たーいむ、すりぃーっぷε≡c⌒っ.ω.)っ
全国数百万(ry
本編完了から久しくな方々は、大変お待たせいたしました。
本編最終章、グリードアイランドからアムリタ港へ戻った直後から再開いたします。
後日談一章
──港の潮風が優しく吹き抜けて、心穏やかに挨拶を交わした私達の髪を撫でていく。
目の前の微笑みを消してしまうのが
「お2人さん♪
感動の再会を祝して、ハグしちゃわないの? ハグハグ♪」
「何を言っとるんだ、お前は……」
にこやかに声をかけてきたベルさんに、顔も向けず肩を落とすウラヌス。
「せっかくいい雰囲気だったのに、水を差すなよベル」
「……モタリケ、お前な」
「あはは……」
私は苦笑するしかなかった。ゲームから帰ってきても相変わらずだな、この夫婦は。
「お2人の方こそ、久しぶりに現実へ戻ってきて、どんな気分ですか?」
尋ねてみると、ベルさんは夜の港と街並みへ目を向け、潮風を吸い込んだ後、
「そうね……
ああ、帰ってきたんだなって気分かな……」
「オレは、戻ってきちまったなって感想だよ。
これから大変だろうな……」
しみじみとつぶやく2人に、ウラヌスは含み笑いを洩らし、
「いつまでもゲームで現実逃避はできないってことさ。
やらなきゃいけないことはたくさんあるけど、まずは1つずつやっていこう」
「……そうね」
「そうだな……現実と向き合わないとな」
うん、私も課題は山積みだからね。さて、まずは──
「これからどうするんだっけ?
あなたの隠れ家へ連れて行ってくれるの?」
「だな。
そのうちアームストルには行くけど、いったんは俺の隠れ家で、あの姉弟と一緒に生活してもらおうと思う。
それが嫌なら、ここでホテル暮らしって選択もあるけど」
「それはちょっとねー……」
「オレはホテルなんて嫌だぞ。
見つかる可能性はゼロじゃないんだから」
「気にしすぎだと思うんだけどな」
今は2人とも失踪者扱いだろうしな。ベルさんは所属していた盗賊団に見つかる不安があるけど、モタリケさんはそれに加えてマフィアに追われている可能性もある。身分証明できないだろうし、宿泊したホテルに怪しまれて通報されるリスクはゼロじゃない。
「ウラヌス。
ホテルに泊まった場合、モタリケさんだけなら不審がられないかもしれませんが、ベルさんは……」
「あー、そっか。
住所不定のいい歳こいたおっさんと子供が一緒に泊まるのはマズいか」
『…………』
いや、うん。それはその通りだけど、私はそこまで言ってない……
ウラヌスも微妙な空気を感じ取ったのか、慌てたように手を振り、
「ま、まぁ……
とにかく食いモン買い込んで、隠れ家に行こうぜ。
姉弟を待たせても悪いし、荷物が全部現実に持ち帰れたか気になるだろ?」
「それはそうだな」
モタリケさんが頷く。モタリケさん達の家にあった絵画は、メレオロンとシーム2人が手分けして荷物に詰めて『離脱』で脱出した際におそらく持ち帰れたはずだ。その場には残らなかったからね。とはいえ、実際に確認しておきたいのは当然だろう。
「あなたの隠れ家って、お料理できるの?」
「普通にできるよ。
あんまり匂いとか煙が出る料理は、排気が追っつかないかもだからアレだけど」
「隠れ家だものね。
遅い時間だから、空いてるところも少ないだろうし」
「コンビニくらいだな。
ま、改めて買い物には出るから、とりあえず数日ぶん確保出来たらいいよ。
……おっと」
ウラヌスがポケットから携帯を取り出し、手で待ってほしいとジェスチャー。
「ああ、姉貴?
