どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第六十四章

 

 どっちも要らないそうなので、ありがたく2人分の焼き鳥と焼きイモをちょうだいする。アツアツをうしうしほくほくしながら、やけに長いこと悶えてるウラヌスを鑑賞した後、

 

「……そろそろ寝ます?」

 

「あ、え?

 うっ、うん……寝よう。ブッ……ク」

 

 まっかっかになって痙攣しつつ、バインダーを消すウラヌス。そんなにサクラの記憶が刺激的だったんだろうか。うーん……

 神字を教えてもらえないか相談したかったんだけど、それどころじゃなさそうだしな。また今度にしよう。

 

 ウラヌスの消したバインダーが、ボン! と再び出現した。んっ!?

 

「──他プレイヤーがあなたに対して『交信』を使いました──」

 

 バインダーからアナウンスが流れる。『交信』……? いったい誰から? 救助連絡の可能性もあるけど、隣の2人は──無事だな。特に変わった様子もない。

 

『…………』

 

 沈黙するバインダー。寝転がったウラヌスが、緊張と不機嫌をまじえた顔を見せる。

 

「誰だよ、こんな夜中に」

 

『……

 オレだ。モタリケだ』

 

「はぁぁぁー……」

 

 長い溜め息を吐くウラヌス。私も同じ気分だよ……。ウラヌスは緊張を解きながらも、いっそう不機嫌な表情になった。握り拳を作ってぷるぷるさせた後、大きな音を立てたくなかったかそれを振るうことなく手を開く。

 

「……んだよ、突然。

 こんな時間に連絡入れて驚かしやがって。いったい何の用だ?」

 

『そ、それは悪かったよ。

 その……お前ら、真実の剣を手に入れて、もう売ったんだろ?』

 

 ふむ。モタリケさんは私達が組んでるのを知ってるし、月例大会の会場に来て私が優勝したのを見てたなら、そう判断するのも難しくないか。

 

「……だったらどうした?」

 

『ちょっと……その……言いにくいんだが』

 

「連絡しといて、何が言いにくいだ。

 時間がもったいないから、さっさと言えや」

 

『……少し恵んでくれないか?』

 

 ウラヌスがものすごくゲンナリした顔で私を見る。うん、そうですね。これは嫌すぎる。

 

「お、ま、え、さ……

 俺がお前に恵んでやる義理がどこにあんだ?

 久々にゲームへ戻ってきた初っ端かましやがって、マジでムカついてんだけどな?

 ヒトが攻略してるところを微妙に邪魔した挙げ句、程度の低い頼みごとしやがって……

 いま目の前に居たら、確実にシバいてるぞ」

 

『そ、それも悪かったって。

 その……女房が、ここんとこ機嫌悪くて。

 稼ぎが悪いだのなんだの、すげーキレてるんだ』

 

 はぁぁぁー……、と彼は重い息を吐いた後、

 

「そうかい。

 だったら嫁さんに、テメーも働けっつっとけ」

 

『言えるか!

 ……そんなこと言ったら離婚まっしぐらだよ』

 

「知らねーよ。

 つか何で俺なんだよ、ほか当たれや。『交信』まで使って寝言ほざくな」

 

『頼むよ! 別に大金くれってわけじゃないんだ!

 ちょっと贅沢できるぐらいで構わないから!』

 

「ヒトの金でちょっと贅沢とかナメとんのか。

 働け、そのぶん余計に」

 

『仮にそうするとしても、その給料出るのはしばらく後だろ!

 オレは今っ! 欲しいんだよ! 女房の機嫌が悪いのは今なんだから!』

 

「はぁー……夜中に熱弁うぜぇぇ。『交信』切れるまでダラダラ粘ったろ」

 

『頼むぅぅぅぅ! この通りぃぃぃ!』

 

「この通りと言われても、お前の姿は俺には見えましぇーん。ざん、ねん」

 

『そんなこと言わずに頼むよぉぉぉっ!』

 

「……」

 

 足をぱたぱたさせるウラヌス。アレだな……こうやって拝み倒されるのに弱いんだろな。口はメチャクチャ悪いけど。

 とりあえず小声で告げる。

 

「ウラヌス……

 私は少しくらいなら構わないと思いますけど」

「えええ……

 こいつ絶対調子に乗ると思うよ。だって金貸してくれじゃないんだよ。金くれだよ?

