どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第三十一章

 

 アイシャがメイドをさせられるという珍事の後。食事代金をウラヌスが支払い、細かいお釣りは店に預け。

 その間に着替えを済ませたアイシャは、店の裏口から出る。

 降って湧いた災難から解放され、着慣れたいつもの運動着に袖を通して、ようやく落ち着きを取り戻すアイシャ。わざわざ裏口まで見送りに来た店員と軽く言葉を交わす。

 

「ご苦労さまアル。

 気が向いたら、また働きに来るといいアル」

 

「正直もうたくさんですよ……。お世話になりました」

 

 引きつった笑みとともに挨拶を終えたアイシャは、お店の外をぐるりと回り、のんびり入口から出てきた3人と合流した。

 

「アイシャ、おつかれー」

「お疲れさん。やっぱりアンタは、そのカッコがお似合いかもね」

「刑期満了おつ。なかなかいい接客だったよ」

 

 よく分からない労い(ねぎら )をかけられ、「ふはー」と分かりやすい息を吐くアイシャ。

 

「……えぇもう、ほんっと疲れましたよ。

 つまらないことでお待たせして申し訳ないです。これからどうしましょうか?」

 

「うーん……

 まだ9時半だし、なんだかんだで月例大会まで時間はあるね。

 アイシャは具合どう? 疲れてるなら、どっかで休もうか?」

 

「……いえ。精神的には疲れましたけど、休む必要なんてありませんよ。

 なにか気分転換はしたいですけどね」

 

「そっか。……からかってゴメンね。

 ちょっとやりすぎかなとは思ってた。食事代は助かったよ」

 

 律儀に謝ってくるウラヌスに、苦笑を返すアイシャ。

 

「元はと言えば、私のうっかりが原因なんで。

 気にせず、時間を有効に使ってください」

 

「うん、そうしよっか。なら……

 アイシャが稼いでくれたお金は残ってるけど、月例大会までの時間つぶしに、手っ取り早く稼げる懸賞をクリアしときたいかな。

 ホントは地図が欲しいんだけど、アレって2万ジェニーするからまだ買いづらいし」

 

「ウラヌス、アンタ観光しようって言ってなかった?

 そもそもこの街は観光しないの?」

 

 メレオロンが尋ねる。ウラヌスは少し悩み顔で、

 

「これからどんどんプレイヤーが来るだろうから、無闇に接触して回るのはいただけないかな。

 観光なら出来るだけプレイヤーの居ない街が望ましいし、そういう意味では今ここって最悪のタイミングなんだよ」

 

「ああ、まぁそれじゃ仕方ないわね……

 ここの観光はまた今度で」

 

「観光できないのは私も残念です。

 でも、懸賞には挑戦するんですよね?」

 

 アイシャが確認すると、ウラヌスはうなずいてみせ、

 

「あと1個ぐらいは。

 ただ気をつけないと、面倒だったり時間かかった割には報酬しょっぱいのとかあるし、一口に懸賞って言ってもピンキリなんだけど」

 

「ウラヌスはそのへん詳しそうなんで、オススメがあれば是非」

 

 アイシャが促すと、ウラヌスは腕を組んで「んー」と考え込み、

 

「そうだなぁ。じゃあ……

 ホントは街の入口付近の方が、懸賞いっぱい貼り出されてるんだけど。

 できるだけ他プレイヤーと接触しないように、街の奥まった方へ行こう。アントキバの主要施設も軽く説明しておきたいから、寄り道しつつ」

「ええ、分かりました」

「異議なーし」

「お願いしまーす」

 

 アイシャ、メレオロン、シームの順に了承を返した。

 

「OK。まずはトレードショップからかな。

 かなり頻繁に使うから、確実に場所を覚えておいてほしいんだけど──」

 

 ウラヌスは説明しながら歩き出す。ぞろぞろ付いていく3人。

 

 

 

 

 

 カランカラン♪ と音を立てる扉。

 

 扉を開けたウラヌスを先頭に、トレードショップの中へ入っていく。

 

「いらっしゃい」

 

 正面のカウンター向こうには、失礼ながらゴリラのような顔と身体の中年男性がいる。て言うか、服にも『ゴリ』って書いてあるしな……

 

 男性の後ろには、色々なアイテムの値段表がある。大体どの街でも同じような感じなんだよね、このトレードショップの内装は。

 

 ウラヌスが男性を手で差し示しながら、私達3人に向かって説明を始める。

 

