どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二百二十九章

 

「──待ってください、桜。

 ジェイトサリさんまでは問題ありません。

 でも、なぜ最後の1人をよりによって……」

「……。

 ダメだったかな?」

 

 一通り交渉を終えた桜を迎え、私達は旅館で一部始終を聞いているところだった。

 

 15人までは順調だった。しかし最後に1人だけ足りず、誰に声をかけようか桜は悩んだ挙げ句──

 

「……ダメも何も、プーハットさんはハメ組じゃないですか。

 ヘタに引き込んで情報を与えたら、私達のカードを絶対奪いに来ますよ?

 今からでも遅くありません。プーハットさんに断りを入れて、他の人を──」

「待ってアイシャ!

 せめて最後まで話を聞いて!」

「……そうでしたね。話も聞かずにすいません。

 では、プーハットさんにどんな話をしたのか教えてください」

「うん……えっとね」

 

 

 

 

 

「──お前さん、頭は確かか?」

「えぇーっ!? なんでぇ……」

 

 あまりにしょんぼりする桜。予想以上の反応にプーハットも慌てふためき、

 

「いや、すまん。言いすぎた。

 ……そんなナリになっちまったから、ちと言ってることが信じられなくてな」

「だってぇ……」

 

 半泣きになっている桜の様子に、プーハットも小さくアゴを掻き、

 

「……詳しい事情は知らねーが、お前さんヒトが変わっちまったな。まぁいいけどよ。

 いや、でもよ。

 後1人集めりゃいいって状況で、なんでわざわざオレに声をかけるかね?」

「……他にアテがなかったし」

「オレが元ハメ組だって知ってるだろ?

 むしろ、オレ達と本格的に手を組むって話なら理解もできるが。

 一坪の海岸線の取り方、オレに教えちまって良かったのか?」

「……分かったところで、ハメ組には取れっこないよ」

「相変わらず見くびられてんのはムカつくが、そいつは分かったよ。

 けどオレ達じゃなくて、オレと手を組みたいってのはどういう了見だ?」

「……プーハット、あんまり今の仲間が好きじゃないでしょ?」

 

 沈黙を返すプーハット。複雑な表情をしばらく浮かべた後、

 

「……所詮、金目当てに手を組んだ連中だからな。

 そりゃ旨い儲け話がありゃ、抜けてそっちへ行くぐらいのことはしたいさ。

 最初は3ヵ月で2億手に入るっつーからしぶしぶ仲間になってやったのに、気がつきゃもう1年経っちまった。腹の底じゃ面白く思ってねぇよ。

 それでも留まってるのは、今の人数ならクリアの懸賞金が減ったところで、ふところに入る報酬はかなりの額になるだろうと踏んでるからだが……」

「けど、今回も暗雲立ち込めてるんでしょ?

 調子のいいことばっかり仲間は言ってるんだろうけど、不安でいっぱいじゃん」

「まるで見てきたようなこと言いやがる……

 じゃあ聞くがよ。オレはお前さんに何を提供すりゃ、どういう見返りをくれるんだ? 肝心なトコを言ってくれよ」

「……一坪の海岸線イベントには、頭数だけ協力してくれればいい」

「スポーツはやらなくていいってことだな。

 それなら尚更、オレを誘う必要なんてないだろ。その辺の、帰りたがってる連中にでも声をかけて──」

「今のハメ組で、情報を操作してほしいの」

「……うすうす気づいちゃいたが、そっちが本命か。

 ハメ組じゃなく、オレと手を組みたいってのはそういう意味だな?」

「うん。私達がクリアできたら、報酬渡そうかなって。

 でもハメ組がクリアできそうなら、こっちに協力しなくていいよ。

 要はコウモリになってほしいの」

「そいつぁ、オレにとっちゃ都合のいい申し出ではあるけどよ。

 具体的には、どんな情報が欲しい?」

「別に情報が欲しいわけじゃないよ。

 私達にとって都合がいい情報を、ネタを仕入れたフリしてハメ組に流してほしいの」

「操作してほしいなんて妙な言い方しやがると思ったら……

 オレに嘘の情報を流させて、状況を有利に運びたいってわけか。

 なかなかヤリ手だな、お前さん?」

「にゃふふ♪

 それならプーハットも、疑いの目を持たれにくいでしょ?」

「ハメ組の情報をお前さん達に洩らすよりは、な。

 流す情報にもよるが」

「それはイベントが終わった後で話すよ。とりあえずこの話は、まるっと仲間には内緒にしておいてね? プーハットも疑われちゃうわけだし。

 あっ!?

