どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二十六章

 

 私達はひとしきり爆笑した後、

 

「ま、まぁ今回も奇運が、同じ入手方法とは限らない、し?

 いちおう、調べられたら調べよ、か。っくっく……」

 

「……ですね。

 同じだったら、それはそれで困っ、ははは」

 

「アンタ達、いい加減落ち着きなさいよ。

 ほら、シームも呆れてるじゃないの。そんなの、よっぽどのことよ?」

 

 そう言って、自分も呆れ顔のメレオロン。ごめん、ツボりすぎて……。でもやっぱり、あのイベントひどいよー。

 

「2人とも、早く出発しないと……

 月例大会に間に合わなくなっても知らないよ?」

 

 心配そうにシームが急かしてきたので、ようやく笑いの衝動が収まってきた。ん、んー。

 

「……すいません、もう大丈夫です」

「あー、ごめん。そうだった……

 どっちにしたって、この『たずね犬』はすぐ金にはならないからね。

 このまま持っとく。ブック」

 

 ウラヌスはそう言って、バインダーを消した。

 

「聖騎士を取ってから、アイテムを渡しに行くってことですか?」

 

 私が尋ねると、ウラヌスは頷いてみせる。

 

「いちおう『呪われた幸運の女神像』も金にはなるからね。

 持ち歩いて、もし奪われたりしたら馬鹿馬鹿しいし」

「なるほど……

 いま防御スペルが1枚もありませんからね」

「うん。それもあるし、これって初心者向けの懸賞だから、交換イベントやってるトコを誰かに見られたりすると……」

 

 狙ってくれって言ってるようなもんだな……。警戒するに越したことはないか。

 

「でも『たずね犬』自体がイベントクリアに使えるなら、それを奪われる可能性もあるんじゃないですか?」

「交換イベントが1回きりだから、わざわざ奪うプレイヤーはそんなに居ないと思う。

 ちなみに交換イベントを発生させなければ、『たずね犬』を持ってない時ここへ来ると、また犬が出てくるんだよ。

 だから奪われたところで大した痛手じゃないよ」

「……それも調べたんですか」

「うん。『初心/デパーチャー』が余ってた時に」

 

 笑顔で答えるウラヌス。……はぁ。几帳面なことで。

 

 

 

 再びアントキバに向かって歩き出す私達。

 

「そういえばアイシャ。

 さっき俺に、何か聞こうとしてなかった?」

「あ、そうだった。

 ウラヌスって、今回新規で始めたんですか?

 前のセーブデータって……」

 

 私の質問に、ウラヌスは「うん」とうなずき、

 

「カードは全部消えてて、金もほぼ残ってなかったからね。

 都市を訪れた履歴とかは10日経っても消えないモノだから、利用できたんだけど……

 指定ポケットカードの入手方法が変わったみたいだし、前に発生させたイベントとかが再発生させられなかったりしたら、調査の邪魔になって困るしさ。

 完全新規の方が、調べものはしやすいかなって」

 

 そこまでウラヌスは言った後、

 

「ま。俺はメモリーカード回収しそこねたから、結局続きからは出来ないんだけどね」

「メモリーカード回収?」

「……俺は前、バッテラのトコから入ってたからさ。

 ハメ組のせいでスペルカードが不足してたし、港からゲーム出たんだよ。

 で、後日メモリーカード取りに行こうとしたら、もうバッテラがゲーム機を手放してて、どこに行ったか分からなくなった」

「あー」

 

 リィーナがバッテラさんの恋人助けた影響って、結構大きいんだなぁ。

 

 ……そりゃそうか。ゲームクリアする目的が根底から引っくり返ったんだもんな。

 

 

 

「しっつもーん」

「ん。なにメレオロン?」

 

 後ろからの声に、ウラヌスが返す。

 

「新しくセーブデータ作ると、前のってどうなるの?」

「あー、えっとな。

 まず今填めてる指輪とメモリーカードのセーブデータって、セットなんだよ。

 で、新規に始めると、また指輪がもらえるんだけど。

 新しく指輪を填めると、それまでのセーブデータに上書きされるんだ。そうなると前の指輪も、前のメモリーカードのセーブデータも、持ってたところで使えなくなる」

「ふーん」

 

 ふむ。ゲンスルーさんもそんなこと言ってたかな。……いや、違うか。ゲンスルーさんからの情報を、クラピカに教えてもらったんだったか。ややこしいな。

 

 

 

「……ウラヌス」

「うん? なに、アイシャ」

「もうちょっと早く歩きません?

