どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第三十七章

 

 しばらく岩石地帯を駆けていく私達。怪物は常に警戒しているが、今のところさっきのスライム以来、何も出現していない。

 先頭がウラヌス、その後ろに2人並んでリュックを背負ったメレオロンとシーム、殿を私が務める。

 

 2分ほど走り続け、シームがダレてきたのが目に映る。少し注意しようとその背を追い──次の瞬間、大きな影が差した。

 

 巨大な爬虫類──メラニントカゲ!

 

「岩陰に!」

 

 ウラヌスの鋭い指示に、メレオロンが素早く左側へ跳躍。ぎょっ、と身体を硬直させるシーム。追いつき、私はシームの手を引いて右側へ急ぐ。

 

 指示を終えると同時、ウラヌスはトカゲに向かって大きく跳んだ。トカゲの頭上を越え、背に降り立つ。

 

 トカゲは直進してこず、ジタバタとその場で暴れ出す。舞う砂煙、軽い地響き。それが数秒ほど続き──

 

 ボン! とトカゲが煙と化した。

 

 着地するウラヌス。伸ばした二本指にカードを摘まんでいる。

 

 

『697:メラニントカゲ』

 ランクE カード化限度枚数100

 牛を丸飲みするほど巨大なトカゲ

 押されるだけで気絶してしまう程

 敏感なホクロが背中のどこかに1つあり

 それを隠すために大小様々な斑点でカムフラージュしている

 

 

 彼から差し出されたカードを受け取り、メレオロンとシームがまじまじと見ている。

 

「はぁー……

 なにこれ、どうやったら分かるの?」

 

 メレオロンが首を傾げる。弱点である敏感なホクロをどうやって見破ったか、不思議に思ったようだ。……実は私も気になってる。このトカゲは弱点をかばう動きをするから、それで見破るんだけど、ウラヌスはそんなヒマもなく倒してみせた。

 

「話すけど、それ先しまって。

 6000ジェニーで売れるからもったいない」

「わっ!? ブック!」

 

 バインダーを出し、慌ててフリーポケットにカードを収めるメレオロン。バインダーのページを開いたまま、ウラヌスを見る。

 

「えっとね。

 答えから言うと、何となく覚えてた」

 

 ……。

 覚えてた? 確かこいつ、個体差があって弱点バラバラなんだけど。

 

「こいつのホクロ、実はパターン決まってんの。

 16パターンあって、ホクロの模様と弱点が固定されてる。

 だから暗記すれば瞬殺できる」

「なんですか、それ……」

 

 私は思わずそう返す。パターンが決まってるのも驚きだけど、覚えたって……

 たった1種類の怪物の弱点突く為に、そこまでやるか。

 

「……ウラヌス。

 アンタ、今日このゲームに入ってきたのよね?」

「ん?

 いや、当然今日が初めてじゃないぞ。前にプレイしてたって言ったろ」

「えーと、そうじゃなくて……

 前に入ってからそれなりに時間経ってるっぽかったけど、ずっと覚えてたの?」

 

 呆れ顔のメレオロン。そういうことだよね……たった1匹の怪物の弱点を……

 

「いや。前にゲームしてたの半年も前だし、うろ覚えだよ。

 だから何となくって言ったろ?

 ちょっと手こずったのは、何箇所か叩いてたからさ」

 

 うーむ……

 

「ウラヌスって、ここでお金を稼いでたんですか?」

 

 私が尋ねると、ウラヌスは軽く苦笑して答える。

 

「前はね。

 ……ホントは1年以上前の記憶。稼ぎ場は色々あるから、他プレイヤーに邪魔されたくなくて、順繰りに回って金貯めてた。ここはワリと人が来るからね。

 基本的に、他に誰も居ない稼ぎ場の方が効率はいいから」

 

 なるほど、効率厨というやつか……いやはやゲーマーですわ。筋金入りの。

 

 微妙な空気を察し、ウラヌスはパンパンと手を叩く。

 

「さ、次々。どんどん進もうぜ」

 

 

 

 変わらず駆けて行く私達の前に、奇妙な口の馬が現れる。

 

「っしゃ!」

 

 一声発し、速攻で馬の尾を掴むウラヌス。暴れ出す馬。彼は尻尾を引っ張り、横倒しにする。ボン! と煙になった。

 

 あっという間。

 

「ああ……」

 

 私は片手で目を覆う。うん、知ってた。知ってたけど、それはミもフタもない……

 

「え、うん?

