どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二百五十章

 

 ユピーの呼びかけに、ピトーとプフが呼応する。

 

「分かった!」

「頃合いですね」

 

 ピトーがユピーの背後へ回り、プフが分身を生み出して2体に分かれる。

 

 桜がアイシャのそばへ行き、

 

「ユピーが怒りを溜め込んでる。注意して」

「分かっています」

 

 ゴン達からも聞いていたことだ。ユピーは怒りを溜め込んで、強大な一撃を放つ。逆に言えば、それこそが大きな隙であり──

 

「多分プフの作戦だよ。わざとユピーに怒りを溜めさせて、それをコントロールさせる。

 爆発寸前に見えるけど、思ったよりアイツ冷静だからね」

「……なるほど」

 

 ──撒き餌にもなりえた。ゴン達との戦いでは不発に終わった作戦だ。当然あえて隙を衝こうとしなければ罠にかかることもない。アイシャが回避に徹すれば、ユピーは無駄に消耗するだけの結果に終わるだろう。

 

 それよりも問題は、初の護衛軍3人による連携だった。全く事前情報がない。

 

 大きく膨らんだユピーが変異。肉体を大きく変化させ、半人半馬の獣人と化すユピー。むしろこの姿こそが、ユピーの元となった魔獣のそれだったかもしれない。

 

 兜のような形状に硬質化した外皮で弱点の頭部を覆い、右腕は半ばから鋭い刃を形成、大きく膨らんだ左肩は不気味な人面がいくつも浮かび上がり、左腕は完全に銃身と化していた。

 更に肉体の様々な箇所から大小の触腕を生やす。見るからに、最大規模にまで攻撃性を引き上げている。

 

 アイシャとしては、それほど大きな変異が終わる隙をみすみす見逃したくなかったが、分身を放ったプフが散発的に仕掛けてくる為、妨害できなかった。強引にでも念弾くらい撃つべきだったと、思わず舌打ちしたくなるアイシャ。

 

「さぁ第2ラウンド、おっぱじめようぜッ!!」

 

 しかも触腕にオーラが紐づいている。ユピーの触腕を、ピトーの【黒子舞想/テレプシコーラ】で操るつもりのようだ。

 

「おお、やるじゃん!」

 

 驚く桜。護衛軍がここまで戦術を組み立ててくるのは予想外だったのだろう。

 

「行くぞぉぉぉぉッッ!!」

 

 出鱈目な軌道と速度で降り注ぐ触腕。更にユピーの本体が迫り来る。脇からプフも分身なのをいいことに、大胆に近接する。

 流石に読み切ることなどできず、回避に専念するアイシャ。傷つくことを恐れなければ攻めようもあったが、無傷で済ませようとすれば攻撃を返すことすら至難の状況だ。

 

 凄まじい速度と変則的な軌道で襲い来る触腕を掻い潜り、プフの分身に親指を突き立て抉り、ユピーの剣尖を紙一重で避け、脚で柔を仕掛けるアイシャ。ユピーの前脚一本を、ズルリと前のめりに滑らせる。

 半人半馬の境目辺りに掌打。ダメージが主目的ではなく、ユピーを突き飛ばして後ろのピトーへ衝突させてやるのが狙いだ──思惑通り衝突した二者がもつれて倒れ込んだ為、猛攻が途切れた。

 

 横倒しになったユピーの頭部をアイシャが震脚するように潰そうとした瞬間、不自然な動き方で回避。ピトーが【黒子舞想/テレプシコーラ】で強引に避けさせていた。

 

「っぶね! 助かったぜ!」

「気をつけて、トドメを刺す時は頭部狙いだから!」

「分かってるよ!」

 

 そして立ち上がったユピーが、猛攻を再開。空間を埋め尽くすように振るわれる触腕がアイシャを襲う。プフの分身も、回避を妨げるようにアイシャへ高速で仕掛ける。

 しかも徐々に経験を積んで技量を伸ばす護衛軍。ピトーの操る触腕はより巧みに動き、ユピーは小規模な念弾を時折り放ちアイシャを近づけさせず、プフの分身は細胞を削られながらもダメージを軽減させるような体捌きを見せている。三位一体の連携を更なる高みへと引き上げていく。

 

 矢継ぎ早に仕掛けられる護衛軍の総力に──いつしかアイシャは口許に笑みを浮かべていた。

 

