「んくっんくっんくっ……」
お風呂と食事で火照った身体を、キンキンに冷えたコーヒー牛乳で冷ます。……はーっ。やっぱりこういうお風呂の後のコーヒー牛乳は最高だな。それも瓶のやつに限る。反論は認めない。
ウラヌスがコクコクと喉を鳴らして飲んでいるのを、私は飲み終えた瓶を弄びながら、のんびりと待つ。
「……ぷはーっ」
「いい飲みっぷりですね」
「そう? アイシャには敵わないよ」
「ふふ。
それじゃ、そろそろ部屋に戻りましょうか」
「うん、そうだね」
部屋に戻ると、メレオロンは居なかった。……隣の部屋に居るみたいだな。
その代わり、布団の上でシームとサクラが仲良くすぴょぴょと可愛い寝息をたてている。あらら、はしゃぎすぎちゃったかな。
「おーい、シーム。起・き・ろ」
ウラヌスがシームの肩をゆさゆさ揺する。サクラのしっぽがゆるんと動き、
「んにゃ?」
「んん……
あ、おかえりぃ……」
「お帰りー、じゃねーよ。
俺の布団あっためてどーする」
寝ぼけまなこで、シームはポムポム布団を叩き、
「ベンチあっためときましたよ、かんとくー……」
「誰が監督だ」
シームはのっそりと上半身を起こし、サクラを抱えて優しく頭を撫でた後、
「はい。桜、お返しするね」
伸ばしたシームの両手から、ぴょんとウラヌスの頭に飛び移るサクラ。
「うん……
風呂入るか知らねーけど、ちゃんと『練』やってから寝ろよ」
「ん。お風呂は入るし、『練』もする。
……おねーちゃん、まだ起きてるかな?」
「多分な。起きてる感じだよ」
ウラヌスは壁越しに、隣の部屋へ目を向けてる。
どっちなんだろ……気配を察知してるのか、オーラを察知してるのか。生命力精神力を見てる可能性もあるな。
「それじゃ、2人ともおやすみー。
桜、また明日ね」
「にゃん」
ウラヌスの頭上で、前足を上げて応えるサクラ。
戸が閉まり、シームの気配が隣の部屋へ向かっていく。
「……」
じっとサクラを見つめる。その視線に気づいたのか、サクラも私を見返す。
その下にいる可愛い人が私をジト目で見て、
「……もしかして今日も?」
「もしかしなくても今日もですし、明日も明後日もそのつもりです」
「えぇー……
そんな予定調和みたいに。
毎日呼ぶとは限らないのに、なんで断言しちゃうの?」
「しますよ?
今のシームが、修行サボるわけないじゃないですか」
「はぁー……
あいつ、どんだけ桜のこと好きなんだよ……」
「にゃー」
まったり顔で一鳴きするサクラ。うむ、こちらさんも思いは同じようで。
「どーせ、そのうち飽きると思うんだけどなぁ……」
「にゃ! にゃ!」
たしたしストンピングするサクラ。ウラヌスが嫌そーにしてるから、有効ではあるな。
「だからやめろっつってんだろ。
風呂入ったばっかなのに、コイツ腹立つー」
「怒って当然ですよ。
飽きるなんて言ったら、サクラが可哀想じゃないですか」
「にゃん♪」
「んぁー。俺ばっかりワルモン扱いだよ……」
布団に『の』の字を書いていじけるウラヌス。あっはっは、1回呼んじゃったのが運のツキです。
隣の部屋から2人の出る気配。……お風呂に行ったな。
ウラヌスが怒って消したりすると困るから早くサクラを引き取りたいんだけど、私達がお風呂に入る直前から結構時間たってるし、引き取ってすぐ消えちゃったら困るんだよね。
「ウラヌス。
サクラのフル充電まで、後どれぐらいかかりますか?」
がくっとするウラヌス。
「フル……
ちょっとアイシャ、1時間も桜で遊ぶつもり?
あと俺のこと、充電器かなんかと勘違いしてない?」
「なに言ってるんですか。
サクラで遊んだりしないですよ。サクラと遊ぶんですよ。
あとウラヌスは充電器の自覚を持ってください」
「ひどぃぃー……」
心底傷ついた顔でめそめそするウラヌス。これがまた可愛いんだ、うん。乙女すぐる。
「すいません、言い過ぎました。
で、どれぐらいかかります?」
「ぜんっぜん、ちぃっとも心に響かない謝罪なんだけど……」
「いいから、じ・か・ん」
「……。
あらかじめ言っとくけど、フルとかお断りだよ?