 なんなの、今のは?」

 

 メレオロンが、私とウラヌスを交互に見る。ウラヌス、避ける指示すら出さなかったな……

 

「ん。

 説明するからメレオロン、バインダー出して」

「う、うん。ブック。

 ……そのカード、そんなにいいの?」

 

 戸惑いながらメレオロンが広げたページに、上機嫌にカードを収めるウラヌス。

 

 

『585:バブルホース』

 ランクC カード化限度枚数50

 紅白のシャボン玉で外敵を惑わし身を守る

 攻撃力はほとんどないが

 音の大きさにはビックリするだろう

 

 

「そだよ。14000ジェニー。

 この岩石地帯じゃ最高額の怪物さ」

「はっ!?

 なんで今のがそんなにすんのよッ!?」

 

 あまりにあっさり倒したからだろう、メレオロンがその額面に驚く。まぁ今の倒し方を見ればいかにも雑魚っぽいけどね……

 

「……正攻法なら、ここで一番捕獲が難しいからです。

 正攻法、なら」

 

 力なく説明する。ズルいからしたくなかったんだよな……私はゴン達と一緒だったから、あんな倒し方教えたら正攻法で修行する気も失せちゃっただろうし。

 

「ウラヌス。

 稼げるおいしい怪物なのは分かるんですけど、その、修行の機会でもあるんで」

「あ、はい。

 すいませんでした……

 次はもうちょっと、動き見せます」

 

 急にぺこぺこするウラヌス。まぁいっか……次から考えてくれるんだったら。

 

 

 

 狭い岩山の間を駆け抜けていると──背後からザリザリザリという音。

 

「ウラヌス! 後ろから!」

 

 先頭を駆けるウラヌスが、私の声とほぼ同時に急制動。

 

「みんな、そのまま前に走って!」

 

 言いながら私達をすり抜け、音のする背後へと駆けるウラヌス。

 

 振り向いた視界に映るのは、びっしり牙の生えた口を開き、こちらへ左右に身体を振りながら追ってくる巨大イモ虫! 何度見てもキモイな! 見た目も動きも!

 

「うわわわ!」

 

 その姿を見たのかシームだけ更に逃げていく。私とメレオロンはその場に踏みとどまる。

 

 ウラヌスは一人待ち構え、イモ虫の口を下からすくうように蹴り上げた。浮き上がったイモ虫の体躯──その腹部へ鋭く掌打をねじ込むウラヌス。

 

 ボン! と煙になる怪物。

 

 ウラヌスはそのカードを手に、「ふー」と息を吐きながら歩いてくる。

 

「お疲れ様です」

 

 労いをかけると、ウラヌスは小さく苦笑し、

 

「トカゲもそうだけど、クロウラーは食いついてくるからね。

 体当たりも怖いし、油断ならないよ」

 

 もう言われるまでもなくバインダーを出すメレオロン。ウラヌスは思案顔。

 

「……なに? まさか、そのカードもいらないって言うの?」

「んー。どうだろな。

 3600ジェニーで売れるんだけど、あぶれたら捨てるかも」

 

 言いつつ、パチンとカードを入れるウラヌス。

 

 

『681:ロッククロウラー』

 ランクF カード化限度枚数186

 岩をも砕く 大きな牙で齧りついてくる 巨大イモムシ

 大きさのワリに動きは素早く

 常にカラダを左右へ振るため 攻撃しづらい

 

 

「結構、手強そうだったけど……」

 

 腑に落ちない顔のメレオロン。カードのランクに納得いかないんだろう。分かる分かる、その感覚。

 

「強いかどうかと捕獲しやすいかどうかは別問題さ。

 ……一個言えるのは、必ずしもカードのランクと入手しやすさは一致しないってこと。少なくともコイツは、多くのプレイヤーを殺してる怪物だろうしな」

 

 そうだな……あれぐらいの怪物だと、並以下の念能力者なら逃げるしか手はないだろう。シームのオーラ量なら本来倒せると思うけど、技術がまるで無いからな。

 

 当のシームは、申し訳なさそうな顔で戻ってきて、バインダーのカードを眺めている。

 

「メレオロンなら、さっきの怪物は倒せそうですか?」

「いやー……

 アタシはどうだろ」

「倒せるのは倒せるだろうけど、初戦で無傷はムリだろうね。

 慣れてくればなんとかなると思う」

「アレでしょ?

