どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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???編
第二百三十五章


 

 

『2:一坪の海岸線』

 ランクSS カード化限度枚数3

 「海神の棲み家」と呼ばれる海底洞窟への入り口

 この洞窟は入る度に中の姿を変え侵入者を迷わせる

 

 

 

 感慨深げに日の出を眺めるジェイトサリさん達と一緒に、ランクSS一坪の海岸線を入手。にゃんこ桜も感慨深げに朝焼けを眺め、その下でウラヌスが何とも居心地の悪そうな顔をしていた。

 

 すぐに『複製』で一坪の海岸線を3枚に増やし、指定ポケットに収めた後。

 

「我々はコンディションを整えて、夕方の会食に備えるとするよ。

 慌てて動くと、場合によってはキミの姉と衝突してしまうからね」

「うん、その方がいいかな。

 ユリ姉にも軽く話は通してあるけど、面識ないからややこしくなりそうだしな」

「……にしても、今日はまた雰囲気が違うな」

「え? 昨日はその……うん。

 ホルモンクッキーの効果でハシャいでただけだよ。忘れてくれ……」

「フフ、そうかね?

 だが昨日のキミは、獅子奮迅の活躍だったじゃないか」

「にゃん♪」

「?」

 

 ウラヌスの頭に乗っかった桜が代わりに返事し、ジェイトサリさんは首を傾げる。獅子奮迅と言うより、にゃんこ大暴れって感じだったけど……

 

「これからキミ達は、一坪の密林入手を目指すんだな?」

「やるべきことがそれしか残ってないしなー。

 いちおうヒントらしいものは掴めたから、しばらく調査する感じ」

「上手くいくといいな」

「そっちもな。頼りにしてるよ、ジェイトサリ」

「キミに頼られるとは、私も誇らしいよ。

 尽力しよう」

 

 

 

 やっぱり寝足りないということで私達は少し旅館で休んだ後、昼から修行を開始。ただ攻略に力を入れる必要もあるので、軽く修行した後に3人はチャンタへと調査に向かった。私は残って修行を続けることにする。そう度々運んでもらうのも恥ずかしいしな……

 

 修行中もウラヌスを観察していたが、特に異常はなかった。本当に元に戻った感じだ。昨日のことを思い出すのか、時々赤面してたけど。

 

 ただ、桜が時折り見せたあの異常な強さはなんだったのか、謎のままだな。ウラヌスも首を傾げて、さっぱり分からないと言ってたし。気になる……

 

 

 

 

 

「結局ダメだったわねー」

「まぁな……

 昨日も桜が『同行』で確かめてるし、ダメ元なのは分かってたけど」

 

 昼下がり、密林都市チャンタのおしゃれなカフェテラスで、力なくウラヌスとシームとメレオロンはお茶していた。

 

 ご覧の通り、一坪の密林調査は難航している。

 

「どうしたもんかなぁ。

 頭数を揃えないと、条件を探ることすらできそうにないし」

「昨日みたいに声かけまくってみたら?

 アンタなら出来るでしょ?」

「色々リスキーなのがなぁ。日も経たないうちにまた集まってもらうのも気が引けるし。

 つーか桜のヤツ、思いのほか上手いコトやってくれたみたいだしな……

 俺が恥ずかしいのは別にして」

 

 コリコリ額をかくウラヌス。そろそろ気分も落ち着いてきたようだが、トラウマとして残りそうな気配でもある。

 

「一気呵成に勝負を仕掛けるなら、他2枚が取れてからの方がいいかもしれないわね」

「理屈で言えばそうだな。

 人数動員すると情報が漏れやすくなるから、後回しの方が妨害を受ける期間を削れる。

 ジェイトサリとユリ姉もこっちに回せるし。問題は、それでも上手くいかなかった場合だな……」

「それはどうしようもないんじゃない?」

「いやいや、サジ投げるわけにもいかねーじゃん?

