どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第四十九章

 

 修行に必要そうなモノを、ショッピングセンターで色々見繕っていく私達。

 水分や栄養補給用のペットボトルに食料、汗拭きタオル、メレオロンとシームの着替え、修行の重しにするベストとリストバンド。

 

 何となく足取りの重い姉弟を背に、私とウラヌスは相談しながらショッピングする。

 

「買う物ってこれぐらいでいいですかね?」

「とりあえずは足りてるんじゃない?

 必要なモノがあったら、また買いに来ればいいんだし」

 

 ウラヌスの言葉に頷き返す。あまり余分なモノを買っても仕方ないしな。キャンプじゃないんだから、そこまで必需品は多くない。

 

 とは言え、結構な金額になったな。約4万ジェニーか。ベストとか着替えも買ってるし、しょうがないんだけども。充分な予算は確保してるけど、稼がないで使い続けたら流石に最後まで保たないかもな。だからウラヌスも稼げる時は稼いでるんだろう。

 

 ともあれ買い物を終えた私達は、修行に適した場所を探す為、徒歩でオータニアを後にした。

 

 

 

 都市だけでなく、オータニア周辺も秋の気配が濃い。黄や赤に色づいた林が散見する。この辺にもイベントがあるのかもな。

 

「とりあえず、誰の目にも付かなさそうな場所まで行こうか」

 

 ウラヌスが手近な林を目指して進んでいく。

 

「この辺って怪物出ないの?」

 

 シームが尋ねると、ウラヌスは少し考える素振りを見せ、

 

「敵とエンカウントするエリアって、意外に狭いんだよ。

 特に都市のそばだと、安全地帯に近いからか怪物の現れる場所から遠いことが多い」

「え? なんで安全地帯が近いと、敵の出るトコが遠くなるのよ?」

 

 メレオロンの質問に、ウラヌスは小さく苦笑し、

 

「わざわざ遠いところで怪物を倒すと、換金に戻る手間がかかるからな。最低でも、移動スペルを消費しないといけない。

 メレオロンだって、どうせ怪物と戦って稼ぐなら街に近い方がいいだろ?」

「……まぁそうね。危なくなったらすぐ逃げ込めるし」

「おねーちゃん、ぼくがゲームやってる時に見たことあるでしょ?

 城とか町の近くでうろうろしてるの。ああいうのだよ」

「あー、アレか!

 なるほど、そういう理由でやってたのね」

 

 シームの説明に私も納得する。私も理由は分かってたけど、それで説明してみせたのが上手い。ただまぁ少し話が逸れちゃってるかな。

 

「ウラヌスが言いたいのは、怪物退治で楽に稼げないように、安全な街の近くでは怪物が出ないようになってるってことですよね?

 カードを持てる数にも限りがありますから」

『あー』

 

 姉弟が納得の声。カードに関しては、グリードアイランドならではの理由だな。

 

「だね。遠くで倒してるヤツが、バカ見ないようにってのもあるだろうし。

 アイシャが言うように、フリーポケットの枠は限られてるから、シームがやってたっていう普通のゲームよりもそこは気をつけてるんだと思う。

 安全性は度外視するにしても、行ったり来たりするのは誰がやってもコストがかかる。そういうところでゲーム難度を調整してるわけだ」

「あー……なるほど。楽はできないってことね」

 

 メレオロンがうんうん頷く。

 

「で、怪物と戦いたいなら、トレードショップで情報を買って、自分からそこへ出向いていかないとなかなか遭遇しない。イベントで怪物を探すのがあるくらいだしな」

「ふぅん。結構この島広いもんね。

 それでも充分難しいイベントになるってことか」

 

 メレオロンの言葉に、首肯するウラヌス。

 

「ランダムで怪物が出るエリアは、目的地になる二点の間が大半だしな。

 適当なトコだと運が悪くない限り、まず何も出てこない」

 

 運営側にしてみれば、怪物を配置しておくのも相応のコストがかかるんだろう。怪物は全部念獣だろうしな。だから通過ポイントになりやすい要所要所に配置しておいて、いかにも色んな場所で怪物と出会う感じを演出してるってところか。

 

 

 

 林の中を散策していると、ちょうどスポットのように、円状の広場になっている場所があった。木々が周りを囲い、運動するのに手頃なスペース。

 

 同じことを思ったのだろう。ウラヌスが立ち止まり、私達へ振り向く。

 

「ここにしよっか。

 アイシャ。早速始めたいかもしれないけど、重しを用意しないといけないから、それを使った修行はちょっと待ってほしい。

 それ以外の修行なら、もう始めてくれていいけどね」

「……今から用意するんですよね?