 胴体の一部にオーラの薄いところがあって、そこを叩けって言うわけでしょ。さっきの動き見てたら、正直攻撃を避けるので精一杯じゃないかなって思うんだけど。どう狙えばいいか分からないもの」

「明らかに撹乱を狙った動きですからね」

「実際攻撃を避けて、岩壁に身体をぶつけさせて動きが止まったところを狙うのが正攻法だしな。

 俺みたいに真っ向から迎撃するような真似はしなくていいよ」

 

 オーラを纏わせてもらった今の私なら、問題なく倒せそうなんだけどな。危ないから、戦闘許可は出してくれないだろうけど。

 

 

 

 ふわりと。

 

 ウラヌスが駆けて行く先に、黒いボールが現れる。

 

「顔を手で守って!」

 

 指示が飛び、メレオロンとシームが足を止め、言われた通りに顔を守るよう手をかざす。私は数歩進んで、立ち止まる。

 

 黒いボール──マリモッチがスピーディーに跳ね出した。地面と岩壁に反射しながら、高速で視界を飛び回る。

 

「アイタッ!?」

 

 シームの悲鳴。顔に体当たりしてくると分かっていても、防ぎ損ねたらしい。あんまりしっかり手をかざすと、跳んでくるのが見えないしな。オーラで探知するか、手に触れた瞬間に反応しないと。

 主にメレオロンとシームの周辺を跳ねるマリモッチ。ウラヌスは──視線を留めている。視界の中で動きを追い、両手の平を上に向けて構えている。

 

 ──ばちッ!

 

 私の顔へ跳んできたマリモッチをキャッチ。ボン! と煙になった。

 

「……アイシャ、すごいなぁ。

 今のが見えちゃうんだ」

 

 シームが感心半分呆れ半分に言ってくる。そりゃ顔に跳んでくるって分かってれば、ね。

 バインダーを出してページを開くメレオロンに、カードを差し出す。

 

 

『673:マリモッチ』

 ランクD カード化限度枚数80

 超高速で移動するボール状の生き物

 固さはゴムボール程度で攻撃されてもダメージはないが

 顔面に直撃の体当りをくらうと かなりムカツく

 

 

「ちなみにおいくら?」

 

 現金に聞いてくるメレオロンに、ウラヌスは肩をすくめつつ、

 

「9000ジェニー。この岩石地帯のナンバー2だな。

 バブルホースの14000、マリモッチの9000、メラニントカゲの6000。

 多分この3種で、フリーポケットの空きは全部埋まると思う」

「……そんなに戦うの?」

「だから、安いカードは捨ててくって言ったんだよ。

 ここ抜けるまでにどんだけ怪物とエンカウントすると思ってるんだ。軽く200回は戦うんだぞ」

 

 ウラヌスが言うと心底嫌そうに、

 

『うぇー』

 

 メレオロンとシームがハモる。仲良いね、ホントに。

 

 

 

 ふわふわ宙に浮かぶ、一つ目の四角い怪物。突然くわっと目を見開き、膨らんだ瞬間をウラヌスが一撃。目を突かれた怪物がカード化した。

 

「こいつは時間かけると、敵を寄せちまうからな。

 さっさと倒した方がいい」

 

 

『671:ストーンジェリー』

 ランクF カード化限度枚数204

 宙に浮かぶ 四角い石クラゲ

 大きくふくらんで体当たりしてくる

 一つ目で見られ続けると 他の敵を寄せ付けてしまう

 

 

「ハウマッチ?」

 

 尋ねるメレオロン。微妙な顔のウラヌス。

 

「2700ジェニー。……いちおう取っとくけど、捨てカード候補」

 