 その、私おなかが空いてて……」

「あ、そっか。

 キミの場合は限界まで消耗した後だし、特にちゃんと食べた方がいい──ん?」

「どうかしました?」

「……いや、別に」

「?」

 

 

 

 

 

 ────ウラヌスは、改めてアイシャの生命力と精神力を確認し、あることに気づいた。

 

 強制『絶』になる前より、えらく増えてんだけど……なんぞ?

 

 特に生命力が140万近くだったはずなのに、今は完全に140万を越えているようだった。

 

 ……ボス属性でオーラ枯渇すると激増させる効果でもあるとか? いや、でも気のせいかもしれないしな。強制『絶』の影響もありえるし、元々多いから単なる誤差ってことも……

 

 ともあれ、その辺りのことをアイシャへ伝える気にはなれなかったが。なんとなく。

 

 

 

 

 

「ホントにどうしたんです? ぼんやりして」

「いや、なんでもないって。

 それより急ぎたいって話だったね。

 でもこの2人に、もうちょっと説明しときたいんだよ、道すがらに。

 だから後少しだけガマンしてくれる?」

「……はい」

 

 仕方ないか。街に着いてからだと説明しにくいこともあるだろうしな。人目があるから。

 ウラヌスは歩きながら後ろへ視線をやり、

 

「メレオロン、シーム。

 足下にある石でもなんでも、何かあったら拾ってみてくれ」

 

 背後の2人が、足下に視線を落とす。

 

「んー。石、石……」

「……石ねぇ。草ばっかなんだけど」

 

 そうそう。探すと意外になかったりするんだよね。「あー」とウラヌスは後ろ頭をかき、

 

「この辺の草はダメかなぁ。自生してるっぽいし。

 拾えるやつ、取りやすいやつじゃないと」

 

 なんだよな。ゴンが色々拾ってたみたいだけど、カード化するのとしないのがあって、違いがよく分からないって言ってた。私はそれどころじゃなかったし、全然調べてない。

 

 んー……あった。アレは大丈夫かな。

 

「2人とも。

 あの辺りに何個か落ちてるみたいですよ」

 

 私から見て、前方右斜めの地面を指差す。

 そのまま歩いていき、指差した辺りで私達は足を止める。

 

「お。ホントだ、あった」

 

 メレオロンが石を拾うと、煙になって、カード化した。

 続けてシームも拾う。ついでに私も。拾った石は全てカード化した。

 

 

 

『21449:石』

 ランクH カード化限度枚数∞

 道端にある 何のへんてつもない石 人に向かって投げれば

 そこそこのダメージは 与えられる

 

 

 

「なにこれ?」

 

 メレオロンが半眼でぼやき、

 

「クソカード?」

 

 シームが首をひねり、

 

「せめてクズカードと言ってください」

 

 私が訂正した。

 

「……アイシャも結構クチ汚いよね」

 

 ウラヌスの指摘に、私は「うっ」と呻く。私じゃないもん、言ってたのゲンスルーさんだもん……

 

「じゃあウラヌスは、なんて言ってるんですか」

 

 私が唇を尖らせて抗議気味に尋ねると、ウラヌスはちょっと困った顔で、

 

「……

 不要カード。いらないカード。穴埋めカード」

 

 真っ当な例をいくつも返してくる。……がーん。

 

 ウラヌスはこめかみをかきながら、

 

「……いや、まぁ。

 誤解なく伝わるなら、クズカードでいいんだけどさ。

 ただの石だから、ひどい言われようなのかなって気はしてるし。

 ま、いいからバインダーにみんな入れといて。1枚もないとカッコつかないだろ?」

 

「ちなみにこれって、いくらで売れるの?」

 

 メレオロンの質問に、ウラヌスは肩をすくめ、

 

「真面目な話、道端で拾った石が金になると思うか?」

「……思わないけど」

「そういうこと。

 試しにトレードショップで売ろうとすると、そんなの買い取れないよって言われる。

 よって問答無用で0ジェニー」

 

 そうウラヌスが答えた。

 

「クズカードじゃん」

「アタシもクズだと思う」

「ね、そう思いますよね?

