どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二十七章

 

 私とメレオロンに対しても、ウラヌスは『追跡』を使ってみたが、やっぱり光が飛んでいく演出もなく、スペルを使われた側の身体がいきなり光るようになっていた。

 

 あ、味気ないな……リィーナ対策なのは理解できるけど、もう少し何とかならなかったのか?

 

「ねえねえ。

 いま、アイシャの時だけ長く光ってたけど何で?」

 

 質問するメレオロン。

 ウラヌスが『追跡』を使用した際、私はバインダーを出していた為、『防壁』を使うかどうかの時間が与えられていたのだ。だから15秒経つまで、私の身体はピカピカ光った。地味にうざいし、恥ずいな。私は電飾か。

 

「えっとな。アイシャのバインダーに防御スペルが入ってたからだよ。

 バインダーを出してなかったら同じ結果だったけど、バインダーを出してる状態で防御スペルを持ってると、スペル攻撃を受けた時に最大15秒の待ちが発生するんだ。

 その15秒間、対象者は防御スペルを使うかどうか決められる」

 

 説明するウラヌス。ゲームに入る前、メレオロン達に説明してるはずの内容なんだけど、その辺って分かりづらいんだよね。いかにもゲーム的なルールだし。

 メレオロンは考える素振りを見せた後、

 

「今使った『追跡』って、近距離スペルよね?

 半径20m射程って聞いたけど、その15秒待ちの間に射程外になったらどうなるの?」

 

 あ、それ知らないや。

 歩く攻略本様は人差し指をくるりと回し、

 

「どうもならない。半径20mはスペル使用時の射程。

 15秒待機中に移動スペルで逃げたとしても、15秒後にきっちり食らう」

 

 ほー。そうなんだ。

 聞いてみれば、そりゃそうだよねとは思うけど、検証怠らないなぁウラヌスは……

 

「で? 『追跡』を使った後、具体的にどうやって居場所を調べるの?」

 

 メレオロンが尋ねると、ウラヌスは私達を手招きし、自分のバインダーをこちらが覗きやすい向きにしてページを指し示す。

 

「いま開いてるのは、バインダー最後のページなんだけど。

 右側、今ここに『盗視』が入ってるだろ。

 ……アイシャ、バインダー貸して」

「あ、はい」

 

 出したままのバインダーを、ウラヌスの横へと差し出す。バインダーが宙に浮いてるのって便利なんだけど、ちょっと扱いに慣れがいるんだよな。ヘタにいじると浮力が消えて、バインダーが落ちてしまう。

 

 ウラヌスは、私のバインダーも同じように最後のページを開いて、そちらへ『盗視』のスペルカードを付け直す。

 

 ブン。とページ上部の黒い画面が(とも)り、

 

 ────『盗視の呪文を使用します 対象プレイヤーを選んで下さい』と表示される。

 

 そして画面左上からプレイヤー名が表示。ウラヌス。メレオロン。シーム。ラターザェ……

 

「普段は何も出てないんだけど、『盗視』みたいなスペルカードを入れると、こうやって誰に使うか、今まで遭遇したプレイヤーから選択する画面になる。

 でも『追跡』や『密着』なんかを使用して、攻撃に成功したことがあると──」

 

 ウラヌスは自身のバインダーページを再び指す。『盗視』カード外してるのに、なんか表示が出てるな。

 

「ここに『追跡』って表示されてるだろ?

 これを十字キー中央の決定キーで選択する」

 

 電子音が「ピ♪」と鳴る。

 

「今までに『追跡』のスペルで攻撃成功したプレイヤー名が表示される。

 攻撃成功した順にシーム、アイシャ、メレオロン。で、試しにシームを選択すると」

 

 再び「ピ♪」と鳴る。

 表示が切り替わり『シームは シソの木の北にいます あなたと同じ場所にいます』と表示された。

 

「これは今、同じ場所だからこう出てる。

 距離が離れていれば、あなたから南に何m、東に何mの場所にいます、って感じで表示される。

 対象プレイヤーがゲーム外へ出るまで、無条件で何度でも確認できる」

 

