どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第二百八十四章

 

「──はにゃ?」

 

 意識を取り戻した桜が最初に見たのは、とても見慣れた天井だった。まぁオータニアの旅館なのだが。つまるところ、いつも寝泊まりしている部屋である。

 

 布団に横たわったまま周りへと目を向けると、「ん……」と声を洩らし、ゆっくり目を開けるアイシャの寝姿。

 

「アイシャ……」

「桜……疲れは取れましたか?」

「あー、えっと。

 ……流石に全快には程遠いかな。動けはするけど。

 アイシャは大丈夫?」

「あれからそんなに時間は経ってないですし、オーラの回復はまだまだ不十分ですね」

 

 布団から半身を起こす桜。同じく身を起こしたアイシャに対し、少し言い淀んだ後、

 

「その……

 胸の傷は、大丈夫?」

「ええ。簡易治療はしていますし、後は自力で回復できると思います。

 動くと分かりませんが、じっとしてる分には、痛みもほとんどありませんよ」

「結構深く刺しちゃったはずだけど……

 もし傷が残ったら、ゴメンね?」

 

 心底気に病む様子の桜に、アイシャは穏やかに微笑んでみせ、

 

「気にしすぎですよ、桜は。

 傷が残っても、あなたに勝った名誉の負傷ということにしておきます」

「あぁー……!

 そうだった、負けたんだったぁ。はぅー……」

 

 ぐったりと桜が項垂れたところへ、2人の起きた気配を察したのか、隣の部屋から数人近づいてくる気配。戸が開いて、

 

「やっぱり起きたみたいね。具合はどう?」

「桜、大丈夫……?」

「元気なさそうだけど、もうちょっと寝た方がいいんじゃない?」

「つーか、なんでそんな項垂れてるんだ?」

 

 次々入ってくるメレオロン、シーム、更にゴンとキルアも居た。

 

「んんー……

 負けちゃったのを思い出してショック受けてる……」

 

 力のない桜の返事に、心底意味が分からなさそうに首を傾げるキルア。

 

「はぁ?

 オマエ、結構ナメプしてたみたいだから、負けても仕方ねーだろ?」

「ナメプなんかしてないもんッ!!

 ちゃんと勝つつもりだった! ……ぅー……」

「ちょっ……泣くなよ、おい……そもそも自分でナメプがどうの言ってたじゃ……

 ま、待てオマエラ! オレが泣かしたみたいなツラで見てくんじゃねーよ!」

「キルア……

 女の子にはもうちょっと気を使ってあげないと」

「おま、ゴン! フォローもせずに追い詰めてくんな!」

 

 怪訝な表情を作っていたアイシャが我慢できずに吹き出し、釣られてキルア以外が笑い出した。桜も目元を拭いながら笑っている。

 

「テメエラーッ!」

 

 

 

 

 

 怒るキルアは捨ておき、あの戦いの後、みんながどうなったかを桜に話し始める面々。

 

 ──戦いを終えた直後も意識を保っていたアイシャ。良からぬ顔をしていたレオリオを張り倒して医療品を強奪したリィーナとビスケから胸を含む傷の治療を受けつつ、今後について相談した。

 

 ひとまず攻略状況を伝えないことには始まらないので、現時点で98種まで指定ポケットカードを集めたこと、一坪の密林入手条件を探っている途中であることを話すアイシャ。

 

 協力者が他にもいること、他プレイヤーはまだそこまでカードが集まっていないこと、リィーナの能力ではカードを守れなくなったこと、ゲームから出た後にやるべきことなど……

 

 諸々を伝えてリィーナ達と相談し、やはり大人数で固まり続けるのは目立ちすぎるので良くないと判断して、いったんゲーム内には留まるものの別行動を採ることになった。

 

 リィーナ達は短期間であれば留まれるので協力できることが見つかるまで待機、ゴンとキルアだけアイシャ達に直接協力する形になった。

 

 詳細な方針まで詰めていくのを桜が起きる前にするわけにもいかないので、アイシャもオーラの回復と傷の自己治癒を促す為に一眠りし、今に至る。

 

 

 

 

 

「つーか、ゴンはまだ分かるけど、なんでオレまで……」

 

 相談後にすぐ寝てしまったアイシャから詳しい話を聞かされておらず、後ろ頭を掻いて首を捻るキルア。

 

「あー、アレだよ。

 一坪の密林の入手条件に年齢が関係あるかもしれないから、手伝ってほしくて。

 そのつもりだよね、アイシャ?」

「ええ、その通りです。

 リィーナ達の中で条件を満たせそうなのは2人だけでしたから、せっかくなら協力してもらおうと思って」

「うん? オレとゴンだけってことか?

 どういう条件だよ?」

「まー、まだ探ってるところだから推測だけどね……」

 

 一坪の密林のイベント発生条件が、一定の年齢未満のプレイヤーが複数人参加することじゃないか、と予想していることを伝える桜。

 

「うわ、マジかよ!

