どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第七十七章

 

「はっはっは! 久しぶりじゃないか」

 

 言っておじ様は、思いっきり接近してウラヌスをハグする。おおぅ。

 

「お、おぃコラ、そういうのやめろっつってんだろ」

 

 おじ様に抱きつかれて困ってるウラヌス。けど、そこまで抵抗はしないんだな……

 言われてすぐハグするのをやめるおじ様。変わらずフレンドリーな様子で、

 

「ははは、イヤすまない。懐かしくて、ついな」

「……そんな前じゃねーだろ、顔合わせたの……

 クリア者が出たし、もうゲームはやめたのかと思ってたよ」

 

 おじ様はサングラスを掛け直し、

 

「うむ、確かにやめたとも。

 ……どうだ? 時間が取れるなら、どこかで話さないか?」

「話す、ねぇ……」

 

 ウラヌスは私達へ視線を送る。ふむ……

 

 ていうかジェイトサリって名前、聞き覚えあるような無いような。うん? いや、このヒトの顔も見覚えあるような……

 

「もちろん、キミの連れも一緒で構わんよ。

 私は今1人で行動しているが、後日仲間と落ち合う予定だ。

 ゲームの情報交換なら、悪い話ではあるまい?」

「うーん……」

 

 情報交換か。なんだかんだでモタリケさんと話して得る物もあったしな。私達は、再開したグリードアイランドについての情報がまだまだ不足している。

 

 とりあえず私は、ウラヌスに小さく頷いておく。

 

「分かったよ……

 ただ俺達もゲーム攻略で忙しいから、長時間はダメだぞ」

「うむ、承知した。

 こんなところで立ち話もなんだ、場所を変えるとしよう」

 

 おじ様が背を向けてどこかに歩き出し、ウラヌスも私達へ頷き、後を付いていく。

 私達も遅れて歩き出す。当然のごとくフードを目深に被ったメレオロンが、不安そうに私へ問いかける。

 

「……アイシャ。あのヒト知ってるの?」

「えっと……

 名前に聞き覚えはあるんですけど、よく覚えてなくて。

 うっすらと、プロハンターの方だった気はするんですが……」

「プロハンターね……」

 

 それぐらいしか思い出せないんだよな……。誰かが話してたのを、チラっと聞いただけだろうか。……いや、なら何で顔に見覚えが……プロハンターだとしたら、選挙の時か?

 

 

 

 街の入口からほどほどに離れた、芸術都市の名に相応しい荘厳な美術館へ入る。

 

 私達が訪れたのは、美術館の中に設けられた喫茶店。そこにも様々な絵画や彫刻などの美術品が飾られていて、ゆったりとしたスペースにテーブルが並んでいた。食事しながらのんびり鑑賞できるのはなかなかいいな。

 

 3人ずつ向かい合わせに座る6人席。そこでどう座るか相談になり、おじ様の隣を1つ空けて私、おじ様の向かいにウラヌスが、ウラヌスの隣にシームとメレオロンが座った。

 

「さて、まずは私を知らない者もいるだろうから自己紹介させてもらおうか。

 私はプロハンター、ジェイトサリ。

 ……恥ずかしながら、ゲームハンターを名乗らせてもらっている」

 

 ほーう。ゲームハンターかぁ……なーるほどねぇ。そういうのもアリなのか。

 ウラヌスはおじ様をアゴで差し、

 

「こいつ、グリードアイランドのソフトを昔7本も買ったんだぜ」

「ななっ──!?」

 

 えぇぇ、なにそれ。バッテラさんがあれだけかき集めてる中で、そんなに……

 

「……あ。

 そういえばバッテラさんって、何本ソフトを持ってたんでしょうね?」

 

 バッテラさんの名前を聞いて、露骨に表情を曇らせるおじ様。うん?