 今やったら、また金くれって言ってくるよ?」

「うぅん……」

 

 だろうなぁ。人間困ったらワラにも縋るしな。はてさて。

 ウラヌスは悩ましげに額をぐりぐり指でこねた後、

 

「……

 モタリケ。どっちにしても、タダで金くれてやるほどお人好しじゃないんだ。

 給料まで待てないって言うなら、軽くこっちに付き合え」

 

『えっ!? な、なにさせる気だ……

 まさか怪物と──』

 

「誰がお前なんざ戦力に数えるか。うぬぼれるな。

 カード持ちだよ。バインダーのフリーポケット、45枠全部空けられるか?」

 

『あ、ちょっと待ってくれ!

 えっと……』

 

 しばらく沈黙が続く。

 

『……金とか、どうでもいいカードを(よ )ければ30枠くらいは……』

 

「嫁さんに事情説明して、45枠ムリヤリ空けろ。

 そっちに預けりゃ何とかなるだろ。

 明日の朝、こっちから『交信』すっから返事用意しとけ。

 マサドラでスペルカード買うから、荷物持ちになれ。それで報酬くれてやる」

 

『ホ、ホントか? 嘘じゃないよな?』

 

「信じないなら別にいいさ。この話はこれで終わりだ。

 その気があんなら、明日の朝9時くらいに、アントキバの入口まで迎えに行くから準備しとけ」

 

『わ、分かった! 何とかするよ。

 とりあえず明日の朝、そっちの『交信』を待てばいいんだな?』

 

「ああ。バインダー、何とかして空けろよ?

 30枠なんかで来たら、そのぶん報酬削りまくるからな?」

 

『う、うん。

 じゃあ女房と相談してくる。明日ホントに頼むぞ』

 

「……ああ。分かったからもう切ってくれ」

 

『頼んだぞ!』

 

 ……。

 

「ブック」

 

 ウラヌスがバインダーを消し、ぱたんと両足を布団に落とす。うつ伏せのまま、

 

「…………

 めんどくせぇぇ……

 モタリケ、ちょーめんどくせぇぇぇッ……!!」

 

 ですよねー。

 なら断ればよかったのに。……ソレができないのがウラヌスなんだよな。知ってた。

 

「アントキバへ行くなら、朝食はそっちで摂った方がいいんですかね?」

 

 ウラヌスは顔を上げ、アセロラジュースを手に取って一気に飲み干す。

 

「ふぅー……ついでにガルガイダー取るの?

 つーことは、アイシャはモタリケと一緒にあのメシ屋で食いたいんだ? ふーん」

 

「……。

 朝食はここで食べましょう」

 

 嫌な記憶が過ぎり、首を横に振った。いやだイヤダ。ちっとも美味しくないの想像できちゃうよ。

 

 

 

 

 

 次の日の朝。

 

「はぁぁぁぁぁぁー?」

 

 事情を聞いたメレオロンの、猛烈に不機嫌な声が私達の部屋に響き渡った。

 

「どうしてあんな浮気野郎と、ご一緒しなきゃいけないのよ!」

 

 力強い拒絶の言葉に、朝から疲れた顔のウラヌスが、

 

「お前もクチさがないな……

 許してやれとは言わないが、そこまで嫌がらんでも」

「なーによ。

 アンタ、浮気容認派なの?」

「なんだ、その謎の派閥は。

 あの時あんだけボロクソ言ってやったのに、まだ気が済まねーの?」

「……アタシが言ったわけじゃないから言い足りない」

「あー、まぁ、そりゃいいけどさ。

 でも正体隠し通すつもりなら、たぶんモタリケと口利かない方がいいぞ?」

「それよ。

 一緒に行動するなら、シームはまだしも、アタシは確実に窮屈じゃない。

 しかもなんであんなやつと……」

「んー」

 

 頬をぽりぽり掻くウラヌス。

 

「……ごめん。断りきれなかった」

 

 クチをぽかんと開けて、カクンと首を垂れるメレオロン。それ言われちゃったら、どうしようもないよね。……だって私達も同じことしてんだもん。

 