 エグいなんてもんじゃねーだろ、その条件……」

「でも似たような一坪の海岸線も結構ヒドかったでしょ?

 同じくらい誰も取れてなかったカードだし、ゴンじゃないとまず条件を見つけられないようにとか、そういうつもりだったんじゃないかな。あのジンならやりかねないもん」

「ゴン……

 オマエの親父、メチャクチャすぎるぜ」

「ちょっと待ってよ、キルア!

 ……桜、それってホントなの?」

「まだ確証はないけど……

 でもレイザーにヒントをねだったら、意味ありげに今の私は挑戦できる可能性がある、みたいなこと言ってたし……その時の私はもう若返ってたから、たぶん年齢かなって。

 私が実際そうだけど、魔女の若返り薬を使えば誰でも条件は満たせるから、不可能ってほどじゃないし。ランクSSを取るのにランクSのアイテムが必要なんて、いかにもだから。

 まぁレイザーは、ジンのことをイカれてるとかボヤいてたけどね」

「さくらぁ……

 確かにオレもレイザーからそう聞いたし、ジンは普通じゃないけどさぁ」

 

 抗議しながらも渋々認めるゴン。桜は笑いながら宥めた後、

 

「他の人に若返り薬を使って協力してもらう予定だったけど、15歳未満が5人揃ったから、年齢が条件ならもう満たせそうかなって」

「5人って……

 アイシャはもう15歳だっけ?」

「いいえ。もうじきですけど、まだ14歳です」

「じゃあ6人だろ?

 もし条件が14歳未満だったら5人だけど」

 

 そう指摘するキルアに、桜は難しい顔をして腕を組み、

 

「もちろん確定じゃないんだけど……

 多分一坪の海岸線みたいに、『同行』で一緒に飛んでいかないと判定されないと思う。

 だとしたら、アイシャはね……」

「あー、そっか。

 確かに海岸線の時も、アイシャだけ勝負に参加できなかったもんな。

 そうすると、アイシャ抜きでレイザー級の相手と戦う可能性があるのか……」

「アイシャもイベント自体は参加しようと思えば出来るかもだけど、どうする?」

「そうですね……

 ドッジボールも今回は参加できましたから、おそらく密林のイベントも参加はできるでしょうけど……」

「あー、ちょっと待って。

 すぐ行くとして、アイシャはまだ胸の傷が癒えてないでしょ?

 悪化するといけないから、やめた方がいいかも」

「すぐに行くつもりなら、私は遠慮しておこうと思います。

 けどホントにすぐ行くんですか?」

「少なくとも条件を探るのは後回しにしたくないかな。予定が立てられないし。

 そうだね……まだ私のオーラは2割も回復してないけど、4割あれば充分だと思うから、今日中には行けるかも」

「オマエ……

 あんなバトルをした後で、同じ日にランクSS取りに行くつもりかよ……」

 

 本気で呆れた様子のキルアに、桜は肩をすくめる。

 

「変に長引かせてプレイヤー同士の泥仕合になるのは避けたいし、しっかり休養するのは島から出た後でいいよ。

 これだけたくさん仲間がいると、私もみんなを守り切れないしさ」

「仮にオマエが動けなくても、オレ達はここのプレイヤーなんかに負けやしねーよ。

 あんまり甘く見んな」

「そっか……それなら頼りにしとく」

「もちろん油断は禁物ですが、戦力的には充分すぎますからね。

 各自防衛の意識はしっかり持ってもらいながら、早期のクリアを目指しましょう」

「オッケィ♪」

 

 アイシャの言葉に小さな親指を立てて応える桜。他の4人も深く頷いた。

 

 

 

 

 

 まだ昼の4時くらいなので、回復の為にもう一眠りするアイシャ達。就寝中にユリから交信があり、状況に進展があったから次の行動方針が決まるまでユリとジェイトサリ達は待機するよう伝える桜。

 

 外が暗くなってからようやく起きてきて、料亭で遅めの夕食を摂りながら、6人で情報交換と攻略の相談を進める。

 

 ハガクシ組が既に脱落したこと、ハメ組が3日前の時点で30種、他の有力チームも多分同程度、現状自分達の独走状態で、のんびりしているとバレるかもしれないこと。

 

 モタリケ夫妻についても話すと、モタリケのことを覚えていたらしく、ゴンとキルアが驚いた反応を返す。

 

「あいつ、バインダーの小細工にあっさり引っかかったし、オレのカードーとか連呼して喚いてるしで、どうしようもないアマチュアのおっさんな印象しかなかったんだけどな」

「まぁどうしようもないおっさんなのは否定しないけど、あれは嫁の為に稼ごうとしての蛮行だから、許してあげてね?」

「別に気にしてないさ。

 あいつにカードを盗られたわけでもないしな」

「モタリケさん達も外へ出してあげるんだよね?」

「その予定。クリアする前後で、港から出ないといけないプレイヤーが結構いてバタバタするかも。

 所長って倒すとその日のうちは同じプレイヤーの前に現れないから、通行チケット集めとかで人手不足になりそうだし、手伝ってくれると嬉しいかな」

「うん、分かった」

「所長を倒すくらい、大した手間じゃないしな。別にいいぜ」

 