 そういえば、私達がこうやって会ってること、仲間の誰かは知ってる……?」

「……お前さん、ツイてたな。

 たまたまオレは今日休暇をもらっててな。連絡を受けた時も1人だったよ。……誰にも教えちゃいねぇ」

「よかったぁー……」

「だからオレが仲間に疑われることはねーし、一坪の海岸線に協力すんのも難しくない。

 ま、タイミングによるけどよ」

「うん。多分イベントはすぐ挑戦するから。

 で、報酬なんだけど……どうしようかなって」

「おいおい、肝心なトコがダメじゃねーか。

 見返りがなきゃ協力できねーぞ」

「待って待って。

 いま現実で、手持ちがあんまりないの。ギリギリ2億ぐらいしかなくて」

「ふーむ……

 クリアの懸賞金は?」

「前にも言ったけど、私達は懸賞金目当てじゃないから。アイテムは自分達で使う。

 お金は現実に戻ってから頑張れば、すぐ稼げるけど……」

 

 困った表情をする桜に、プーハットはカリカリとアゴを掻き、

 

「……わーったよ。

 お前さんが情報を流せって依頼するたびに、いくらって値段を付けてやる。

 どっちにしろ、お互い信用しなきゃ始まらねーからな。金が足りないなら時間をかけてでも払ってくれ。シングルの称号に恥じないようにな」

「うん!

 でも、いくらぐらいかな……」

「流す情報の程度にもよるが、1回1000万から2000万ぐらいなら悪くねーかな。

 ゲームクリアまで、どれぐらい拘束されるかにもよるが。……そろそろオレもうんざりしててな」

「多分、そんなに長くはかからないよ」

「ほう?

 その分だと、もうクリアの目処はついてるみたいだな。

 こりゃお前さん達につくのも悪くなさそうだ」

「できるだけ早くクリアしちゃいたいのは、私達も同じだから。

 協力してくれる?」

 

 おずおずと手を伸ばす桜。プーハットは、しばらくその小さな手を眺めた後、

 

「……くやしいが、虫のいいことばっかりヌカす仲間より、耳の痛ぇこと言いやがるお前さんの方が信用できる」

 

 桜の手を取り、2人は握手した。

 

 

 

 

 

「っていう感じだったんだけど……ダメ?」

 

『……』

 

 私達3人は、ただただ呆然と話を聞いていた。いやいやいや……

 

「無茶苦茶しますね、桜……」

「えっ!?

 ダメだった……?」

「……いえ。

 多分、大手柄だと思いますが。ハメ組は私も以前、ギリギリのせめぎ合いをしたチームですからね。もしプーハットさんがうまくやってくれれば、今回一切相手せずに済みそうです……」

「うん、だよね♪

 今後のことを考えても、あんまり恨みは買いたくないから。どっちかって言うと、そういうふうにしたいなって」

 

 ……。プーハットさんに声をかけたのは、ウラヌスがやっぱり気にかけてたからだろう。優しい子だよ、ホント……

 

 プーハットさんが裏切る危険性は生じたけど、もしこれでハメ組を封じることが出来るのなら、そう分は悪くない賭けかもしれない。……ウラヌスには出来ない、桜ならではの踏み込みか。

 

「ということは、いちおう頭数は揃ったってことでいいわけ?」

 

 メレオロンが尋ねると、桜は指折り数え出す。

 

「うん、足りてるはずだよ。

 アイシャ、私、メレオロン、シームで4人。

 ヒソカとお連れさんで、合わせて6人。

 モタリケとベルで8人。アーカで9人。センリツで10人。

 ジェイトサリとその仲間で15人。プーハットで16人。──そろったにゃーっ!」

 

 ふむ……しかし時間が経てば状況が変わる可能性もあるからな。寄せ集めであることに変わりはないから、実際イベントをやるまで安心はしない方がいいだろう。

 

 それに、以前とはイベントの発生条件が変わってる可能性もあるしな。実は内心それを恐れてる。もし条件が変わっていたら、確認を怠った私の責任だな……

 

「じゃ、早速やりに行く?」

『えっ?』

 

 な、なに?