 ふーん。……今更ではあるけど、これって敵対プレイヤーに使われたら、かなりヤバイ呪文だな。気をつけないと。これに比べたら、『密着』の方がまだマシなんじゃないか? どっちも食らいたくなんかないけど。

 

「あー、あとアイシャ。

 いま最後のページに入れてる『盗視』、そのままにしておいていいよ」

 

 ……ん? そういえばここって……

 

「え? もしかしてここ、入れっぱなしにできるんですか?」

「うん、そう。

 そこへ入れられるスペル限定だけど、バインダーに入ってる扱いだから、1分経っても無効にならないんだ。

 スペル使用待機中だから、そのカード自体スペル攻撃の対象にもならなくなる」

 

 ぅわ、えぐっ!

 

 ……ここ、そんなに便利なポケットなのか。1枚しか入らないけど。

 

「対象プレイヤーを選択できる、遠距離通常スペルだけなんだけどね。

 ちなみに関係ないカード入れても反応しないから、普通に1分経つとゲインされる」

 

 ウラヌスの説明を聞いて、メレオロンがまた思案顔をしてる。

 

「ブック。

 じゃあ、こうすると……」

 

 バインダーを出したメレオロンが、石カードを最後のページに入れ直す。カチリと音がしない。強引にバタンとバインダーを閉じ、

 

「ブック」

 

 ぼぅんと煙とともにバインダーが消え──そこに石カードが残っていた。カードが下に落ちる。

 

「なるほどねぇ……」

 

 メレオロンの言葉に、肩をすくめるウラヌス。試し済みだなコリャ。……みんな考えるなぁ。

 

「じゃあ……」

 

 そう言ったメレオロンが口を噤み。──居なくなった。

 

 おおー。これが話に聞いてた【神の不在証明/パーフェクトプラン】か。完璧に気配も消えてるぞ。今の私にはメレオロンを全く捉えられない。ちょっと新鮮だな。

 ウラヌスが不自然に視線を彷徨(さまよ)わせ、

 

「今アイシャって、メレオロンがどこに居るか全然分かんない感じ?」

「ええ。全く分かりません」

「そっか……

 やっぱり個人の認識に干渉する能力か。

 メレオロン、手を叩いてみて。

 ……アイシャ、聴こえた?」

「さっぱり聴こえません」

「ふぅん、なるほどね……確かに相当強い能力だよ。特質系ってコレだから怖い」

「あ、なんか暗くなってますよ」

 

 そう言ってきた、シームが指差すところを見てみる。

 私のバインダーで、メレオロンの左のライトが暗くなってる。これはゲーム内に居ないプレイヤーの状態だ。ほー……グリードアイランドのシステムにまで通じるのか。これは驚いた。

 

「すごいですね。

 ライトが暗くなってますから、ゲーム内に居ないことになって──」

 

「おい、メレオロン?」

 

 ウラヌスが、私の目の前辺りを見ながら声をかける。

 

「む?」

 

 違和感。

 

 いきなり現れたメレオロンが、私の左胸を思いっきり指でつついてた。

 

「──ひゃあッ!?」

 

 慌てて飛び退く。シームが目を丸くしながら、

 

「わー。アイシャも消えてたー」

「お、マジで?

 じゃあ今のアイシャになら【神の共犯者】も有効なんだな」

 

 ウラヌスがうんうん感心したように分析する。が、私はそれどころじゃない!

 

「ちょっとメレオロン! いきなり何するんですかッ!?」

 

 私が抗議すると、メレオロンは私をつついた姿勢で呆然と固まったまま、

 

「……いやー、アイシャ。

 アンタ、それはダメだわ。犯罪的だわ。……もっと試していーい?」

 

「なにをですかッ!?」

 

 反射的に胸を隠す。メレオロンの視線と声が怖すぎる。

 

「……おい、メレオロン。

 お前のそういうオッサンくさいトコ、ホントなんとかならんのか」

 

 ウラヌスが心底うんざりそうに言うと、

 

「なによ、ウラヌス。

 ……アンタはいいわよね。もうアイシャのを充分堪能しただろうし」

 

「誰が堪能しただコラァァァッッッ!!」

 

 やめてやめて……何の話か分かっちゃったから。想像させないで、恥ずかしい……

 

 

 

 顔を赤くしながら私達2人は並んで歩き、その後ろをメレオロンとシームが付いてくる。

 

 ぐぬぬ、くっそぅ……

 メレオロンの修行プラン、最初からキッツぃのを用意してやるからな。覚えてろよ!