 結構、時間かかるんじゃないですか?」

 

 ミルキ、かなり時間をかけてたみたいなんだよな。数作ってたから、っていうのもあるだろうけど。

 

「まあ、重量にもよるかな。

 ベストとリストバンド、どれぐらいの重さにしよっか?」

 

 ……。とりあえず、私は自分のやつだけ考えればいいか。

 

「じゃあ……ベストは300で」

 

「────ぶほぉっ!?」

 

 吹き出すウラヌス。え、なに?

 

「300!? 単位キログラム!?」

「え、ええ、もちろん」

「300キロッ!? マジで……?」

「え、無理ですか? ああ、もちろん私の分だけですよ?

 あと出来れば、リストバンド4つを50ずつでいただけると……」

「ごはッ!?」

 

 よろめいて、土の上で四つんばいになるウラヌス。いちいちリアクション大きいな。

 メレオロンがやけに青ざめた顔で、

 

「アイシャ、アンタ……

 オーラもなしに、500キロの重し付ける気?」

「えーと。

 ……ほら、私みんなの修行も見なきゃいけないですし。

 だから自分の修行は短時間で済ませたくて」

 

 本音は、運動不足解消だけどねー。昨日からの運動量だと、負荷が足んなくて。身体がなまっちゃってるから、鍛え直さないと。

 

 ウラヌスがふらりと立ち上がってくる。

 

「えー、あの……

 ごめん。俺、まだアイシャのこと甘く見てたよ……」

 

 ……なんだか失礼な物言いだな。いいけど。

 

「その、悪いんだけど……多分そこまで重くすると色々問題がある。

 一度重くした後、軽くするのは簡単じゃないんだよ。

 だから重くしすぎると、その、ね?」

「別に私は構いませんよ?

 後でやっぱり重すぎたんで、軽くしてほしいなんて言いませんから」

「いや、違う。そうじゃない。

 仮にベストを300キロにしたとして。……修行終わった後、それどうすんの?」

 

 ……。あ。

 

「運ばないといけないだろ? 俺達、拠点ないんだから。

 そもそも、そんな重いベストを宿に置いといてみなよ。ヘタすりゃ床抜けるよ?」

 

 あー。そこまで考えてませんでしたぁ。ハハハハ。……前は野外キャンプしてたから、どうとでもなったんだよなぁ。

 

「ちょっと口挟みたいんだけど」

 

 メレオロンが挙手する。ウラヌスが促す仕草。

 

「どっちにしても、一度重くしたのを簡単に軽く出来ないならヤバいんじゃないの?

 常にそんなのリュックに入れて運ばせる気? 着たまま動くなんて論外でしょ」

 

「……」

 

 押し黙るウラヌス。そうだね。そっちのが深刻だな。

 

 

 

 色々相談した結果、重くしたベストやリストバンドを持ち運ぶのはやはり無理があると判断。

 

 なので、この林の広場に置いていくという結論になった。修行が終わったら袋に入れておき、ここに置いておく。そんな重い物、そうそう誰も盗らないだろうと。そして修行をする時は再びここへ来る。

 

 つまり、ここが当面の修行場になるわけだ。拠点を作らないわけにはいかないもんな。やむを得ず拠点を移す時は、がんばって運ぶしかないだろう。移動スペルなら楽に運べるけどね。

 

 私はウラヌスと交渉し、とりあえずベスト200、リストバンド25×4で手を打った。それでも荷重としては足りてるし、まあいいかな。

 2人のベストは60、リストバンドは1つ10キロ。

 

 ウラヌスの分はない。彼はきっぱりすっぱり要らないと言い切った。彼には意味がない、そうだ。理由はまた後で話すつもりらしい。

 

 

 

 ベストを手に、地面へ座りこむウラヌスを、私達3人がじっと見下ろすように眺める。

 

「……なんで見てんの?