 事情が分かったからか、特に文句も言わずカードをしまうメレオロン。んー。なかなか巨人もモグラも出てこないな。そろそろ戦いたいんだけど。

 

 

 

 進んでいくと、再び出現する傀儡の騎士。

 

 騎士が動き出す前に、ひゅっと岩陰に消えるウラヌス。

 再度ひゅっと戻り、メレオロンの前に何か差し出す。

 

「ん?」

 

 ウラヌスが摘み持ったリモコンラットを、メレオロンはじっと見返した。

 

「うっきゃ!?」

 

 面白いぐらいドキンコと驚くネズミ。煙になった。

 ガシャン、と一歩も動くことなく、傀儡の騎士が崩れる。ひらりと落ちるカード。

 

「……やっぱ可愛いわね、こいつ」

「おーい、コラ。カード拾うな。

 600ジェニーつったろ、そいつは」

「ふーんだ。

 なによ、わざわざ持ってきてくれたくせに」

「……へんなイジり方すんなよ。もうやらないぞ」

「別にいいわよ。充分楽しみました」

 

 ウラヌスとメレオロンが、やいのやいのやってる。シームが愉快そうに、顔をこっちに向けてくる。確かに面白いね、この2人。

 

 にしても……目を合わせただけで気絶するリモコンラットを、摘まんで持ってきますか。ホント面白いことをする。そういう修行、ゴン達にもさせればよかったな。

 

「アイシャ、あれってアイテムじゃないの?

 高く売れそうだけど」

 

 崩れた傀儡の騎士を指しつつ、シームが尋ねてくる。

 

「あー。あれは……

 リモコンラットと同じ、念の産物でしょうから……

 アイテムとは違うみたいで、取ってもカードにならないんですよ」

 

 上等そうな騎士装備なんだけどね。とは言え、カードにならない物を持ち運ぶのもバカバカしい。怪物カードの方がお手軽で確実だしな。

 

 売れるか知っていそうな、ウラヌスの方を見てみる。

 

「ん? いや、俺も知らないよ。

 流石にカード化しない物を持っていくとかしたくない。……どうせ売れないだろうし」

 

 ですよねー。

 

 

 

 再び駆け出す私達。途中で出現したメラニントカゲをあっさりウラヌスが倒して、また出現したマリモッチを今度はウラヌスが捕まえる。

 

 そして今。

 

 ブゥーン──と嫌な羽音を聴きながら、私達は蜂の大群に追われていた。

 

『ぎゃーっ!』

 

 メレオロンとシームがめっちゃ走ってく。いやいやいや……そんな逃げなくていいから。分かるけどさ。音すごいし。

 振り向いて呆れた顔をしたウラヌスが、私の横をすり抜ける。

 私がやや速度を上げ、距離を置いてから振り向くと。

 ウラヌスは蜂達の横手に回りこみ、大群の中へ手刀を差し入れていた。

 

 ぼん! と蜂の大群が全て煙に変わる。

 

 カード片手に、つまんなさそうにしているウラヌス。……せっかくのお手並みなのに、2人ともすっかり遠くまで行ってるからな。

 

「……アイシャ。あの2人、世話が焼けるね」

「ふふ、そうですね。でも鍛え甲斐はありますよ」

「俺は面倒だなぁ……」

 

 

『748:キラービー群』

 ランクG カード化限度枚数308

 蜂の大群だが まとめて一匹のモンスター

 群れの中に一匹だけいる女王蜂を倒さないと

 逃げてもしつこく追ってくる

 

 

 戻ってきたメレオロン達が、カードを眺める。

 

「おいくら? どうやったの?」

 

 質問に対し、ウラヌスは溜め息一つ。

 

「……1200ジェニー。

 蜂の群れの中に、やたらガッチリガードされてるちょっと大きな蜂がいるんだよ。

 その女王蜂を倒すとカード化する。他の蜂をいくら倒しても数が減るだけ」

「ふぅん……」

「フーンじゃねぇよ。いずれアイツラとも戦ってもらうからな。

 ほれ、さっさと行くぞ。……そいつ、そのうちカード化解除されるぜ」

「わっ!?」

 