 

「……アイシャ、ほんとにゴメン」

 

 顔を赤くしつつ、ヘコみながらそう言ってくるウラヌス。うぅぅ恥ずかしい……

 

「気にしないでください。

 今晩にしましょう、あの件は……

 その……メレオロンにされるくらいなら、ウラヌスの方が……ぐ」

 

 言ってて、自爆を悟る。これはアカン。

 

 見ると、更に顔を赤くするウラヌス。ふぅぅ、ダメだダメだ恥ずかしすぎて何か泣けてきた……

 

 これが普通の男性相手だったら、まぁ思うトコはあれど我慢できたかもだけど。

 ウラヌスって、こんな可愛い見た目だからな……なんか余計にイケナイことされた気がしてくる。

 

「ひゅーひゅー。お2人さーん」

 

 茶化す声に、『ギンッ!!』と音がするような殺気を籠めて振り返る私達。メレオロンがたじろぎつつ、

 

「おっ、ほ……

 え、えっとね。その……

 聞きたいことがあるんだけど」

「なんですか」

「なんだコラ」

「ボクから見ても、2人とも仲いいなーって思うんだけど……」

 

 シームが何か言ってるけど、無視。

 

「えっと……

 ほらほら、まだ聞いてなかったなーと思って。

 アレキサンドライトの取り方。教えてくれない?」

 

『……』

 

 顔を見合わせる私達。……真面目に説明しろって言われると、笑い事じゃないんだよな、あのイベント……

 

 ウラヌスは、私の顔を意味ありげにしばらく眺めた後、メレオロンに目をやり、

 

「……別に今じゃなくてもいいだろ? 直前になったら話すよ」

「え?

 そんなに説明するの、面倒なイベントなの?」

「面倒っつーか、その……」

「気になるじゃない、あんた達さっき2人だけで笑ってたし。

 複雑な手順とかあるわけ?」

「んー。……複雑ってほどでもないかな。

 早いうちにやっとかないと、後々やるのが面倒なイベントではあるけど」

 

 だな。手持ちのカード全部渡すなんて、後になればなるほどやりにくくなるだけだ。

 

「だったら、いま聞かせてくれたっていいじゃない。

 どうせすぐにやるつもりなんでしょ?」

「まぁ……

 アントキバからマサドラへ行くついでには、やるだろうな。

 でもクリア前と同じ入手方法とは限らないしさ」

「同じかもしれないじゃない。

 いいから教えてってば」

 

 ウラヌスの顔が何かゲンナリとした。あ、諦めたなコリャ。

 

「奇運アレキサンドライトは……

 アントキバから北へまっすぐ山道を進むと、途中で山賊達と出くわすんだ」

 

 その説明を聞いて、私は『ん?』と思う。山賊?

 

「山賊ねぇ……

 そいつらと戦って、勝ったら手に入るの?」

「いや、ぜんぜん戦わない。そこまで単純なイベントでもないよ。

 襲ってくるかと思いきや、いきなり『助けて下さい!!』って土下座してくる」

「へぇ。

 ……ぜんぜん山賊っぽくないわね」

「まぁな。

 で、その山賊達に付いていくと村があって、小屋の中で子供が熱で寝込んでるんだ」

「なんだか雲行きが怪しくなってきたわね……

 それのどこが山賊なのよ」

「あの……」

「ん。なに、アイシャ?」

「さっきからウラヌスが言ってる山賊って、物乞いさん達のことですよね?」

「も、物乞い?