 こういうのって、クズカードの代表だと思うんですよ。やったー。3対1」

「アイシャ……」

 

 アントキバへの道すがら、そんな馬鹿話もまじえて進んでいたところ。

 

 私とウラヌスが同時に空を見上げた。──音に反応し。

 

 音のする方を見ながら、一瞬だけ視線を交わす。身構える私とウラヌス。

 

 バシュンッ!!

 

 と音を立て、煙とともに眼前へ誰かが着地した。

 

「ぅわっ!?」

「え、なになに!?」

 

 メレオロンとシームが驚く。見覚えのある男と私が認識した時、もうウラヌスは動いていた。

 

「──ごっ!?」

 

 ズシャアッ!

 

 男の口許を塞ぐように掴み、側面から足を刈りながら、男の後頭部を地面に叩きつけるウラヌス。そのまま口許をぎりぎり締めつつ、素早く馬乗りになる。

 

 うまい──相手の両腕を、両脚で(き )めて動きを封じている。

 

「よぉぉぉ、らたぁぁざぁぁぁ。

 おっひさぁー」

 

 私から顔は見えないけど、聞いたことがないネチッコイ声を出すウラヌス。

 ウラヌスは空いてる手で、男のヘッドホンを毟り取る。

 

「ぐごぉっ!? うごごごっ!」

 

 呻きながら、じたばたもがく男。ひどいな……色々と。

 

「お前、この状態であがくなよ。

 無理だろ? カードも手にできないし、ブックを唱えてバインダーも消せない。

 ついでにヘッドホンがなけりゃ念能力も使えねぇよな?」

 

 イヤらしーなぁ……

 まぁ私が前にも会った初心者狩りプレイヤーだし、相応の(むく)いな気もするけど。

 ウラヌスは何だか楽しげな様子で、

 

「アーイシャー。

 ラターザのバインダーから、カード全部持ってってー♪」

「ブゴォッ!?」

「え……」

 

 うわ、全部いっちゃう? それは流石にやりすぎじゃないか? 恨まれるぞ、そこまですると……

 

 ……とはいえ、ゲーム開始直後に少しでもカードがあると、かなり助かるのは事実か。ひとまずマウントポジションのウラヌスに近づく。

 

 覗きこむ。うん、やっぱりあの人か。何かもう色々ヒドイ有様だけど。そばへ転がったバインダーに手を伸ばし、

 

「それじゃ、ちょっと拝見しますね」

「うごーっ!?」

「るせーぞコラ。顔面、握りつぶすぞ」

 

 ウラヌス、スゴイ握力ありそうだな。念能力もそれっぽかったし。

 ラターザという、現在進行形で可哀想な人のバインダーをめくっていく。

 

 ふむ……指定ポケットカードは2枚。フリーにスペルカードが結構入ってるな。お金は全く無い。多分マサドラで、スペルを補充した直後なんだろう。

 

「えっと…………

 指定ポケットは『37:超一流スポーツ選手の卵』と『93:人生図鑑』。

 フリーは……

 『盗視/スティール』3、『透視/フルラスコピー』2。

 『防壁/ディフェンシブウォール』1、『磁力/マグネティックフォース』1。

 『掏模/ピックポケット』2、『窃盗/シーフ』1、『再来/リターン』2。

 『衝突/コリジョン』……9。

 『追跡/トレース』4、『密着/アドヒージョン』2、ですね。

 後は水と食料……不要カードです」

 

「相変わらず片寄ってんなー、オマエ」

「ぐごご……」

「で?