 ウラヌスは少し考え込み、

 

「……ロックベルト会長に全て譲渡する直前って話なら、俺の知る限り37本かな。

 つっても、うち6本はジェイトサリの持ってたヤツだけど」

 

 ん? 6本? 1本どこいったの。

 

「どういうことです? 6本とか7本とか」

「んー……

 ジェイトサリ、例の件って話してもいいか?」

「構わんよ。

 キミが調べて分かる内容なら、特に隠す意味もない」

「うん……長話もなんだから、多少端折らせてもらうけど。

 まず俺は、ジェイトサリに依頼されて、以前からの契約でサザンピースオークションに出品することになってた、ソフト7本について調査してたんだ。

 ……つか、なんであんな契約したんだ? 俺もさっぱり分からんのだけど」

 

 問われて、おじ様は肩をすくめる。

 

「我々がゲーム攻略中、誰かがジョイステーションを守っておく必要があるからな。

 サザンピースオークションが警備をしっかり行う代わりに──というのが建前」

「ほん?

 それが建前なら、本音は?」

「……けじめだ。

 誰もクリアしたことのない幻のゲーム。我こそはと勢い込んでゲームを始めるのだから、クリア公表者が出た後も、ダラダラとクリアを目指すなどみっともないだろう。

 ……後は期限を定めて、我々の士気を維持したかったというのもある。キミも念能力者なら、言っている意味は分かるだろう?」

「それは分からんでもないけど……

 わざわざ7本買って7人でプレイとか、非効率にもほどがあるだろ……」

「いかに効率的であろうと、何十人もぞろぞろ連れてクリアを目指すなどプロハンターの沽券(こ けん)に関わる」

 

 うーん、ハメ組に対する皮肉なんだろうな。他にもそういう人達はいただろうけど。

 

「まぁゲームハンターの誇りとやらは分かったよ。

 それでも、7本も手に入れたのはビックリだけどな」

「グリードアイランドはまだマシな方だ。100本も存在するからな。

 世の中には1本限りのゲームソフトなんて物もある。金さえあれば何とかなるグリードアイランドは、ゲームハンターから言わせれば容易い代物だ。……高くはついたがね」

 

 そんなもんか。バッテラさんでも、全体の1/3確保できたぐらいだしな。そりゃ単品モノに比べれば、探すのにそれほど苦労はしないと思うけど。

 ただ見つかりはしても、取引相場がなぁ……。世界一高いゲームソフトの名は伊達じゃなかった。……大半のプロハンターは買えなかったんだし。

 

「んじゃま、話戻すよ。

 ジェイトサリ達がゲームに入ってる間は、オークションの運営側でゲーム機を警備してもらって、約束の日時が経過した時点でオークションに出品するって取り決めだったのに、なんでか出品が前倒しになったんだよ。

 2000年1月1日が取り決めの日時だったのに、それより何ヵ月も早く出品されて。数年規模の契約だったのに、なんで中途半端に約束を破ったのか、俺が調査しに行ったんだけど……」

「契約違反ですか……でもホントにどうしてでしょうね?

 たかが数ヵ月程度なら、あのサザンピースオークションのような大手が、わざわざ契約違反なんてリスクを冒さなくても、待てばよかったように思いますが……」

 

 難しい顔をしているジェイトサリさん。ウラヌスは肩をすくめて、

 

「よく分かんね。

 何か脅されたっぽかったけど、誰に脅迫されたかなんて当然話しちゃくれなかったしな。

 まぁそれは今さら大したこっちゃないんだけど、問題は6本とか7本って話」

 

 ウラヌスは言葉を切り、私の顔を窺う。うん?

 

「サザンピースに出品されたジェイトサリの7本は、確かにバッテラが全部落札した。

 で、その後プレイヤーの選考会があったんだ。

 落札したばかりのグリードアイランドへ入るプレイヤーを選考する為の、ね」

「ええ、知ってます。

 私の仲間もその選考会で合格して、ゲームに参加しましたから」

「そのとき説明された最大合格者数は『32名』。

 ……選考会で落ちた連中にも聞いて、数人が同じ話をしたから、まず間違いない。

 ジェイトサリとも話したけど、それだと勘定が合わないんだ」

「……?」

 

 ウラヌスがおじ様の方を窺う。おじ様は頷き、

 

