どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第七十三章

 

 修行なのかジャレてるのか分かんないウラヌスとシームを傍目に、私は自らの身体能力強化に勤しむ。

 2人の邪魔にならないよう、修行場の端に寄って私が高速でスクワットしていると、

 

「アンタはレスラーか……」

 

 近くを走りかかったメレオロンが、呆れ声を残していく。

 なんだか失礼な気がするな……。あとメレオロン、やたら胸に目がいってたの見逃してないからな。くそぅ。

 

 

 

 シームが3度目のカード化解除をしてしまった時点で、ウラヌスが制止した。

 

「ここまでにしよう。

 もう集中力が切れちまったみたいだしな。休憩したら、いつもの運動に戻って」

「はぁーい……」

 

 くたりとしゃがみこむシーム。ウラヌスが10ジェニー硬貨を拾い上げて、親指でピンと弾き、キャッチを繰り返す。

 私は柔軟性を高める為のストレッチ中だ。この荷重だと、こんなことでも相当な負荷がかかる。身体の柔らかさは、言うまでもなく重要な要素だ。地味な運動とは言えど、気は抜けない。

 

「アイシャ。

 今日は俺との組手、どうする?」

「んー。

 できれば、やっておきたい、ですが。

 私はこれで、セット運動、一区切り付いて、休憩する、つもりでしたし、キリは、いいですよ」

「そっか。

 いや、組手はいいんだけど、昨日みたいな実戦的なのにするか、ゲーム的なのにするかどうしようかなって」

「あー」

 

 それはどっちの為の組手か、ってことだよね。

 実戦的なものにすれば、ウラヌスの身になるだろう。

 ゲーム的、つまりスペルカードの使用と阻止をすれば、私の身になるだろう。

 んー……

 

「混ぜるって、いうのは?」

 

 提案してみる。ウラヌスは何とも言えない顔をし、

 

「混ぜるって……

 怪我させないように攻撃するし、スペルカードの攻防もするってことだよね?

 中途半端にならないかな?」

 

 ……そうかも。勝敗の基準が付けづらいしな。

 

「両方、します? 交互に」

「交互ねぇ……あんまり長引かないならいいけど。

 でも実戦組手はともかく、スペルカードは攻守が入れ替わるからね。

 その辺はどうする?」

「うーん。……それも、交互ですかね。

 実戦組手、スペル使用、実戦組手、スペル阻止、っていう順で」

「そうだね。そうしよっか」

「では少し、待っててください。

 じきストレッチ、終わるんで、その後に」

「……休憩は?」

「待たせても、悪いですし、別に、いいです」

「そう……」

 

 あ、少し不機嫌になった。まぁ組手しながらでも回復するからな。私はオーラ消費せず『絶』であることに変わりないんだし。

 それに回復するとは言っても、休憩してるより回復が鈍ることは確実なのだ。それだけ余力を奪われる相手であることは間違いない。

 

 

 

 ────私とウラヌスの最初の実戦組手は長期戦化し、かろうじて私が制した。

 

 互いにやや息が上がりつつ、私がスペル使用する組手が始まる。開いたバインダーからカードを外し、

 

「ア──」

 

 声の代わりに息を吐き、外したばかりのカードを胸元に寄せる。危うく初手で奪われるところだった。

 ウラヌスの両腕がカードを掠めていく。数手凌いだところで、ウラヌスの手が──

 タンと、バインダーを上に弾く。視界を隠すか隠さないかの刹那、バインダーの下から伸びた指が、私のカードを摘み取った。

 私の手からカードは離れてないけど……

 

「……私の負けです」

 

 ウラヌスの指が離れる。カードの引っ張り合いなんてしても泥沼だしな。実戦ならそこまですべきだけど、今の体勢は私に分が悪い。無理やり発声を続けていれば、その呼吸の乱れを突かれてカードを奪われただろう。

 

 バインダーにカードを収め、「ブック」で消す。どうしてもカードの扱いに関しては、ウラヌスが一枚上手か。この手の攻防を実際にやってる可能性が高いもんな。その経験の差は大きい。

 