 アイシャがわざわざそれを言うのは、カード全部は取りたくないってこと?」

「……

 はい、それは流石にちょっと。必要な分だけにしませんか?」

 

 私の状態が状態だから、積極的に喧嘩売ってほしくないんだよね。……私の言葉を吟味した結果か、ウラヌスの全身からやや力が抜けた。

 

「……

 オーケー。じゃあ最低限に妥協するよ。

 んー……

 『盗視』と『防壁』を1枚ずつ、『追跡』と『密着』を全部」

「分かりました。

 ……申し訳ないですけど、それだけいただきますね」

「うごぉ……」

 

 遠慮していてもこの状態が長引くだけなので、私はラターザのバインダーからカードを取って、

 

「ブック」

 

 自分のバインダーのフリーポケットに、それらを収めていく。

 

「ブック。

 ……ウラヌス、もういいですよ」

 

 私はバインダーを消しながら、2人から距離を置く。メレオロンが、スッとカバーしてくれた。

 

「ふぅー……

 ほらよっと」

 

 ウラヌスが飛び退き、ラターザから距離を取る。私の正面を阻む位置で。

 

「……っくそぉ!!」

 

 口許を真っ赤にしながらヘッドホンを掴み取って立ち上がり、バインダーからカードを取り出すラターザ。

 

 ごきり、と。

 

 ウラヌスの右手が、警鐘を鳴らした。

 

「……っ!」

 

 ラターザは声を発しない。……残りのスペルカードは、私達にとってそれほど脅威ではないけれど、彼の念能力は何かあるかもしれない。うかつな言動は、ウラヌスの再攻撃を招くだろう。

 

「り……『再来/リターン』オン!

 マサドラへ!!」

 

 光に包まれたラターザが、空の彼方へと飛んでいった。

 

 はぁ……何か悪いことした気分だ。仕掛けてきたのはラターザで間違いないだろうけど、こっちは用件も確認せずに問答無用だったからな。

 

 臨戦態勢を解いて、しょんぼりした様子のウラヌスに声をかける。

 

「……ウラヌス。

 あなたは他のプレイヤーに対して、ああやって好戦的なんですか?」

 

 尋ねると、彼は弱々しく首を振った。

 

「いや……

 アイツは前に、一方的に嫌なこと言われてね。個人的にやり返したかっただけ。

 そうでなくてもアイツ、完全に敵対行動(と )る気だったし」

 

 うん。おそらく、来たばかりのプレイヤーにスペル攻撃をすることで有名なプレイヤーなんだろう。なら、ウラヌスの対応も当然か。彼の目の力があれば、相手の敵意を敏感に察知できるだろうしな。

 

「分かりました。

 そのことについては、私から特に何も言いません。

 ……それより『追跡』と『密着』をやたら取らせましたけど、これって使うんですか?

 単に使わせない為に取ったんですか?」

 

 ウラヌスは、ワンピースをぽんぽん払いながら、

 

「両方かな。

 その2種類のスペルカードは使い道がある」

 

「はぁー……緊張したぁー」

 

 シームが心底ほっとしたように声を出す。

 

「あんなふうに、いきなりやってくんのね……

 警戒するクセつけとかないとダメね」

 

 メレオロンが頭をかく。まぁ2人にはいい経験になったか。

 

「残念ですが、アレは慣れるしかないです。いついかなる時でも突然プレイヤーがやってくる可能性があります。

 常日頃から安全な状態はない、と心に留めておいてくださいね」

「わかった……」

「怖いところね」

 

 かくいう私も、ちょっと気が抜けてたのは認めるところ。ウラヌスの反応は見事だった。まぁ先手必勝というか、色々アレだったけども。ウラヌスが他人を(おど)す時ってあんな感じなのか……

 

「まー、あんなコリジョンバカはアイツくらいだけどなー。

 自分1人しか飛べねーのに、よくあんなもん愛用するよ。

 っとに、朝っぱらから何やってんだアイツ……」

 

 後ろ頭をかくウラヌス。確かに『衝突』はちょっと使い勝手が分からない。初心者狩り以外に、使い道なさそうだし。後はプレイヤーキラーか……。他に何かあるんだろうか。

 

「でもウラヌス。

 私が言うのもなんですけど、『再来』や『磁力』って貰わなくてよかったんですか?