「で、どうする?」

「どうするって……

 断りきれなかったって、自分で言ったじゃない。

 しかも買い出しに誘ったのはアンタの方みたいだし」

「その通りだけど、メレオロンが絶対イヤだって言うなら考え直すさ。

 1日の計画練り直しになるけど……。メレオロンだけ別行動とか」

「あーもー。

 そんなメンドくさいことしなくていいわよ。一緒に行けばいいんでしょ。

 ……長時間じゃないのよね?」

「長くても午前中だけだな。

 あいつと長々一緒にいたくないのは俺も同じだよ」

「分かった。

 細かいスケジュールはアンタに任せた」

「そっか。

 ……シームは?」

「んー。別に反対はしないけど」

「いちおう確認するけど、アイシャもいいんだよね?」

「構いませんよ。

 ウラヌスも考えあってのことでしょうし」

「……

 信用してくれるのは嬉しいんだけど、指摘はどんどんしてね?

 実際『再来』が少ないから、早いうちにマサドラでスペル補充するつもりだったけど」

 

 

 

 バインダー最後のページに入れっぱなしにしている『交信』をそのままに、ウラヌスが操作してモタリケさんの名前を選択する。

 

「ウラヌスだ。

 そっちはどうだった?」

 

『……ちゃんと45枠空けた。これでいいんだよな?』

 

「ああ、問題ない。

 予定通り9時ちょうどに、アントキバの入口で待ってろ。『再来』で飛んでくから。

 後、朝は先に食っとけよ? こっちも朝食を済ませてから迎えに行く」

 

『分かった。じゃあ後で』

 

「ああ、後で」

 

 操作して、通話を終えるウラヌス。消えた『交信』をご丁寧にフリーポケットからまた最後のページに収め直してる。

 

「さて、朝メシ食いに行くか」

 

 

 

 旅館で朝食を摂る私達。昨日の夜はメレオロンが缶ビールを2本飲んで、酔っ払う前にシームがやめさせたとかそんな雑談をした後、朝から着替えついでのお風呂に入る。

 

 時間もないのでメレオロンと一緒だったけど、特に何かされることはなかった。うん、まあ、大人しくしてくれるなら別に文句はない。

 

 

 

 時間を調整して、散歩がてらオータニアの入口まで移動する。朝からリュック背負って動くのにも慣れたのか、メレオロンもシームも嫌な顔はしなかった。

 

「俺がまず『漂流』で都市を回ってから、『再来』でここに戻ってくる。

 その後、全員『再来』でアントキバな」

「ん?

 別にアンタはここに戻らなくても、直接アントキバへ行けばいいじゃない」

「んー。いや……

 そうすると、俺より早く3人でアントキバへ行くことになるだろ。

 あっちでモタリケと一緒に、俺のこと待ってるの気まずくないか?」

「あー……」

「俺が『漂流』使って飛んだ先でトラブったりしたら、すぐ行けないかもしれないしな。

 どうせ『再来』1枚余分に使うだけだし、慎重に行こう」

 

 そんな話をした後、『漂流』で飛ぶウラヌス。

 

 

 

 しばらくして、ウラヌスが戻ってくる。

 

「ただいま。早速アントキバに行こうか」

 

 おや? いつもみたいに、どこへ行けたか教えてくれないのかな。

 

「ちなみに今の『漂流』でどこへ行けました?」

 

 私の質問に、しばし考えるウラヌス。

 

「……その話をしだすと長くなりそうだし、後にしよう。

 モタリケの件が片付いてからの方がいいと思う。スペルカードを買うから、またすぐにでも『漂流』は使うだろうしさ」

「あ、なるほど」

 

 バタバタしながらも、私達は『再来』でアントキバへ飛んだ。

 

 

 

 アントキバの入口には、既にモタリケさんが待っていた。……3日前と同じ服着てるな。私達もだけど。

 

「お、おお! 来てくれたか!」

 

 軽く首を傾げながらウラヌスは、

 

「そんな喜ばれてもな。

 だらだらする気はないから、ちゃっちゃと動くぞ。まずトレードショップな」

 

 

 