 

「一坪の海岸線イベント。

 じゃないと、みんなの都合がつかなくなるかもしんにゃいし。今日はみんな大丈夫そうだったから」

「えっ?? 今日の今日で?

 いや、まぁ、その通りかもしれませんが……

 桜は大丈夫なんですか? その……」

「だーから、だいじょーぶだってぇ。

 ちゃんと戦えるかどうか、心配だって言うんでしょ? 帰ってくる前に確かめたから♪

 ぜんぜん大丈夫にゃー♪」

 

 にゃんにゃん猫招きの手で顔をこする桜。うぅむ……交渉を成功させてきた手前、信用できないとは言えないんだけどさ……

 

「とりあえず、私オナカぺこぺこ!

 お昼食べに行こーっ♪」

「……ええ」

 

 ぐいぐい引っ張ってくなぁ。恐ろしく積極的だ。ウラヌスが慎重すぎただけにやっぱり不安だよ……

 

 

 

 もう少し慎重に行かないかと食事をしながら説得したものの、桜は全然承知してくれず、無理そうだったら攻略途中でも諦めるのを条件に、イベントへ挑戦することになった。

 

 結局、押し切られちゃったよ……。まぁリーダー任せたのは私だしな。厳密には、桜に任せるなんて言ってないんだけど……弱ったなぁ。

 

 

 

 

 

 昼食後、せめてドッジボールの練習をしようとアイシャは要求したが、それも断る桜。「どうなっても知りませんよ!」とアイシャも叱るが、そっぽ向いてどこ吹く風といった様子で「ピーピプー♪」と口笛を吹く桜。

 

 全員に今晩集合できるか声をかけ、問題ないことを確認。夕食を摂った後、午後7時にエリルの入口へ集まることになった。

 

 

 

 

 

 結局、昼の間は修行も出来ず、桜がにゃんにゃん甘えてくる相手をするばかりだった。私やシームはまだ分かるけど、メレオロンにも甘えてたからな。メレオロンが甘えられて困ってる様子は、見てて微笑ましかったけど。

 

 夕食の時間、こちらへ来たユリさんも私達の話を聞いて心配そうにしていた。もし何かあったら遠慮せずにすぐ呼んでねと、改めて念押しされる。

 

 ──さて、いよいよ集合時間が来てしまった。

 

 まずは私を、桜がソウフラビまで空輸する。……恐ろしいことに、むしろウラヌスより空を飛ぶのが上手く感じられた。なるほど、これは自信あるわけだ。

 

 ソウフラビまで送ってもらい、軽く相談してから桜はオータニアにスペルで移動した。姉弟と合流して、エリルへ一緒に行く手筈だ。……ホントに大丈夫かな? やっぱり不安だよ……

 

 

 

 

 

 エリルの入口には、午後7時までに15人とも集まっていた。

 

 桜は全員に声をかけ、ここで話すのもなんだからと、街中の公園まで移動する。

 

 徐々に闇が深まり、花びらが舞う穏やかな空気の中、公園まで移動した面々に対して、桜は声をあげた。

 

「それじゃ説明を始めるね。

 まず最初に……

 集まってくれて、みんにゃありがとー♥」

 

 ノリノリで満面の笑みを浮かべて、両手をいっぱいに振る桜。

 

 アイドルか。と一斉に思うが、無邪気な幼女がハシャぐ様子に誰も突っ込めないでいた。以前から知り合いである者達は、元男であるという事実にもひとまず目をつぶる。

 

