……バレないといいなぁ」

「ただし」

「ん?」

「二度とあんな危ない真似はしない、と約束してください」

「……アイシャ」

「でなければ、3人にも包み隠さず話します。

 私はあなたのしたこと、一切許してませんよ?」

「……ごめん」

「謝ってもダメです」

 

 パチン! とオシリを引っぱたく。

 

「あいたーッ!? ちょっと、アイシャッ!?」

「なんですか、それぐらい!

 あなたがさっき味わった火傷の痛みに比べれば、大したことないでしょうが!」

「そ……

 そりゃ、そうだけど、さ……」

「もう一度だけ言います。

 二度とあんな危険なことはしない、と約束しなさい」

「……」

「出来ないなら、大火傷したことを3人には話さない約束もナシです。

 シームを泣かせて、お姉さんにたくさん叱られなさい」

 

 ウラヌスは振り向き、泣きそうな顔を見せてくる。やがて、きゅっと拳を作り、

 

「……

 分かったよ。約束する」

「誓いますか?」

「ちか……いや、アイシャ。

 まさか念の誓約させる気じゃないよね?」

「そこまでしないと約束できないなら、そうしてもいいですが」

「やだよ……

 でも、約束を破る気なんてないよ? 次またこういうことやったら、それこそみんなにバラすでしょ?」

「悪くないですね。その時はペナルティとして、今回の件と合わせて3人に話しましょう。

 それでどうですか?」

「……それが公平かな。分かった」

「約束ですよ?」

「あんな危ないことはもうしない。約束する」

「……では私も、3人には火傷の件を秘密にしておきます」

「ホントのこと言うと、あんなの頼まれたってもう勘弁だけどね。

 まさか死にかけるなんて思ってなかったもん」

「全くですよ……

 2人とも炎に呑まれた時は、私アタマが真っ白になりましたからね」

「……ごめん。

 その光景想像したら、怒って当然だと思った」

「そう思うなら、その格好で服を買ってきたらどうです?」

「えっ!?」

「服を燃やしたバカにゃんこに相応しいバツですよね。

 オシリ丸出しで行ってらっしゃい」

「ま、まってアイシャ!

 それは勘弁して!」

「どうしましょうかねぇ?

 あ、私はもう服を貸しませんよ?」

「そんなぁ……」

「フフ。冗談ですよ。

 ひとっ走りして買ってきますから、待っててくださいね」

「うん、お願いするよ……」

「キュマニャンの衣装でいいですか?」

「いいわけないよッ!?」

 

 アハハハ。いや、売ってたら考えちゃうけどね。今のウラヌスに合うサイズがあれば、だけど。

 

 

 

 ダッシュでオータニアまで戻り、そのままの勢いでデパートへ服を買いに行く。シャツ1枚だから、私も誰かに見られたらちょっと恥ずかしいしな。

 さいわい誰にも会うことなく、2人分の服と靴を見繕って、ウラヌスの元へ帰還した。

 いそいそと着替え終え、ようやく一息吐くウラヌス。

 

「はぁー……

 ……この服ってさ。女の子用?」

「それはもう。男の子用がよかったですか?」

「そういうわけじゃないけど……」

 

 ピンク地に花柄の上下で、当然下はスカートだ。てか下着も買ってきたんだけど……

 

「……やっぱり穿いてませんね」

「穿かない、って言ってるじゃん」

 

 下着をスカートのポケットに押し込んでるウラヌス。はぁぁぁ……いいけどね。今さらだし。

 

「でも、靴はちょっと合わないかな……」

「私も正確なサイズまでは把握してませんでしたからね。

 申し訳ないですけど、後で調達し直してください」

 

 以前のウラヌスなら見当もついたんだけどね。先に聞いておけばよかったよ。

 