 クリア時の協力に関してゴンとキルアは快く了承し、今度はゲーム攻略についても話す。

 

「けどリィーナさんの能力で、カードを守れなくなったのは痛いよな。

 他のプレイヤーが結託して一斉に襲ってきたら、流石に面倒だろ」

「今のハメ組は人数も少ないし、スパイを送り込んで動きを抑制してるからそこまで警戒してないけど、他の上位有力チームが結託して乱戦になったら、確かに面倒かもね」

「ゲンスルーさんに相談してみない?」

 

 ゴンがそう提案し、桜は不思議そうな顔、キルアは斜め上を見上げて考える。

 

「ゲンスルーか……

 あいつハメ組のリーダー格だったし、カード防衛のアイデアは持ってるかもな。

 でも、すんなり協力してくれるとは限らないぜ? 繰り返しゲームクリアするのに挑戦しないかって話を持ち掛けた時も、かなり非協力的だったしさ」

「積極的には協力してくれないかもね。

 ただまぁ私に負けた引け目もあるだろうし、渋々相談には乗ってくれそうだけど」

「……そりゃ相談を持ち掛けるくらいは構わないと思うけどな」

 

 というわけで、ゲンスルー1人が料亭に呼び出される。

 

「……いったいなんなんだ。

 オレだけ呼びつけて、わざわざ相談するようなことがあるのか」

「まぁまぁ、まずは座って。

 なんだか、お疲れだね?」

「さっきまで先生にシゴかれてたからな……

 今日くらい休ませてほしかったんだが」

「アハハ、ホントにお疲れ。

 ヘロヘロだけど、食事は済ませてる?」

「いいや。

 ついさっき修行のノルマを片付けたところだったんでな……」

「だったら好きに注文していいよ。奢ってあげる」

「……ありがた迷惑だ。

 先生とサブバラに、食事は待ってもらうように伝えてる。

 食事中も修行の一部だから、オレからそう伝えるのは体裁が悪い」

「それじゃ、私からリィーナに伝えるよ。

 ちょっと待ってて」

 

 わざわざ食事の許可を取る為に『交信』を1枚使い、ゲンスルーを呆れさせる桜。

 

「聞いてた通り、オッケーだって。

 こういうところで食べたことある? オススメ教えよっか」

「いらねーよ。和食ぐらい何度も食ってる。

 オレが何年この島に居たと思ってるんだ?」

「おー、ベテラン発言。これは期待しちゃおっかな。

 それじゃ好きに頼んで♪」

 

 不機嫌そうにしながらも、メニューに目を通して遠慮なくガッツリ頼むゲンスルー。

 

 

 

「で、何の相談だ?」

 

 ゲンスルーが食事を終えるのを待ち、桜は自分達と周りの攻略状況について説明して、指定ポケットカードを守れる良さげなアイデアがないかを尋ねる。

 

「前にやった作戦じゃダメなのか。

 収集状況隠しも兼ねて、肝心要なカード数枚に『擬態』を使って『聖水』に変身させておく──」

「んー……

 それなんだけど、変身元のカードが限度枚数に達したら戻せなくなっちゃうしさ。

 あと前の時も、ハガクシとトクハロネに何でか交渉断られたんでしょ?

 それって、作戦を見透かされてた可能性があるかも。

 ハガクシはもういないけど、トクハロネはまだいるし」

「今いる連中だと、確かにトクハロネ組は警戒に値するだろうな。

 残ってるハメ組どもの中にもカラクリに気づいたヤツがいるかもしれねぇし、そういう意味じゃ同じ手を(こす)るのはリスクが高いか……」

「かもね。他にアイデアある?」

「……そう簡単には出てこねーな。

 食事代くらいの役には立ってやりたいが……」

「気になってたんだけどさ。

 ハメ組にいた時、『堅牢』ってどうしてた?」

 

 桜の質問に、ピクンと眉を上げるゲンスルー。

 

「……どうしてた、とはどういう意味だ?」

「当然知ってると思うけど、他のスペルに比べて『堅牢』ってスッゴイ出にくいじゃん?

 スペル掻き集めてたハメ組もそこは苦労してたと思うけど、独占とかしてたのかなって。

 全然引けなかったんだよね、アイシャ?」

「ええ。私達もかなりスペルを買いましたが、前回は全くでした」

「……オレがハメ組にいた時は、パックから1枚しか引けてなかったはずだ。

 抜けた後までは知らないがな」

「指定ポケットは『堅牢』で守ってた?