 ……あ、なるほど。言われてみりゃ物乞いか。

 アイシャ、前回の時に聞かなかったの? あいつらが山賊だって」

「え、えっと……

 そういえば山賊業がどうのと言ってたような」

「あーもしもし、ちょっとゴメン。

 もし助けを求める山賊達を無視したら、どうなるの?」

 

 メレオロンの質問に、ウラヌスは頬をかきながら、

 

「どうもならないよ。

 土下座したまま襲ってこないから、そのまま無視できる。

 微妙に良心は痛むけどね」

「あの土下座、見事ですよね……

 アレって、普通はみんな無視してるんですかね?」

 

 私が尋ねると、ウラヌスは「んー」という顔で、

 

「とりあえず付いてく人は多いんじゃないかなー……。何も渡さずに終わる人が大半だと思う。最初に有り金ぜんぶ要求されるし。

 いちおう俺は確認の為に、一度無視したんだよ。

 すぐ同じ場所に戻ってみたら、また山賊達が襲ってくる、と見せかけて土下座した」

「あー……」

 

 シュールだなー。土下座ループ。

 

「で、小屋の続きな。

 子供の熱がー風土病がーって話をされた後、色々要求されるんだよ。必要だとか言って。とりあえずバインダーのカードを全部要求されるんだけど……

 カードだけじゃなく、身の回りのモンっつうか多分アレはアイテムとして認識されてるんだろうけど、最終的に全部よこせって言ってくる。

 んで全部渡しても、別に何もくれない。ゲームのヒントもくれない」

 

 そこまで聞いたメレオロンは、途端に不機嫌な顔になる。

 

「なにそれ、ひどくない?

 助けを求めておいて、人の良心に付けこんでくるわけ?」

「……まぁヒドイとは思うけど、ゲームのイベントだからどうせ見返りあるだろうって、こっちの下心を見透かしてるとも言えるしな。

 身包み剥がされるって意味では、確かに連中は山賊だよ。はぁ……」

「ホントに身包み剥がされちゃいますよね……」

 

 私達がしみじみ嘆息していると、

 

「たとえば、何も持たずに山賊達と遭ったらどうなるんですか?」

 

 シームが尋ねてくる。回答をためらうウラヌス。

 

「その……

 試してはいない。……奪われるものに、上着が含まれてるし」

 

 メレオロンが目を見開く。

 私はさりげに視線を逸らす。

 シームは、きょとんとした顔で、

 

「へ? 上着なんて渡したら、ウラヌスすっぽんぽんになっちゃうじゃん」

 

 しーん。

 

 青ざめた顔のウラヌスが、私の方を見た。逸らしたまま、視線を泳がせる私。

 

 やっぱりそうか……。ワンピースしか着てなかったか、ウラヌス……

 

「……おい誰だ、喋ったの」

「て、てへぺろー」

 

 メレオロンの声が聞こえる。

 

「おまえ殺すぞ。……いやもういっそ俺を殺せ」

「お、落ち着いて落ち着いて……」

「いいから今すぐ俺を殺してくださいお願いしますぅぅぅわぁぁぁぁぁーん」

 

 ヘナヘナとしゃがみこんで、顔を覆い隠すウラヌス。

 メレオロンがおろおろしながら、

 

「ア、アイシャも何か言ってあげて、ほら」

 

 ……えぇぇ。私に振るの? なに言えばいいの?

 私が何にも思いつかず困ってると、

 

「ウラヌスって、野球拳したら一発アウトだよね」

 

 シームが一撃する。ひどっ!

 てか野球拳とか、何でそんないかがわしい遊びを知ってるんだ! メレオロンかッ!?

 いきなりウラヌスが立ち上がり、

 

「シームッ!! ほら見てみろ!