「ここがトレードショップ。

 人によっちゃ交換ショップとか交換店とか言うけど、その辺はご自由に。

 カウンターの向こうにいるNPCと会話して、カードの売買や情報の購入ができる。

 他のプレイヤーとのやりとりを除けば、無条件でカードをお金で買い取ってくれるのは基本ここだけだよ」

 

 質問役と心得ているらしいメレオロンが、すかさず言葉を挟む。

 

「さっきアイシャが、プリン食べて取ってたガル……なんとかってカードを売ったのは、ここってことよね?」

「うん。『ガルガイダー』は30000ジェニーで売れる。

 さっき朝食で3000ジェニー使ったから、残り27000ジェニー。

 で、情報は一律3000ジェニーで買える」

 

 シームが手を上げる。

 

「情報って、どうやって買うんですか?」

「情報を買う方法なら、3000ジェニーになります」

「ええっ!?」

 

 ゴリさんが反応したので、シームが動揺しまくる。これがあるからなぁ、ここは……

 

「いらない。

 ……シーム、気にしなくていいよ。よくあることだから」

 

 ウラヌスがさっくり断り、肩をすくめてみせる。

 

「今みたいな感じで。

 ここに限らず、ゲームのキャラと会話をする時は『特定のキーワード』について正確に尋ねることが重要になる。

 余計なこと言うと『○○(まるまる)? 何だそりゃ』と定型文で返されりゃいい方で、ヘタすりゃ聞きたいことと違う答えが返ってくる。他の相手なら聞き直せるけど、トレードショップだと金を取られて、聞きたいことと違ってたからってキャンセルもできない。最悪だわな。

 たとえば──」

 

 ウラヌスはゴリさんの方を見て、

 

「マサドラの『場所』を買いたい」

「マサドラの場所なら、3000ジェニーになります」

「いらない」

 

 そうやりとりした後、

 

「マサドラの『情報』を買いたい」

「マサドラの情報なら、3000ジェニーになります」

「いらない」

 

 似たようなやりとりを終え、こちらへ向き直すウラヌス。

 

「今の違い。分かる?」

 

 うーん、と考え込むメレオロンとシーム。まぁ実際どう違うか知らないと、分からないだろうな。

 

 ウラヌスが私の方を見てくる。……答えを言えってことか。

 

「そうですね……

 この街からある場所へ行く方法を知りたいなら、一つ目にした質問のように『場所』を買いたいと言わなければなりません。

 もし行き方を知りたいのに『情報』を買いたいと言ってしまうと、マサドラの街自体の情報について話をされてしまいます。その場合、この街からマサドラへの行き方は教えてもらえません。それはマサドラの街の情報とは、厳密には違いますから」

 

 2人から『おおー』と感嘆が返ってくる。……この反応。ゲーム経験者って信用されてなかったな。ついさっき信用を失ったところだから仕方ないけどさ……

 

 ちなみに私が『場所を買いたい』と言った時にゴリさんが反応してたけど、ウラヌスが『いらない』と返してくれている。

 

「……ウラヌス。説明はここでしない方がいいんじゃないですか?

 いちいち反応されちゃいますし」

「ホントはね。

 でも注意喚起にはなるでしょ? ここでは発言に気をつけた方がいいって。

 な、シーム?」

「んんー……」

「なにか1個言わせといて、金渡さずに放っときゃいいだけなんだけどね。

 それでも『3000ジェニーになります』って、こっちが何か言い終えるたびに尋ねてくるけど」

 

 メレオロンとシームが顔を見合わせ、難しい表情をしている。ゲームの説明というより、これって完全にお勉強だよね。これからも当分こんな調子だから、頑張ってくれたまえ。

 

 腕を組んで嫌そうにメレオロンが、

 

「この店って結構うっとうしいの?」

「うっとうしいよ。

 さっさと用事を済ませて、長居しない方がいい場所。他のプレイヤーもよく来るからね。おおむね換金が目的で、後は情報を買うぐらいだよ。

 利用頻度の高いお店だけど、あんまり好きな人は居ないんじゃないかな。

 販売してるカードも日によってバラつくから買いづらいし、ショッピングを楽しみたいなら他の店を勧める」

 

 やっぱりそうなのか。いつ来ても効果のよく分からないアイテムの名前だけが並んでて、何がどう役に立つか分からなかったんだよな。私も前回は情報以外に何も買わなかったし。

 

「ふぅん……

 他のお店って、どんなのがあるの?」

「他のショップの情報なら、3000ジェニーになります」

「いらねーよ。

 ……こういうこった」

 

 ウラヌスが面倒げにゴリさんへ吐き捨て、腕を組む。ウラヌスもホンキで嫌がってるな。

 