 1枚あれば、『擬態』で増やして出来たと思うけど」

「……」

 

 やけに探るような質問をする桜に、沈黙するゲンスルー。流石に風向きが怪しいことにゴンとキルアも気づく。

 

「アイシャ、どう思う?」

「……ゲンスルーさん、何か隠していませんか?」

 

 しばらく黙り込んだ後、「はぁー……」と諦めたように息を吐くゲンスルー。

 

「……オレの指定ポケットは、『堅牢』で全てガード済みだ」

「あー」

 

 非難めいた声を出すアイシャ。バツが悪そうにゲンスルーは顔を背け、

 

「……聞かれなかったからな。先生の能力があれば不要だっただろ」

「それはそうですけど……」

「まぁ自分がカードを守らされるのがイヤだったのはあるんだろうけど、理由はそれだけじゃないよね」

 

 面白そうな表情で窺う桜に、意味ありげな目を向けるゲンスルー。

 

「一見完璧な『堅牢』の効果でも守れないカードがあるもんね?」

「……よく気づいたな。

 No.000『支配者の祝福』は『堅牢』で守れるページには入れられない。

 万が一のことを考えれば、先生に任せておいて正解だったんだよ」

「じゃあ今回は、頼れなくなったリィーナの代わりに預かってくれるんですか?」

「……」

 

 アイシャの詰問に、露骨に嫌そうな顔をするゲンスルー。宥めるように桜が手を振り、

 

「まーまー。今回はハメ組も人海戦術できるほど人もカードもないだろうし、よほど無茶してこなきゃ普通に守り切れるよ。

 そもそも前回の『堅牢』の効果がまだ残ってるかも怪しいし。

 いちおう確認だけど、前のセーブデータで入ってる?」

「……いちおうな。『堅牢』がまだ効いてるかは、試してないから分からないが」

「ゲンスルーは相談だけって話で来てもらってるし、そこまでしなくて大丈夫だよ。

 相談にはもうちょっと付き合ってね?」

「それなら構わないが……

 先生のことだから、修行のノルマそのままで協力を強制されそうだからな。

 そこまでキツイのはゴメンだ」

「大変だねー」

「ちっ」

 

 気のない桜の労いに、ゲンスルーは舌打ちして茶を口にする。

 

 

 

 結局この場で良いアイデアは出ず、クリアを出来るだけ急いで、それでも長期化しそうならカード防衛について本腰を入れて考えよう、ということで落ち着いた。

 

 食事を終えて体力も幾分回復したので、桜達は一坪の密林の条件を調べに、チャンタへ飛んだ。

 

 ……オータニアにアイシャを残して。なぜかゲンスルーも飛んでいったが、年齢条件を満たさないプレイヤーが含まれていてもOKか精査したいからとのこと。当然アイシャは協力しようがないので留守番と相成った。トボトボ1人で旅館へ帰る。

 

 しばらくして、旅館でぼんやり待っていたアイシャの元に6人が戻ってきた。

 

 一坪の密林のイベントは、無事に発生させられたらしい。やはり一定年齢未満を複数人含むメンバーで、『同行』を使ってチャンタへ飛ぶことが条件だったようだ。

 精査したところ、14歳未満のプレイヤーが4人以上いれば条件を達成できることを確認、14歳以上のプレイヤーが『同行』のメンバーに含まれていても挑戦できるようだ。

 

 話を聞き終えたアイシャは、旅館の一室で一息吐きながら、

 

「分かってしまえば、そこまで無茶な条件ではないですね」

「だね。14歳以上のプレイヤーもイベント自体には参加できるから、14歳未満は数合わせでもいいわけだし。もしかしたら15歳未満でもOKかもだけど。

 まぁでもヒントすら知らなかったら厳しすぎるか」

「今まで誰も見つけられなかったのも納得ですね……

 肝心のイベント内容はどんな感じでした?」

「例の長老に、密林のある場所へ行けって言われるんだけど、そこで森の守護者と戦ってこい、だって。

 ほぼ確実にGMとの勝負かな」

「なるほど……

 条件は分かったわけですが、これからどうします?」

「本当はさっさと挑戦したかったけど、ゲンスルーにストップされちゃった」

「当たり前だ。99種集まったら、一気に状況が煮詰まる。

 取り返しのつかない見落としがないか、ゲームクリアまでの作戦会議を事前に済ませてから挑戦すべきだ」

「ヘタすると、その作戦会議の方が一坪の密林を取るより大変かも……

 まぁでも、ゲンスルーの言う通りだと思う」

「私もその意見には賛成です。

 No.000以外のランクSSが既に入手済みの状況になれば、誰かがクリアする寸前だと察するプレイヤーも増えるでしょうから」

「マメに情報収集をするやつが『神眼』を使っていれば、すぐ気づくからな。

 どうする? 一度全員集まるか?」

「あー……

 ちょっと全員は多すぎるし、一ヵ所に集まるのは危ないかも。

 各チームのリーダークラスが集まって相談、その結果をそれぞれのチームに戻って共有してもらう感じにしようかな」

「それはいいが、人選は慎重にしろよ?