 オレ靴下はいてるだろ! 一発アウトじゃないからなッ!!」

 

 あ、錯乱してはる。これはヤバイ。

 

「ひゅー。まっぱ靴下とか、ちょーまにあっくー」

 

「ふぎゃああああああッッッ!!」

 

 ……昨日お風呂場で大体どういう展開だったか、もう分かっちゃった。うん。

 

 この姉弟を同時に敵に回しちゃダメだな……手に負えない。

 

 

 

「──で、山賊に一度全部渡した後に、聖騎士の首飾りを持って山賊のところへ行くと、山賊達がみんなカードに変身するんです。

 山賊のカードに触れると、首飾りの効果で山賊達の病気が治り、お礼として奇運アレキサンドライトが貰えるんですよ」

 

 ひとまずウラヌスが立ち直るまでの繋ぎで、私が後の手順を説明する。

 うん。彼をフォローする言葉なんて思いつかないから、こっちの方が楽なのさ。

 

「……ありがと、アイシャ。

 その……ウラヌスも」

 

 メレオロンが殊勝に礼を言うけど、ウラヌスはしゃがみこんでぷるぷるしてはるだけで、聞いてるかどうか。

 そんなに、私に知られてたのがショックだったのか……いや、うん。分からなくはないけど。

 

 やがてふらふらと、立ち上がってくるウラヌス。

 

「……うん。もう行こう。

 さっき何か話してた気がするけど、オレ忘れた」

 

 ふらふらと歩き始めるウラヌス。

 

 ……現実逃避でなんとかなるならいいけど、大丈夫だろうか。後、微妙に北からズレて歩いてる気がするんだけど、イマイチ大丈夫な気がしないな。

 

 ていうかウラヌス、あの山賊イベントで全部渡すの一度やったみたいだから……身包み剥がされた状態になったってことだよね。

 その時も今のワンピース着てて、穿いてなかったんだとしたら……服を入手するまでの間って。

 

「……アイシャ、何か変なこと考えてない?」

「へ?

 いや、何も考えてないですよ?」

「……そう。

 ……。

 …………

 アントキバまで戻って、トレードショップで金下ろして、着替えを買っただけだよ。

 全・速・力・で」

「あ、アハハそうですかー。

 私の時は仲間のところまで急いで走っていって、すぐ着替えを貰いましたー」

「……

 お互い大変だったね」

「そ、そうですねー」

 

 私の時は、着てる服に関しては運動着の上だけで済んでるから比較にならないんだけど、そこに言及すると傷つけそうだしな。やーホントひどいイベントだった。今回どうなってんだろ……

 

 

 

 ようやく説明らしい説明もなくなったので、移動速度を上げる私達。と言っても、私はいま身体能力をオーラで強化できないから、せいぜい早歩き程度だけど。

 

 それでも──

 

 平原の遠くに、街並みが見えてきた。

 はー。目的地が見えてくると、余計にお腹が空いてきたよ。少し陽も高くなってきたな。

 

「──気をつけて。

 街の方から、まっすぐこちらに近づいてきてる。手練れが3人」

 

 ウラヌスが警戒を促す。後ろから付いてきてる2人が、ピリッと警戒した空気を出す。

 ……本当は警戒してる気配なんて出すべきじゃないんだけど、その辺りもまた教えないとな。口で言って出来るほど簡単じゃないし。

 その点、ウラヌスは問題なかった。自然体で歩き、警戒を促した時も視線一つ動かしてない。私も視線を動かさず、視界の端で人影を捉えようとする。

 

 

 

 ……な、に?

 

 

 

 ────ちょっと待て、なんでアイツラがここにッ!? そんなバカなッ!?

 

 一瞬で全身の血の気が引く。その反応を感じとったのか、ウラヌスが私の方をちらりと見る。

 

「……アイシャ。

 俺、あいつら見覚えあるんだけど」

 

「……

 そうですか。……私もです」

 

 なぜ? どうしてこんなところに──……彼らが。

 

 疑問だけが、頭の中を渦巻く。

 動揺を出さないよう努めていたが、ウラヌスの溜め息に集中が乱された。

 

 彼の声にも、緊張が混じる。

 

 

 

「……見間違いなら良かったんだけど。

 

 アイシャも気づいたんなら、それはないわな……

 

 

 

 アレは──……幻影旅団だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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