「ちなみに、全く融通が利かないわけでもない。

 たとえば『マサドラの場所の情報を買いたい』なら」

「マサドラの場所なら──」

「いらない。

 『マサドラの場所の情報』──こほんっ──『を買いたい』なら、ちゃんとここからの行き方を教えてくれる。

 もっとシンプルに『マサドラ』──ん、ん、ん──『に行きたい』でも構わない。

 要は、ゲームキャラに誤認させないよう尋ねろってこと」

「りょーかい」

「はーい」

 

 2人が返事するのを横目に、私は背後の扉をちらりと見る。

 

「ウラヌス。

 他のプレイヤーが外で待ってるようですし、そろそろ行きませんか?」

 

 私が促すと、ウラヌスはあっさり頷いた。

 

「そだね。

 あんまり初心者向けの説明してるのを聞かれたくないし。

 他にもトレードショップについて話すことはあるけど、移動しながらにしよう」

 

 彼が言い終えるのを待って、私は扉を押し開いた。カランカラン♪ と小気味よく鐘が鳴る。外で店内の様子をちょっと離れて窺っていたプレイヤーに、軽く会釈する。

 後から出てきたウラヌスに付いて、私達は移動を再開した。

 

 

 

「──もう話したことだけど、トレードショップでランクBの指定ポケットカードは全部買うことができる。

 同じトレードショップで、1人が50回買い物するか、50回売るかすれば得意客になれるんだけど、この得意客っていうのはあくまでもその店だけに限った話だから、他の店でも得意客になりたいならそっちでも50回買うか売るかしないといけない」

 

 ウラヌスが説明しながら進んでいくのに合わせ、私達もややゆっくり歩き、彼の声音に耳を傾ける。

 

「その売ったり買ったりって、合わせて50回じゃなくて、どっちかだけで50回って解釈で合ってる?」

 

 メレオロンが首を傾げながら尋ねると、ウラヌスは小さくうなずき、

 

「合ってる。

 売買合計回数が50回だと、条件が簡単すぎるからだろうね。

 まとめてカードを複数売ると1回カウントになっちゃうから、売却可能なカードが50枚貯まったら、手間だけど同じ店で1人が1枚ずつ50回売ればいい。それで大丈夫だから。

 アントキバでは1人、マサドラでは全員が得意客になっておいた方がいいかな」

 

 ウラヌスの話を聞いて、三者三様に疑問符を浮かべてみせる。それを見て、困った顔をするウラヌス。後からどんどん質問が追加される流れだもんな……

 シームが軽く手を上げ、

 

「トレードショップでお金を預けた場合って、他のお店では引き出せないんですよね?」

 

「……トレードショップに限らず、どの店でもそうだな。まぁ預けられない店もあるけど。代表的なところで、スペルカードショップは預かってくれない。

 それはさておき、基本的に細かいお釣りはカードとして持ちきれないから、店に預けておくのが基本になる。でも銀行みたいに便利じゃないんだよな」

 

「なんでアントキバとマサドラで得意客になる必要があるの?」

 

 メレオロンが尋ねるのに対し、

 

「必要って言うか、利便性と必然性を考えるとそうなるって感じだな。

 マサドラはスペルカードショップがあるから、金はマサドラへ集中させることになる。じゃないと、何度も他の街から金持ってスペルカードショップに行かないといけないから。だからカードはマサドラで売る機会が多くて、自然に50回の条件を達成できる。

 アントキバは、金をマサドラに持っていける限界がフリーポケットの空き枠分だから、いちいちマサドラに何度も金運ぶ手間をかけるくらいなら、アントキバでも指定ポケットカードを買えるようにした方がいいって理由。

 この都市が金を稼ぎやすいのは、懸賞都市って通称からもお察しだしな」

 

 ウラヌスが私に目を向けてくる。でも知りたかったことは先に聞かれちゃったんだよね。後は聞かなくても予想がつくけど、私とウラヌスだけ分かってても仕方ないし、いちおう聞いておくか。

 

「アントキバでは1人、マサドラでは全員なのはどうしてですか?」

 

「マサドラは怪物カードを何度も売りに行くから、意識しなくても全員得意客になれる。

 アントキバは、全員が得意客になる手間をかける意味がないってだけ。

 指定ポケットカードは、得意客になった1人が買えばいいわけだから」

 

 私は少し考え、

 

「指定ポケットカードをここで買うつもりなのは、月例大会のカードをここで売るから、ですよね?」

 

 ウラヌスは『へぇ』という顔をしてみせる。むぅ。なんか不服。

 

「その通り。

 他のカードはマサドラに行ってから売ればいいけど、今日取るつもりの『真実の剣』は、入手したらさっきのトレードショップですぐ売る」

 

「マサドラに行くまで持っていたら奪われるから──ですね?」

 

「そ。

 スペルカードがほとんどないんだから、報酬を確保するにはそれしか手がないもん。

 それに、大量のお金カードを地道に攻撃スペルで奪う馬鹿は居ないだろうし」

 

 メレオロンがきょろきょろしながら、あまり気のない声で、

 

「なーるほーどねー。

 ……ところで他のお店なんだけど、結構普通のお店もあるっぽいの?