 アイシャは楽しんでいた。相手の成長を感じ取り、それにかろうじて自分が渡り合えるこの状況を。

 まだまだ伸びる余地を見せる、それぞれの技巧における練達の存在になりえた実力者達。──生まれたばかりで死なせざるを得なかったことを、改めて悔やむアイシャ。

 

 その先を見たいという想いはあったが、いずれにしろ彼らは未来のない存在だ。かつて自らの手で、その芽を摘み取った為に。

 人類の──世界の人々の為にではあったが、実際のところは彼らを恐れていたからだとアイシャは思っていた。自らを越えうる脅威を、そうなる前に消し去る。

 

 

 

 ──キメラアントでなければ、という想いが浮かんでは消える。

 

 

 

 アイシャが、プフの分身と複数の触腕をオーラ砲で消し飛ばした。プフへのダメージは低いが、元に戻るまで時間がかかる。その隙に──

 ピトーの背後へ回り込んだアイシャは、その心の臓へ浸透掌を放つ。血を吐いて倒れるピトーに構わず、動きを止めた触腕をオーラの刃で薙ぎ払い、ユピーの背に乗って延髄へ蹴りを叩き込むアイシャ。

 首が捻じ曲がったユピーの背を蹴って、迎え撃とうとしたプフの本体をオーラの放出で掻い潜り、オーラ砲を見舞う。粒子状に分解し、本体のオーラが強まった一点に向かって繊手一閃。

 

 ──アイシャの細い指先に、蜂のようなプフの本体が挟まれていた。

 

「……まっ。

 まいり、ました……。降参です……」

 

 プフが二本指に挟まれたまま、弱々しい声音で告げた。守勢に回っていたアイシャの、刹那の攻勢で決着がついた。

 

「しゅーりょー! アイシャ、ウィーンッ!!」

 

 諸手を上げて、嬉しそうに宣言する桜。痙攣するピトーのそばへ行き、その身体に手を触れる。

 

「……ほ、ほう、びは……?」

「分かってるって。

 ちゃんとやってくれたから、約束は守るよ。お疲れ様、ピトー」

 

 心臓が破裂しかかった状態で問いかけるピトーに、笑顔で応じる桜。即座にその肉体を元通りに復元する。オーラは大幅に減じたままだったが。

 

 アイシャが指を緩めると、力なくプフの本体が離れ、元のサイズへと戻っていく。

 

「プフは治療いらないよね。

 ユピーはどうする?」

「けほっ。……ボクが、治す」

「ん。じゃあ、お願い」

 

 桜は、アイシャの元へちょこちょこ歩いてきて、

 

「……うそーん。アイシャ、汗もかいてなくない?」

「あ、いえ……

 短時間で決着したからですよ。流石に苦戦はしました」

「ふぅん。

 ま、いいけど。楽しかった?」

「……そうですね。

 久しぶりに全力での戦闘を満喫できました」

「そっかぁ。ならいっか」

 

 屈託のない笑顔に、思わずアイシャも微笑を返す。

 

 やがてユピーの治療も終わる。ユピーも、本来の巨漢形態に戻っていた。

 

 護衛軍3人がすっかり覇気を失った様子で、アイシャと桜の前に立つ。

 

「……約束を果たしてほしいニャ」

「ん、心配しないで。

 でもその前に聞きたいことがあるの。

 ──シームって名前の男の子、知ってる?」

 

 ハッと桜を見るアイシャ。訝しげな顔をする護衛軍。プフは考え込む様子で、

 

「……存じ上げませんね。キメラアントですか?」

「厳密には違う。

 多分アンタ達がさらってきて、身体をいじくった人間」

「ああ、なるほど。

 名前までは存じ上げませんが、少しはそういう者達もいたでしょうね。

 基本的にレアモノは女王様に献上するのですが、試したいこともありましたので」

「っていうと?」

「我々も念能力に精通しているわけではありません。

 その実験台にレアモノは適しており、私の能力もそうやって磨き上げました」

「……それは分かるけど、人間をキメラアントに改造した理由は?」

「より強力な兵士を生み出せないかと思いましてね。

 そういった者達を大量に生み出し、私かピトーが操れる軍隊を作ろうかと。人間全てを相手取ろうにも、我々の数的不利は否めませんでしたからね。……それだけのこと。

 で、そのシームという人間がどうかしましたか?」

 

 こっそりと溜め息を吐くアイシャ。──謝罪を求めたところでムダなのだろう。彼らは悪行を為したなどとは一切考えていないのだから。むしろ、よくシームは死なずに済んだものだ。

 

 桜は腕組みして「んー」と首を傾げながら、

 

