どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第六十二章

 

 マサドラのトレードショップで、ウラヌスが不要と判断したカード67枚を売却し、更に約13万ジェニーを下ろして、計20万ジェニーを持ってお店を後にした。

 

 聖騎士の首飾りを4人分確保できたから、防御スペルは手放すかなと思ってたんだけど、『防壁』を1人1枚ずつだけ残していたりする。

 

 夜のマサドラを散策しながら、そのことを不思議に思って尋ねてみると、

 

「常に聖騎士を身に着けてるなら、『防壁』はいらないね。

 でもそれだと不便だし、普段から首飾りって着けたくないじゃん?

 うっかり、有効カードの変身解いちゃうかもしれないしさ」

「それはまあ……そうですね」

 

 ウラヌスもポケットに入れてるだけだもんな。私もこの手の装飾品は正直着けたくない。父さん母さんが勧めた物ならともかく……。指輪は外すわけにはいかないから慣れるしかないんだけど。時々外して、別の指に着け替えたりはしてるけどね。お風呂とかで。

 

「バインダーさえ出してれば、攻撃スペルを食らっても『防壁』を1枚持ってるだけで、スペル使用待機状態になるからね。

 待機状態の15秒以内に手で首飾りに触れれば、それだけでスペルを跳ね返せる」

 

 なるほど。そういうことなら問題ないな。

 

「んー……でもさ」

 

 まだ疑問があるのか、シームが口を挟んでくる。

 

「それなら、残しとくのは『反射』の方がいい気がするけど。

 『防壁』より『反射』の方が強いんでしょ?」

 

 ウラヌスは小さく笑みを浮かべ、

 

「基本的にはね。でも、必ずしもそうとは限らないんだ。

 首飾りにも言えるけど、『交換』の攻撃スペルが防げない。『防壁』じゃないとね」

 

 それを聞くと、メレオロンが首を傾げ、

 

「なんだっけ、『交換』の効果って。

 カードを交換?」

「そ。

 自分と相手のカード1枚をランダムで入れ替える攻撃スペル。

 首飾りも『反射』も、相手の攻撃スペルを反射する効果だから──」

 

 私はポンと手を打つ。

 

「なるほど、確かに反射しても防げませんね。

 自分と相手を逆にしたところで、結果は同じですから」

「そういうこと。『防壁』だと効果自体を打ち消すから、『交換』も防げるんだ。

 普通は『徴収』でやると思うけど、予めリスキーダイスで大吉を出してから『交換』を使われるのも怖い。指定ポケットも対象だからね、『交換』は」

 

 はぁー……

 

 話をしてて、改めて思う。このヒト、ほんっと歩く攻略本だ。攻略って意味なら、もうグリードアイランド極めちゃってんじゃないか?

 

 

 

 それなりに歩いた後、人気(ひとけ )のない路地裏で立ち止まる。

 

「じゃ、そろそろ夜の観光に行くよ。

 いい?」

「ええ、行きましょうか」

「早く行こ行こ」

「疲れてるから、あんまり長々観光はしんどいけどねぇ」

 

 メレオロンの言葉に、ウラヌスが苦笑で応える。

 

「分かってるよ。

 観光はそれなりで切り上げて、今夜もオータニアの旅館に泊まるから。

 ブック」

 

 バインダーを出し、1枚カードを取り出すウラヌス。

 

「──『同行/アカンパニー』オン! ルビキュータ!」

 

 

 

 浮遊感。つかの間、闇色の空を飛翔する。

 

 

 

 短い空の旅を終え、足下に大地の感触が戻る。修行で疲れてリュックも背負ってるのに、シームはもうふらつきもしない。慣れたもんだね。

 視線を目の前の都市に向ける。

 

 礼拝都市ルビキュータ。

 

 宗教的な都市って聞いてたから、もう少し厳か(おごそ )な雰囲気を想像してたんだけど……

 

 入口から見ても、キラッキラだな。すんごい色鮮やかな照明があちこち見えるんだけど。

 

「なにここ。夜の遊園地?」

「あ、それですね」

 

 思わずメレオロンの言葉を認める。遊園地ってか、テーマパーク? 今日はイベントの日とか、そんなんか? って思ってしまう。

 

「えっ、遊園地? 観覧車とかあるの?」

 

 本気で聞き返すシームに思わず吹き出す。

 

「シーム……

 オマエ、マジでそんなもんあると思ってんの?」

「え?