 何とかしないと……ひたすら人海戦術でイケル確証があるならやるけど」

「難しそうだよね」

「にしても、アレよね」

「うん?」

「アンタがゲーム攻略でつまずいてるのって、新鮮よね」

「おいおい……

 俺は元々こんな感じだぞ? 今の今まで知ってることを段取りよくやってただけで。

 なんか特別な閃きがあって、さーっとクリアしてきたわけじゃない」

「前はクリアできなくても、がんばってたんだもんね」

 

 ウラヌスの頭を、シームがいい子いい子と撫でる。顔を赤くしながらも、抵抗はしないウラヌス。

 

「レイザーのヒントがある分、まだマシではあるしな……」

 

 ──今のオマエは、挑戦できる可能性がある。

 

 この言葉に込められた意味を、ウラヌスは何度も考えていた。しかし、行き着く結論は1つである。

 

 多分、年齢。

 

 おそらくレイザーは、以前不正入島したウラヌスと、昨日の桜を比較し『今の』と表現した。

 

 その2つの状態で違う点は……

 

 年齢。性別。オーラ量。

 

 まずオーラ量ではないだろう。ジンがゴンの為にこのゲームを用意したのなら、ゴンがクリアできる程度の難度に抑えていたはずだ。不正入島時のオーラ量も、決して少なくはなかった。あれ以上を要求してくることはないだろう。

 

 そして性別はあまり関係なさそうという理由で外している。ホルモンクッキーがあれば試せなくもないが、カオスすぎる。何より条件としては意外に簡単だ。

 

 なので消去法で年齢となる。ゴンぐらいの年齢でクリアすることを想定していたなら、一番有り得そうな条件だ。性別に比べればハードルは高いが、魔女の若返り薬さえ使えば誰でも条件を満たせる。

 

 しかし、このグリードアイランドにゴンぐらいの年齢の子供は少なすぎた。単純に年齢だけを見れば、今のウラヌス、シーム、いちおうメレオロンもまず問題はないだろう。

 アイシャは『同行』の対象に出来ないので含まれないし、ベルは微妙な年齢だ。単純に人数不足なのかもしれないが、ベルより年下を探した方が今のところよさそうだ。

 

「はぁー……

 確証もないのに、イベントの為に若返り薬を使ってくれ、なんて言えないしなぁ」

「頼めそうなヒト、ベルさん以外にいないよね」

「うぅん……アイツに頼むのだって抵抗あるしな。

 つか昨日、桜が余計なことベラベラ喋りやがって、顔合わせづらいんだよ……」

 

 ソウフラビに大勢誘った際、説明の内容にそれぞれ偏りがあった。特にモタリケとベルには、かなり桜は暴露していた。

 おそらく2人が心配してるだろうというのもあって、ウラヌスはかえって顔を出しにくかった。

 

「とりあえずアントキバとかマサドラ辺りうろついて若いプレイヤーを探すのも手だけど、見つからなかったらベルをアテにするかな……」

「ここでも情報集めするんだよね?」

「それはもちろん。

 ダメだろうとは思うけど、ヒントがゼロとは限らないからな」

「でも、ここの密林のどこかにあるとかだったらイヤだよね」

 

 シームの言葉に眉をひそめるウラヌス。

 

「……直接のイベント起点は長老だろうけど、ヒントは密林の奥深くとか充分有り得るんだよな。でも、あんまり入りたくねぇなぁ……」

 

 ウラヌスは長く長く溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 ──夕方頃。修行に励んでいた私のところへ、意気消沈した3人が戻ってきた。

 

 4人でオータニアへの帰路を歩きながら、

 

「その様子だと、ダメだったみたいですね」

「……その感じだと、調子よさそうだね」

 

 フフ。修行は1人でも出来るからな。昨日のドッジボールで色々思うところもあって、試したいことがあったから単独で修行させてもらったけど、なかなか実りはあった。

 

「ユリ姉にちゃんと昨日の報告しないとだし、ジェイトサリとも会わせるから、そろそろいつものメシ屋に行こ」

「ええ。私もお腹が空きました」

「アタシもー」

「おや、珍しい。大して修行もしていないのに」

「だって、密林の中まで調べに行ったのよ?