 ぽいっとカードを捨て、ダッシュするメレオロンとシーム。

 

「あーもう」

 

 煩わしそうにウラヌスが追う。ふふ。面倒とか言うワリには、面倒見いいですよね……あなたも。

 

 ウラヌスが2人に追いつき、

 

「──ストップ! 地面注意!」

 

 前を走っていた3人が急制動。互いに背中を向けて周囲警戒。私も追いつき──

 

 盛り上がった地面を即座に踏み抜く! ボンと煙が噴き出す。

 

 ウラヌスが別の場所へ足刀。地面から出た瞬間に文字通り一蹴されたモグラがカード化する。

 

 私達はじっと立ち尽くす。……まだいる。

 

 メレオロンが焦れている。シームはそわそわ落ち着かない。私とウラヌスは、カードを拾う間も惜しんで警戒に努める。

 やや離れた地面が盛り上がり、大きなモグラが爪を振りかぶり襲ってきた。狙いは──シーム!

 

 足を刈るような爪の一閃──ウラヌスが靴底でその爪を逸らし、モグラごと地面へ叩きつけた。最後の一匹が煙になる。

 

 

『708:スクラッチモール』

 ランクF カード化限度枚数210

 突然地面から 爪を伸ばしてひっかいてくる 凶悪モグラ

 すぐに攻撃しないと たちまち土中へ逃げてしまう

 

 

「1500ジェニー。……こいつ自体の攻撃力は知れてるけど、足をやられたりして他の怪物から逃げ切れなくなって殺られるらしい」

 

 メレオロンが何か尋ねる前に、そう告げるウラヌス。

 

「……捨てていいのよね?」

「いらないな」

 

 メレオロンとシームは、やや緊張したままだ。シームを狙われたのが精神的に効いたのだろう。気持ちは分かるけど、それは慣れてもらうしかない。

 

 

 

 連続で出たからか、しばらく怪物の出ない時間が続く。ちょいちょい嫌な目に遭ってるせいか、シームの動きが鈍い。そもそも長いからな、この岩場。ダレてくるにはまだまだ早いんだけど。

 

 バブルホースが再度出現する。

 

 今度はウラヌスも、身構えはしてもすぐには動かない。……でもまた指示を出さないな。

 

 バブルホースは、特徴的な口から赤と白の泡を吐く。尻尾でそれをバサバサと散らし。

 紅白の泡が周囲へ広がりきる前に、ウラヌスが姿勢低く駆け抜け、胴を一撃。たまらず横倒しになったバブルホースがカード化した。

 

 う、うん……まぁいいけどね。泡を出した後だし。

 

 バブルホースが消えた後も、赤い玉と白い玉はそのままアチコチ飛び回っている。

 

「2人とも『絶』と『纏』を切り替えつつ、避けて進んでください」

 

 私がそう声をかけると、

 

「えっ!? どっちがどっちだっけ!?」

 

 メレオロンが困惑の声。ああもう、この子達は。

 

「……赤がオーラなしに触れると爆発、白がオーラに触れると爆発です」

 

 姉弟はおそるおそるといった様子で、泡の飛び回る中を進もうとし──

 

 ──パンッ! パパン! パァン!

 

「うわっ! わっわっ!」

「ちょ、シーム暴れ、った!」

 

 うーん……一度そうなるともうダメだな。特に白は連鎖的に爆発するし。

 無理やりにウラヌスのところまで駆け抜ける2人。やっぱりそうなるか……リュックもかなり邪魔だろうし、2人には難度が高すぎたな。

 

 私は強制『纏』のような状態なので、いちおう白玉に気をつけつつ、全ての泡を避けて3人の元へ駆け寄る。

 

「……ウラヌス。ちゃんと指示を出してください」

「あっ!? はい、すいません!」

 

 やっぱり忘れてた。結構うっかりさんだよな、ウラヌスも。

 

 

 

 しっかり相手してるとキリがないので、怪物と戦うペースを上げるウラヌス。

 

 岩石地帯で20回目の交戦を終えた後、

 

「出ないなー、巨人……

 出現率下げてんのかな?」

「いっそ、出ないなら出ないでいい気はしますけどね」

「あー。この岩石地帯で一切出現しなくなった可能性もあるってこと?」

「そういう変更も有り得そうですし」

 