……うん、うん。まぁこの通り帰ってきたよ。
これから移動するし、教えてあったホームコードに──」
あ、私も電話来た。レオリオさんか。
「はい。……ええ、無事に戻りました。心配をかけてすいません。……はい。すぐに移動しないといけないので、落ち着いたらこちらから連絡します。皆にも、そう伝えておいてもらえますか? ……はい、お願いしますね。知らせたいことがあったらホームコードに──」
ウラヌスに
ウラヌスとベルさんが妙にこだわってコンビニを3件ハシゴして食料品を買い込んだ後、隠れ家まで100㎞の道のりを夫婦2人抱えて走る。
「ひゃー! すごーい!」
「あんま喋んなって……揺らさないようにするの大変なんだぞ」
ベルさんを背負って高速で歩いていくウラヌス。
……私はモタリケさんをお姫様抱っこして運ぶハメに。仕方ないとはいえ、なんだこの
「わ、わるいね……」
「いえ、大丈夫です。舌を噛まないように気をつけてくださいね」
体格的に私が運ぶしかないとはいえ、アレだな。……いや、深く考えないでおこう。
「──ウラヌス」
「うん、そろそろいいかな」
私達は急激に速度を落としていき、一度立ち止まる。
「あれ? 着いたの?」
「もうちょいかな。ここからは歩いてく」
ベルさんがウラヌスの背から降り、「はぁー♪」と息を吐いた後、
「乗り心地よかったー……ぷにぷにしてたー♪」
「そういう感想、やめてくんない?」
私も抱えていたモタリケさんを下ろすと、「おっとっと……」とよろめくモタリケさん。軽く肩を支え、
「大丈夫ですか?」
「あ、うん。ちょっと平衡感覚がアレなだけで、大丈夫、だいじょうぶ……」
「運動しろよ、少しは……
ベルの方が平気そうにしてるじゃねーか」
苦笑するベルさん、バツが悪そうなモタリケさん。元々そこまで運動神経は良くないんだろうし、仕方ない気はするけどね。……でもまぁいちおう聞いておくか。
「モタリケさんは、修行で鍛え直すつもりってあります?」
「えぇー……
そうしないと危険だっていうなら考えるけど……」
「危険だろ?
自分でも言ってたじゃないか」
ウラヌスの指摘に「うっ……」と呻くモタリケさん。確かにそういう理屈になるよね。追われてるかもしれないんだから。
「ベルさんはどうです?」
「んー……
モリーがするっていうなら、わたしも健康の為にやらなくもないかなぁ」
おや。ベルさんの方が脈ないかと思ったのに、そうでもないのか。
「姉弟にもまだまだ修行してもらうし、一緒にやればいいんじゃね?
引きこもってても暇だろうし」
「……考えとくよ」
色よい返答ではないけど、気が変わるかもしれないしな。修行内容を少し考えておくか。
しばらく4人で歩いていって、目印である立方体の岩のところまで来た。……ここも、ちょっと懐かしいな。
ウラヌスが
「そういえば、ロックをかけてないんでしたね」
「うん。
そうしないと俺がいない時にゲームから隠れ家へ戻ったら、外に出れなくなるからね」
ちゃんと非常時のことも考えてたんだよな、ウラヌス。もちろん念能力者なら無理やり地上へ脱出できるだろうけど、壊されたら困るだろうし。
「アイシャ、先に入って2人を案内してくれる?
俺は最後に入って閉めてくから」
「分かりました。
お2人ともここからハシゴで下まで降りていくので、間隔を空けて付いてきてください。
結構深いので、降りる時は慎重にお願いします」
「はーい♪
なんだかワクワクするなー、こういうの♪」
「隠れ家かぁ……まぁそうだな」
しみじみと言うモタリケさん。盗賊団に所属してたんなら、きっと1つや2つはあっただろうからね。
竪穴を降り、やや薄暗い大きな通路を歩いていくと突き当たりにドアが見えた。
私は最後尾のウラヌスが来るのを待って、彼に開けてもらうよう促す。
ウラヌスはちょっと不思議そうに首を傾げながらも、ドアに手を触れた。
ドアが左右にスライドして開くと、明るい部屋の中から「あーっ!」と声をあげながらシームが走ってくる。
そのままガバーッ! とウラヌスに抱きついた。
「わわわっ?! ちょちょ、シーム!」
「ウラヌスーっ! ウラヌスぅ……!」
「シーム、落ち着けって!