「私から説明しよう。

 私はマルチタップを使用せず、7本のソフトで7人参加した。

 ……うち2人は死亡し、これでメモリーカードの空き枠は9つあったはずなんだ」

 

 そっか……このヒト、仲間を2人失ってるんだ。

 

 マルチタップを使ってないなら、元々の空き枠は14だから7人分で残り7つ。そこから2つ空いて、確かに9つ枠があることになる。

 マルチタップを使えば、4倍の36人。……ホントだ、合格者32名じゃ勘定が合わない。

 

 ウラヌスは指を1本立て、

 

「ここから推測できることは1つ。

 バッテラは落札した7本のソフトのうち、1本を何らかの理由で手放してる。

 だからジェイトサリの持ってたうち6本が、バッテラの手元へ移動したって言うわけ」

 

 あっ──

 

 そうだ、思い出した……

 リィーナは、バッテラさんから取引して譲ってもらったって言ってた。

 

 おじ様の顔。どっかで見たことあると思ったら……

 

 私にプレゼントされたグリードアイランド。ジョイステーションを繋げたモニターに、この人の『顔』が映ってた!

 

 そうだよ、そういうことだ! リィーナ、バッテラさんが落札したばっかりのソフトを手に入れたんだ! タイミング的にそれしか有り得ない!

 

 ちょ……リィーナ。あなた、どんな取引したんだ……横取りしたも同然じゃないのか? あのバッテラさんが容易く譲るわけがない。想像しただけで胃が痛くなりそうだぞ……

 

 俯き加減だった顔をふと上げると、ウラヌスと目が合った。ニヤリとされる。

 

 バ……バレた。私が買ってもらったのがソレだって、いま完全にバレた……おぅふ。

 

 やっべぇ……

 ウラヌスのことだから、買ったのがリィーナだって予想してくるぞ、これは。

 そしたら、私とリィーナが密接に関わりがあるって完璧に見抜かれる……まずい。

 

「お待たせしました」

 

 従業員のNPCが来て、5人分のコーヒーがテーブルに置かれる。

 

 う、うん……コーヒーでも飲んで落ち着こう。

 

 視線をヨソに向け、素晴らしいんじゃないかなと思う絵画を眺めながらコーヒーを口に含む。うむ……心が癒されるようだ。

 

 そうしてると、一言も口を聞いてないメレオロンが、私に顔を近づけヒソヒソと、

 

「……ちょっとアイシャ。アンタ、だいじょうぶ?」

 

 う、うぅ。メレオロンにも心配されるくらい、挙動不審なのか……

 

 私がコーヒーを飲みながら現実逃避してる間にも、会話は続く。

 

「にしても、ソフトを手放したのにどうやってまた入ったんだ?

 手持ちのソフトはアレで全部だろ?」

「簡単な話だ。また購入しただけのことだよ。

 ずいぶんと手に入りやすくなっていたからな」

「う、うん……

 まぁそうだけどさ」

「……皮肉な話ではあるが、無償で提供したはずのソフト7本の落札額──1割程度が、私の口座に契約違反を理由に振り込まれたからな。再購入は容易だったよ」

「あーうん……200億だっけ?

 景気のいい話で」

「うむ。キミが外に出て、プロハンターとして顧問弁護士に掛け合ったからこそ、のちのいざこざを恐れて振り込まれたモノだと思っているがね」

「もういいだろ、その話は……

 俺は報酬を受け取ったんだし、そいつはアンタの運がよかったんだよ」

「……。だが現にキミはクリアを逃し、今こうして再びゲームを始めている。

 キミも購入したんだろ?