 でも何かありそうな雰囲気じゃん」

「うーん……そりゃ雰囲気はあるけど」

 

 それについては、私も同感である。

 なんというか明るいなぁ……。都市の建物はたくさんの明かりが(とも)り、チカチカと点灯すらしている。むしろ大都市の雰囲気だ。

 

「それじゃ散歩しよっか」

「散歩はいいけど、目的地はないの?」

 

 メレオロンが尋ねると、ウラヌスは少し考え、

 

「いつも通り、主要施設の道案内かな。

 イベントとかは流石にやらないけどね。それはまた後日にしよう」

「夜でもできるイベントがあるってことですか?」

 

 私が尋ねると、ウラヌスは小さく微笑む。

 

「うん。めんどくさいから、できればやりたくないけどね。

 ま、散歩がてら色々説明するよ。行こ」

 

 

 

 都市の街並みは、外から見た以上にキラッキラしていた。確かに宗教施設なんだけど、まるで競うように建物の内外問わず光が溢れている。電気使いまくってるな……

 

「どうしたの、変な顔して?」

 

 うっ。ウラヌスにそんなこと言われた。……いやまぁ悪意はないんだろうけど。

 

「いえ……

 華やかな感じで、礼拝都市なんて雰囲気じゃないなって」

「ああ、まぁね。

 宗教観は人それぞれだと思うけど、神々(こうごう)しい雰囲気は全くないかな」

 

 肩をすくめるウラヌス。なおも私が微妙な顔をしていると、

 

「アイシャ的には、宗教っていうとやっぱりジャポン風がイメージとしてあるの?」

 

 うーむ……。そう言われると語弊(ご へい)があるな。

 

「私も色んな場所を旅してますし、そういうわけでもないんですけど……

 ただ、何かに祈る場所として、こういう華やかな感じが相応しい気はしませんね」

 

 アゴに手を当て、返答を考えるウラヌス。歩く私達を、建物から射す一筋の光が照らしだす。

 

「うん……それはその通りかもね。

 まぁアレだよ。こういうトコは、人が集まってワイワイやるのがむしろメインだったりするし。要は宗教行事を楽しむのが目的って言えばいいかな。別に祈らないわけじゃないけど、それはあくまでもそのうちの1つっていうか」

「はぁ……

 それは分からなくもないですが」

「言い方はアレだけど、だいたい宗教ってのは2通りだね。

 外に広げる宗教と、内に籠もる宗教。内に籠もるタイプは、厳かで静かに祈るイメージかな。あまり騒いだりするのは好まない傾向がある。

 外に広げる宗教は拝金主義な一面も強くて、賑やかで楽しいけど、みんなで意識を共有するって点でしか救いはないかも。困った時により助けてもらいやすいのはコッチだろうけどさ」

 

 ふむ……言ってることは分かるんだよな。静けさを求めるなら、エリルにあった仏閣のような場所がいいんだろう。

 一堂に会して祈りを捧げる感覚が馴染まないのは、私の人生観がそう思わせるんだからどうしようもない。……まぁ宗教自体、あんまり好きじゃないもんな。

 

「あっ。あそこに何か売ってるよ」

 

 シームが教会のような施設前に出ている露店を見つけ、走ってく。メレオロンが早足で追う。やれやれ、バラけると危ないってシーム分かってるのかな? まぁ仮に襲われても、これくらいの距離ならどうとでもするけどね。街中だし。

 さりげにウラヌスも周囲の警戒を強めてくれてる。もちろん杞憂で済み、私達は露店の近くで合流する。

 

 やはり教会だった建物の入口を空ける形で、左右に2つずつ露店が出ていた。シームが先んじてそうしているように、右から順番に見ていく。

 

 1つ目は焼き菓子の店。パンを平たくして焼き上げたような食べ物を売っている。うむ、正直言って美味しくなさそうだ。お腹が空いてれば別だけど。

 

 2つ目は色んな本が置いてある。教会そばに相応しく、教本が並んでいる。寓話(ぐうわ )らしき児童書も並べられていた。……子供とかあんまりいないと思うんだけどな、グリードアイランドって。少なくとも、こういうのを喜んで読みそうな年齢の子は。

 