 アントキバのトレードショップまで歩いていく私達。ウラヌスとモタリケさんが並んで歩き、その後ろに私、最後尾にメレオロンとシームがついてくる。

 

 時々後ろの私達に目をやるモタリケさん。不機嫌そうにウラヌスが、

 

「……チラチラ見んなよ」

「いや、なんか気になってな。

 オマエ、基本1人で動いてたのに珍しいなって……」

「ほっとけ」

 

 

 

 トレードショップの近くで全員バインダーを出し、フリーポケットの状態を改める。

 モタリケさんが奇妙そうにしながら、

 

「……レアカード持ってるわりに、攻撃スペルが全然ないな」

「悪いかよ。

 どうせ使うアテがないしな。引いた端から売ってるよ」

「誰からも奪わずに、クリアを目指してるのか?」

「今ンとこはな。

 いたずらに喧嘩売って他人のヘイト集めるのは、バカのやるこった」

 

 ウラヌスの中で、ラターザの件はなかったことになってるな。別にいいけど。

 

「ふぅん。

 ハメ組のやつらが聞いたら、怒りそうなセリフだけどな」

 

 モタリケさんの言葉に、ウラヌスが半眼になる。

 

「あいつら、まだいんの?」

「アレ、知らないのか?

 ……ああ、しばらく外にいたからか。久々に戻ってきたって言ってたもんな」

「戻ってきたくても、入って来れなかったからな。

 で、ハメ組ってまだここにいんのか?」

 

 難しい顔をするモタリケさん。なんだろ。

 

「あいつら、クリアを目の前でかっさらわれて仲間割れしたらしいんだよ。

 だからハメ組自体は解散してる。

 ……ただ、あいつら全員がゲームから出たわけじゃないみたいなんだ」

 

 あー……やっぱり。ホントご愁傷様でした。ズルっこいことしてたし、因果応報ということで。

 

「まぁザコ集団な感じだったから、仲間割れすりゃ出るにも事欠くヤツはいるかもな。

 そういうヤツラは放っといてもいいけど……

 あえて留まってる連中がいると厄介だな。あいつら、知識はそれなりにあるだろうし。

 まだしぶとくクリアを狙ってるのかもな」

 

 それを聞いて、モタリケさんが不思議そうな顔をする。

 

「なあ。

 バッテラのクリア報酬って、もう無いんだろ?」

「ないよ。

 今さらクリアしても500億は手に入らない」

「じゃあなんで……」

「バッテラの懸賞が消えただけ、だからな。

 代わりに他の金持ちが懸賞をかけ始めたのさ。今のトコ、懸賞額はバッテラより格段に落ちるけど」

「ああ、そういうこと……」

「クリアしてから、報酬を高く買ってくれそうな相手を探してもいいしな。

 若返り薬とか大天使の息吹なら、いくら出してでも欲しがる連中はいるだろ」

「それで、いまだにクリア目指してる連中がいるわけか。

 ……お前らも?」

「俺達はまた別さ。懸賞金なんていらない。

 クリアはもちろん目指してるけど」

「そうか……」

 

 納得した様子のモタリケさん。ウラヌスは腕を組み、

 

「お前みたくクリアは目指さない、ゲームから脱出する気も全くないやつは、それなりに珍しいと思うけどな」

「そりゃ……お前らみたいに金が稼げて、『離脱』を取れるなら脱出も考えたけど。

 オレはそれなりに今の生活、満足してるんだよ。外は外で色々煩わしいからな」

「はいはい、ノロケのろけ」

「なんだよ……」

 

 うーん。人生色々だなぁ。

 こんな危ないところで生活するより、外に戻った方がいい気もするけど。だってここ、病院もないんだし。……あ、いや、出たくても出れないのか。

 

「あの、1つ聞いても良いですか?」

「え、なに?」

 

 やけに嬉しそうな顔で聞き返してくるモタリケさん。ぶすっとするウラヌス。……何か聞きづらいな。

 

「その……クリア後しばらく、指定ポケットカードって取れなかったんですよね?