 やむを得ず、グリードアイランドのソフトを」

「……そうだよ。

 多分アンタともソフト競り合ってんじゃねーかな。知らないうちに」

「かもしれんな。

 このままキミが泣き寝入りするのは、私の気が済まないんだがね」

「泣き寝入りなんかしてねーよ。

 俺はちゃんとカード受け取ったじゃないか。ンな金いらねーって言ってんだろ……」

 

 ……雲行き怪しいな。

 

 いや、うん……

 ウラヌス、あなたの性格って常日頃からそんな感じなんだね……。ここ数日一緒にいて良く分かったけど……

 そりゃこのおじ様も、ウラヌスのこと気にいるよ……メチャメチャお人好しなんだもん。

 

「まぁ私も、キミが受け取らないと言っているモノを無理に押し付けるつもりはない。

 シングルハンターの矜持を傷つけたと言うなら、謝ろう」

「い、いや。そんなわけじゃないけど……」

 

 うんうん、そういうところ。私は可愛くて仕方ないと思うんだ。

 絵画の中に描かれた天使を眺めて、いるんだよな、こういう人も……と思いふける。

 

「それよりジェイトサリも、クリア者が出たんだから別にもういいんだろ?

 なんでまたわざわざゲームに入ってきたんだ?」

「うむ……」

 

 気になって、視線を隣のおじ様へと向ける。ちょうどサングラスを外したところだった。……なんだか格好いいな。憂いを帯びた表情が、どことなくそう思わせる。

 

「厳密には、誰かがクリアを公表したわけではないが……実際ゲームの中でクリアしたと思われるイベントが発生したからな。

 ようやく私も踏ん切りがついて、8年ぶりにゲームから出たんだが……」

 

 8年か……長いな。

 

「久々に戻った現実で、長年放置していた野暮用を片付けたり、レアなゲームを追ったり、選挙に顔を出したりもしたが……

 ……まぁ、なんだ。

 もはや生活そのものになっていたグリードアイランドに、いざ入れないとなると何とも居心地が悪くてな。

 いずれ再開する気配もあったから、雑事のかたわら動向を見守り──

 ゲームが再開したと知った時、即ソフトを手に入れ、グリードアイランドで一緒だった仲間に連絡を取ったんだ。

 みな返事は同じだったよ。──もう一度行こうと。

 そうして訪れたんだが……

 改めてこのゲームが、唯一無二の存在であると思い知らされたよ」

 

 そこまでを語り、ジェイトサリさんはサングラスを掛け直す。

 

 うぅん……人生だなぁ。みんなそれぞれに、このゲームに思い入れがあるんだな……

 

「ジェイトサリさんは、クリアを目指すんですか?」

「うん?」

 

 私が尋ねると、不思議そうな顔を返してきた。少し考える素振りを見せ、

 

「今度こそはと意気込みを示す仲間もいるが……

 私個人は、そこまで乗り気では無いな。あまりにも時間がかかりそうだったり、強力なチームがいるようなら、断念するつもりだ。私も歳だからね。

 とは言え、このゲームの先達(せんだつ)として、後進(こうしん)易々(やすやす)とクリアを譲るつもりもないが」

 

 あ、あはは……肩身狭いな。なんだか……

 

 ジェイトサリさんは私を見つめ、

 

「……キミは確か、アイシャ君だね。会長総選挙で拝見したよ。

 どうにも茶番くさい退屈な選挙ではあったが、最後の切り返しは痛快だった」

「あ、はい……」

 

 それ、私のアイデアじゃないしな……褒められても何だかなぁ。

 ジェイトサリさんはウラヌスへ目を向け、

 

「君達もクリアを目指してるんだろ?

 どうだ。我々と組んでみる気はないか?」

 

 ウラヌスは少し首を傾げ、沈黙している。

 やがて、首を横に振った。

 

「アンタは今回も5人で来てるんだろ?

 こっちは、ご覧の通り4人だ。9人はチームとして多すぎる。

 クリア報酬の分配を考えても、帳尻が合わないと思う」

「うむ……

 そうだな。バッテラの懸賞金が消えた今、報酬の分配は深刻な問題だからな」

 

 そうなんだよね……仲間割れする可能性がある人とは組みにくいからな。現にハメ組は、それで破綻してしまった。

 

 誰かがクリアする度に、指定ポケットカードやアイテムは消えてしまうようだし……。そのルールもプレイヤー同士の結託を困難にしている。誰かと組むのは慎重にならざるを得ない。

 