「さて、ネテロを呼ぶか。

 あそこで全裸待機させとくのも面白いけど」

「いえ、全裸ではないですよ? 私が服貸してますから」

「あ、そっか。

 んじゃアイシャの上着1枚羽織って、気が済むまで山で正拳突きさせとこっか」

「……ネテロに辛辣ですよね、ウラヌスって」

「あんなエロスケベ変態クソジジイに、敬意なんて払いたくねーもん」

「まぁ私は構いませんけど、後で恨みごと山ほど言われても知りませんよ?」

「うへ。マジ勘弁」

 

 

 

 ネテロを『交信』で連絡して呼び寄せて、買ってきた服を渡す。ぶつくさ言いながらも若者風に着こなすネテロ。スニーカー履いてる姿とかなかなか新鮮だな。私も面白半分で買ったんだけどさ。運動着の上着を返してもらい、ようやく全員まともな服装になる。

 

 火傷の件についてはネテロにも口止めをお願いし、3人でいつもの料亭へ。

 

 料亭のお座敷に腰を据えたウラヌスが、ユリさんへ『交信』を使うと、

 

『桜ッ!! どうなったのっ!?』

『ウラヌス、大丈夫っ!?』

『アイシャー。アンタも大丈夫ー?』

 

 三者三様にバインダーから心配する声。……何か私に対して適当じゃないか? 泣くぞ。

 

「決闘は終わったよ。特に怪我もしてない。

 ネテロもここにいる。

 伝えたいことがあるから、こっちへ『同行』で飛んできてくれ」

 

『……分かった。すぐ行くわ』

 

 ウラヌスがバインダーを閉じる。

 

「桜とは誰のことじゃ?」

「……予想はつくだろ」

「お主の本名の方か?」

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」

 

 ネテロの問いに、はぐらかして応えるウラヌス。と、すぐ3人が間近に現れた。即座にウラヌスへ飛びかかるユリさん。

 

「うわっ!? ちょっ」

「桜、大丈夫?」

「うん……平気だって。

 言っただろ、怪我なんかしてないって」

「そんなこと言って……。服が変わってるじゃないの。

 ウソ吐いてるでしょ?」

「吐いてないって。

 ほら、怪我してないか確かめてみろよ」

 

 ユリさんが丹念に、ウラヌスの小さな身体を診断する。口の中まで確認し、

 

「確かにどこも怪我してないわね。

 はぁー、もー心配させないでよぉー……」

「だから言ったろ?

 心配性だな、姉貴も」

「ウラヌス、ホントに大丈夫だったの?」

「ああ、シームも心配しすぎだって。

 服は破けちまったから、着替えただけだよ」

 

 まったく、いい顔して。あんな酷い有様を見せつけられた、私の身にもなってほしいよ。

 

 同じく服を着替えたネテロと、特に変わりない私を交互に見る3人。

 

「アイシャはそのままね」

「私は、出来るだけ怪我しないようにする作戦でしたから。

 オーラが減ったぐらいですね」

「そっちの……ネテロさんは着替えてるけど」

「ワシも怪我こそしとらんが、服は破けてしもうての。

 なかなかの戦いじゃったわい」

 

 ネテロも口裏を合わせてくれてる。事情は察してるみたいだな。

 

「それで、結果はどうだったの?」

 

 メレオロンがいよいよそれを尋ねる。私とウラヌスは、ネテロの方を見やる。

 

「ワシから伝えよう。

 此度の決闘──そやつらの勝ちじゃ。

 お主ら2人の身柄は、アイシャとウラヌスに預けておくものとする」

「……つまり?」

「案ずるな。……今まで通りと言うことじゃよ」

 

 メレオロンとシームが顔を見合わせ──大きな歓喜の声を上げた。

 

「おねーちゃあーんっ!! おねーちゃんっ……!」

「うんっ……うんっ……!」

「ウラヌスッ! ありがとっ、ありがとッ!」

「アイシャも……本当に助かったわ」

「いいですよ、そんなの」

「気にすんなって。いつも通りに戻っただけさ」

「よかったわね、あなた達……」

 