 背を向けて離れていくウラヌスが、身を翻し私に向かった。まるでカードを奪うような手付きで私の腕を掴む。

 ギュッと握りしめてくる。この握力を逆手に取って投げるのは難しい。ウラヌスも警戒してるからだ。その握り手を外そうと見せかけ、私はウラヌスの胸元の生地を掴む。

 期せず、互いに下へ力をかけた。抗しきれず、2人とも片膝をつく。

 動きが止まる。お互い思わぬ形になってしまった。1人だけ膝をついた時は、そちらの負けといった暗黙の了解があるんだけど……

 

「えっ。

 こういう場合、勝敗どうなんの?」

「……。

 引き分け、ですかね?」

 

 その体勢のまま固まっていると、

 

「今の攻防、どう見ますか? 解説席のシームさん」

「今のは引き分けですね。見れば分かります」

「完全決着を望むなら寝技に移行するしかありませんが、お互い動きません」

「いえ、ここから立ち上がって続行という流れも有り得ますよ」

「さぁー両選手、ここからどう出るのか」

 

 休憩兼観戦中の姉弟が、妙なノリで話してる。うぅむ……

 

「……仕切り直そう。勝負なしで」

「ええ……

 スペルではなく、実戦組手をもう一度、ですよね?」

「うん、まぁ……」

 

 

 

 約20分ほど組手を続けた後、ウラヌスが両膝をついた。

 

「つっかれたぁー……も、終了で……」

 

 ふぅー。

 昨日よりは粘ってたな。スペルの攻防は、ウラヌスにとって楽だったんだろう。

 

 実戦組手の戦績は、今日の方が私は良かったけど……スペルは芳しくなかったな。正直、無茶苦茶やりづらい。特に使用側、カードとバインダーが邪魔すぎる。スペルの使用宣言どころか『ブック』すら呼吸の邪魔だしな。完全にそこを狙われてる。

 ……けど、ほぼグリードアイランドでしか役に立たない技術とはいえ、手は抜けない。真面目に修行するか。

 

「今日のは面白かったわね」

「スペルの方は、ぼくらも見てて結構分かったもんね」

「うん、参考になったわ」

 

 そっか。なら良かった。

 実戦の方も、その調子で学んでくれるといいんだけどな。ま、そっちは焦らずか。

 

 あ、そうだ。……いや、無理かもな。

 

「あの、ウラヌス。

 お疲れのところすいませんが、私この状態だと重しが足りないんで──」

「……あ。あーっ、しまった!

 なんか忘れてると思ったら、ダンベル重くすんの忘れてたよ。

 まいったな、この状態でやんないといけないのかぁ……」

「あーその、キツイようでしたら──」

「いや、やる。やるけどさ……

 何キロにしてほしいの?」

 

 ダンベルは、10キロ2個セットの物を購入している。

 で、いま私は『絶』でも450キロ、『周』がかかってるとそれでも負荷が足りなくなる。

 どれだけ重くすればちょうどいいかな……あんまり重くすると、うっかり落とした時に危ないしな。そもそも今のウラヌスに無茶な重量は頼みづらい。

 

「えっと……

 200キロいけます?」

「……。

 1つずつ、200キロ?」

「ええ、そうです」

「それぐらいならいけるかな……

 正直、もうちょっと無理ふっかけてくるかと思ったよ。300とか400とか」

 

 うーん、いけるとは思うんだけどね。あんまり重くしすぎると、地面が耐えられないんじゃないかと心配してる。深い足跡が付くほど重いのは困るしな。修行場が荒れる。

 そもそも『周』が効いてない時でも、ちょっと使いたい。なら200ぐらいが手頃だろう。

 

「流石に消耗してる状態でかなりの重量だから、少し時間もらえる?」

「ええ。

 ……無理言ってすいません」

「ううん。

 俺の組手に付き合ってくれて助かってるよ。ありがとう」

 

 ……。

 

 こちらこそ。色々してもらいすぎて、お礼が言いづらいよ……

 

 

 

 10分ほどで、ウラヌスから声がかかる。

 

「お待たせ……できたよ」

「……ありがとうございます」

 