 後で揉められちゃ面倒だ」

 

 ゲンスルーの言葉に、腕を組んで思考を巡らせる桜。

 

「オレは外していいけど、ゴンは混ぜてやってくれ。

 前回のクリアプレイヤーだしな」

「キルア……」

「うん、ゴンには参加してもらおうかな。

 私とアイシャとゴン、できればゲンスルーもいてほしい」

「仕方ねぇな。付き合ってやるよ」

「リィーナ、お姉ちゃん、ジェイトサリ、後は……」

「モタリケ夫婦はどうするの?」

 

 メレオロンの質問に、何とも言えない顔をする桜。

 

「モタリケはちょっとなぁ……どっちかと言えばベルの方が良さそう。

 後はネオンさん達もだけど……話を通しやすいセンリツに声かけようかな。

 こっちから連絡するのはマズイからプーハットは無理として……それぐらいかなぁ」

「そうすると9人か。それでも多いな」

「全員だと大変なことになるからね。後々を考えると、これ以上は削れないかも」

「相談する場所によっては私が動きづらいんで、外れようかと思いますが」

「ああ、まぁ、それはね。

 どこで相談しようかな……」

「ここでいいだろ。すぐ集まれるし、ヘタに大勢動く方が却って目立つ」

「うーん……確かにここならあんまり目立たないけど……

 入ると宿泊費取られるし、拠点がバレるかもだけど、もうクリア寸前だし別にいっか。

 じゃあ連絡してこようかな」

 

 部屋を出ようと立ち上がった桜に、メレオロンが待ったをかける。

 

「アタシ達はどうするの? 相談に参加した方がいい?」

「んー……

 意見があったら出してほしいけど、その場で一緒に聞いてもらうだけでもいいかな。

 わざわざ後で説明し直すのも時間がもったいないし」

「分かったわ」

「ボクも分かった」

「オレは?」

「ここで相談するからキルアも混ざっていいよ。キルアの分の宿泊費は払ってあるから、別に損しないし。

 そんじゃ『交信』で招集かけるから、少し待っててね。

 ついでに相談中のオツマミとか買い足してくる」

 

 廊下に出て歩いていく桜の後ろを、キルアが追ってきた。

 

「ん? なに?」

「アイシャに、足りなくなるかもしれないからお前に『交信』を渡してくれって頼まれた。

 それとは別に、ちょっとお前に聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

「やけに(した)(げ )だったけど、お前とゲンスルーって仲よかったのか?」

「うーん……?

 別にそんなことないと思うけどにゃー。

 今回のドタバタはアレだけど、前に少し交渉したことがあるくらいだし」

「ゲンスルーのやつ、あんなに協力的だから気になってさ。

 オレ達と一緒にいた時、元々連れのサブとバラ以外とは険悪だったからな。まぁゴンに対してはちょっとマシだったけど」

「……グリードアイランドに関することで、攻略の話をガッツリ出来る仲間がサブとバラ以外に居なかったのかも。

 ハメ組の元仲間のことも煙たがってたみたいだし」

「オレもゲーマーだから分かるけど、お前ってこのゲームのこと、すっげぇ詳しいよな。

 もし前の時に一緒にプレイできてたら面白かったかもなって思ったよ」

「あー、そうかも。

 ゴンとキルアとも友達になって、一緒に楽しんでたかもね。

 前回会えなかったのは残念だにゃー」

 

 素直にそう告げる桜から、キルアは少し目を逸らし、

 

「……ところで、ツマミって何があるんだ?」

「あ。もしかして、それがお目当て?

 オヤツが欲しいってこと?」

「そりゃーまぁー……」

「ぷぷっ。

 キルアってば、お子ちゃまなんだからー♪」

「おい、子供扱いすんなよ。お前だってガキじゃねーか」

「私は若返ってるだけだもーん。

 ここの売店は色々売ってるけど、どういうオヤツが好き?」

「んー。

 チョコロボ君があれば最高だけど、似たような菓子でもいいかな」

「あぁー、残念ながらチョコロボ君はここにはないかなぁ。

 売ってる場所はあるみたいだけど」

「え? マジ?」

「一度『宝籤』でチョコロボ君のカード引いたし、多分どっかで売ってるんだと思う。

 まぁそういう系統のお菓子はここにもあるし、お子ちゃまにもご満足いただけるかと」

「だから子供扱いすんじゃねぇよ!」

「だって子供じゃん」

「オマエに言われたくねーんだよ!」

「あーもー」

 

 怒るキルアに、桜は笑いながら売店へと仲良く歩いていった。

 

 

 

 ──旅館の一室に、アイシャ・桜・メレオロン・シーム・ゴン・キルア・ゲンスルーに加え、リィーナ・ユリ・ジェイトサリ・センリツ・ベルも集まった。

 

 合わせて12名(つど)った顔触れを見回し、感慨深げにジェイトサリは鬚を擦る。

 

「クリア寸前だからというのもあるだろうが、改めて見ると錚々(そうそう)たるメンバーだな……

 以前合同で挑んだ海岸線の時以上か」

「戦力的にはそうだね。あの時のメンバーで今いない実力者はヒソカくらいかな」

「えぇっ!?」

「はぁっ!? ヒソカッ!?」

 

 ゴンとキルアが声を上げるが、桜は軽く手で制止し、

 

「その話は後でするよ。アイシャから事情は聞いたし、慌てるようなことはないから」

「桜……彼らの件はどうします?」

「旅団のこと?