 別に修行始めてくれていいよ」

 

 いつまでもベストを見つめたまま動きを止めてるので、注視されるの嫌なんだろうなーと思ってたら図星だったらしい。

 

「いや、そりゃ気になるじゃない。どうやんのかなって」

「ぼくも見てみたい」

「私も拝見したいですね。修行は後から出来ますし」

「えっと、その。

 そんなじっと見られると……」

 

 なぜか顔を赤くした後、「はぁぁー……」と息を吐くウラヌス。

 

「別にいいけどさ……

 神字の刻印作業、ビーンズにもジーッと見られ慣れてるし」

 

 おや。また変わった名前が出てきたな。

 

「ウラヌス、ビーンズともお知り合いでしたか」

「ああ、うん……

 ネテロの神字依頼、ビーンズがわざわざ俺のトコに足運んで頼みに来るんだよ。

 で、大概ネテロに関する愚痴聞かされながら、神字の作業するハメになんの」

「アハハハ」

 

 ひでぇ。邪魔しかしてないよ、それ。神字って、かなり集中力いるんだけどなー。

 しかも秘書が会長の愚痴こぼしに来るとか、ビーンズもなかなかやらかす。……ネテロ、オマエな。ビーンズに心労かけすぎだぞ。

 

「じゃあ、まずアイシャ用のベストね。

 1~2分ちょうだい」

「は?」

 

 思わず問い返す。2分て、なにが?

 ウラヌスはベストを地面に据えて、表面に人差し指を添える。それをぐりぐりと動かし始めた。

 

 え? なにこれ。私の知ってる神字と、全然書き方違うんだけど。

 

「……えっと、作業してる? してますよね……作業中にすいません。

 今、神字を書いてるんですよね?」

「うん、もちろん。

 ……ああ、そっか。アイシャは、俺が書くトコ初めて見るのか」

「へ?

 アンタ、アタシ達にも初めて見せてるんじゃないの?」

「いや。

 アイシャのヘアゴム、俺いじってたじゃん。あの時、書いてたよ。

 そりゃ、書いてるとも言わなかったけど」

 

 話しながら、ウラヌスはベストのあちこちに指を添えて、動かし続ける。

 

 これは……指を筆代わりに、オーラをインク代わりにしてるのか。普通、神字を書く時って専用の筆とインクを使うものなんだけど。しかも遥かに時間をかけてじっくり丁寧に、だ。

 

 私が神字の専門家じゃないのは、分かってたけど……

 

 これが専門家のレベルなのか? なんか尋常じゃない気が。

 

「……やろうと思えば、重量を適宜変化できる神字も書けるんだけどさ。

 正直、そっちは複雑で時間がかかる。しかも変化させる度にオーラ使うし、時間制限もあるから、あんまりしたくないんだよね」

 

 なるほど……ミルキの場合だと、自分の念能力による重力操作を、神字で固定させてる感じだったんだよな。つまりミルキ以外には出来ないやり方だ。

 

 ウラヌスのそれは全然違う。念能力を定着させるのではなく、そもそもそういう効果の神字を書いてる。おそらくは相当複雑な神字だ。確かにこれは、レベルが違うな。

 

 神字ハンター、か。

 

「じゃあ、ずっと重いのとかは簡単にできるの?」

 

 覗き込むメレオロンに、ウラヌスは少し唇をつぐみ、

 

「……いや、単純なだけ。時間が短いから簡単に見えるだろうけどさ。

 構造はシンプルだけど、神字を書く時にオーラを大量に籠めないといけない。今もガリガリ削られてる」

 

 ……。それが、あんまり重くするのを嫌がった理由の1つか。単純に重いほどオーラが要ると。そりゃそうか。

 

「……ん。出来たよ。

 ここに置いとくけど、持ち上げる時と着る時、充分気をつけてね」

 

 ウラヌスは身体の向きを変え、他のベストを手にする。早速、次の神字に取りかかったようだ。ホントに1分か2分で仕上げちゃったよ……

 

 置かれたままのベストを持ち上げる。うん、確かに200キロくらいあるな。袖を通して、トントンと飛び跳ねる。軽く準備運動。

 

「えぇぇ……

 なんで200キロ着て、そんな軽快な動き出来るの?」

 

「……そういう身体の動かし方をしてるからです。

 適当に動いたら、ドスドスしちゃいますよ。そりゃ」

 

 疑わしげなメレオロンにそう返しておく。隠形の延長線上だな。足音を立てない技術も、(こう)じればこうなる。

 

「おーい、もう1つ出来たよ」

『はやっ!?』

 

 30秒ぐらいしか経ってないぞ。

 そのベストを持ち上げる。……うん。60キロぐらいだな、多分。

 

「メレオロン、これを着てください」

「えぇぇぇ、本気? 60キロとか……」

「これぐらい普通ですよ。

 これを着て準備運動してください」

「うぅ……アンタが言う、普通の基準が怖い」

 

 失礼な。……並みの念能力者でも耐えられる重さだと思うんだけどな。

 

 

 

 重し付きのベストとリストバンドが一通り用意され、私達は修行の準備を終えた。……メレオロンはともかく、シームが修行開始前に潰れそうだけど。めっちゃぷるぷるしてる。オーラありで、この有様か……

 

「シーム、大丈夫ですか?