 プラス190キロを2つ分か。普段なら難なくやってみせるだろうに……相当消耗してたんだな。怪我させないように、っていうルールがかえって過酷なんだよな。

 

 ダンベルを1つ持ち上げる。

 

 おおっ、確かにベストと大差ない重量。勢いよく落として足にでも当たったら、いまの防御力でも怖いな。充分気をつけよう。

 

「怪我しないようにね……」

「はい。あなたはしばらく休んでてください。

 2人のことは、私が見てますから」

「うん、そうする……」

 

 抱えた膝に顔を埋めるウラヌス。そのまま寝ちゃうかもしれないな……

 私はまだ休憩してる2人を見やり、

 

「2人とも、もう回復しましたよね?

 ちゃんと修行に励んでくださいね。ウラヌスが見てないからってサボらないように」

『はーい……』

 

 立ち上がる姉弟。それぞれランニングと徒歩運動を始める。

 さて、せっかくのダンベルだ。存分に使わせてもらおう。

 

 

 

 ────気が付くと、林の中に夕陽が射し込んできていた。

 

 運動は続けながらも、明らかに私へ期待の眼差しを向ける姉弟。

 ウラヌスは……寝てるもんな、完全に。

 仕方ない。あんまりガタガタになるまで修行するのもマズいからね。

 

 パンと手を打ち、

 

「本日はここまでにしましょう」

 

 べちゃーっと倒れこむ2人。ハッと目を覚ますウラヌス。

 

「あ……

 ゴメン、こんな時間まで寝てた」

「いえいえ。お疲れのようでしたし」

「アタシ達こそ、お疲れよー……」

「うん……」

「まだ余裕ありそうに見えますけどね」

「シーム、サボってなかっただろうな?」

「サボってないってば!」

「まぁ私が見てましたから。いつも通り頑張ってはいましたよ」

「そっか」

 

 実際のところ、ウラヌスの目がなくても修行に支障はなかったんだよな。2人とも結構ペース配分できてるみたいだし。運動と休憩のサイクルを掴んできてるのだろう。体力も徐々についてきたようだ。

 

 なんだかんだで私もクタクタだしな……流石にダンベルを使うとかなりの負荷だった。これほどの負荷をかけて、ひたすら肉体の鍛錬に打ち込んだことはほとんどないはずだ。今までは誰かと組手してる時間が長かったからね。後は1人で念の修行してたし。

 筋肉も心地いいくらい疲労してるから、今日はしっかり食べて休みたいな。

 

「そう言えば決めてませんでしたが、夕食はどうします?

 私はオータニアかな、と思ってましたけど」

「うーん……

 2人は希望ある?」

「ぼく疲れたぁー……あんまり歩きたくない……」

「どっか行って食べたくないわ……

 近くで少し休んでから食べたい……おえっぷ」

「じゃあオータニアだね。

 ゆっくりしたいだろうし、いつものところにしよっか」

 

 ふっふっふ……計・画・通・り。今日はハマチのお造りもらおっと。まぁシーフードはお昼さんざん食べたけど、お刺身は別物である。

 

 さて、修行道具の後片付けしよ。汗もたっぷりかいたし、ちゃんと拭かないとね。

 

 

 

 料亭『秋の空』。イナゴ退治の件もあるので、遠慮なく好きな物を頼ませてもらおう。

 姉弟もワリと遠慮がない。寝てたのを気にしてるらしく、ウラヌスはいまいち頼み方が渋い。

 

「ウラヌスも消耗したんですから、きちんと食べた方がいいですよ?」

「んー。でもさぁ、贅沢が身にしみつきそうで……」

 

 うっ。イヤ、でもウラヌスのそれはちょっと貧乏性じゃないか? 確かに贅沢するのが当たり前になるのは良くないけど……

 よし、松茸だ。こうなったら松茸の薫りで、ウラヌスを誘惑してやる!