 一体いつ頃から取れるようになったか、ご存じないですか?」

「え? うぅん、いつだったかな……

 うーん……

 カレンダーがあれば、思い出せそうだけど」

「ああ、携帯のでいいならあるぞ」

 

 ウラヌスがポケットから携帯を取り出し、操作してモタリケさんに渡す。

 

「…………

 自信ないけど、6日くらいかな。9月の6日。

 バインダーからアナウンスが流れて、ゲームが再開したって知らせが来た」

 

 そっか。今日が9月18日だから、再開して……13日目か。今までいた主力プレイヤーはほとんどいないだろうし、カード集めは全体的に見て序盤もいいところだろうな。最初のクリアまでに13年もかかってるからね。

 

 モタリケさんと雑談がてら、カードを整理していくウラヌス。できるだけ空き枠を作り、アントキバからマサドラにたくさんお金を持っていくつもりみたいだ。

 

 『名簿』を使って、『堅牢』『神眼』『離脱』『徴収』『大天使の息吹』の所持状況を確認。

 『解析』を使って、カードテキストをメモ。その様子を見て、やや引き気味のモタリケさん。

 

「お前、相変わらずだな……」

「メモしてる最中にくだらねーことで話しかけんな。……悪口にしか聞こえねーし」

「……。

 呆れちゃいるけど、お前のそういうところはある意味尊敬するよ」

「……」

 

 ウラヌスの顔が少し赤くなる。うーん。

 にしても、ウラヌスはこういうの、事前に気づいてやっておくことが多いんだけどな。いつもと状況が違うから、彼なりにバタついてるってことか。私も気をつけとこう。

 

「『道標』どうすっかなぁ……」

「こんなの、何に使うんだ?」

「あ? カードのありか調べるに決まってんだろ?」

 

 視界の端でメレオロンがシームの肩を叩き、2人がこの場から少し離れる。なんだろ?

 

 

 

 

 

「ねぇ、シーム。

 ガイドポストって効果なんだっけ?」

「おねーちゃん……」

「だって、ウラヌスが一度も使ってないスペルじゃないの?

 そんなの覚えてないわよ。

 なんか忙しそうだし、アイツもいるから聞きづらいし……」

「だからウラヌス、さっき言ってたじゃん。

 カードのありか調べるのに使うって。聞いてなかったの?」

「それは聞いたわよ。

 でも、そんな効果だっけ?」

「えっと……

 指定した番号のカードの場所が分かる……だったと思う。

 だから名前だけ知っててもダメなんでしょ。探してるカードの番号を知らないと」

「あー、そうそう。

 なんか引っかかるなと思ったらソレだわ。

 ……おおまかな場所しか分からないんだっけ?」

「だったと思うよ。

 たとえば真実の剣の番号を言えば、アントキバって教えてくれるだけじゃないかな」

「うんうん分かった。

 ありがと、シーム」

「だから覚えときなよ……

 おねーちゃん、ウラヌスのメモに目を通し直した方がいいんじゃないの?」

「まかせた!」

「まったくもー……」

 

 

 

 

 

 ぼそぼそ話してた2人が戻ってくる。ウラヌスがそちらに目をやり、

 

「メレオロン、俺のメモ欲しいんだけど」

「え?

 ……あーはいはい、ちょっと待って」

 

 リュックを下ろして中を開き、ごそごそ探すメレオロン。やがてボタンで留めた手帳を取り出す。

 

「これよね?」

「これだよ。助かる。

 悪いけど、ちょっと本預かってて」

 

 ボタンを外して手帳に挟んだメモを取り出し、手帳だけメレオロンに返すウラヌス。

 束になったメモをぺらぺらめくっていく。

 

「お前、ほんとメモ好きだよな……」

「うるせぇ。便利なんだよ」

 

 モタリケさんにつれなく返すウラヌス。なんだかんだで仲良さそうな感じだな。軽口を叩き合う仲と言うか。

 

「んー……

 やっぱ指定ポケットのランクS以上に使うしかないか……」

「お前なら、指定ポケットカード全部の場所と入手方法、知ってるんじゃないのか?」

 

 モタリケさんの言葉に、嫌そうな顔をするウラヌス。

 

「無茶言うなよ。……場所くらいは知ってるけど。

 クリア後、一部の入手イベントに変更入ったらしいから、改めて場所確認したいんだよ。ランクA以下ならトレードショップで情報買えるしな」

「へぇー」

 