「一度説明はしたけど、改めて今回の目的を説明するね」

「おっと、その前に♣」

「ん? なに、ヒソカ?」

「アイシャが居ないみたいだけど、どこに居るのかな?」

「あ、うん。

 先にソウフラビで待ってるよ。ここにいる15人で最初の条件は満たせるから。

 すぐ合流できるから、楽しみにしてて♥」

「そうかい。じゃあ楽しみにしてるよ♥」

「せっかくだから、みんな自己紹介しよっか。

 まず、私はウラヌス。で、こっちにいるのが──」

「メレオロン。ウラヌスの仲間よ」

「シーム。ウラヌスの仲間です」

「いま話してたアイシャも、私達の仲間。これで全部」

「ボクはヒソカ♦」

「……シャーロット。ヒソカの仲間よ」

「あたしはセンリツ。仲間は他にいるけど、今回はあたしだけ参加」

「オレはプーハットだ。オレも仲間は別にいるが、オレだけ参加だな」

「アーカ。ソロプレイヤーだ」

「わたしはベルよ。で、こっちが」

「……モタリケ。ベルと組んでる」

「私はジェイトサリだ」

「ヨーゼフ。ジェイトサリのチームだ」

「エド。同じく」

「……ウォン。オレもだ」

「ハンペイです。ジェイトサリ組」

「……これで全員かにゃ? 以上、15人!

 後で合流するアイシャも含めた16人で、一坪の海岸線イベントに挑戦します!」

 

 

 

「──一坪の海岸線イベントについては、これで以上かな。

 質問ある?」

「おう」

 

 早速プーハットが手を上げる。

 

「なに? プーハット」

「クリア前とクリア後で一部のイベントが変わってるらしいじゃないか。

 で。このイベントも、もしかしたら変わってるんじゃねーか? ランクSSだしな。もしイベントの発生条件が変わってたら、どうするつもりだ?」

「かもしんにゃいね……

 でも、確かめないと分かんにゃいからね。もし発生しなかったら、別の手を考えるよ。報酬を追加することも検討するから、その時は協力してほしいにゃ?」

「……まぁ考えといてやるよ」

「他に質問ある?」

「はい」

「ん。センリツ、なに?」

「確か、先に8勝すればいいのよね?」

「そうだよ。だからさっさと7敗しちゃえば、肝心要のドッジボールを始められる。

 7敗する前に、向こうから提案してくるだろうけどね」

「でも、そうじゃなかったら?」

「えっと……

 もしかしたら勝負の形式を変えてくるかもってこと?」

「そうね。スポーツを変えるかもしれないし、そうなったらドッジボール以外で8勝する必要が出てくるわ。

 このメンバーで、ちゃんとそれが出来る?」

「うーん……スポーツにもよるからねー。

 もしそうなったら、無理せず情報収集に切り替えるよ。メンバーを1人でも変えれば、再挑戦できるらしいから。多分、1人誘ってきて増やしてもOKじゃないかな?」

「いずれにしても、予定が狂ったら調査に切り替えるわけね。

 分かったわ」

「それでよかった?」

「慎重なのはいいことよ」

「にゃふ♪

 他に質問あるかにゃー?」

「私からも1ついいかな?」

「はい♪ ジェイトサリ、どぞー」

「ドッジボールのメンバーはどうするつもりかね?」

「えっとね。ぶっちゃけ最低限必要なメンバーがいれば、誰でもいいよ。

 私とアイシャ。後はヒソカがいれば充分かな」

「ボクは主力扱いだね。分かったよ♦」

「後は誰でも。

 始まったらすぐ外野に出て、思いっきり離れてくれればいいから。そしたら危険はないだろうし。流れ弾がいかないように、私も気をつけるよ」

「ふむ……なら私がその役を引き受けよう。

 流石にドッジボールをする実力はないがね」

「オレもそれなら構わないぜ」

「あたしも」

「ジェイトサリ、プーハットとセンリツもだね。あと2人」

「アタシもやるわ」

「ボクも!」

「メレオロンとシーム。これで8人!

 じゃあ他の人達は、先に海賊の部下とスポーツ勝負やってもらって、すぐまいったして7敗する役をお願いするね」

 

 

 

 あらかたの説明を終え、まずこのメンバーで一坪の密林の条件を達成していないか確認する為に、一同はチャンタへ向かった。

 密林都市に『同行』で飛んだ後、桜はひとっ走りして長老の元へ。

 

「おじーちゃん。一坪の密林、知らない?」

「あー。よく聞こえんのぅ」

 

 ダメだった。

 

 ……まぁ仮にこれで密林イベントが開始したとしても、放置確定なわけだが。あくまで今回は、発生条件の確認だけである。

 

 気を取り直し、桜は『再来』でチャンタの入口へ戻り、今度こそ一同はソウフラビへ。

 

 着いたソウフラビの海岸で、さっそく桜は『交信』を使用する。

 

「アイシャ、いまソウフラビに来たよ。

 そっちはどう?」

『特に異常ありません。少し待ってくださいね……

 一坪の海岸線について知りませんか?