 ……いずれにしろ、メレオロンとシームのこともあるから、誰かと組むなんてできないんだよな。

 

「残念だな。

 キミがいれば、今度こそはと思ったんだが……」

「俺も前回負け組だよ。

 そもそもゲームの早解きはガラじゃないんだ」

 

 あ、なんかメレオロンと似たようなこと言ってる。……メレオロンの方を見ると、吹き出しそうなのをこらえてた。

 

「私もそうだよ。

 でなければ8年もプレイしない」

「でも、今回は違うんだろ?」

「……」

 

 そりゃそうだろうな……。このゲームを熟知してる人ほど理解しているはずだ。先手を取られればクリアは困難だと。カード化限度枚数、ひたすらこのルールに苦しめられる。

 

「まぁそうだな……

 ともあれ情報交換はしておこうか。

 なにか特別知りたいことはあるかね?」

「やっぱり、クリア前と後で何が変化したか、だな。

 これに勝る情報はないよ」

「我々も今そこを重点的に情報収集している。

 となると、現時点ではお互い有益な情報もないか」

「うーん……

 ゲームが再開したのは何日から、とかは?」

「9月6日だな。合ってるかね?」

「うん。

 ずっとゲーム内にいたプレイヤーがその日だって言ってたから、ほぼ間違いないよ」

「ふむ。

 指定ポケットカードの入手イベントが変化したという話だが、何か見つかったか?」

「いや、今のところは1つも。

 意外に少ないのかもしれないな……変える必要性の薄いイベントは、まず変化してないだろうと予想してるけど」

「うむ……我々も引き続き調査するつもりだ。

 スペルカードの効果変更は知ってるかね?」

「うん。『浄化』だろ?

 他は単なるエラッタで、『浄化』だけ大きく変更されてたな」

「持っている情報はほぼ同じか……

 着眼点が似通(に かよ)ってしまうのも考え物だな」

「褒め言葉と受け取っておくよ」

 

 そう言って、ウラヌスは苦笑した。

 

 

 

 美術館の外に出て、ジェイトサリさんと私達は向かい合う。

 

「なかなか楽しかったよ。

 また機会があれば、情報交換しよう。いつでも『交信』で連絡してくれ」

「ああ」

 

 短く答えるウラヌスに、ジェイトサリさんは歩み寄り、片手を差し出す。

 握手の形のそれに、ウラヌスも手を合わせる。

 するとジェイトサリさんは、またウラヌスに抱きついた。この人、ハグ好きだな……

 

「だから、そういうのやめろって……」

「ウラヌス。武運を」

「……

 あんたもな。ジェイトサリ」

 

 抱擁を解き、おじ様は背を向けて歩いていった。

 

 はぁー。なんというか……濃い人だった。

 ウラヌスを見ると、ちょっと困った顔でおじ様の背中を見送っていた。

 

「まったく……やりづらいおっさんだ」

「ふふ。

 楽しそうでしたよ、ウラヌス」

「えぇー……」

「あのおじさん、結構強敵なんじゃない?」

 

 シームが興味ありげに尋ねると、ウラヌスは困り顔のまま首を横に振る。

 

「ジェイトサリ達は、多分クリアできない。

 正直あんまり強くないんだ。昔は血気盛んだったみたいだけど、仲間が2人死んでから随分慎重なプレイスタイルになったらしくて。

 結局8年もかかって、70種いってないからな……特にハメ組には参ってたらしいし。

 何度かトレードしたけど、バトル系イベントの指定ポケットカードのオリジナルをほぼ持ってなかったからね」

 

 うーん。念能力者としては分からないけど、少なくとも武術や格闘に長けてはいないな……ゲームハンターにはあまり必要なさそうだし。

 

「だから、ジェイトサリと組むメリットはなかったんだよ。

 信用できるから、トレード相手としては悪くないけど」

「……アンタが組まなかった理由は、それだけじゃないでしょ?」

 

 窺ってくるメレオロンに、肩をすくめるウラヌス。

 