 んー……

 いちおう警戒すべきだし、この場で共有した方がいいかな」

「旅団とはまさか……」

「遂に捕らえられたとは聞いたが、まさか彼らが?」

 

 リィーナとジェイトサリが反応し、アイシャは頷き返す。

 

「幻影旅団を少なくとも3人目撃していますが、念は封じられていますので、今のところ脅威はありません。

 ですが、この島の中にいることだけは覚えておいてください」

「特別何かする必要はないよ。ここにいる事情はイマイチ分かんなかったけど。

 機会があれば、もう少し情報は集めておきたいかな」

「私がGM達と話す機会がありそうなので、彼らのことも聞いておきましょうか」

「うん、覚えてたら聞いといてほしいかな」

「お前らが何気なく話してる内容が、あまりにも異常すぎて恐ろしいんだが……」

 

 表情を強張らせているゲンスルーに、桜は苦笑してみせ、

 

「色々あるんだよ。プロハンターだからね」

「今更驚くようなことなんて何もないと思ってたが、まだまだオレも認識が甘いな……」

「あなた達は付いてこれてる?」

「ううん」

「とっくに理解なんて諦めてるわよ」

 

 相談の輪から離れているベルが、シームとメレオロンの達観した返答を聞いて一息吐く。部屋の隅にいるセンリツが、分かる分かるといった感じで頷いている。

 

「桜……

 早く攻略の話を始めないと、いつまで経っても終わらないわよ?

 あんまり長引いて、私がここに留まり続けるのも良くないでしょ?」

「あー、うん。まずはその話からかな。

 お姉ちゃん、現状を説明してくれる?」

「もー、しょうがないわねー……

 こほん。

 先ほど軽く自己紹介しましたが、改めて。私はウラヌスの姉のユリです。

 この子からの依頼で、私のバインダーにはランキングで目立つのを覚悟で指定ポケットカードを50種類集めていて、そのうちランクSは全体の2/3に当たる14種類──」

 

 

 

 ──桜達のリーダー会議は、一坪の密林を入手した後のクイズ、コンプして島から出るまでの防衛、更にはクリア後に関することまで及んだ。

 

 メレオロンとシーム、パリストン、モタリケ夫婦、他プレイヤー、クリア後のソフトの管理──流石に話がふくらんで長引きすぎたので、他プレイヤーから強襲される可能性を警戒してユリは途中退席、後からジェイトサリに情報共有してもらうことに。

 

 話し合いが終わる頃には、もうすっかり夜中になっていた。

 

 桜は「疲れたぁー」とばかりに伸びをしながら、

 

「さーて。

 次の日になる前に密林取ってこよっかな」

『はぁッ!?』

 

 その場の数人がその発言に驚く。アイシャ辺りは「あー……、やっぱり」といった反応だったが。

 

「そう言い出すんじゃないかと思いました。

 ユリさんにこれ以上負担かけたくないですもんね?」

「まあね……

 お姉ちゃん、あんまり文句言わないけど、今すっごいプレッシャーだと思うから。

 とっくに貸しは充分返してもらって、もう借りを作りすぎちゃってるぐらいだし……

 私だって後ちょっとでクリアできるっていう昂揚感より、失敗しないか不安な気持ちの方が大きくなってきたもん」

「そうだな……私も緊張してきたよ。

 その点、一度クリアを経験したメンバーは流石だな。肝が据わっている」

 

 ジェイトサリが、リィーナやアイシャ、ゲンスルー、ゴンとキルアを眺めて頷く。

 

「クリアの見返りがないからってのもあるがな。

 今は大した懸賞金も掛かっていないようだし、正直張り合いがない──」

「ゲンスルーさん」

「おおっと!?

 先生、別に見返り欲しさにそう言ったわけでは……!

 不満なんてありません、はいッ!!」

「どんだけビビってんの」

 

 桜のツッコミに、場がドッと笑いで湧く。赤っ恥をかいて俯くゲンスルー。

 

「まぁとにかく、他のプレイヤーが邪魔してこないうちに急いで密林は確保しちゃうから。

 メレオロンと……ゴン、キルア。手伝ってくれる?」

「うん!」

「やっぱりな。別にいいけど」

「アタシだけでいいのよね?」

「うん。イベント内容が分からないし、シームは危ないからアイシャとお留守番してて。

 できるだけ速攻で済ませてくるから」

「ん、分かった……」

「無茶しないでくださいね。

 危ないと思ったら撤退も視野に入れてください」

「だいじょぶ、じょぶ。

 相手はGMだろうし、手加減はするから」

「えぇっと、まぁ、はい。それでいいです……」

 

 今ひとつ心配しているのが伝わらない桜に困惑しつつ、アイシャは諦めて息を吐く。

 

 桜はパンと手を叩き、

 