「どういう風に改造したの?」

「そう言われましても、様々な実験をしましたからね。

 結果的に生存した者の方が少ないくらいでして。

 どういう姿の者か言ってもらえれば、思い出すかもしれませんよ?」

 

 アイシャの方を気にするように、桜は視線を彷徨わせる。しばらく悩んだ後、

 

「……多分、魚のキメラアントと掛け合わせたんだと思う。

 人間の手足に、魚の鱗があったから」

「ああ、半人半魚ですか。アレはなかなか難しいのですよ。今にして思えば、陸棲と水棲でというのが良くなかったんでしょうね。混合の配分に苦心した記憶があります。

 成功した事例は確か1体だけのはず……そうでしたね? ピトー」

「うん、そのはず」

「であれば、おそらくあの少年でしょう」

「そっか。心当たりがあって良かった。

 アンタ達が改造する時って、基本的に繭を使うんだよね?」

「よくご存知で。

 繭の中に素材を詰め込み、適宜混ぜ合わせることにより特徴を併せ持った生物に生まれ変わります。おおむね繭の中にいる時間によって、改造の深度は変わってきますね」

「ということは……

 手足しか見た目に変化なかったけど、元々の手足だけ溶かして、混ざり合った感じ?」

「魚の方は全て溶けてしまったでしょうけどね。

 その程度しか変化がなかったのであれば、そういうことでしょう。それ以上混ぜ合わせようとしたケースでは、素体の強さが足りないのか成功しなかったようです」

「ふーん……分かった。

 情報提供ありがと」

「女王様のお気に召しましたでしょうか?」

「……どうでもいいけど、女王呼ばわりやめてね?

 私、そういうのイヤなの」

「これはこれは。お姫様の方がよろしかったですか?」

「やめてぇー」

 

 プフと桜の奇妙なやりとりに、アイシャも思わず苦笑する。……実に桜らしい。

 

「さて! そろそろ始めよっか」

 

 パンと手を打ち鳴らし、歩いて4人から離れる桜。ある程度離れたところで向き直り、

 

「ではお待ちかね、ご褒美ターイム♪

 特にピトーはお待ちかねだよね?」

「じ、焦らさないで、早くしてほしいニャ!」

「慌てなーい、慌てなーい」

 

 まるでマタタビを欲しがる猫のようにソワソワするピトー。一体何事かと思うアイシャ。

 

「多分大丈夫だと思うけど、失敗したらゴメンなさい、と」

 

 

 

 ──三度(み たび)、葉書を取り出す桜。

 

 

 

「桜……

 まさか……、ウソですよね?」

 

 顔面蒼白になるアイシャ。その様子に、桜は葉書をひらひらさせながら苦笑してみせ、

 

「またまたー。

 アイシャも期待してたんじゃないの?」

 

 アイシャは強く首を振って否定する。──可能性の1つとして、褒美とやらが『それ』ではないかと考えなかったわけではない。

 

 だが、すぐにそんな考えは振り払った。桜と言えど、オーラが足りるはずがない。

 

 いや、しかし……と思い直すアイシャ。彼のオーラまで完全再現する必要はないのだ。護衛軍は特訓に必要だったから、生前と同じオーラを分け与えただけで……

 

 ──そして仮に不完全だとしても、充分脅威になり得る。それほどの存在。

 

「やめてください、桜! 危険です!」

「えー?

 でもピトーと約束したし……

 アイシャはもう、二度と会いたくない?」

「ぁ……」

 

 アイシャの喉から、かすれた声が洩れる。護衛軍3人が、神妙な様子でアイシャを見る。

 

「会いたくないんだったら、アイシャがいないところでやるよ?

 その方がいい?」

 

 アイシャは悩んだが、首を横に振った。──自分が立ち会わなければ、何かあった時に取り返しがつかないかもしれない。

 

「……そういう、わけではありません。

 ですが……

 そんな気軽に、死者を甦らせていいはずがありません……」

 

 桜は困ったように首を傾げ、

 

「でも、アイシャのお母さんは何度も復活してるんでしょ?