 アレは使えるスペルカードだと思うんですけど」

 

 尋ねると、ウラヌスは微妙な顔を返してくる。

 

「……俺達のうち誰かが、マサドラに行ったことがあれば、ね。『再来』は使えたけど。

 『磁力』も居場所を知ってるプレイヤーと遭遇してないし。……ラターザがマサドラへ飛んでいったけど、どこへ行くかは事前に分からなかったから。

 今回みんな新規だから、結局マサドラには自力で行かなきゃいけない。なら1人でしか使えない『再来』も『磁力』も使いづらい。俺だけ先行してマサドラに行くのもリスクが高すぎる。

 ラターザが逃げられるようにしたかったから、どっちにしろ全部は取れなかったし」

 

「……、なるほど」

 

 そっか。ラターザってソロプレイヤーだろうし、私達にとって有用なスペルを持ってる可能性は低いのか。特に『同行/アカンパニー』は誰かと交換しちゃうかもな。『衝突』とかと……

 

 ……個人的な恨みがある、みたいに言ってたのに、ラターザを逃がす気だったっていうのは……ラターザに対して非情になりきれなかったのか、私達の安全の為なのか。

 

「さてアイシャ。

 別に『密着』はどっちでもいいんだけど、『追跡』は使っときたいかな。早めに」

 

「? ……ブック」

 

 ウラヌスに急かされてるようなので、ひとまずバインダーを出して、フリーポケットのページを開く。

 

 

 

『1027:追跡/トレース』

 近距離攻撃呪文 ランクE カード化限度枚数90

 対象プレイヤー1名の現在位置を常に知ることができる

 (対象プレイヤーがゲーム外へ出るまで効果は継続する)

 

 

 

『1033:密着/アドヒージョン』

 近距離攻撃呪文 ランクC カード化限度枚数50

 対象プレイヤー1名の指定ポケットの全データを

 常に知ることができる

 (対象プレイヤーがゲーム外へ出るまで効果は継続する)

 

 

 

 んー?

 早めにと言われても、これは攻撃スペルだ。いったい誰に……

 私のバインダーを覗き込んだメレオロンが、少ししてうんうんとうなずく。

 

「ああ、そういうこと?

 敵対してる相手とかにじゃなくて、仲間同士で使うってことね。アリじゃない?」

 

「……あ。なーるほど」

 

 攻撃用のスペルって先入観があるせいで、そんなの思いつかなかったよ。

 ふむ……言われてみれば、確かにいい使い道だな。

 

 私達の反応に、満足げにうなずくウラヌス。

 

「その通り。

 普段は気にしなくていいけど、はぐれたり別行動した時に合流するのには便利。

 後は『同行』で他プレイヤーに連れ去られた時、直接プレイヤーへ飛ぶスペルカードがなかったりした場合に有効かな?

 ぶっちゃけランクCの『密着』より、『追跡』のがよっぽど便利だよ。味方同士で使うなら、だけど」

 

 言われてふむふむと思いつつも、私は首を傾げる。

 

「うーん……

 でも『追跡』は4枚しかないから、4人で掛け合うには足りないですよね?」

 

 首肯するウラヌス。

 

「4人がお互いの位置を把握するには、12枚いるね。

 だから誰が誰にかけるか、決めないといけないんだけど……」

「……ぼくの意見、言っていいですか」

 

 シームが話に参加してくる。

 

「どうぞ」

 

 ウラヌスが促すと、シームは少し考えながら、

 

「ボク達の中で一番速く動けるのはウラヌスだから、ウラヌスの方からボク達と合流する為に使っておいた方がいいかな、って」

「……。

 まぁ素早く合流するなら、俺がみんなの場所を把握してる方がいいわな。

 みんながそれでよければ、だけど」

「私は構いませんよ」

「アタシも。どうせ今だけの話で、『追跡』がまた取れたらすぐに掛け合うんでしょ?