「それじゃ一旦解散で。みんな、情報共有お願いね。

 えっと、センリツなんだけど……」

「分かってるわ。仲間に伝えない方がいいことは、私の心の中に留めておくから。

 キメラアントやパリストンのことなんて聞かされても、反応に困るでしょうし」

「ごめんね、それでお願い」

「私も仲間に不要な情報は伝えないでおこう。君の姉には伝えるつもりだが」

「ありがと、ジェイトサリ」

「なに、お安い御用だ。君の方こそ気を付けて。朗報を待っている」

「うん」

「リィーナ。

 2人だけで話がしたいので、旅館の外で待っていてもらってもいいですか?」

「分かりました。アイシャさんが来るまでお待ちしています。

 ゲンスルーさんは先に戻ってください。分かっているとは思いますが──」

「他人はもちろん、サブとバラにも余計なことは言いません」

「それで結構です」

 

 部屋からリィーナとゲンスルー、ジェイトサリ、センリツが退出。

 

 ベルはちょっと困った様子で首を傾げ、

 

「基本的にモリーには黙ってた方がいいのよね?」

「モタリケが知ってても、あんまりいいことないかなって。

 ベルの判断でその都度、必要だと思った情報だけ教えてあげて」

「モリーがハンター協会のゴタゴタとか知っても仕方ないし、そうするしかないわよねー……りょーかい。

 あなた達もまだまだ大変だと思うけど、がんばってねー♪」

 

 手を振ってベルも退出する。

 

 アイシャは、ゴンとキルアに目を向け、

 

「2人とも分かっているとは思いますが、おそらく相手はレイザーと同等の実力者です。

 怪我が完治していないので大事を取って私は付いていきませんが、油断は禁物ですよ」

『オスッ!』

「桜のことは心配していませんが、メレオロンは充分注意してくださいね。

 状況を見て、能力を使うことも躊躇しないでください」

「はいはい、分かってますよっと」

「桜……」

 

 シームが不安げに呼びかけ、桜は小首を傾げる。

 

「アイシャも言ってるけど、私の心配なんかしなくて大丈夫だよ。

 GMの1人や2人、今更どうってことないから」

「その、そっちじゃなくて……

 まだみんなと話さなきゃいけなかったこと、あるんじゃないの?

 修行の話とか」

「あっ」

「カードを取りに行くなら、もうあんまり時間ないんじゃない?

 アイシャにフォローをお願いするって言ってたけど……」

「ああー。

 えっと、アイシャ……あの」

「はいはい、大体事情は分かっています。

 帰ってきてから、フォローしてほしいことがあるなら予め教えてください。

 流石に神字に関することや、当人と桜が相談しないといけない内容は、私にもフォローできませんが。

 その辺りはあなたからウラヌスに伝えるなり、調整してください」

「うんうん、とりあえずそれで充分。

 メモとかだと他に漏れたらマズイ話もあるから、口頭になっちゃうけど……」

「それは当然の配慮ですね。

 頑張って覚えますから、心配は無用です」

「ゴメンね。

 じゃあ、さっさと済ませてくる」

「私もリィーナと話があるので、少し外へ行きます。

 ちょっとの間、シームは部屋で待っていてください」

「うん」

 

 

 

 

 

「それじゃ行ってくるね」

「ええ、気を付けて」

「──『同行/アカンパニー』オン。チャンタ!」

 

 4人が夜空へ飛び去ったのを見送り、旅館の横手へ回るアイシャ。そこにあった僅かな気配が濃くなる。

 

「すいません、リィーナ。

 こんなところで待たせてしまって」

「いえ、先生。

 謝らずとも、お気になさるほどの時間でもありませんでしたので」

「……まずはしばらく消息を絶っていたことについて謝るべきですね。

 あなた達に相談もせず姿を消して、無用の心配をかけさせてしまい、本当にすいませんでした」

「先生、どうか謝らずに!

 ……私こそ事情も知らず、ここまでコトを大きくしてしまい、何とお詫び申し上げたらよいか……

 大変申し訳ございませんでした」

 

 深々と頭を下げるリィーナに、アイシャは少し悩んだ後、

 

「色々積もる話もありますが、また機会を改めましょう。

 急ぎで伝えておきたいことがあります」

「なんでしょう?」

「2点だけ。

 桜……ウラヌスのことですが、神字に関する依頼はしばらく控えてあげてください。

 おそらくここを出た後も多忙を極めるでしょうし、かつての力を取り戻したとは言え、昔のように表舞台へ立って活動するつもりがあるかは分かりません。

 争っていたお姉さんとは和解できましたが、故郷との確執もまだ未解決ですし、あまり目立つことは望んでいないと思います」

「忍びの里から抜け忍として追われている件ですね……

 私も以前本人から伺っていて、風間流で保護することも提案したのですが、私に迷惑はかけられないと言って断られました」

「ウラヌスらしいですね……

 事情が分かっているなら話は早いです。

 そういうことなので、できるだけ本人の希望は聞いてあげてください」

「先生がそう仰るなら、そのように取り計らいます。

 ……他にもお話が?」

「あと1点……

 この島の中で、マフィアンコミュニティーに所属するファミリーと接触しました」

「……っ!」

「察しの良いあなたならもう分かると思いますが、私がコーザ姓を名乗り始めたのもあり、少しずつですがコーザファミリーの関係者であることが広まっているようです。

 遠からずハンターサイトにも情報が載るでしょう。

 そうなれば、今後あなたと表立って接触しにくくなるかもしれません……」

「いえ!