 いきなり戦う怪物としてはちょっと強い気がするからな。ゴン達くらいならともかく、シーム1人だったらまず初見では勝てないだろう。

 

 ウラヌスは姉弟の方をちらりと見て、

 

「……まぁそうだね。別にザコでもないのにカードの売り値安いし。

 ああいう、ワリに合わない初心者キラーってどうなんだろうな……」

 

 私達が話す間、メレオロンがカードを拾い上げる。

 

「これもいらないの?」

「いらないよ。1100ジェニー。

 ああ、初見だったしカードテキストだけ一応目を通しておいて」

 

 

『685:ラビットスネーク』

 ランクH カード化限度枚数760

 うさぎのような耳と手が生えた ピンク色のヘビ

 気が弱く 劣勢になると逃げ回るが

 思念波で他の怪物を呼び寄せる

 

 

「そろそろ日が暮れてきそうなんだよなぁ……

 出るなら明るいうちに出てほしいんだけど」

 

 そうなんだよね……。周囲が暗くなってしまうと、初見の巨人相手に姉弟が攻撃を避け損ねるかもしれない。特にシームは、初めて見た怪物相手だと動きが危なっかしいからな。

 

 

 

 代わり映えのない岩石群を、私達が坦々と進んでいく中。

 ぬぅっと、一つ目の巨人達がついに姿を現した。

 

「正面に立たず、距離あけて!

 アイシャ、右から頼む!」

「はい!」

 

 指示を出しながら、左の巨人へ跳躍するウラヌス。目に一蹴り、反動で更にもう1体へ裏拳を目に叩き込む。瞬く間にカード化する2体。

 私は岩壁を蹴り、巨人の攻撃をすかしつつ手刀を目に叩き込む。その反動を利用して、岩の高台に着地し、勢いのままコチラを視線で追う巨人の一つ目へ踵を落とす。

 

 残り4体。

 

 闇雲に振り回される棍棒の一撃から逃げるメレオロン達。申し訳ないけど、そうやって囮に(おとり )なってくれてるとコチラも戦いやすい。

 

 数秒後、巨人達は全滅した。

 

 

『572:1つ目巨人』

 ランクG カード化限度枚数333

 巨人族の中で もっとも巨大な種族

 集団での行動を好み 縄張りに入りこんできた生物を襲う

 知能は低く 弱点の目を攻撃されると 意外に脆い

 

 

「……これ、ランクGなんだ。

 いくらなの?」

「700ジェニー。

 ……いや、俺に文句言いたそうにすんなよ。ふざけんなって俺も言いたいよ」

「確かに数が多くて、アレですけど……

 攻撃が基本2パターンの繰り返しですからね」

 

 棍棒の振り下ろし、振り回ししかしてこないからな。正面近くに立つと、まっすぐ殴りかかってきたりするけど。目を一撃しただけで倒せるのも、ランクGの理由だろう。

 

「にしたって、攻撃力も素早さもあるし、かなり嫌がらせだけどな。バインダーに空きがあれば、それなりの実入りなんだけど」

 

 パンパン、と気分を切り替えるように手を叩くウラヌス。

 

「さて、12種類全部戦ったし。

 こっからは更にペース上げるぞ」

『えー!』

「何言ってんだ。

 このペースで進んでたら、マジで真夜中にマサドラ到着だぞ。

 ほれ、戦うのは基本俺なんだしガンガン進む。

 アイシャの『周』も、夜中まで俺のオーラが保たねぇよ」

 

 そうでした。……時間制限つきなの、すっかり忘れてた。

 

 でも、こうやって『流』を使わずに怪物と戦うのもなかなか楽しいな。思ったより良い修行になってるよ。何だかんだで命懸けの戦闘だから気合いも入るしな。久々に心地いい緊張感だ。

 

 

 

 

 




  
 
 
 
 
 いもむし|-ω)っ日

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 くらげー|・ω)っ日

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 ぶんぶん|>ω)っ日

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 もぐもぐ|=ω)っ日

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 うさへび|゚ω)っ日

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