 ユリさんもちょっと涙ぐんでる。喜んでくれて何よりだよ。……今更ウラヌスが大火傷して死にかけたなんて、話せないな。

 

「すまんかったの、お主ら。

 特にシームとやら。お主の言葉を信じてやれのうて済まなんだ。

 許してくれい」

「ううん……大丈夫です」

「ワシの方で調査はしておこうと思う。

 ……とは言え、ヘタを打ってお主らに危害が及んでもいかんからな。そう大したことは出来んが」

「それでも有り難いさ。

 ハンター協会にそんな連中がホントにいるなら、なんとかしないとな」

「そうじゃな。穏便に事が運べば良いのじゃが」

 

 ネテロが調査に乗り出してくれるか。これで少しは溜飲が下がったよ。はぁー……

 

「で、ネテロ。これからどうするんだ?」

「ワシか?

 そうじゃのう……こちらに長く留まるつもりはないな。そのうち現実に戻るわい」

「そっか。気をつけてな」

「お主らこそな。

 ハンターがキメラアントを追っていることに変わりはない。

 2人の素性がバレんよう、気をつけることじゃ」

「分かってるって。今まで通りさ」

「アタシ達こそ、これからどうするの?」

「あー……」

「私はゲーム攻略に戻るわ」

「ああ、ユリ姉はそれで。

 2人の護衛、サンキューな」

「ユリさん、本当に助かりました」

「ユリさん、ありがとうございました!」

「感謝するわ」

「……どういたしまして」

 

 2人とも不安がってただろうからな……。ユリさんも心配で堪らなかっただろう。後でキチンと、お礼と謝罪をしよう。

 

「で、アタシ達は?」

「どうしましょうかね……」

「──休む」

 

 ん? ぽつりとそう言ったウラヌスは全員を見回し、

 

「今日はもう、攻略も修行もしない! 休む!

 つか、遊ぶ! パーッとやる!」

 

 あー。……うん。それもいいな。ウラヌスもスゴイ大変だったから、労いたいところだ。

 

「あらら。いいなぁ」

「悪い、ユリ姉」

「いいわよ。私は一緒に動くとマズイし。

 みんなで楽しんできて」

 

 ホント申し訳ないな……現実に戻ったら、本格的にお礼をしたいな。もちろんウラヌスにもね。もしもホルモンクッキーの改良に成功したら、どんなお礼をすればいいだろう?

 

「では、ワシャそろそろ行くとしよう。

 達者でな」

 

 そそくさと席を立つネテロ。立ち去り際、ちらりと私の方を見て、

 

「……あれから調子はどうじゃ?」

「えっと……相変わらずです」

「そうか。楽しみにしとるから、健康には充分気をつけてな」

「あなたこそ」

 

 うーん……まだ様子を見るしかないしな。まぁ今はこのままの方が、ありがたいけど。

 

 

 

 ちなみにずっとNPCに注文を聞かれたりしてるのだが、みんな完全に無視してた。

 

 

 

 料亭で軽く朝食を摂りつつ、どこへ遊びに行くか相談する私達。遊びに行くと言っても、私が移動スペルを使えないから、あちこち行くことはできない。ここから遠すぎてもアレだし。

 

 なので、オータニアからそれなりに近いキャナリア、そして私の希望でグルセルへ行くことになった。ふふ、楽しみだな。

 

 

 

 朝食を終えてユリさんと別れた後。ウラヌスはサイズの合う靴を調達し、メレオロンとシームは旅館へ荷物の確保、そして私はウラヌスにキャナリアへと空輸してもらう。

 

 キャナリアの潮風を受けながら、私とウラヌスはひととき会話する。

 