 これから動いてもらうつもりなんですけど」

「だ、だいじょうぶじゃないぃー。

 重すぎるってば、こんなのー」

「いきなり100キロはキツいんじゃないかな……

 いくらなんでも」

 

 疲れた顔でウラヌスが言ってくる。あなたの方がしんどそうですけどね。

 

「シーム、『練』で顕在オーラを全開にしても動けませんか?」

「もうやってるってばー!」

 

 それでこの状態か……ダメだな。もっと基準を下げるしかないか。

 

「……

 じゃあシームは動かなくていいです。そこでじっとしていても構いませんから、まずはその重さに慣れてください」

「座っちゃダメー?」

「ダメです。それじゃ修行になりません。

 可能な限り、立っていてください」

「うぅぅっ」

 

 メレオロンの方は、オーラ使ってる分にはまだ何とかなるみたいだ。修行開始前から、じわーっと汗かいてるけど。

 

「それでは、2人の修行方針を説明しますよ。

 まずシームが絶対的に不足しているのは、オーラ量とオーラを操る技術、基礎身体能力です。運動神経もあまり良くないと見受けます。

 それらを一度に鍛え上げるのにうってつけなのが、その重しを付けたままでの運動です。特別な戦闘技術や念能力を身につける前に、まずそこを徹底的に鍛えます」

 

 シームが今にも死にそうな顔してる。うむうむ。イ㌔。倒れても骨は拾ってあげよう。

 

「次にメレオロン。

 アナタはオーラ量については今でも充分だと思いますが、オーラで身体(からだ)を強化する技量、そして基礎身体能力が高くありません。運動神経もシームよりマシといった程度です。

 念能力の開発についてはまた相談しようと思いますが、その重しを付けたまま高負荷の運動をこなすのが強くなる一番の近道でしょう。

 とにかく、オーラで身体を強化することに集中してください。現状ではハッキリ言って、オーラの無駄遣いです」

「アタシ、特質だからそもそも──」

「私も特質です。

 アナタの練度はそれ以前の問題です」

 

 言い訳をピシャリとシャットアウトされ、ヘコむメレオロン。……まぁ言いたいことは分かるんだ。でもその言い訳を盾に、ちゃんと鍛えないのは違うからね。

 

「私はオーラが使えませんので、同じようにこの重しを付けて基礎的な修行を行います。身体能力の向上しか、とりあえず出来ることもないですし。

 後は──」

 

 私達の視線が、地面に座り込んだままのウラヌスへと向く。

 

「……まぁ、まずは自分達の修行を始めてよ。

 アイシャが休憩してる間にでも、俺はどうすべきか相談するから」

 

 うーん。ウラヌスの修行方針は、正直メドが立たないんだよな。この人、どう鍛えればいいんだ? オーラ量は増えないって話だし、技術は大体仕上がってるし。

 

 ……ま、後で考えるしかないか。彼に関しては情報が少なすぎるしな。

 

 パン! と手を叩き、

 

「それじゃ楽しい修行の始まりですよ♪

 シームは、最低でも後10分くらいそのまま頑張ってください」

「ぎええぇ……!」

「メレオロンは、まずそのはぁはぁしてる呼吸を整えてください。

 立ってるだけで消耗してるんじゃ話になりません」

「ぐへぇぇ」

「私が修行してる間もサボらないでくださいね。ちゃんと見てますから」

「俺も見てるぞー」

『ぎゃー!』

 

 ははは。いい返事だ。

 

 

 

 何とか呼吸を静め、身体をミシミシ言わせながら体操するメレオロン。慣れてきたら、走ってもらおうかな。いや、まずは歩き回ってもらおうか。必死になれば、まだまだ追い込んでも大丈夫だろう。あのオーラ量だし。

 

 シームは10分どころか、5分過ぎた辺りで膝をついてしまった。オーラが底を突くにはまだ早いから、身体が先に音を上げたのだろう。仕方ないので、重しを脱がせて休ませる。出来るだけ早く回復してもらわないとな。

 

 このメンバーで組手が出来るようになるまで、どれぐらいかかるだろうか。誰かが私の相手をしてくれるといいんだけど、いないんだよな。重しを付けた状態でする組手が一番総合的に鍛えられるんだけど……仕方ないから今は筋力アップに勤しむしかない。