 もうしない方がいいって言える?」

 

 ──……言えるわけがなかった。アイシャにとって、ドミニクにとって、念獣であれどミシャは救いであり、支えであり、家族に不可欠な存在だ。

 

 もしミシャがいなくなれば、今の父娘関係も壊れてしまう。絶対に失いたくはなかった。

 

「ごめんね、アイシャ。

 ……でもやっぱり、もう一度逢わせてあげたいからさ。ピトーなんて一度も逢ったことないんだよ? 可哀想じゃん」

「ぅ……」

 

 ようやく桜の言いたいことを、アイシャは理解した。護衛軍3人にとっても同じなのだ──彼を甦らせるのは。アイシャが母の愛を求め続けるのと、何も変わらない。

 

 

 

 自分は良くて、彼らはダメだと……そんな身勝手なことをアイシャは口にできなかった。

 

 

 

「……

 好きにしてください。

 でも桜、もし危険だと判断したら……」

「ん。わかってる」

 

 頷き、葉書を片手に呪文詠唱を始める桜。

 

 

 

(まが)しい残滓(ざんし )(いま)だに宿(やど)す  (ほろ)びの運命(か ぜ )(ま )かれし(モノ)

 (こご)るその(み ) 呪を( まじない )(み )たし

 二度繰(に たびく )る (ゆめ)(つづ)きに(むね)(おど)らせ──」

 

 

 

 桜は、護衛軍を甦らせた時を遥かに上回る、膨大なオーラを葉書に籠めた。

 

 

 

「────【不良甦生/ビカムアンデッド】────」

 

 

 

 煙が噴き上がり、晴れる前から強大な威圧感が生まれた。

 

 静かに煙が晴れていく。うっすらと見えるその姿に、アイシャは思わず目をつぶった。胸中の痛みに堪えかね、噛み締めた口の中に鉄の味が広がっていく。

 

「お……おぉぉっ……!!」

 

 ピトーがその場で跪き、しかし目だけはそちらをしっかりと凝視する。

 

 

 

 

 

 そして────巨大キメラアントの王が、この島の上に再臨した。

 

 

 

 

 

「……。……?」

 

 王は、どこか呆けたような、納得がいかない様子で自分の肉体を見る。

 

「……なぜだ? 余は……」

 

『──王ッッ!!』

 

 その御前(おんまえ)に我先にと馳せ参じ、護衛軍達が控える。そんな中、一歩前に出たピトーは、

 

「混乱されているでしょう最中、失礼を承知で申し上げます──

 お初にお目にかかります。

 王直属護衛軍が1人、ネフェルピトーに御座いますッ……!」

「……

 うむ、分かるぞ。

 お主も、プフやユピーと近しいオーラを感じる。

 余の危機に際し、文字通り身を挺して尽力してくれたそうだな……礼を言う」

「……も……

 勿体無い御言葉でございます……!!」

 

 頭を垂れ、身を震わせるピトー。しっぽの先までビクビクと震えている。

 

「プフ、ユピー。お主らもだ。

 余の力が及ばず、我々による世界統一の意志は水泡と帰した。王とは名ばかりの存在であったにも関わらず、お主らは余の為に命を賭して戦い抜いてくれた。

 正直、どんな顔をお主らに向けるべきか分からぬな……

 ともかく、期待に応えることは出来なかった。……すまなんだ」

「外敵の排除すら出来なかった私までお褒めに与り(あずか )、身に余る光栄でございます……!」

「王っ! そんなことを仰らないでください……!

 産まれたばかりのあなたを戦地に赴かせたばかりでなく、私は人間を排除することすら敵わず……合わせる顔がないのは私の方ですッ!」

「プフ、言うな。

 ──人間を侮った。我々の敗因はそこに尽きる。(おの)が力に驕り昂ぶり、ひたすらに敵を侮った結果に過ぎんのだ。今更悔いたところで、取り返しはつかぬ……」

「王ッッ!!

 なにとぞ、なにとぞ今一度──

 世界統一の夢をッ!!」

「……何を申しておるのだ、お主は?

 我々と人類の存亡を懸けた戦いは終わった。……人類の勝利でな。もう夢想はやめよ」

「まだですッ!!

 我々は、今ここに存在するではありませんかッ!!」

 

 しん、と静まり返り。──そんな中、桜が頬をぽりぽり掻く。

 

「……ごめん、アイシャ。

 なんで甦らせてほしくなかったか、自分の目で見てよく分かった」

「いえ……」

 

 アイシャとしても、今更こんなものを見せられても心苦しいばかりだろう。王への忠義、その想いの深さだけは痛みを感じるほどに理解できる。

 

「女王ッ!! どうかこちらへッ!」

 

 プフが大声で呼んできたのに対し、桜はあからさまにげんなりとしてみせ、

 

「プフ、おまえ……

 そう呼ぶのやめてって言ったじゃん」

 

 何となく空気を読んでほどほどに離れていたのだが、王と護衛軍のそばへ歩いていく桜。アイシャも仕方なくついていく。──王から視線を逸らすアイシャ。王もアイシャと目を合わせようとしない。

 

 近くまで来た桜へと、プフは両手を地について頭を下げ、

 

「王を甦らせていただき、誠に有り難う御座いますッ!!