……別に心配するようなこと、何もなかっただろ?」
「うん……でも……」
震えるシームの髪をウラヌスが撫でて
「現実に戻ってきたから、大丈夫と思ってても不安で仕方なかったみたい。
まだかまだかって、それなりの時間待ってたからさ」
今は……夜の2時過ぎか。買い物に時間かかってたし、2人を抱えてあんまり急ぐわけにもいかなかったからな。なんとなくこうなるんじゃないかと思って、ウラヌスにドアを開けてもらったんだけどやっぱりだったか。
「待たせてゴメン。……ただいま」
「うん……おかえりなさい……」
「……ただいま帰りました」
「お帰り」
私達4人が言葉を交わすと、夫婦は微笑んでみせ、
「お邪魔します♪」
「オレ達もお邪魔するよ」
「あー、そっか。ここでしばらく6人生活するの?」
端的にそう尋ねてくるメレオロンに、ウラヌスは煮え切らない様子ながらも頷き、
「しばらくというか、いったんな。
元々1人用の隠れ家なのに、6人も固まってたら流石に
それはそうだよな……。早いうちに行き来する手段を整えて、私は一度アームストルに帰った方がいいかな。その辺りも相談しないとね。
アルバムや絵画も含めて全ての荷物が無事に持ち帰れたことを確認して安堵し、夫婦に隠れ家の設備についての説明をして、簡単な夜食の準備を始めようとしたところで、
「あ、桜。桜出してぇ」
「シーム、お前な……」
ちゃんと無事か確かめたいという強引な理屈で桜を出させて、早速イチャイチャにゃんにゃん始めるシーム。
「さっくらー♥」
「にゃーん♥」
「んふふ、微笑ましいわねぇ♪」
「俺は複雑な気分だよ……」
「可愛い子ちゃん、取られちゃってるから?」
「なんでだよ……
つか、どっちのことだよ?」
「どっちもよ」
「なんでだよ……」
「ふふ。ウラヌス、野菜はどうします?」
「あー……
サラダでもいいんだけど、野菜炒めにしようかな。
人数に対して、おかずが少ないからさ」
私とウラヌスとベルさんが台所に立って、料理を始めていた。6人分作るから、人手は多いに越したことはないからね。
「それなら、お肉を加えて量を増やします?」
「肉野菜炒めってこと?
アイデアとしては良さげだけど、メレオロンとシームが嫌がりそうじゃない?」
「そうだそうだー」
「そんなの食べたくないー」
「にゃっにゃ」
「ほらね」
「治りませんねぇ、2人の偏食」
そう言って苦笑する。……なんだか、まだゲームの中にいる気分になっちゃうな。
「もう少し食材がよければ工夫次第で食べやすくできるだろうけど、ありあわせだとね。
無理に食べさせると、余計キライになっちゃいそうだし」
「まぁシームは子供ですから、分かりますけどね」
「手料理を美味しくないって言われたらショックだもんねー♪」
「……それがないとは言わない」
好き嫌いと美味しくないは別だと思うんだけどなぁ。ウラヌスが気にするっていうなら、しょうがないけど。
さっと夜食を用意して、6人でテーブルを囲んで楽しく食事をした後、モタリケさんが思い立った様子で、
「珈琲でも
「んー……
本音を言えば欲しいんだけど、身体を休める為にそろそろ一睡した方がいいと思う。
だから珈琲を飲むと寝れなくなっちゃうかなって。ただでさえ昂揚感が抜けてないし」
ウラヌスがそう言って断る。私も欲しかったけど、こんな遅い時間に飲むのは良くないかもね。
「あなた、お子様だから余計に寝れなくなっちゃうものね♪」
「……お前も子供の側だからな?」
ベルさんの年齢でダメなら、やっぱり私も含まれるか。メレオロンは分からないけど、寝る前に珈琲を飲んでも大丈夫そうなのはモタリケさんだけだもんな。
「アタシは夜更かししてもいいんだけどねー。
暇つぶし出来そうな本もたくさんあるし」
「やめろ読むんじゃねぇ」
あー、そういえばここって色んな本があったな。……ウラヌスは読んでほしくなさそうだけど、絶対みんな勝手に読むと思う。
「夜更かしかぁ。
ところで、あのテレビって映るの?」
ベルさんが指差す先にある、木製棚を台にした古い型のモニター。……私達がグリードアイランドへ入るのに使ったジョイステが繋がったままだけど、画面は真っ暗になってる。多分全員ゲーム外に出たから、ゲーム機の
「テレビっつーか、モニター……のつもりで用意したけど、いちおうテレビモニターだよ。
映る映らないで言えば、もちろん映るけど」
「ええと、そうじゃなくて……」
「分かってるよ。テレビ番組が見れないかって話だろ?
