どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二百二十八章

 

「……桜、どうしてヒソカのことを知ってるんですか?」

「ん? えーとね。

 私、ヨークシンで旅団と話したことがあるって言ってたでしょ?」

「……ネテロと一緒に旅団を護送した時のことですね」

「そうそう。

 色々喋ったんだけど、お侍のニセモノみたいなヤツが言ってたの。

 ヒソカの抜け番に私を入れたいって。で、旅団を裏切ったヤツが1人いたって聞いたし、ヒソカってヤツが裏切ったんだなと思って」

 

 ……。私の方が混乱するんだけど。

 

 ウラヌス、旅団に誘われてたのか……。侍のニセモノって、私の髪を斬ったヤツのことだな。それだけの情報で、ヒソカが元旅団員だと気づいたのか。

 

「確かにヒソカは元幻影旅団員です。が……」

「ヒソカも掟に縛られてるんだよね?」

「……その通りです。

 なので旅団を裏切るような危険人物ではありましたが、今は鳴りを潜めているはずです。

 プロハンターでもありますし、実力的にも申し分ないんですが……」

「何か問題あるの?」

「……性格が破綻しています。その、教育に悪いというか……」

 

 そういう意味では、桜ともシームとも会わせたくないような人物だ。

 

「あー。もしかしてメレオロンみたいな?」

「そうです。メレオロンの男版みたいなヤツと考えていただければ」

「それはヒドイにゃー。普通に変質者じゃん?」

「変質者ですね」

「おいコラおまえら」

 

 いや、だって。変態の代名詞と言えば、私はヒソカとメレオロンぐらいしか知らないぞ。……性格の悪さはヒソカの方が圧倒的に上だけど。

 

「なので、出来れば誘いたくないです……」

「でも掟で縛られてるんだよね?」

「そうですけど……」

「よくわかんにゃいけど、様子見ておかなくていいの?」

 

 うっ! 確かに……。

 

 既に私は、捕らえた旅団をそのまま放置した挙げ句、この島で遭遇するという大ポカをやらかしてしまった。

 

 同様に、おかしな動きをしてるかもしれないヒソカを無視していいものか……

 

 もしかしたら除念手段を求めてるのかもしれないしな……除念師との接触は掟で禁じたけど、除念手段を求めることまでは禁じていない。この島に、除念する手段があるかもと思って訪れた可能性も──

 

「……様子だけは見ておくべきかもしれません」

「じゃあ、とりあえず声かけるだけかけてみよっか?

 誘っても断られるかもしんにゃいし」

「ええ……」

 

 ぜんぜん乗り気じゃないんだけどなー……なんか嫌な予感するんだよね。

 

「他に誘えそうな人は……

 あっ、そーだ!」

「どうかしました?」

「ほら、アーカってヤツいたでしょ?

 『離脱』を使わせたくにゃいから、港から追い出したいって言ってたプレイヤー」

「あー……そうでした、いましたね。

 すっかり忘れてました」

「みんな、遭遇してないか確認してくれる?」

 

 言われて、バインダーの名簿を精査する私達。

 

「……ダメですね。いません」

「私もー」

「アタシもいないわ」

「ボクもいないよ」

「誰も遭遇してにゃいかー……

 じゃあモタリケのバインダー借りて、声かけるしかないね。

 港から島の外へ脱出させてあげるのを交換条件に出来たら、一石二鳥だし」

「そうですね……」

 

 うーむ……なんだか桜が頼りに思えてきたぞ。任せた方がいいんだろうか?

 

「ついでに、モタリケとベルにも声かける?