 じゃあ別にいいんじゃない」

「……そっか。

 みんながいいなら、俺もそれでいいよ。

 じゃあ3枚は俺が使うとして、後1枚は……」

 

 シームが挙手。お、なんか積極的だな。

 

「最後の1枚は、いま決めずに後で決めた方がいいと思います」

「……オッケ。そうしよ。

 今からみんなにスペル使うけど、構わないかな」

「ええ、いいですよ」

「スペル使う時って、どんなのか見てみたかったのよね」

「ボクからボクから!」

 

 楽しそうだな、シーム。……きっとゲーム大好きなんだね。そういえば、ジョイステで一番遊んでたもんな。

 私は自分のバインダーから『追跡』を3枚外し、ウラヌスに渡す。

 

「うん。では早速。

 ちょっと3人ともそこにいてね。ブック」

 

 言って、ウラヌスは少し距離を開ける。2枚をバインダーに収めつつ、

 

「じゃ、よく見ててくれよ。……いや、ちょっと待て。

 アイシャ、『盗視』も貰える?」

「え? あ、はい」

 

 私は『盗視』のカードも取り出し、ウラヌスにヒュッと投げる。キャッチするウラヌス。

 

「さんきゅ。

 念の為、名前確認しとかないと……

 うん。アイシャ、メレオロン、シーム。来た順だな。

 じゃあ行くよ。

 

 ────『追跡/トレース』オン、シーム」

 

 スペルを使用したウラヌスから光が────

 

 出なかった。

 

 いきなりシームの身体が光る。そして、すぐに光は収まった。

 

『は?』

 

 私とウラヌスが、目を丸くしてシームを見る。

 

 え。なんか違くね? スペルで攻撃した時って、こんなあっさりしてたか?

 

 様子のおかしい私達2人を、メレオロンとシームが交互に見る。

 

「どうしたの? 2人とも」

「なにかあったんですか? 今ので終わり?」

 

「……ウラヌス。

 攻撃スペル使った時って、こんな感じでしたっけ?」

 

 私が自信なさげに尋ねると、彼は首を横に振った。

 

「いや、違う。

 この手のスペルを使ったら、まず俺から光が出て、その光がシームに当たる。

 それで効果が発揮される。

 その過程抜きで、いきなり効果が発揮されてるけど……」

「……ですよね。おかしくないですか?」

 

 ウラヌスは腕を組んで「んー」と唸りつつ、

 

「おかしいっちゃおかしいけど……

 ただ、これでも問題はないと思う。どうせあの光って避けられなかったし。

 仕様が変わったのかな……? なんでか分からないけど」

 

 …………防ぐ余地が消えとる。────まさか! リィーナ対策かっ!?

 

 あの子1人の為に、スペルカードの仕様変えやがった! そこまでするかッ!?

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
・リィーナの【貴婦人の手袋/ブラックローズ&ホワイトローズシャーリンググローブ】問題

 ※能力詳細については、無印の第四十八話後書き参照



 ゲームクリア後、いっぱいクレーム入ったのです……

 特にクリアを逃したハメ組から。スペル攻撃が念能力で防げるとか、ふざけんなし! ゲームバランス崩壊にもほどがある! だのなんだの……

 港のエレナがうんざりするほどクレームを聞くハメになり、ゲームマスター間で揉めた案件。

 防ぐ余地があるのは問題だ、光が飛んでいかないと見た目がよくない、今さら直すのは面倒だ、もっと光を飛ぶ速さを上げろ、誰がやると思ってんだソレ気軽に言うなよ、あの速さぐらいが見た目に美しいんだ、下らないコトこだわるな、速くしたって防がれるかもしれないだろ、だいたい防げるのが1人だけなら別にいいだろ、そんなこと言って他にも出てきたらどうするんだ……

 ゴチャゴチャと話し(揉め)合った結果が、もうシステムで強制処理しちまえという酷い結論だった。ちなみにそれを言ったのはジン。運営参加しないくせにロクなこと言わない。それを言ったジンをボロクソに貶した挙げ句、アイデア採用する運営陣も大概だが。



 クソゲー、クソ運営、詫び石|・ω)<はよ




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