多分……5分も乗っけてたら、この状態のサクラは20分くらいは保つかな」
5分待って20分か。まぁ妥当かな。
「では、そのコースでお願いします。しっかり頼みましたよ?」
「……あのさぁー」
「聞く耳持ちません」
「どうしてこうなったの……」
「にゃ」
顔を覆ってぷるぷるしはるウラヌス。そりゃあなた、そんな可愛いにゃんこ、独り占めなんて許されませんよ。あと、にゃんこ乗っけウラヌスも可愛いですよ?
肩を落として、すっかり元気のない様子でカード整理するウラヌス。……そろそろ5分経った頃合いなので、力のないウラヌスを見下ろしていたサクラをひょいと取り上げる。やわいなー。
「にゃ、にゃ」
なんか、やたら私の胸に向かって前足を伸ばしてくるサクラ。
んー……
まぁいいか……。お望み通り、胸元でサクラを抱っこしてあげる。
もふもふ、ぷいにゅぷいにゅ。
「にゃうん……ふにゃー」
ふふ、まるで赤ちゃんみたいだな。……こうやって母さんに抱っこされてた時のこと、思い出しちゃうよ。
「……あの、さ」
ウラヌスが顔を赤くしながら、こっちを直視しないようにしつつ声をかけてくる。
……えーと。
多分アレだよね。サクラの記憶が、消えた時にウラヌスへフィードバックするのを気にしてるんだよな。だからこうしてるのが後でウラヌスにも……
でも、どの程度なのかが分からないんだよね。完全一致なのか、ふわっとしてるのか。はてさて。
「なんです?」
サクラをもにゅもにゅする。
「にゃーん♥」
ウラヌスは半ば痙攣すらしつつ、何か言おうとして、
「…………
……。
……なん、なんでも、ない」
がくっと折れた。ふふふ、なぜか勝ち誇りたい気分だ。
甘えるように抱きついてくるサクラを撫でつつ、諦めた様子のウラヌスを眺める。
今日は長いことバインダー見てるな。……こっち見ないようにする為かもしれないけど。
「ウラヌス」
「……なに?」
「バインダー、見せてもらっていいですか?」
「……いいけど」
渋々といった感じで、ウラヌスが開いたままのバインダーを持ち上げ、こちらへ押してくる。
すぃーっと私に向かって、宙を滑るように飛んでくるバインダー。また便利というか、器用な真似するというか。
近くまで来たバインダーを私は肘で止め、サクラを片腕に抱き直しつつ、バインダーの最初のページをめくる。
左ページには、000の番号が振られたポケット。もちろん何のカードも入っていない。
右ページには、No.1からNo.9までのカードが収まっている。当然、全て贋作だ。
たとえ贋作であっても、始めて数日でこうして指定ポケットカードがズラリと並んでるのを拝めるのは壮観だな。もちろん苦労して集めたカードが並んでるのを見るのは、また格別だけどね。
サクラも興味ありげに、カードの羅列をきょろきょろ眺めている。
ページを1つめくる。
次の左ページには、すでにNo.10からNo.18までのカードが収まっている。
右ページは、No.19からNo.21までしか収まっていない。ここまで全て贋作カードだな。
めくって最初のページに戻り、目に留まった1枚のカードを注視する。
────『1:一坪の密林』。ランクSSでは、唯一入手方法が分からないカードだ。
前回はツェズゲラさんにトレードしてもらったんだよな。……そもそもあの人は、どうやって入手したんだろ? 長年ここにいたゲンスルーさんですら情報ゼロだったのに……。ちょっとうちの攻略本様にも聞いてみるか。
「ウラヌス。
一坪の密林の入手方法って知りませんか?」
「……いやー、それは流石に知らないな。イベントの発生条件すら分からないよ。
それを言うなら、同系統の一坪の海岸線だって知らなかったしな。似たような条件じゃないかなと思ってるけど」
「えっと……
私達、前回ツェズゲラさんに一坪の密林をトレードしてもらったんですよ。
でもツェズゲラさんも、一坪の海岸線の入手方法は知らなかったみたいで」
本人から聞いたわけじゃないけど、状況的にそう判断していいだろう。……後で組んだゴレイヌさんから聞きはしただろうけどね。
「あー、それは確か……ツェズゲラもトレードで手に入れたからだよ。
どうも一坪の密林を『宝籤』で引き当てた奴がいるらしくて」
「へぇー、ランクSSをですか。
ものすごく幸運なヒトがいたんですね……」
私が素直にそう言うと、ウラヌスは少し暗い表情になり、
「……けど当てた本人は、そのカードを盗まれたみたいだけどね。
カードを奪った奴が『複製』で増やして、それを大金でツェズゲラに売ったらしくて。