「確かにそれだけじゃないけど、2人に気を使ったわけじゃないさ。

 そもそも俺は、あのおっさん苦手だしな……」

「おじさんはウラヌスのこと、好きそうだったけどね」

 

 微妙な顔をするウラヌス。うん、私もシームの言う通りだと思う。明らかに好意あった。年齢差考えたら、可愛い孫ぐらいの感覚だろうけど。実際、見た目も性格も可愛いしな。

 

「まぁジェイトサリのことはいいさ。

 時間食っちゃったけど、そろそろブンゼン巡りを始めよう。

 本探しと観光とゲーム攻略、込み込みで行くよ。結構忙しいからな」

「本屋の案内よろしくー」

「指定ポケットカードって、ここにどれだけあるの?」

「かなりあるよ。

 ブンゼンが時間かかるっていう理由の1つがそれだし」

「やっぱり、さっきの美術館みたいな施設が多いんですかね?」

「美術館も多いけど、芸術の街だから他にも色々あるよ。

 ま、とりあえず行こ」

 

 歩き出すウラヌスに、私達も合わせて歩き始めた。

 

 ウラヌスは口にしないけど……

 長年ここにいたジェイトサリさんのことも、気にかけてるんだろうな。きっと。

 

「アイシャ」

「なんです?」

 

 シームが声をかけてきたので、返事をしながらそちらを見る。

 

「あのおじさん、アイシャがクリアしたって聞いたら、どんな顔したかな?」

 

 う。……そんなの知りたくもないよ。

 斜め前を歩いてたウラヌスが「くっくっ」と肩を揺らし、

 

「俺もそれが知りたくて、教えてやろうかちょっと悩んだぐらいだしな」

「やめてくださいよ、そういうの……」

「まぁアイツにも悪いと思って、やめといたよ。

 ……アイツはアイツで、真剣だしな」

「あなたはあなたで、彼のことを気にいってたみたいですけど?」

「……

 変わったやつだとは思ってるけどさ。

 別に、気にいってるってほどじゃないよ」

「……でもアンタ、なんでアイツの契約うんぬんって依頼受けたの?

 ゲームを攻略してる最中に、わざわざゲームの外へ出たわけでしょ。

 気にいってないなら、理由はなんなのよ?」

 

 メレオロンの質問。……それは私も気になるな。ウラヌスが泣き寝入りっていうのも、よく分かんなかったし。

 

「あー……

 アイツ、自分か誰かがゲームクリアするまでは、外に出たくなかったらしくて。

 ……俺ぐらいしか信用して頼めないとかよく分からんこと言って、指定ポケットカード4枚渡すから、代わりに調べてきてくれないかって。

 俺がゲームから出てる間、カード預かってくれるって話だったし。俺も少し、気分転換したかったからね。

 ……最初は断ろうと思ってたんだけど、アイツの契約内容を聞いて、気が変わってさ」

「え。どんなのどんなの?」

 

 質問を重ねるメレオロン。ウラヌスは少し沈黙した後、

 

「……隠す内容でもないし、教えてもいいけど。

 えっと……

 もしも2000年1月1日までにグリードアイランドのゲームクリアを公表し、それを証明し得る者が現れなかった場合……

 仮にその時点で、私を含めた7名のゲームプレイヤーがまだプレイ中であったとしても……

 無償でこのゲーム7本を、ハード機もろともサザンピースオークションに提供し……

 才能ある後輩にゲームクリアの夢を託すことをここに宣言する。

 ……プロハンター、ジェイトサリ」

 

 ……。あのおじ様、すごいな……思わず目がうるっと来ちゃったよ。

 

 ウラヌスが意味ありげに私を見て、ドキッとする。

 

「ジェイトサリの持っていたソフトで、アイシャがクリアしたんだったら──……

 アイツの夢は叶ったことになるね。

 だから、ホントはちょっと教えてやりたかった」

 

 私から目を逸らし、青い空を見上げて歩くウラヌス。

 

 やっぱりソフトのこと、バレてたか……

 

 ……でも、うん。ウラヌスが、あのおじ様のことを気にいる理由は良く分かったよ。

 

 

 

 

 

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