 女王、ご無理を重々承知でお願い申し上げますッ……!!

 どうか、どうか我々をこのまま現世に残してはくださいませんかッ!!

 さすれば必ずや世界統一を果たし、この世界を半分ずつ──あなたと王で分かちあって支配することも夢ではありませんッ!!」

「……あのさぁ。

 そーゆーの、夢って言わない。妄想って言うの。ぜーんぜん、具体性がない。

 どうやんのさ?」

「全生物の頂点に君臨しうる我が王のお力さえあればッ! それは可能なのですッ!!

 人類史に存在したあらゆる擬物の(まがいもの )王を超越する、我が王さえいれば……!!」

「……プフ、もうやめよ」

 

 沈痛な表情で制止する王。かつてアイシャに対して声をかけた経験もある為、生き恥に近い感情を味わっている。あまりの痛々しさに、アイシャも聞くに堪えなかった。

 

「過大評価がすぎると思うんだけどなぁ……」

「そのようなことはありませんッ!!

 王と女王、お2人の力があれば人類など敵ではありませんッ!!」

「こらこら」

「……」

 

 俯いた王が暗いオーラを放っているが、構わず言い募るプフ。完全に桜を女王へ仕立て上げる気満々である。……実は男とか、間違っても知られたくない事実だった。多分酷いことになる。その辺はアイシャにも同じことが言えたが。

 

「それでも不安だと申されるならッ!

 王と渡り合えるほどの実力を備えた彼女と、この我々も力を合わせればッ!!

 可能ではありませんかッ!?」

「うーん?」

 

 ワリと真面目に考察する桜。おいおいと思うアイシャ。いつの間にか巻き込まれている。

 

「……難しいと思う。いや、はっきり言って無理だよ?

 人類の科学力ナメすぎだから。現存する兵器の全火力を解放したら、人類を余裕で壊滅させるくらいの力あるんだよ?

 何度やり直したって、キメラアントに勝ち目ないと思うけどにゃー」

「それは正面衝突した場合の話でしょう!?

 我々とて、まともに全人類から攻撃されるような愚は冒しません!

 それに、我々のみへと人類の全火力を集中させるなど、できるはずがないでしょう!?」

「あー、まぁね。それはそうなんだけどさ……

 でも私が言いたいのは──」

「真に生物大統一をなし得るのは、我が王を置いて他には存在しませんッ!!

 輝く威光のオーラを放ち、叡智溢れる頭脳を兼ね備えた、才気に満ちる我が王を置いて他にはッ……!!」

 

「──……プフ」

 

 身の毛もよだつ憎悪を浴びて、白熱していたプフは一瞬で表情を凍りつかせた。

 

 自らへの美辞麗句を並べ立てていたプフに対し、

 

「二度は言わぬぞ……

 死した余を愚弄するような言葉は口にするな」

「だってさー。

 プフ、アキラメロン」

「王……。王ッッ……!!」

 

 泣きじゃくるプフ。ダメだこりゃと肩をすくめる桜。気まずそうにする他の面々。

 

「ピトー。とりあえず約束は守ったよ?」

「はいっ……!

 ありがとうございました!」

「お礼なんていいって。よかったね、念願の王様に会えて。

 こっちこそ、無理言ってアイシャの特訓に付き合わせてゴメンね?

 ……まぁプフは聞いてないからいっか。いちおうユピーも。アイシャに対して、手加減しなかったからムカついてるけど」

「知らねぇよ。

 つぅか、手加減の必要なんざなかったじゃねーか」

「まーねぇ。

 アイシャってば、メチャ強いし?」

 

 1人くすくす笑う桜。

 

「さぁて。

 ……アイシャー。全然余力あるみたいだし、もう1本いっとく?」

 

 俯いたままの王を親指で差す桜。言葉の意味を理解したアイシャは、

 

「桜……あなたは」

「あれ?

 むしろ、やりたがってると思ったんだけどにゃー。

 さっきまでの集団戦と違って、1対1。正真正銘、全力で戦えるよ?

 怪我しないようにって、条件はあるけど。ねぇ?」

 

 

 

 そして、アイシャは視た。

 

 

 

 桜が振り向こうとした刹那、王が桜の首筋へ尾を振るうのを────

 

 

 

 

 

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