 

「……なんなの、その、アホみたいな速さの、腕立て伏せ」

 

 体操しながら呆れた口調のメレオロン。これくらい普通ですって。片腕とか指立ては、流石にオーラ無しじゃキツイけど。

 

 

 

 修行開始から30分。私が全身を(くま)なく鍛えてる最中、メレオロンは広場を早歩きしてる。時々普通に歩いてるけどね。呼吸も荒いけど、まだいけそうな感じだ。

 

 シームはひたすら、立ちと休みの繰り返し。……じっくりやるしかなさそうだな。回復させる方法がないから仕方ない。

 

 ウラヌスは、『絶』でオーラ回復を図っている。まだ私は休憩に入らないし、そうしてもらうしかないか。時々メレオロンとシームに、もっと頑張れとか休めとか声をかけてる。

 

 

 

 ──1時間が経った。

 

 キリがいいし、私もそろそろ休憩に入ろうか。まぁ何だな。負荷が足りない分、何とか運動量で調整するしかない。レオリオさんもいないから、怪我しても治療してもらえないしな。

 

 シームはもうピクリとも動かない。大の字に寝転がって、呼吸をしてるだけ。オーラも限界みたいだし、これ以上は無理か。課題の多い子だ。

 

 メレオロンも、発破をかけて何とか走るところまでは頑張ったが、しばらく前に休憩を始めて、座り込んだままで動く気配がない。ウラヌスも声をかけないから、実際動けないんだろう。オーラは切れてないはずだけど、やっぱり基礎身体能力とオーラによる強化が課題だな。

 

 ただ、2人とも回復の為にしてる『絶』は見事だ。ごく自然に出来ている。気配消しはしてないけれど、オーラは綺麗に絶たれているのが何となく分かる。

 

「さて、いくらか回復しましたか?」

 

 ビクっとする後ろ2人。いやいや、アナタ達は休んでていいから。

 座っているウラヌスは、見下ろす私を見上げ、

 

「そこそこね。

 ……アイシャは重し外さないの?」

「え。

 まぁ付けたままでも休憩はできますし」

 

 ウラヌスは釈然としない顔で、

 

「それはいいけど、せめて座りなよ……」

 

 リクエストされたので、大人しくウラヌスの前に座る。運動してなければ、回復するんだけどな。

 じっと見てくるウラヌス。

 

「……大したもんだよ。

 確かに計300でも負荷が足りてないみたいだね」

「ああ、分かりますか。

 じゃあ重くしてもらえます?」

「……何と言うか、キミはそうやって無茶したがるからなぁ」

 

 おおぅ。なんかチクっと刺された。

 

「同じ重さのリストバンドを増やすぐらいならしてもいいけど、明日ね。もう手持ちないから。

 キミの付けてるヤツを2人が後日使うかもしれないし、それはそのままにしたい」

 

 なるほど……ならいいか。別に急いで必要なわけでもないしな。

 

「ええ、それは分かりました。

 ……そろそろアナタの修行をどうにかしたいんですが」

「ま、そうだよね。

 俺もどうしようか困ってるんだよな……」

 

 ふむ……これ以上どうやって強くなればいいか、相談に乗ってほしい感じか。ウラヌスなら、大抵のことは自分で分かっちゃいそうだもんな。

 

「アイシャと組手するのが一番いいんだろうけど、俺の体術はオーラありきだしな……

 オーラがあっても、メレオロンを相手するわけにはいかないし」

「……その辺は、今すぐにはどうにもならないでしょうね」

「うん。だから困ってる。

 俺がおよそ鍛えられる身体してないってのが、一番の問題なんだけど」

「……ちょっと、じっくり話さないといけないようですね。

 2人ともキツそうですし、この後は念の話をしますか」

「そうしようか。

 ハナから念を使ってるから忘れそうになるけど、2人が念能力についてどれぐらい理解してるか、確認できてないしな」

 

 確かにね。念に関する基礎知識は、とても重要なモノばかりだ。うっかり知らなかったでは済まされない。改めてその重要性を認識してもらう意味でも、復習はさせた方がいいだろう。

 

 私は立ち上がり、ぐったりしてるメレオロンとシームに目をやる。

 

「2人とも、本格的に休憩しましょう。

 水と栄養を摂ってください」

「よっしゃ!」

「わーい……」

 

 メレオロン、まだ元気じゃないか。ちょっと走らせようかな。……待つのもアレだし、後でいいか。

 

 

 

 

 

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