 それで収穫なしっていうんじゃ、くたびれても仕方ないわよ」

「ご愁傷様です」

「へいへい……俺が悪ぅござんした」

「ウラヌスは悪くないじゃん」

「責任うんぬんは別にしても、明日は俺だけでヒト探しかな。

 早く何とかしたいんだけどねぇ」

 

 私よりお疲れのようなので、歩きながらウラヌスの両肩を揉みもみしてあげる。

 

「んぁー……」

 

 

 

「はぁー。

 またずいぶん状況が動いたのねぇ……」

 

 あらかたの説明を聞いた、ユリさんの第一声がそれだった。

 

 いつもの料亭で、私達4人とユリさん、それにジェイトサリさん達の総勢10名が詰めている。普段はゆったりとした座敷も今日はやや手狭に感じるが、贅沢を言っても仕方ない。

 

「それで、ホントにあんた大丈夫なの?」

「大丈夫だって。おかしなトコないだろ?」

「見た目はね」

 

 ジェイトサリさん達の目があるからだろう、ユリさんもあまりウラヌスにベタつかない。説明も肝心な部分はボカしてある。もちろん、それでもユリさんは理解できてるだろう。

 

「とにかく、私はこちらの方々と協力すればいいわけね」

「よろしくお願いする」

「……こちらこそ。

 1人での調査に限界を感じていましたので、ありがたく知恵をお借りします」

 

 ユリさんも苦労してるみたいだな。もうハイループで調査開始して3日経ってるのに、いまだ収穫なしみたいだし。……くっ、ソウフラビの悪夢がチラチラと頭をかすめる。

 

「とりあえず食うモン頼もうぜ。腹減ってさ。

 取り方の分からない3枚について、この顔ぶれでじっくり相談もしたいし」

 

 

 

「若い人間か……」

「うん。ジェイトサリ、心当たりない?」

 

 秋の味覚を堪能し、食後のデザートを待つ間、一坪の密林について相談する私達。……ちなみにメレオロンはジェイトサリさん達から顔を逸らして食事していた。その辺は仕方ないしな。

 

「……残念ながら、現在もゲーム内に留まっている者はキミ達以外に知らないな」

「そっか……」

「やはり若い念能力者がここで生き残るのは、困難を極めるからな。

 今までにも居るには居たが、見かけたら声をかけて早々に帰らせている」

「うん……うん?」

「覚悟を決めて、訪れたとも思えんしな。

 ゲーム機がジョイステーションというのも良くないんだろう。遊び感覚の子供が偶然に来て──」

「ちょ、ちょい待ちジェイトサリ。

 ……帰らせたりとか、してたのか?」

「まあな。それほど数は多くないが。

 いい大人が帰れずに苦しんでいても自業自得だろうが、流石に子供は気の毒だ。

 食うにも事欠くだろうからな」

「……もしかして、昔ジェイトサリが俺に声かけてきたのって」

「念能力者は見た目と実年齢が一致しないことも多いが、いちおうな」

「はぁー……

 そりゃ、そんなお節介焼いてたらクリアできないだろ」

「お互い様だ」

 

 ヒトがいいおじ様だな、ホント……

 

「そういうこともあるから、『離脱』は出来るだけ手元に残しておいてある」

「おっと。

 『離脱』、やけに確保されてるなと思ってたけど、ジェイトサリのチームだったのか」

「おそらくそうだな。

 我々だけで10枚程度所持している」

 

 私達で7枚も持ってるし、もうパックを開けてもあんまり出ないだろうな。『離脱』を引いて帰りたい人達はご愁傷様だけど。

 

「しかし若い人間がいないとなると、本格的に若返り薬を誰かに使ってもらわないとダメってことか……」

「確証がないだけに、厳しいところだな」

「若返りたい連中はそれなりにいるだろうけど、ゲーム内で今すぐにって言われるとな」

 