けど、見れると思う?」
「……ううん」
「そりゃそうだわな。アンテナを立てて受信しなきゃ見れないし、隠れ家にそんな目立つモン立てるバカは居ないよ。
古い型だから携帯電話と繋げて映すとかも多分ムリだしな。
そもそも携帯でも電話が何とか繋がるくらいで、ここでテレビ番組は受信できない」
「あらら、そうなんだ。けっこう不便ねー」
電話は出来なくもないのか。とはいえ、繋がりにくいみたいだし、電話する時は港町へ行った時にした方がよさそうだな。
「それだけ隔離されてるなら、逆に安心だけどな」
「モリーの言うことも分かるけどー……」
「ま、そういうこった」
モタリケさんの言葉に、ベルさんは不満げに、ウラヌスは肩をすくめる。便利と安全はトレードだからね。ここなら何かと不便ではあっても、安全性は確かに高いだろう。
「じゃあビデオは?」
「……いま見れるかって話なら無理だけど。
ビデオデッキとテープを用意して、テレビにケーブルで接続すれば見れると思う」
「ふぅん」
メレオロンの表情と返事に、ウラヌスはどう答えるか少し悩んだ後、
「うん、まぁ、ここに留まるのが長丁場になるなら、そういうのも用意した方がいいか。
俺は特に必要としてなかったからな」
ウラヌスは見たいなら外で見ればいいだけだもんね。でも隠れ家に籠るなら、そういうわけにもいかないのは当然だろう。
「どうせなら、ゲームも欲しいなぁ」
「にゃ」
あー、確かにジョイステがあるからなぁ。シームは遊びたいに決まってるか。
「結構色々必要そうねー。寝床のこともあるし」
「直近の問題としてはそれだな……
いちおう毛布は人数分用意したけど」
なんだよね。壁際に大きめのベッドが1つあるけど、1人か詰めても2人までだ。
「布団もあるけど、3人までしか想定してなかったんだよな……」
「オレは毛布1枚あれば、その辺で寝るよ」
モタリケさんがそう申し出る。ウラヌスは複雑な表情のまま、
「その申し出は有難く頂戴するけど、後2人……
俺、町に戻って泊まってきた方がいいかなぁ」
「待ってください。
子供が1人で泊まりに行って、怪しまれない施設に心当たりはあるんですか?」
私が尋ねると、ウラヌスは「うっ」と答えに詰まり、
「マズイ気がするね……。若返った悪影響が、こんなところでも出てくるか。
アムリタでライセンス使うのも良くないしな……
……いや、俺の飛行船がある。あそこなら──」
「ですが、停泊させている飛行船があるのは」
「……アムリタの外だね。
追跡回避、所在隠蔽の為に発着場や
「そこそこの期間放置していましたから、現状問題ないか分からないんじゃないですか?
もしトラブルが起きていたら……」
「寝るどころじゃなくなっちゃうね。
近いうちに確認しないとだけど、こんなタイミングでトラブルシューティングはしたくないかな……」
「飛行船の確認は、後日にした方がいいでしょうね。
ひとまず私も毛布1枚で寝ますから──」
「あー、待って。
アイシャ、まだ完治してないでしょ?」
「……正直に言えば、その通りです」
「じゃあダメだよ。ちゃんとした寝床を使って。
俺も毛布1枚で寝るから、悪いけど後1人──」
「じゃあアタシも毛布だけでいいわよ。
どうせ今日だけなんでしょ?」
「うん。明日寝る時までに6人分の寝床は用意しとく」
これで毛布組は3人確定しちゃったか。そうすると後は……
「申し訳ないから、せめてわたしは布団でいいかな。
それならモリーの横で寝れるし♪」
ベルさんがそう言って、ベッドを遠慮する。
私とシームが、気まずく顔を見合わせる。抱っこされてる桜も見上げてくる。
「シーム、ベッドを使ってくれていいですよ。
桜と一緒に寝たいんですよね?」
「うにゃん」
「ううん。ボクは布団でいい。
桜もこう言ってるし、アイシャの怪我ってまだ治ってないんだよね?
無理しないで」
うー。そこまで言われると、断る理由が思いつかないな……
「では……申し訳ないですが、今日だけはベッドを使わせてもらいます。
明日以降は他の人が使ってください」
この感じならあと1日2日安静にしてれば、完璧に塞がりそうなんだけどな。桜の指を拘束する為に無茶な筋肉の締め方をしたのが