 先生のご自宅には万が一を考えて伺いませんでしたが、仮にスキャンダルが──」

「リィーナ、落ち着きなさい」

「は、はい……」

「それが理由で私がアームストルの道場へ行かなくなったり、あなたと会うことも避けるようになったりするのがイヤだというのは分かりますから、せめて頭の片隅にそのことを留めておいてください。私の家を訪ねるかどうかの判断はあなたに任せますが、お互いの為に無用の噂が立つようなことは今まで通り避けてください。パリストンの件もありますから、冷静に行動するように。

 これまで以上に、私のことを先生呼びするのは気をつけてくださいね?」

「はい……」

 

 すっかり落ち込んだ様子のリィーナに、アイシャは軽く腕を組み、

 

「私からは以上です。

 リィーナから私に伝えたいことはありますか?」

「……その……

 ウラヌスさんとの戦いで、私の合気の精度が落ちていたことについてですが……」

「精度の落ちた理由が修行を怠けたとかそんな言い訳だったら聞きたくもありませんが、違いますよね?

 ──おそらく若返り薬を使った影響でしょう」

「……っ!

 先生、お気づきでしたか……!」

「私も経験済みですから。

 かつての合気の精度を取り戻すのに、ずいぶんと苦心したものです」

「ああ、確かに……!

 奇しくも先生と同じ経験を私もしているのですね……」

「若返ったことを隠していた件を責めるつもりはありません。それこそ、私が言えた義理ではありませんからね。

 肉体まで変わってしまった私ほどではないかもしれませんが、あなたの事情は分かっていますので、焦らずにしっかり修行して、これまで以上の合気を身に付けてください。

 より強くなったあなたと手合わせできる日を楽しみにしていますよ」

「はいっ……!」

「もう夜も遅いですし、あまり皆さんを待たせるのも悪いですから、そろそろ帰って相談した内容を共有してあげてください」

「承知いたしました。

 負傷のこともありますから、先生も明日に備えて、今晩はどうかご自愛ください」

「ええ。

 ……お休み、リィーナ」

「お休みなさいませ、先生」

 

 名残惜しそうな横顔を見せつつ、リィーナも夜空へと飛び去った。

 

 

 

 

 

 ────30分もしないうちに、桜達はチャンタから戻ってきた。妙な顔をして。

 

「どうしたんです? 忘れ物ですか?

 まさか、イベントが発生しなかったとか……」

 

 アイシャが尋ねると、桜は肩をすくめて、

 

「ううん。森の守護者はブッ飛ばした。

 むしろ居場所を探し出すのに時間かかっちゃった。戦闘は5分もかかんなかったよ?」

「…………」

 

 

 

 13年間、一坪の密林を守っていたGMは泣いていい。

 

 

 

 まぁいちおう手強そうな相手ではあったらしく、強力な念獣3体と守護者本人を同時に撃破しないと延々復活と回復を繰り返すという厄介な能力持ちで、そのギミックを見破るのが早かったので、あっさり倒せてしまったらしい。疲れが残っているので勝負を急いだのもあるが、流石に勝った本人達も拍子抜けだったようだ。

 

 守護者は倒したものの、海岸線の時と同じように入手イベントは朝方にならないと発生しないようなので、いったん帰ってきたらしい。色々やることがあるので、当然と言えば当然だろう。

 

 忘れないうちに、整形に必要なメレオロンの前世の顔形を(かおかたち )知る為、メレオロンの写真が入ったアルバムを、シームが失し物宅配便で注文する。

 

 桜が仲間へ助言するつもりの内容をアイシャに伝え、アイシャの方でも更に修正を加え、寝るまでに話をまとめる。

 

 少しでも肉体とオーラを万全に近づける為、アイシャ達はオータニアで就寝する。

 

 

 

 

 

 ──まだいる?──

 

 ──いるよ。少しでも休んだ方がいいと思うが──

 

 ──結局誰だか分かんないし、いつ居なくなるかも分かんないのに──

 

 ──忙しいんだろ? いつでも構わないから、ゆとりが出来たらじっくり話そう──

 

 ──だから誰なの? それも言えないの?──

 

 ──簡単に説明したところで、俺のことを理解できるとは到底思えない──

 

 ──なんかバカにしてない?──

 

 ──いや。理解が及ばないのが分かり切っているという意味だ──

 

 ──あっそ。じゃあ気長に待ってれば?──

 

 ──そうさせてもらおう──

 

 

 

 

 

 どこの誰かも分からない相手に対し、桜は呆れるように溜め息を吐いて、深い疲労感に逆らわず眠りへと就く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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