 実力はともかく、話は通しやすいし」

「……悪くないですね」

 

 一緒に組んでると思われる危険はあるけど、人数合わせのチーム内ならアリかもな。

 

「……おねーちゃんはやめといた方がいいよね?」

「ユリさんですか? それはマズイかもしれないですね……

 モタリケさん達と違って、ランキングで目立ってるプレイヤーですし」

「組んでるってバレたら、カードを奪おうとするプレイヤーがいっぱい来そうだもんね」

 

 うん。桜とユリさんが他人のフリをし続けるのも、なかなかしんどいだろうしな。特に桜がどう振る舞うか分からないし……

 

 

 

 とりあえず色々相談した結果。

 

 ヒソカ、アーカ、モタリケさんとベルさん、ネオンさん達、ジェイトサリさん達、この辺りに声をかけようということになった。上手く行けば、これで人数は足りるだろう。

 

 ただ実力者が多分足りないんだよな……。声をかける面々を考えると、確かにヒソカは欲しい人材ではある。……イヤだけど。

 でも、一坪の海岸線は限度枚数3枚だ。協力はしてもらっても、カードを渡さずに済む相手が望ましい。ジェイトサリさん達には渡さないといけないだろうけど、5人参加してもらえるなら順当だろう。

 

 しかし、問題はそんなことではなかった。

 

「……桜、本気ですか?」

「うん。私1人で交渉して回るよ」

 

 メレオロンとシームは居合わせない方がいいだろう。リスクばかりが高まるし、それは分かる。けど私が居合わせないとなると……

 

「あなたが若返ってるのを知らない人達も、まだいるわけで……

 相手が驚いて、交渉どころではないかもしれませんよ?」

「でも、いつかは顔を合わせるでしょ?」

「それはそうなんですが、あなた1人では……」

 

 せめて私がそばにいれば、フォローもできる。けど今の桜に任せるのは不安でしかない。……特にヒソカはマズイ気がする。非常に。

 

「アイシャが一緒に行きたいのは分かるけど、移動スペルが効かないのがバレると、ボス属性のこともバレちゃうかもよ?

 出来るだけ隠し通したいんでしょ?」

「……まぁ」

 

 理由が保身、というのは我ながらキツイ。が、桜1人に任せることと天秤に出来るかというと……桜に甘えざるを得ないか。

 

「……分かりました。

 ひとまず桜にお任せしますが……とにかく気をつけてください。何かあったらすぐ戻る、無理に交渉しようとしない。それは約束してください」

「うん、約束する♪」

 

 えらく安請け合いだよ。ホントに大丈夫か……?

 

 

 

 バインダーに、移動スペルと『交信』を多めに用意して、桜は1人で出かけた。私達は旅館で待機である。何があるか分かんないからな。すぐ動けるようにしないと。

 

「大丈夫かしらね、あの子」

「どうでしょう……」

「ぼくら、ユリさんに桜のことお願いされてたけど、目を離して大丈夫?」

「それを言われると、とてつもなく不安ですが……」

「まぁマメに『追跡』で位置情報を確認して、様子見るしかないわね。

 そうでなくても、他のプレイヤーとの交渉なんて、ウラヌスでも簡単じゃないんだし。そっちはダメ元でいいんじゃない?」

 

 桜になってるのもそうだし、子供になりすぎてるのも不安なんだよな……まともに相手されない可能性だってある。いちおうヒソカ相手に、私の名前を出して交渉していいとは言ってあるけど。桜、ヘンなことされないだろうな……?

 

 

 

 

 

 移動スペルでマサドラへ飛び、適当なところへ走った桜は、手頃な場所でバインダーを広げて『交信』を使用した。

 

「初めまして、私ウラヌスっ♪」

 

『──初めまして、だね。一体何の用かな♣』

 

「私、アイシャの友達!

 ちょっとお願いがあって連絡してみたの」

 

『へぇ。あのアイシャの友達なんだ?

 お願いって何かな?』

 

「うん!

 今から相談しに、そっちへ行ってもいい?」

 

『……ボクは別に構わないけどね。ただ……』

 

「ホント!? じゃあ今から行くね♪」

 

『あ、ちょっ──』

 

 交信を終わらせる桜。早速スペルカードを構え、

 

「──『同行/アカンパニー』オン! ヒソカ!」

 

 忙しなく飛んでいく桜。

 

 ──飛翔して着地した場所は、森の中にある泉の畔だった。

 

 泉には、水浴びをしていたのだろう全裸のヒソカがいた。

 

「にゃーっ!? ゴメンッ!