「それにしても、バレずに済んでよかったですね」

「俺達だけで、大天使と『擬態』を預かってたからね。

 ネテロがもしイタズラでバラしたらどうしようかと、ヒヤヒヤしたよ」

「まあ、あの空気では流石に言いだせなかったでしょうけどね」

「確かに。

 でも、ネテロが調査するって言ってくれたのは予想外だったな……」

「私からお願いしようかと思ってましたけどね」

「うーん……

 ネテロのこと、ずいぶん信用してるんだね?」

「……まあ」

 

 おっと、勘ぐられてるな。ヘタなこと言うもんじゃないか。

 

「ま、ともあれ……

 ネテロがヘマしなけりゃ、後の心配ごとはアイシャの仲間が来るくらいかな?」

「あー……

 よくないですよ、そういうこと言うの。フラグが立っちゃいますから」

「いやいや。

 アイシャこそ、なに言ってんの? ノリは分かるけどさ」

 

 お互い笑い合う。でも実際、後の不安はそれぐらいかな。メレオロンとシームの整形、ホルモンクッキーの問題とかもあるけど、そこまで差し迫ってはいないからね。

 

「そういえばゴン、大丈夫かな?」

「……それを言われると、確かに心配ですね」

「絶対疑われてるだろうからね」

 

 私より早くゴンの心配をしてくれるのか……。気の回る子だよ、ホント。

 

「ああ見えて精神的にも強いですから、大丈夫だとは思いますが」

「とは言え、不安は不安かな。

 酷い目に遭ってなけりゃいいけど」

「それは、まぁ……

 もし私の仲間が妨害に来たら、私の手で返り討ちにしますから」

「そいつぁ災難だ。

 きっと命懸けになるね、返り討ちにされかねない方は」

「……別に殺しませんからね?」

「アイシャにそのつもりがなくても、仲間の方は必死なんじゃないかなぁ……」

 

 そこまでは知らないよ。……ちゃんと手加減するつもりだし。

 

 キャナリアの街並みを、憂いを帯びた表情で眺めるウラヌス。

 

「……ゴンのこと、そんなに心配ですか?」

「うん、まぁね……

 俺のこと、友達って言ってくれたからさ。……心配もするよ」

 

 うん……。ゴンがそう言ってくれなかったら、私達もこんなに仲良くなれなかったかもしれないしな。感謝でいっぱいだよ。

 

「ゴンには今回の件が片付いたら、私からお礼をするつもりです」

「いいね。俺もぜひゴンにはお礼をしたいよ。

 ゴンって、何か困ってることとかあったりしない?」

「あー……

 ないこともないですが」

「なに?」

「父親探しですね。例の、ジン=フリークスの」

「あー、そっか! 言ってたね。

 ……それは大変そうだな」

「ゴンは自力で探そうとしてますし、手助けは無用かもしれませんよ?」

「かもしれないけど、俺は協力してあげたいかな。

 ……でもさ。俺こんなんになっちゃってるけど、まだゴンは友達って言ってくれるかな……?」

 

 本気で不安そうにするウラヌス。私は苦笑し、ポンと背中を叩いてあげる。

 

「そんなの、ゴンは気にしませんよ」

「……そっか。だといいなぁ」

 

 

 

 メレオロンとシームを呼び寄せて、お昼までキャナリアを観光。美味しいシーフードを堪能した後、グルセルへ。のんびり食べ歩きを楽しむ。

 

 もちろん食べるばかりでも何なので、イベントにも色々挑戦。

 お菓子の家を模したレストランで、シェフと菓子料理対決。ウラヌス主導でフルーツとクリームたっぷりのふわふわケーキを2人がかりで焼き上げ、見事勝利。

 

 

 

『132:お菓子の家』

 ランクC カード化限度枚数36

 住むことも出来る 全てがお菓子で出来た家

 食べても食べても 翌日には元通りになる

 よくばって食べすぎると 家が崩れてしまうこともあるので注意が必要

 

 

 

 なんて、夢のあるおかしなアイテムをゲットして、みんなで笑い合う。ホント、楽しいなぁ……もうしばらくこのままで居たいよ。誰にも邪魔されたくない。

 

 

 