 どんな変化が生じるか分からないから、確かに不安だろうね。ウラヌスもずいぶん慎重だった。特殊な事情もあったからだけど。

 

「こちらでも若い人間は探しておくから、ひとまず若返り薬の件は置いておいた方がいいかもしれんな」

「んー……」

 

 

 

 その後、デザートを楽しみながらシルバードッグとメイドパンダの入手方法について、意見交換する私達。ジェイトサリさん達の見解としては、他の指定ポケットのアイテムが必要なケースなんじゃないかとのこと。

 そもそもクリア前も、シルバードッグには金粉少女が、メイドパンダにはトラエモンが必要だった。これが別のアイテムになってるってことか。……面倒だな。

 

「とはいえ、ランクSのカードだ。

 ヒントはどこかにあるだろうから、手当たり次第に試したりせず周辺を探った方がいいかもな」

「アイテムをゲインしまくるのは最終手段だわな。

 それでもダメだったらシャレにならないし」

 

 あっちもこっちも大変だな……。96種まで順調に集まったけど、そうトントン拍子にはいかないか。

 

 

 

 

 

 ──10月22日。

 

 朝起きたら、またウラヌスが桜になっていた! ……ということもなく、相変わらずのふわふわしたバカにゃんこの様子に安心する私。

 

「……またなんか、アイシャの目に悪意を感じる」

「ええ?

 そんなことありませんよ。いつも通りのあなたでよかったなって」

 

 朝食をもくもくしながらジト目で私を見てくるウラヌス。私が目を逸らすと、くすくす苦笑して、

 

「……そっか。

 俺はてっきり、桜の方がよかったのかなって」

「そんなこと、冗談でも言わないでくださいね?」

「うん……」

 

 

 

 

 

 昨日の夜は、整形マシーンとホルモンクッキーの研究を進めた。特に整形は急いだ方が良さそうだしな。ホルモンクッキーも気になるけど……

 

 しかしまた、なんで桜と入れ替わったりしたんだろ? いや、入れ替わりでもないか。俺が念獣になったわけでもないし。……ガチにゃんことかになったら、マジで泣く。鳴くじゃなく、泣く。

 

 朝から3人には修行に励んでもらい、俺は子供と呼べるぐらいの若い人間が居ないか、あちこち見て回っている。1人なら『再来』で動けるし、近ければ飛んでも行けるしな。

 

 けど、昼まで探しても収穫なし。やっぱ居ないかぁ。一度クリアされて、プレイヤーがかなり減ってるのもあるんだろう。クリア報酬500億に釣られて入ってくることも今はないわけだし。

 

 今日何度目かのマサドラで、諦め半分な気持ちで歩いてると──

 

 

 

「よぉ、クソガキ。久しぶりだなぁ。元気してたか?」

 

 

 

 背後から聞こえてきた懐かしい声に、俺は期待半分の気持ちまで失せて肩を落とした。力なく、足を止める。

 

「……。いや、さぁ。

 なんでよりによってオマエなん?」

 

 ネテロの次にイヤなヤツが来たよ……俺的に。一体なんなんだ、次から次に。

 

「久しぶりだっつーのに、ずいぶんな挨拶じゃねェか。

 喧嘩売ってんのか? コラ」

「はぁ?

 喧嘩売りに来たんじゃねーのか、オマエこそ」

「いいや?

 オレは話し合いに来たんだぜ。まずは勝負してからだがな」

「……

 テメーの『殴り合ったら分かり合える』とかいう、頭悪い自論なんて聞いてねぇよ。

 カエレ」

 

 俺の背後から歩いてきたソイツが、気安く俺の肩にポンと手を乗せる。

 

「まぁそう言うな。

 話し合いに来たのは本当だし、殴り合うまでもなけりゃンなこたぁしねェよ。

 だから紹介してくれや。オマエのツレ2人をよぉ」

 

 俺はイラつきながら肩の手をパシンと払い、

 

「──ダチみたいな気安い真似すんなよ、ナックル」

 

 

 

 

 


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