 ……なんか趣旨違うな。やめとこう。イヤ、やっぱり松茸ゴハンは普通に頼むぞ。当然松茸のお吸い物もなー。ハマチは絶必として、今日は筋肉をイジめたから甘味もしっかり貰おう。あとあと──……

 

 

 

 ──お食事中──

 

 

 

 料亭を出て、秋の夜を散歩する私達。おなかいっぱいの身体に、この涼しさが実に心地いい。

 

「うー……」

 

 ウラヌスがバインダーを眺めて、呻いてるのを気にしなければ、だけど。

 そっかぁ。お会計22500ジェニーか。……うん、反省はした。後悔はしていない。美味しかったもん。

 

「ぅぐぐ……マツタケェェェ!」

 

 食欲の秋に負けたウラヌスが、両手で顔を覆って奇声をあげてる。……スマンカッタ。ジャポン生まれにあの薫りは耐えられなかったよね。後からウラヌスめっちゃ食べてたし。

 

「あぁー……

 ほんっと、アレだけ動いた後のゴチソウは最高だわー。げぷぅー」

「そうだよねー。

 ぼく、なんだかふわふわしちゃうよ」

 

 あ、マズいかな。2人とも、すっかり贅沢グセがついてるかもしれない。

 いやまぁ、しっかり修行してくれてるし、いいんだけどね。なんだろな……

 

「……ん。まぁみんな楽しんでくれてるなら、別にいいけどさ。

 それじゃマサドラ行くよ。スペルカード補充しなきゃ」

 

 しっかり締めるウラヌス。さっきも料亭で『解析』と『名簿』をしっかり使ってたし、そういうところはホント抜け目ない。財布のヒモはだんだん緩んでるけど……しーらない。

 

 

 

 散歩を楽しんだ後、マサドラへ。この時間でも相変わらずマサドラにいるプレイヤーはまばらだ。以前なら考えられないな……いつでもあっちこっちいたからね。

 

 まずはトレードショップに赴く。真珠蝗3枚を売却し、余り気味の『交信』も少し売却するなどして、カード枚数を調整、貯金。

 そして40万ジェニーを持ち、全く待たされることなくスペルカードショップで40パック購入。所持してたスペル55枚と合わせ、スペルカード合計175枚。

 

 

 

 『盗視/スティール』6枚

 『透視/フルラスコピー』2枚

 『防壁/ディフェンシブウォール』9枚

 『反射/リフレクション』2枚

 『掏摸/ピックポケット』3枚

 『交換/トレード』1枚

 『再来/リターン』13枚

 『擬態/トランスフォーム』3枚

 『複製/クローン』1枚

 『左遷/レルゲイト』4枚

 『初心/デパーチャー』3枚

 『離脱/リーブ』1枚

 『念視/サイトビジョン』1枚

 『漂流/ドリフト』3枚

 『衝突/コリジョン』7枚

 『徴収/レヴィ』1枚

 『城門/キャッスルゲート』11枚

 『贋作/フェイク』1枚

 『強奪/ロブ』1枚

 『堕落/コラプション』3枚

 『妥協/コンプロマイズ』1枚

 『看破/ペネトレイト』2枚

 『暗幕/ブラックアウトカーテン』6枚

 『聖水/ホーリーウォーター』2枚

 『追跡/トレース』2枚

 『投石/ストーンスロー』2枚

 『凶弾/ショット』1枚

 『道標/ガイドポスト』7枚

 『解析/アナリシス』12枚

 『宝籤/ロトリー』15枚

 『密着/アドヒージョン』1枚

 『浄化/ピュリファイ』1枚

 『神眼/ゴッドアイ』1枚

 『再生/リサイクル』6枚

 『名簿/リスト』10枚

 『同行/アカンパニー』14枚

 『交信/コンタクト』16枚

 

 

 

 ああ、モタリケさんにあげた『窃盗』が引けてない……仕方ないけどね。

 

「ランクC以上のスペルって、残した方がいいんじゃないの?」

 

 同じことに気づいたであろうメレオロンの意見に、テーブル上のカードを眺めて腕組みするウラヌス。

 

「大天使の息吹を積極的に狙うならな。

 でも『堅牢』をいつまでも引けなかったら、かなり邪魔だしさ」

「もうちょっとスペル買ってみるとか?」

 

 シームが尋ねると、ウラヌスは渋そうな顔で頬をぽりぽりかき、

 