 懸賞ポスターがまばらにしかないなと思って眺めてたら、花屋とか八百屋まであるし」

 

「そういう小っちゃいお店はそうだな。

 必要なものはデパートに行きゃほとんど手に入るけど、本屋とか薬局みたいな専門店は結構ある。そういうお店は早く閉まっちゃうんだけど」

 

 きょとんとするメレオロン。

 

「そうなの?

 ていうか、ゲームのお店って時間で開いたり閉まったりするの?」

 

「するよ。今だって、全部のお店が開いてるわけじゃない。

 バーとか酒飲むトコは夕方にならないと開かない店も多い。で、夜中になったら大半の店が閉まる。……ゲームキャラが寝る必要なんてないんだろうけど、いちおう昼夜のあるファンタジーゲームっぽい雰囲気にしたかったんだろうさ。魔法のある世界だしな」

 

 ウラヌスの解説に、怪訝そうな顔をするメレオロン。

 

「ファンタジーゲームの雰囲気ねぇ……

 デパートとかあるのに?」

 

「デパートとかあるのにな。剣とか盾が並んでる棚の後ろで、ノートとか電池が売ってるんだぜ。要は現代と中途半端にごちゃまぜなんだよ。

 これもあらかじめ言ってることだけど、大体の薬はあっても病院とかの治療施設はないからな。怪我したら面倒なことになるって分かっとけよ?」

 

「分かってるわよ。

 ……そもそもゲームとか関係なしに、私とシームは病院なんて行けないんだから」

 

「あ、そうだったな……

 ごめん」

 

「病院に行けないのはアンタのせいじゃないんだし、別に謝らなくていいわよ」

 

「うん……」

 

 どちらかと言えば、私が気をつけなきゃいけないんだよな……。念能力の治療は今なら受けられるけど、レオリオさんは居ないんだし。当然1ヵ月経った後は念能力での治療もできなくなる。大天使の息吹もきっと私には無意味だろうし。……なぁボス属性? たまには役に立ってほしいんだけど?

 

 

 

 ウラヌスは歩みを止めずに大きな建物を親指で差し、

 

「あれがデパート。似たようなので、アレよりは小さいショッピングセンターもある。

 どんな都市にもどっちか1つはあるけど、売ってるモノはどこも大差ないかな。多少の片寄りはあるけど、気にするほどでもなかったと思う。

 買い物の為に一度寄らなきゃいけないけど、懸賞イベント次第じゃどれだけ時間食うか分からないし、まだ荷物も置いてないから後回しにしよう」

 

 荷物を背負っているからだろう、メレオロンはちょっと疲れた目を向け、

 

「この荷物って、どっか預けられないの?」

 

「宿で部屋借りてそこに置いとけばいいけど、もしかしたら盗まれるかもしれない。

 それを警戒するなら荷物の番を誰かしなきゃいけないけど、俺達はそんなことに人数を割けないだろ?

 俺も背負ってんだからガマンしろ」

 

「へーい……」

 

「心配しなくても、月例大会直前になったら宿に預けるよ。

 長時間、目を離すのがよくないってだけだから」

 

 私は気になっていたことを尋ねてみる。

 

「……ウラヌスは、作戦決めてるんですか? 月例大会の」

 

「うん、もう固まってるよ。

 多分1時間前に準備始めれば大丈夫かな。

 昼ゴハンを早めに済ませたいし、これからやる懸賞は基本短く済むヤツだけにしようと思ってる」

 

「ということは……

 あと2時間も余裕ないってことですね」

 

「今が10時前くらいだから、そうだね。

 懸賞イベントが長引いたら中断すればいいだけだし、そこまで気にしなくていいけど」

 

 

 

 街の入口から離れた、アントキバの北端がそろそろ視界に映る道。そのかたわらに入口ほどではないにしろ、色んな懸賞が貼られた掲示板や壁が目に入った。

 

「この辺だね。

 さて、おいしい懸賞がどれかって話だけど……」

 