盗んだ奴に、自慢話として聞かされたよ」
うーん。ということは、真に幸運なのは盗んで売ったプレイヤーか。なんだかなぁ。
「にしても、よくそんな話を聞けましたね……
普通は盗んだモノを高く売ったなんて、自慢しないと思うんですが」
「うん……
俺も単なる自慢話にしちゃおかしいなと思って、詳しく聞いたんだけど。
複製したカード2枚はツェズゲラに買い取ってもらえたらしいけど、『宝籤』で当てたオリジナルの方は断られたんだって。割に合わないとか言われて。
だからそいつ、欲かいてオリジナルを高く買い取ってくれる相手を探してたらしい。
ほら、ツェズゲラもシングルでしょ? だから俺なら買うんじゃないかと思って……」
あー、そういうことか。ウラヌスのことをプロのシングルハンターだと知ってたから、ツェズゲラさんみたいに大金で買ってくれるんじゃないかと期待したわけか。
「でも断ったんですよね?」
「うん。正直リアルマネートレードなんて、面倒くさくてしたくなかったし。
それにかなり吹っかけてきたからね。そりゃツェズゲラも出し渋るよ……」
「ちなみにいくらだったんです?」
ウラヌスが手の平を広げて、こちらに向ける。
「5000万ですか?」
「……ううん。5億ジェニー。
それも現実で、すぐにニコニコ現金払い」
うわ、たっか。……オリジナルとは言え、複製して独占すらできないカード1枚に出す金額としては法外じゃないかなぁ。クリア報酬が手に入る保証なんて全然ないんだし。
「ツェズゲラは複製した2枚の方を、即金4億で買ってくれたんだって。
アイツもよくやるよ……」
ありゃりゃ。そのうえクリアを逃したんだから、ツェズゲラさんも踏んだり蹴ったりで可哀想に。……いやまぁ私が言うな、か。
「いずれにしても、一坪の密林はイベントの発生条件を調べるところからですね……
どこでしたっけ?」
「密林都市チャンタだね。
まだ俺も、今回『漂流』で飛べてないところ」
「どんな場所なんです?」
密林で都市、さっぱり分かんないな。
「んー。でっかい密林を囲む形で、都市が形成されてる。
だから、都市中央に巨大な密林がある感じだね」
「ほぉ。
……どう考えても、その密林にあるっぽいですね」
「だろうね。
でも、情報は一切出てこない。
一坪の海岸線の取り方がヒントになってればいいんだけど……」
ん? そういえば確か……
「……。
その都市に長老って居ます?」
「長老? んー……
確か、その都市最高齢の爺さんとかは居たと思うけど。
なに聞いても、まともに反応しなかったけどね」
「ちなみに名前って覚えてますか?」
「名前かぁ。
ひ、ひ……ヒマ、だったかな? 確かそんな名前」
ちっ、ヒマか……ヒダじゃなかったのか。間違えてた。
「指定ポケットカードを99種類揃えた時のクイズで、一坪の密林に関してヒントをくれる長老の名前は? っていう問題がありまして」
私がそれを伝えると、ウラヌスはパチンと指を鳴らし、
「は、は、はぁ。なーるほどね。
多分イベント発生条件を満たして、ヒマ爺さんに話しかけりゃいいのか。
それだけでも大分調べる手間が省けるよ。助かる」
うん、それならよかった。私も頼るばかりでなく、攻略に貢献しないとな。
「バインダー、ありがとうございます」
「うん。ブック」
もう用はないらしく、バインダーを消すウラヌス。
さてさて、どうしよかな。サクラは引き続き愛でるとして、やることがないな。こんな状態で『点』なんかできないし。雑念ハンパない。サクラ最高もふもふー。
「ふにゃ……」
ふふ、可愛い可愛い。……んー、試しにちょっと聞いてみようか。多分断られると思うけど。
「ウラヌス。
サクラを抱っこしたまま、寝てもいいですか?」
「にゃう?」
ものすごく微妙そうな顔をするウラヌス。ううむ、やっぱりダメだろうか。
「……えっと、そりゃ……
時間切れまでなら一緒に寝てもいいけど……
それでいいの?」
あ、OKなんだ。さっきシームもしてたしな。すっごい気持ち良さそうだったからね。
「ええ、もう。それで全然いいですよ」
「はぁ……分かったよ。
そんじゃ俺も寝るからね。時間延ばしたりしないよ?」
「はい、ありがとうございます」
「ん。じゃあ明かり消すね」
ウラヌスが明かりを消した。あ、ほんのりサクラ光ってる。
私が布団に潜ると、サクラも布団に潜り、私にくっついて丸くなる。あったけぇー……布団に包まると良く分かるよ。猫と一緒に寝るのってこんな感じなのかな。
寝返りを打って、サクラを下敷きにしないよう気をつけないとな。あらかじめ横向きで寝とこうかな?