「むやみやたらにスペル買いまくって、それでも引けなかったら悲惨だからなぁ……

 ガチャゲーじゃあるまいし、運が悪くてゲーム攻略失敗ー、とか絶対イヤだろ?」

「うん、そんなのヤダ……」

「ランクSなのに、やたら引けなさ過ぎない? 同じランクの『神眼』は引けたのに」

 

 メレオロンの疑問に、私とウラヌスは『うーん』と唸る。体感的に、どうも引ける気がしないんだよね。なんでかな……

 

「ホントに『堅牢』って引けないですよね。

 限度枚数って、まだMAXじゃありませんよね?」

「うん。

 さっきも料亭で『名簿』使って調べたけど、誰かが1枚持ってただけだな。

 おそらく『堅牢』だけは、異常に排出率が低いんだと思う。……いや、多分『離脱』もだな。明らかに同ランク帯と比較して、出にくすぎる」

 

 だとしたら、とんでもない嫌がらせだな。まぁその引きにくさに相応しい効果ではあるんだけど。

 

「その誰かが持ってる1枚を、『擬態』で増やされたら困るんでしょ?

 急いだ方がいいんじゃない?」

 

 シームが窺うように言うと、ウラヌスは下唇を指で擦りつつ、

 

「それはまだ大丈夫かな……

 『擬態』は全体で所有5枚だけど、うち3枚持ってるのが俺達だしな。

 よほどのことがない限り、いきなり『堅牢』を独占されたりはしないと思う」

「逆に『堅牢』を引けたら、私達が『擬態』で独占狙ってみたりとかします?」

 

 私が尋ねると、ウラヌスは首を捻り、

 

「んー。

 ……大天使の息吹を独占するならともかく、『堅牢』の独占って指定ポケットカードのページを他のプレイヤーに一切ガードさせない為だからね。

 俺達は攻撃スペルでカード奪う気なんかないし、ガードしたけりゃ勝手にすりゃいいと思ってる」

 

 ふむ……それもそうか。逆に、持ってる『堅牢』を守る方が難しいだろうしな。ハメ組みたいに隠し持つなんて出来ないんだから。

 

 あれ? ちょっと待てよ。『堅牢』を独占する狙いって、他にもあったはずだぞ。

 

 えっと……そうだ、アレだよ。

 

「ウラヌス、『引き換え券』って知ってますか?」

「ん? 何の?

 ……ああ、流れ的に大天使のか。取ったことはないけど、あるのは知ってるよ」

 

 へ? 大天使、の? んん? もしかして『引き換え券』って他にもあるのか?

 

 いやまぁ、そっちはひとまず置いといて……

 

「えっとですね……

 大天使の息吹が限度枚数一杯だと、アイテムを入手できない代わりに『引き換え券』のカードが手に入るんですよ」

「……あー、なるほど。

 大天使の息吹のゲイン待ちは出来るから、それも封じる為に『堅牢』を独占するわけか。確かにそれは有効だな」

 

 話が早くて助かる。……早すぎて説明し甲斐がないけど。2人とも話に付いてこれてるかな。

 

「まぁ、だからってゲーム攻略をおざなりにしてまでスペルカード買いたいとはやっぱり思わないけどね。人海戦術も採れないし。

 楽しみながらコツコツやりたいからさ」

 

 ────その言葉を聞いて、改めて認識した。

 

 どうすれば効率がいいのか、おそらくプレイヤーの誰よりも理解しているウラヌスが、なぜ他の人達と組めなかったのか。

 

 グリードアイランドクリアを最優先とせず、楽しむことにも注力するその姿勢と考えが、誰かと一緒にプレイすることを妨げたんだろう。ほとんどの人にとっては、最初にクリアしてバッテラさんの懸賞金を得ることこそ最優先だったろうし。私も前回は、余裕なんて全然なかったからね。あの状況で、ウラヌスと一緒に組もうなんて思えたかどうか……

 

 反則に近い手でクリアした私にとって、グリードアイランドの魅力に気づかせてくれた最高のリーダーではあるんだけど……

 

 そのことが、彼自身の目的達成を遠ざけている気がして、どことなく不安に思えた。

 

 

 

 

 

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