 少し歩き、石段の上にある教会を眺める。ここも開いた門の内外に光が溢れ、この時間でも施設に入れそうな感じだ。入ったところで目的もないけど。

 

 3つ目は宗教的なグッズの数々。御守りや刺繍、像が並んでいる。アクセサリーも色々ある。メレオロンが熱心にアクセサリーを物色していた。

 

 4つ目は焼きとうもろこし屋。うっ……ちょっといいニオイ。シームがその露店の前でじっとしている。

 

「そんなの、邪魔になるから買わないぞ」

 

 通りすがったウラヌスに水を差され、ぶすっとするメレオロン。焼きとうもろこし屋の前まで来たウラヌスが足を止め、

 

「えっと……食べるの?」

 

 懐疑的に尋ねてくる。まだ食うの? というニュアンスがひしひしと伝わってくる。

 

「おいしそうかなって思ったけど、お腹空いてないし別にいい」

 

 シームがさらっと流したので、私も食べたいとは言えない。私を見て軽く笑むウラヌス。くっ、見透かされてるな。

 

「こら、メレオロン。もう行くぞ」

「あーもう。見るぐらい良いじゃない。

 分かったわよ、行くわよ」

 

 

 

 街中の散策を続けながら、ウラヌスが攻略情報を語っていく。

 

「ルビキュータにある指定ポケットカードは3つ。

 『身重の石』。

 『即席外語スクール』。

 『天罰のつえ』。

 身重の石は、夜間イベントなんだけど教会でバトルになる上、6時間以上拘束される。ランクSのカードだけあって、誰かと組んで挑戦しないとかなりキツいイベント。

 即席外語スクールは、ヒヤリングイベント。教会を訪れる信者の言葉を聞いて、何語か当てる。10連続正解でクリア。失敗したら、1万ジェニー寄付しないとイベントに再挑戦できない。

 天罰のつえも、身重の石と同じバトルイベント。ただこっちは2時間拘束で、昼間だけ挑戦できる。

 ここのイベントはそんな感じかな」

「やっぱりクリア前の情報、なんですよね?」

「そりゃね。

 とは言っても、ここは変更ないと思う。

 知ってたところで、そこまで楽にはならないからね」

「ブループラネット関連の宝石イベントはないんですか?」

「あるね。ルリが取れる。

 指定されたアイテムを集めて交換してもらうイベントで、こっから遠いところに集めるべきアイテムがある」

「それはキツそうですね……」

「知らなきゃそうだねー。

 知ってれば、アイテムが集まったタイミングで交換すれば済むんだけどさ」

 

 

 

 トレードショップとデパートへ案内した後、ウラヌスは街の中央付近にある、高台への階段を登っていく。

 

「わぁー!」

「ふぅん。いいわね、ここ」

「へぇー……

 ホントいい眺めですね」

 

 明らかに街を展望する為の場所なんだろう。(きら)びやかな宗教施設が、競うように色とりどりの光を放ち、キラキラと明滅する。

 

「だろ?

 ここに連れてきたかった、っていうのは大げさだけど。

 ルビキュータ観光のシメとしちゃ悪くないでしょ」

 

 ウラヌスは静かに微笑みながら、そう語る。

 なるほどね……確かに観光だ。施設には1つも入らなかったけど、散策コースとしては満足のいく内容だった。

 

 彼は展望用の柵にもたれながら、ポケットから携帯を取り出し、

 

「そろそろかな……」

 

 ウラヌスがつぶやいた後──

 

 ────カラーン……カラーン……と街のあちこちから鐘の音が鳴り響く。

 

 メレオロンとシームが周囲に視線を向ける。空間を満たす心地よい鐘音。(しょうおん )こういうのも礼拝都市ならでは、か。

 

 繰り返される鐘の音がやむ。鳴り始める前と変わらず、色づいた光が視界に瞬いている。

 

「午後9時を告げる鐘だよ。

 ……じゃ、そろそろいい時間だし帰ろうか」

 

「やったー!」

「待ってましたー!」

 

 シームとメレオロンが口々に喜ぶ。喜んでる理由はそれぞれ違うんだろうけど。

 

「で、泊まる場所は昨日と同じでいいの?