 ……

 ダメですね。反応ありません』

「ん。やっぱり『同行』で飛んできたプレイヤーじゃないとダメなんだね。

 じゃあ私達が行くまで、そこで待ってて」

『はい』

 

 バインダーを閉じる桜に、ヒソカが首を傾げる。

 

「わざわざ歩いて行くのかい?

 アイシャのところへは、『同行』を使えばすぐ行けると思うけど♣」

「それは出来るけど……

 でも一坪の海岸線イベントの発生条件は、15人以上のメンバーでソウフラビに向かって『同行』で飛んでくる──のはずだから、イベント開始前に『同行』をもう一度使ったら開始判定がリセットされちゃうかも。

 そしたらもう一度イベント発生させる為に『同行』を使わないといけないし、もったいにゃいなって。どうせすぐ着くから、歩いてこ?」

「なるほどね。分かったよ♦」

 

 そうしてソウフラビの街中に入り、軽く聞き込みをする桜。そうすると、すぐに一坪の海岸線に対する反応があり、問題なくイベント開始条件を満たしていることが分かった。

 

 一同は目的地である、例の女性が営む魚屋へ移動。アイシャはそこで待っていた。

 

「やぁ、アイシャ。久しぶり。

 元気だったかい♥」

「はぁ……

 あなたも元気そうですね、ヒソカ」

 

 愛しの相手とばかりに声をかけるヒソカに、げんなりと返すアイシャ。一同はそれぞれ、どういう関係なんだろうと訝しむ。

 

「どうだい?

 これが終わった後、久しぶりにデートでも♥」

「誤解を招くようなこと言わないでください」

「アイシャ、ヒソカとデートしたことあるの?」

「桜も真に受けない。

 ……一度戦ったことがあるだけです」

「ツレないなぁ♥」

「……仲がいいのは良く分かったけどね。

 とにかく海岸線イベント始めるよ」

 

 魚屋の女性へと向き直る面々。

 

「一坪の海岸線について、何か知ってる?」

「……。

 あなた達になら……」

 

 女性が話し始める中、アイシャは小さく首を傾げる。桜はそれに気がつき小さな声で、

 

「どうかした? アイシャ」

「……いえ、何でもありませんよ」

 

 しばらくして話し終えた女性に、桜は不思議そうな顔をしながらも、

 

「教えてくれる? 海賊の居場所」

 

 

 

 海賊の部下達が居るという酒場へやってきた16名。

 

 扉を開け、率先して中へ入っていく桜。他のメンバーも後を付いていく。

 

 酒場の中では、変わった帽子を被った連中が酒瓶を傾けていた。その中でも恰幅のいい男性が、桜を見て多少奇妙そうな顔をした後、

 

「なんだ? テメェら。

 今日はオレ達の貸し切りだ。帰んな」

「今日もだろ? へへへへ」

 

 立ち止まった桜は、少し考える素振りを見せ、

 

「街の人達に迷惑かけてるよね?

 みんな困ってるから、この街から出てってもらってもいい?」

 

 帽子の連中は一度キョトンとした後、ぷっと吹き出し、

 

「──ガハハハハハッ!!

 久しぶりに聞いたセリフだなっ!!」

「前にそのセリフを言った奴は、そこの海辺で骨になってるぜっ!!」

 

 爆笑する海賊達に、桜はぷぅっと頬を膨らませる。

 

 ヌゥ……と恰幅のいい男性が立ち上がり、

 

「お前みたいなチビジャリ、今すぐペシャンコにしてやりてェが」

「チビジャリって何ッ!?」

 

 ぷんすこ怒る桜に、男性がズンズンと床を踏み鳴らして近づいてくる。

 

「全ての決定権は、船長(ボス)にある」

「ふぅん。

 じゃあソイツのトコに連れてってよ?」

「まぁ待て、せっかちなガキだな。

 オレ達に要求を通したいなら、腕ずくでやってみろよ?」

 

 酒を床へ円状に撒き散らし、それに火を付ける。──出来上がったのは、炎の土俵。

 

「オレをこの土俵から外に出せたら、船長に会わせてやるぜ?」

 

 

 

 

 

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