 ウラヌスはモタリケさんをちらりと見た後、何も言わずメモを見る作業に戻る。

 

「んー……

 SS4枚と、Sの上から8枚見とくか……」

 

 言って、メモをメレオロンに渡すウラヌス。メレオロンも特に確認せず、手帳にメモの束を挟んでリュックに仕舞い込む。

 

 その間にウラヌスはバインダーからカードを取り出し、

 

「──『道標/ガイドポスト』オン。1」

 

 

 1「一坪の密林」は

 チャンタにあります

 

 

 ウラヌスのバインダーの画面にそう表示される。またカードを取り出し、

 

「──『道標/ガイドポスト』オン。2」

 

 

 2「一坪の海岸線」は

 ソウフラビにあります

 

 

 あー。前とおんなじか……まぁイベント発生条件は分かってるし大丈夫だと思うけど。今度は参加できそうだから、ちょっと楽しみだな。15人の仲間集めが大変だろうけど……

 

 私が色々思い耽ってるうちに、ウラヌスは次々『道標』を消化していく。

 

「──『道標/ガイドポスト』オン。31。……これで終わり」

 

 

 31「死者への往復葉書」は

 エリルにあります

 

 

 ……。ウラヌスの言ってた通りだな……やっぱりエリルにあるんだ。大変だろうけど、自力で入手してみたいな。もしかしたら、今回クリアした後にまたここへ取りに来なきゃいけないかもしれないし……。父さんに渡したハガキがなくなったら、だけど。

 

 ……うん、そうだな。なんとかゲームを出入りする方法は確保できたから、またクリアできるようにした方がよさそうだ。そのとき役に立つだろうし、今回得た情報はしっかり覚えておこう。

 

「それで、入手場所が変わってたヤツはあったのか?」

 

 モタリケさんが尋ねる。ウラヌスはやっぱり嫌そうな顔で、

 

「お前、軽々しく聞こうとすんなよ……

 なかったよ。場所だけは全部同じだった。

 ま、んなこといいさ。それより後は『再生』だな……もう処分しよっかなぁ」

「なんでそんなの残してるんだ?

 使えないだろ?」

「ンなこたねーよ。使い道はあるさ。

 ……ただ、大量に抱えてても邪魔だけど」

「何に使うんだ?」

「お前、また気軽に……

 ……。

 俺、前は1人でプレイしてただろ? その時、やっぱフリーポケットが一杯になって、結構困ってたんだわ。

 ……で、だ。

 収まらないカードをゲインして、後で『再生』使ってカードに戻してたんだよ」

「うん?

 『再生』入れてたら、その分もフリーポケット圧迫するだろ?

 一杯になったらとか矛盾してないか?」

 

 モタリケさんの指摘に、珍しく困り顔をするウラヌス。

 

「うー……

 確かに、持ち歩いてたら邪魔なんだよな……

 前はマサドラで『再生』をパックから引く度にすぐ使ってたから。

 なんか上手い使い道があったはずと思って取っといたんだけど、それか。

 うっかりしてた……」

 

 あらら。ウラヌスのことだから考えがあるんだろうと思ってたら……珍しくミスってたのか。それじゃあ『再生』を取っておいても意味ないもんね。

 

「……。

 お前、たまに考え込みすぎて失敗するよな」

「ぅぐあっ!?

 モ、モタリケにンなこと言われただと……俺もヤキが回ったか」

 

 妙に芝居がかった仕草で、手で頭を抑えるウラヌス。ショックだったのはホントみたいだけど。

 

「……お前さぁ。

 からかい半分にオレ達の結婚式来て、ずっと微妙な顔してただろ。ブーケ狙って投げたのも避けてたし。女房があん時のお前の顔、酒の肴に(さかな )してケタケタ笑ってたぞ」

「グワァァァァッッッ!!

 お、お前ら……!!」

 

 顔真っ赤にして恥ずかしがるウラヌスに、モタリケさんが笑いをこらえながら、

 

「無理に祝福してくれてありがとな」

 

「ギャアアアアアーッ!!

 末永く爆発しろーッ!!」

 

 その場で足をじたばたさせるウラヌス。すんごい狼狽してるな……これはひどい。

 

 

 

 

 

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