 別にここで泊まるって選択肢もあるんだけど」

 

 ウラヌスが提案してくるが、

 

「私は昨日と同じ場所がいいです。ここは何だか落ち着きませんし」

「ぼくも!」

「アタシも。

 ……やっぱり、知ってる場所だと落ち着くじゃない」

「まーねぇ。

 そんじゃま、リターンオン、オータニアへ参りますかね」

 

 

 

 移動スペルでオータニアへ戻った私達は、昨日と同じ旅館『時雨紅葉』へ。

 

 

 

「にゃーん」

「きゃー!」

 

 サクラの鳴き声に、シームの歓声が応える。

 

 やたらきゃっきゃと喜ぶシームに、光り輝くにゃんこを乗っけたウラヌスが、サクラをぽむぽむしてほとんど光らない状態に押さえ込む。

 頭からぴょんと跳ね、あぐらをかくウラヌスの正面に下りるサクラ。とことこシームのところへ近づいていく。

 

「さっくらー♥」

「にゃん」

 

 大喜びで迎え入れ、抱き上げるシーム。桜も嬉しそうにしてる。

 

「はぁ……。ま、ご満足いただけたならいいけどさ。

 そんじゃ今のうちに風呂もらっとくか。

 アイシャも入ったら?」

「え? ええ……」

 

 伸びをしながら誘ってきたウラヌスに、思わず返事する。……私も、ちょっとサクラを触りたかったんだけどなぁ。

 

「じゃアタシもー」

「コラ、メレオロン。お前は留守番。

 守りをバラけさせんなっつの」

「えぇぇぇ」

「たまにゃノンビリ1人風呂ぐらいさせろってんだ」

 

 あー、その為か! 助かる、すごい助かる。

 

「ウラヌスが離れても、桜って平気なの?」

「にゃ?」

 

 シームが尋ねる。そうだね、サクラのオーラ補充は当然できなくなるはず。

 

「だから光量を最低まで下げたんだよ。

 その状態ならほとんど消費しないから、1時間ぐらいは保つよ。

 だからって、あんま無茶しちゃダメだぞ」

「はーい」

「にゃーお」

 

 抱っこされたサクラも返事する。うぅむ、何だろな。とっても不思議な感じだ。

 

 

 

 久々にゆっくりまったり広いお風呂に浸かり、充分に身体を解せた私は、「はぁー」と息を吐きながら部屋へと戻っていく。

 しかし今1人で動いてるけど、いいんだろうか。まぁ四六時中ずっと誰かと一緒だと、流石に息詰まっちゃうんだけど。……それはウラヌスも分かってて、あえて1人にさせてくれたのかな。

 

 部屋の戸を開けると、布団の上でころころしてるシームとサクラ。

 ウラヌスとメレオロンは、なんか対戦ゲームしてた。う、うん……私の荷物にゲーム機しまってたはずなんだけどな。いいけど……

 

「あ、ごめんアイシャ。

 ゲーム機で遊ばせてもらってるよ」

「アタシが勝手にリュック漁ったんだからねー。

 ウラヌス責めちゃダメよ」

 

 2人とも遊びながらそんなこと言ってる。いいけどさ……下着とか入ってるから少しは遠慮してほしいな。

 そして飽きもせずに、じゃれあってるシームとサクラ。こっちはこっちで微笑ましいというか。

 で、私あぶれちゃってるな。……『点』でもしようか。

 

 ゲームの音、3人の声と猫の鳴き声が響く中、私は布団の上に腰を降ろし、3人に背を向ける形で壁に向かって胡坐をかく。禅を組むほどではないし、というかこの状況で禅はしたくないけど。

 

 …………

 

「あああ、ゲージが、あと少しゲージがあれば……」

「無駄無駄無駄。メレオロンの腕じゃ10年早ぇ」

「オノレェー」

「アハハハ」

「にゃーん」

 

 ……。……

 

「ウラヌス、ジュース買っていい?」

「……まぁいいよ。ブック」

「この子、なにか飲むの?」

「飲まねェよ、念獣なんだから。ほら、お金」

「スキありぃっ!」

「口で言ってりゃ世話ねぇ」

「ああああ! ヨソ見しながら片手で超必やりやがった! なにコイツ!」

「練習すりゃ、パッド見なくても指先でコマ入力くらいできるよ。テメーは修行不足だ」

「ふざけンうぎゃああああっ!」

 

 ……うるせぇよ。いくらなんでも。

 

 諦め、私は振り向いてとりあえず抗議しておく。

 

「みなさん、夜中なんですからもう少し静かに──」

「うにゃ?」

 

 えぇと。サクラに首傾げられても困るんですが……

 

「そだな。

 明日も早いし、今日はそろそろ休もっか。つか2人とも、寝る前に風呂入っとけよ」

「さんせー。……いつまでやったって勝てそうにないし」

「えぇぇ。もーちょっとー」

「寝る前のちょっとの時間だけって約束だろ?