 

 

 ──夜。

 

 なんとなく寝付けず、布団の中でごろんと寝返りを打ち、俺は物思いにふける。

 

 今日は朝だけはキツかったけど、めいっぱい遊んだなぁ……

 

 いや、早朝の決闘も存分に大暴れできて最高だったか。本当に久しぶりに全力を出せて、ネテロにも勝つことができた。2人がかりだったけど、結果だけ見れば文句なしだ。

 

 ホルモンクッキーの研究もいくらか進んだし、順風満帆だな。楽しくて仕方ないよ。

 

 でも……いつか終わりが来る、か。やだな……

 

 本当に嫌だ……だって俺、こんなに楽しかったことないもん……。この1ヵ月、楽しいことが多すぎた。ずっと苦しかったからな……もう前の暮らしになんか戻りたくないよ。

 

 どうせなら、いっそこのまま──

 

 ……ん? なんか堅いのが口の中に……あ、ホルモンクッキーか?

 

 研究で散らかしてたのが、どっかから紛れたか。ちゃんと掃除したつもりだったのに、しまったな……

 

 

 

 ぁ……れ? なん……ぃし……きが──……

 

 

 

 

 

 ──10月20日。

 

 朝、ふと胸騒ぎがして目を覚ます。何かがオーラに触れた気がした。

 

 別に、身体に異常はない。部屋にも……ない。

 

 まだ眠っているウラヌスの方を見る。

 

 うーん……気のせいか。特に何も……ん?

 

 ウラヌスの気配が違う。いや、同じか?

 

 不安が過ぎり、近くに寄ってみる。

 

「……ウラヌス」

 

「うにゅ?」

 

 やけに可愛らしい声が返ってくる。……ちょっと声が高い? 気のせいか?

 

「ウラヌス、起きてください」

 

「えぇー……

 やだぁー……

 あっと、ごっふんー……」

 

 むぅ。ならば、布団の中に手を入れて、こちょこちょこちょ──

 

「あひゃっ!? ふひひひ!

 ちょっちょっちょ、たんまたんま!」

 

 おや? いつもと反応が少し違う。なんだか身体のやわさも一段違うぞ?

 

 がばっ! とウラヌスは起き上がり、

 

「もぅ!

 あと5分って言ってるのに、アイシャのいじわる!」

 

「……すいません。

 ところで、身体に異常ないですか?」

 

「んにゃ?」

 

 自分の身体を確認するウラヌス。微妙にハダけた、子供サイズの浴衣がまたアレだな。

 

「うにゃ。にゃにコレ?」

 

 おん? なんか様子が変だな。

 

「──え? えっ!? なんで!?」

 

 ウラヌスが自分の身体をぺちぺち触り、何か確かめてる。いや、こっちが聞きたいよ。なんなんだ。

 

「あれっ!? アイシャッ、なんでぇ!?」

 

「えっと……なにがですか?」

 

「なんで私、こうなってるの!?」

 

 ──は?

 

「どういう意味です……?」

 

「え? だって……

 いつもと違うよ! ほら!」

 

 な、なにがだ? なに言ってんだろ。

 

「──ああぁーッ!? もしかして!」

 

「何か分かったんですか、ウラヌス?」

 

 きょとんと私の顔を見返してくるウラヌス。んん?

 

 そして、ニマーと笑いかけてきた。なんとも気味が悪いな……

 

 ウラヌスは人差し指をぴこぴこ振りつつ、

 

「ちっちっちー。違うよ、アイシャー」

 

「なにが……違うんですか?」

 

 私はすっかりパニックになりかけていた。いったい何が起きてるんだ?

 

「わたしはぁー。

 ウラヌスじゃないよ? にゃん!」

 

 

 

 ──えっ? ウラヌスじゃない? にゃん?

 

 

 

「────わたし『桜』っ! 今後ともよろしくぅ!」

 

 

 

 はぁ……??

 

 

 

「────はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。