 水浴びしてたんだ……」

 

 くるりと180度回る桜。対し、ヒソカはとても面白そうな様子で、

 

「おやおや……

 これは予想外なお客さんだ。

 お嬢ちゃんが、さっき連絡してきたアイシャの友達かな?」

「うんうん。声も同じでしょ?

 ゴメンね、水浴びしてるところに……」

「いいさ、ボクは気にしないよ。構わないって言ったからね。

 さて、何の相談かな?」

「あーその……

 出来れば服を着てほしいなぁ……」

「ボクはこのままでもいいよ♥

 大した話じゃないなら──」

「あ、ううん。そうじゃなくて、長話になりそうだから。風邪引いちゃうよ?

 水浴びの途中で悪いんだけど……」

「……オーケィ。

 アイシャの友達ってだけでも、話を聞く価値はありそうだからね。

 少し待ってて♦」

 

 泉から上がり、服を着始めるヒソカ。その間、桜のことを背中から繁々(しげしげ)と観察している。

 

「くくっ♥」

「……なに?」

「いや、アイシャの友達と言うだけはあるのかなって。

 実力を隠すのが上手いね、キミ。どれぐらい強いのか興味が湧いてきたよ♣」

「うにゃ?」

「トボけてもダメさ。

 キミのオーラは有り得ないほど安定しすぎてる。並の実力者にそんなこと出来っこないからね♦」

「……」

 

 そもそも初対面の念能力者相手に、無防備な背を晒し続けているのだ。よほどのバカでないなら、相当腕に自信があると見るべきだろう。

 

「キミみたいな小さな子がどれほど強いのか、知りたいもんだね。

 着替えは終わったよ♣」

「はぁー……

 えっと、それじゃ改めて話なんだけど──」

 

 ──桜は、アイシャから頼まれたという(てい)で、ヒソカがなぜこの島を訪れたのか理由を尋ねる。ヒソカが答えるのを渋っていると、桜はヒソカを縛る念の掟について知ってると語り、そもそも旅団の護送を手伝った際、ヒソカのことも知ったと伝えた。──もちろん念の掟の詳細について、桜はアイシャから事前に聞いている。

 

「ふぅん。なら話は早いね。

 その掟のせいで、ボクは戦える機会を限られちゃって、実戦の勘が鈍って仕方なかったんだよ。

 でもここなら、掟に触れることなく存分に戦えることを知ってね。それでやってきたというわけさ。より強くなってから、アイシャとまた戦いたいからね♥」

「へぇー。

 アイシャと戦う為に、ここまで修行しに来たんだ?」

「意外かい?」

「ううん。

 アイシャが聞いたら、むしろ喜ぶかも」

 

 そう言われて、まんざらでもない様子のヒソカ。

 

「で、話はそれだけかい?」

「ううん、本題はこれから。

 もうじき、ゲーム中のあるイベントを攻略しに行くんだけど、出来るだけ強い人が必要なの。

 もしよかったら、少し協力してほしいにゃって」

「そうだね……

 アイシャと久しぶりに会って話したい気分だし、ボクは構わないかな♦」

「ホントッ!?

 見返りに欲しいものって、何かある?」

「うーん……

 ……特にこれといったモノはないかな。

 アイシャに貸しを作れるなら、ボクにとっても悪い話じゃないからね。

 何もいらないよ♥」

「ホントに?」

「ああ。ただ、ボクにも連れがいるんだけど。

 そっちはどうしようかなって♣」

「一緒に来てくれると助かるかにゃ。実力者だけじゃなくて、頭数も必要だから。

 弱くてもいいんだけど、最低16人集めないといけないの」

「おやおや、また大所帯が必要なんだね。

 アテはあるのかい?」

「これから声をかけて回るところ。最初にアナタのところへ来たの♪」

「それは光栄だね。

 じゃあボクが必要になったら、改めて声をかけてよ。

 ボクともう1人、2人でそっちに行くから♦」

「うんっ♪ ありがと!」

「……ところでキミ、一体いくつなんだい?」

「トシのこと?