丸いサクラをお腹に当てるような体勢で、横になる。うん、これだな。シームもこんな感じで一緒に寝てたし。
はぁー。やわいやわい。ぬくいぬくい。白ぬこ湯たんぽサイコー。
……。
「なぁん……」
考え事をしていて、うとうとし始めた頃、布団の中から小さい鳴き声が聴こえた。
もぞもぞとサクラが動き、より私に密着してくる。てか、何かしようとしてる?
「……!」
あ、ちょっ、待った。この子、私の服に潜ろうとしてないか? アレか、昨日のやつ?
やぁ、う。サクラお待ちっ。う、上ならまだしも、そっちは、ぎゃっ、ちょちょっ! やべぇっ、この子やわすぎて掴めない! ぅわあっ……!
ふわっと。サクラの感触が消えた。
……じ。
時間切れかぁ……
あっぶねぇー、間一髪だた……
ふぅー……
次から気をつけなきゃ。ちょっと警戒しなさすぎたよ……
「うぁぁぁぁ……!」
声のした方を見ると、ウラヌスが布団を頭からかぶってメッチャ悶えてる。
間違いなく、サクラの記憶が還元されてるな……
そりゃ……嫌がるよね。私もシームも、サクラをベッタベタに甘やかしてるし。
さっきのも……だろうし。
完全に布団へ潜りきったウラヌスが、大きくびくんびくんしてるのが暗がりでも分かる。
……。
なんというか……
サクラのせいで一番ダメになりそうなのは、ウラヌスな気がするな……
まぁなんだ。イ㌔。……いや、慣れろ。
・2000年9月18日終了時点で4人が所有するカード
『1003:防壁/ディフェンシブウォール』4枚
『1009:再来/リターン』 9枚
『1010:擬態/トランスフォーム』 3枚
『1014:離脱/リーブ』 1枚
『1016:漂流/ドリフト』 3枚
『1018:徴収/レヴィ』 1枚
『1019:城門/キャッスルゲート』 11枚
『1021:強奪/ロブ』 1枚
『1022:堕落/コラプション』 3枚
『1023:妥協/コンプロマイズ』 1枚
『1026:聖水/ホーリーウォーター』 2枚
『1029:凶弾/ショット』 1枚
『1030:道標/ガイドポスト』 7枚
『1031:解析/アナリシス』 4枚
『1036:神眼/ゴッドアイ』 1枚
『1038:名簿/リスト』 10枚
『1039:同行/アカンパニー』 14枚
『1040:交信/コンタクト』 8枚
『176:狂気のガーネット』1枚
『179:神樹コハク』 1枚
『601:50J』 1枚
『602:100J』 3枚
『604:1000J』 2枚
『605:2000J』 2枚
『606:5000J』 2枚
『607:10000J』 13枚
『1:一坪の密林』 1枚 ※複製贋作
『2:一坪の海岸線』 1枚 ※複製贋作
『3:湧き水の壺』 1枚 ※複製贋作
『4:美肌温泉』 1枚 ※複製贋作
『5:神隠しの洞』 1枚 ※複製贋作
『6:酒生みの泉』 1枚 ※複製贋作
『7:身重の石』 1枚 ※複製贋作
『8:不思議ヶ池』 1枚 ※複製贋作
『9:豊作の樹』 1枚 ※複製贋作
『10:黄金るるぶ』 1枚 ※贋作
『11:黄金天秤』 1枚 ※贋作
『12:黄金辞典』 1枚 ※贋作
『13:幸福通帳』 1枚 ※贋作
『14:縁切り鋏』 1枚 ※贋作
『15:きまぐれ魔人』 1枚 ※贋作
『16:妖精王の忠告』 1枚 ※贋作
『17:大天使の息吹』 1枚 ※贋作
『18:小悪魔のウインク』1枚 ※贋作
『19:遊魂枕』 1枚 ※贋作
『20:心度計』 1枚 ※贋作
『21:スケルトンメガネ』1枚 ※贋作
『52:真珠蝗』 4枚
『78:孤独なサファイヤ』1枚 ※宝籤
『80:浮遊石』 7枚 ※うち複製6枚
所有する有効指定ポケットカード種類数:3種
・ゲイン待ちアイテム
『80:浮遊石』1つ
・所有するカード化解除アイテム
『84:聖騎士の首飾り』4つ
『100:島の地図』 2つ
※雑貨品は割愛
・店舗貯金額
アントキバ飲食店 :1890J
アントキバ交換店 :921万2500J
マサドラ交換店 :348万2870J
エリル桜茶屋 :600J
オータニア定食屋 :1700J
オータニアSS :1000J
オータニア秋の空 :8500J
オータニア時雨紅葉:6000J
オータニア交換店 :7850J
トラリア交換店 :4800J
トラリアデパート :600J
所持金と貯金合計額:1287万4660J