 明日も呼んでほしけりゃ修行サボんなよ」

「ちぇー。……分かった。

 ウラヌス、お釣りもらっていい?」

「いいよ。

 ……あんま無駄遣いすんなよ?」

「うん。じゃあ2人ともお休み。

 ……じゃあね、桜。また明日」

「にゃん」

 

 サバサバとした様子でメレオロンが、名残惜しそうにシームが、揃って2人退室する。

 

 しばらく閉まった戸を眺めた後、サクラへと手を伸ばすウラヌス。

 

「あの……」

 

 ぴたっと手が止まる。やや疑わしげに私を見て、

 

「……もしかして、アイシャも?」

 

「えっと。まあ、ちょっと興味あるなーと思ってたんで」

 

 ウラヌスはしばらくこちらを見た後、サクラに手を触れる。

 

「……別にいいけど」

 

 しばらくして手を離す。どうやらオーラを少し足したようだ。

 サクラは私を見て首を傾げた後、こちらへと歩いてくる。

 布団の上に座る私の膝に、片足を乗せてきた。

 

「にゃ?」

 

 おおお。膝、膝に感じる肉球の柔らかさ。

 しっぽをゆるーりゆるりと振って、私に『なに?』と聞いてくるこの愛想。

 ウラヌスが微妙そうな顔で見守っている。

 

 私が抱きかかえようとすると、ぴょんと跳ねて私の胸元に飛びついてきた。慌てて抱え込む。

 うはー、やわい。これはヤバイやわい。もふもふでプニプニっすわ。軽いってのもあるけど、マシュマロを抱いてるような感触だ。これはシームが手放さないわけだ。

 

「……ウラヌス」

「なに?」

「この子は人をダメにしますね」

「今すぐそいつ放してくれる?」

 

 無視して、にゃんこの感触を楽しむ。

 

「ふにゃー……」

 

 おおお、なんか聞き覚えのない鳴き方した。

 でも私の胸にすごい抱きついてるのが、気になると言えば気になる。……うん。

 

「ウラヌス。

 ……ほんとにこの子、自律して動いてるんですか?」

 

「……。

 俺的にその状態、見ててツライ。

 さっきからヤメロ離れろって指示出してんのに、そいつガン無視してるし」

 

 ふぅむ。まあ嘘ではないんだろう。彼の性格考えても、嫌がってるのはホントっぽいし。なら気にはすまい。もにゅもにゅ。

 

「にゃんにゃん」

「にゃんにゃん」

 

 なんと。こっちに鸚鵡返ししてきたよ。伝わったの? いや何とはなしにニャンニャン言っただけなんだけど。

 

「この子って、他の猫と話せるんですか?」

「いや、無理だよ。

 そいつがにゃーにゃー鳴いてるのって、人語が話せないから仕方なしにだし。……そもそも猫の会話って、ニュアンス的に伝えあってるだけで、あれは話し言葉じゃないと思うけど」

「サクラ、私の言葉が分かるんですか?」

「にゃあ」

 

 ほう。ぴかぴか光ることより、こっちのが高性能じゃないかな。すごい念獣じゃないの、これ? 少なくとも、グリードアイランドの指定ポケットにある念獣アイテムクラスだと思うけど。

 

「ちなみに、この子の性別は?」

「にゃ?」

「……メスだけど。

 バステトって、太陽の女神のことだし。猫の神様でもある」

 

 へぇー。なるほどなるほど。太陽の女神だから、光ってたんだ。で、猫の神様と。……まるっきりウラヌスの趣味かと思ったら、ちゃんと元ネタありきだったか。

 

「ウラヌス。

 この子と一緒に寝ていいですか?」

 

「……アイシャ、無理って分かってて聞いてるよね?」

 

 うん、分かってました。残念。

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 

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