 んーとね……いちおう9歳!」

「……9歳??

 いちおうって?」

「じゃあねー♪

 ──『再来/リターン』オン! アントキバへ!」

 

 飛んで行く桜。後には、すっかりペースを狂わされて首を傾げるヒソカが佇んでいた。

 

 

 

 モタリケ宅を訪ね、2人に一坪の海岸線イベントの協力を求める桜。最初はウラヌスの変貌ぶりに戸惑っていたものの、しばらく話をするうちに協力することを承諾。

 

 続けてアーカと連絡を取り、イベントに協力してくれたら港からゲーム外へ出すと交渉、そちらも信用を得るのに手間取りはしたが、なんとか話がまとまった。

 

 次にネオン達の元へ。しかし、ここで交渉は難航した。

 桜があまりにも子供になりすぎていた為、プロハンター達が協力に難色を示したのだ。桜のことを気に入ったらしくネオンは協力をしたがったが、ダルツォルネが危険だと反対。

 相談を続けた結果、個人的にウラヌスと親交のあるセンリツだけが、嘘は吐いてないと信用した上で協力を約束してくれた。

 

 更にジェイトサリのところへ行く桜。

 ジェイトサリも最初は面食らったものの、話しているうちに理解を示した。イベントの協力に関しては仲間と相談する必要があるということで、仲間のところへ案内される桜。

 

 結果だけ見れば、ランクSSの入手イベントに参加できるということで、むしろ仲間達は協力を惜しまないとまで言ってくれた。ただ、報酬は桜の想定した内容ではなかったが。

 

「ランクSSのカードなど貰っても、我々では守りきれないだろう。

 だから、私達が持っていないランクAを人数分、5枚譲って欲しい」

「んー……

 あ、もしかして。それって意趣返しだったりする?」

「フフ、バレたか。

 キミは私がいくら報酬を渡したいと言っても、受け取ってくれなかったからな」

 

 以前ウラヌスが現実に戻ってジェイトサリの用件を片付けた際、報酬として受け取ったのはランクAのカード4枚だった。その場はそれで済んだ話だが……

 

「それとも、キミのおかげで私がオークションで得た200億の分け前を支払うと言ったら、キミは受け取ってくれるのかね?」

「……ううん。それはイヤ。

 だってジェイトサリ、200億儲かったみたいに言ってるけど、実は違うでしょ?

 ゲーム7本、いくらで買ったの?」

「……まとめて500億だな」

「じゃあ300億ソンしてるじゃん。

 余計に貰えないよ、そんなの」

「とは言え、本来なら1ジェニーたりとも返ってくるはずのないモノだからな。

 それ以前に、我々は8年もの期間グリードアイランドに留まったのだ。そんな金よりも、取引の機会損失の方が痛手だったぐらいだ」

「……お金持ちだよね、ジェイトサリって」

「私もプロハンターになって長いからな。

 それ以前に、キミは欲がなさすぎるだけだ。で、分け前は受け取るのかね?」

「だから、それはいいってば……」

「では我々の報酬は、ランクA5枚でいい。

 異論はないな?」

「待って。

 じゃあせめて……7枚にしない?」

「……。なぜ7枚なのかね?」

「それは……」

 

 沈黙する桜。その場にいるジェイトサリと仲間4人が、しんみりとした表情を浮かべる。

 

 ジェイトサリは膝を突き、桜を優しく抱きしめる。

 

「……キミの気持ち、ありがたく頂戴するよ。

 我々が所有していない、ランクAのカード7枚。それで引き受けよう」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

 

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