「ずっと流してるだけだったから、せっかくだしちゃんと見て回ってもいい?」

 

 メレオロンの希望に、ウラヌスは少し考え、首肯する。

 

「そうだな。色々あるから好きに見て回っていいよ。

 他のプレイヤーは今この辺に居ないから大丈夫だろうし。

 やってみたいのがあったら教えて」

「なんか見る時、気をつけた方がいいことってある?」

「んー。細かい条件が書いてないやつも多いから、そこに注意するぐらいかな。

 それでも最低限、何をしてほしいのか、何をくれるか、この2つは載ってるはずだよ。後は依頼主とか依頼したい場所、期間期限なんかの細かい条件……そんなもんか。

 ま、実際見て回れば分かるよ」

 

 言い出したメレオロンが、私達から少し離れて壁に貼られた懸賞を端の方から見始める。シームはおねーちゃんと一緒に見て回るようだ。さぁて、私はどうしよっかな。

 

「ウラヌスも見るんですか?」

 

「見るよ。前にあったおいしい懸賞が、今もそのままとは限らないし。

 ちょいちょい仕様変更があるみたいだから、思い込みの裏かかれたらイヤだもん」

 

 ……ふむ。

 

 ま、とりあえず見てみますか。私は前の懸賞なんて知らないもんね。

 手近な懸賞の貼り紙に目を向ける。

 

 

 

 料理人急募。日給15000J。能力次第でボーナスあり。店の場所は────

 

 私達、結婚します。結婚指輪を作りたいので、その為の宝石を────

 

 探しています。なくした愛用の剣を見つけてください。お礼として代わりにいま使っている魔法の剣を差し上げます。剣の意匠は────

 

 おたずね者。取引禁止の食品を売買している、この顔の男を探しています。発見者には、押収した食品の中から1つ好きなものを────

 

 運搬人急募。1往復30000J。木箱1ダースをアントキバからマサドラへと運搬。戻りで、ダンボール1ダースをマサドラからアントキバへ。荷物の中身は決して改めないこと。荷物の受取場所は────

 

 

 

「…………」

 

 最後の2つ、まぁそういうことなんだろうけど。もうちょっと貼り紙の位置を離してはどうか。隣同士とか露骨すぎるだろう。ムダに親切だな。

 

 

 

 たずね人、おたずね者、探し物、店番、探し物、運搬、料理人、怪物退治、たずね人、ペット探し……

 

 

 

 そんなにパターンはなさそうだな。というか懸賞に混じる労働者募集が地味にうざい。混ぜないでほしい。……確かに懸賞って、労働と大差ない部分はあるけど。報酬がお金かアイテムかで、見極めはつくけどさ。

 

 

 

「うーん……」

 

 懸賞の内容まで念入りに目を通してみたけど、どれも食指がいまひとつ動かない。

 

 なんだろ。思ってたのと違うというか……ゲームのイベントって感じじゃないんだよな。直前まで感じてたワクワクが満たされない。……期待して買ったゲームがハズレだった時みたいな感覚だよ。

 

 TVゲームと比べたら、どれもこれも時間がかかって面倒そうだからっていうのもあるんだろう。TVゲームのイベントだって、時間かかるわ面倒だとなったら、それは労働と変わらないしな。手間だけかかって面白くないのもあるし。

 

 もちろん、苦労の末に見合う報酬であれば喜びもひとしおだし、それは以前にグリードアイランドで指定ポケットカードを取った時にも思ったことだけど……

 

 さっきのガルガイダーみたいな、指定ポケットじゃないものにすら妙な罠があるだろうしなぁ。あんまり適当に決めない方がいい気がする。

 

 目の前の壁は一通り見終わったので、周囲に目を向ける。みんなバラけて、あちこちでまだ懸賞を見てるな。じゃあ私は……

 

 街路樹にまで貼られてる懸賞が気になり、それを見に行く。板で4つぶらさがってる。

 

 

 

 坑道労働者募集。面接場所は鉱山都市トラリアの────

 

 あなたも素敵な高原で可愛い羊達に囲まれて汗を流しませんか? 毎日おいしい食事と────

 

 求む手練れ。礼拝都市ルビキュータ近隣の山岳地帯に潜む怪物を、高価買取────

 

 貴方を未来の文豪に。文章の書き方・物語の作り方まで熱血サポート。お問い合わせは芸術都市ブンゼンの専門学校────

 

 

 

「えぇ……」

 

 懸賞どころか労働ですらないものが混じってますが。これは広告じゃないか。ひどいな。なんでもアリか。

 

 

 

 

 

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