どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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第八十三章

 

 スペルカードショップのテーブルにカードを広げたまま、なんでかシームとウラヌスが『聖水』の使い道について、あーでもないこーでもないと議論を白熱させていた。

 

「でもゲームから戻ってきた直後って、待ち伏せされたりしたら危ないんでしょ?

 だったら10回攻撃スペル防げる状態からスタートできるのって、結構いいと思うけど。

 『聖騎士の首飾り』もアイテムとして持ってないんだし」

「うーん……

 いや、それはあらかじめ指定ポケットに首飾り入れといて、戻ってきたらすぐにゲインすればいいだけだよ。『再生』1枚でカードに戻せるんだから。

 10回防げるって言っても、『追跡』とか『交換』のスペルを連打されたら、仲間と合流する前に消えちゃうだろうし……

 まぁそれを言うと、『交換』は首飾りでも防げないんだけどな」

「だったら、やっぱり使っておいた方がいいと思うよ。

 どうせボク達、何度もゲームから出たり入ったりしないじゃん」

「……出入りするとしたら、俺1人かな。

 アイシャは例の件があるし、メレオロンとシームがゲームから出るとしたらよっぽどの状況だろうから。

 管理がややこしくなるっていう問題を除けば、使っといた方がいいんだろうけどな……寝てる時とか、立て込んでる時に自動で防げるのもデカイし。

 んー……」

 

「……あの」

 

 ややこしい話で口を挟みにくかったけど、少し疑問があったので尋ねておきたい。

 

「うん。なに?」

「聖騎士の首飾りと『聖水』が両方効いてる時って、どちらが有効なんですか?」

「それは簡単。

 首飾りの反射が自動発動する。『聖水』の回数は消費しない」

「じゃあ……

 『聖水』と『防壁』みたいな防御スペルだけならどうなるんです?」

「……確か『聖水』の自動防御が即座に入る。だからその気がなくても、勝手に回数消費されちゃう。残念ながらバインダーを出してる状態でもね」

「それは厄介ですね……」

「要は融通が利かないんだよな。

 なんでこの効果でランクAなんだか……

 せめて重ねがけできるとか、効果発動が任意だったら使いようもあるんだけど……」

 

 私は小声で囁く。

 

「……ウラヌス」

「うん……あいつ、まだ近くにいる。

 どっか行くまで話してようかと思ったんだけど、けっこう粘るな」

「移動スペルで逃げます?」

「いや。拠点に直接飛ぶと、どっちの方へ飛んでいったかで行き先を予測される。

 かといって、他の都市を迂回していくのもスペルがもったいないし……

 諦めて相手してやった方がいいかも」

 

 溜め息を吐くウラヌス。

 プーハットさん、私達が店から出てくるまで待ってるみたいなんだよね。そういうことされると、こちらとしてもやりづらい。用があるなら直接言えばいいのに。

 シームが不安そうな顔で、

 

「結局『聖水』ってどうしよう?」

「んー……まぁ『聖水』の件は一旦保留にして、手元に残そう。

 こんな状況じゃ考えもまとまらないし、さっさと要らないスペルを売って帰りたい」

 

 強引にウラヌスがシメにかかる。メレオロンは怪訝な様子で、

 

「そっちはそれでもいいけど、『宝籤』はどうするの?

 いっつも使ってから、売ってるじゃない」

「うーん……

 今は使いたくないな。落ち着かないし、オータニアへ戻ってからにしとこうか。

 『宝籤』の不要カードも戻ってから売ろう。大した額でもないからね」

 

 そんなトコか。さて、何の目的で待ってるのやら。

 

 

 

 私達が店の外へ出てくると、隠すでもなく堂々とこちらへ歩いてくるプーハットさん。

 

「よう。

 ちょっと話がしたいから、待たせてもらったぜ」

「話ねぇ……

 せめて場所を変えてくれないか? 見晴らしのよさそうなところとか」

「ああ、いいぜ。オレもこんな道端で話す気はないしな。

 少し歩いたところに公園があるから、そこでどうだ?」

「公園か……それなら構わないよ」

「OK。付いてきてくれ」

 

 ウラヌスの返答を聞いて、プーハットさんは背を向けて歩き出す。

 身体つきや歩き方を見る限り、素人ではないけど手練れにはほど遠いといった感じだ。さっき話した感触だと、むしろ交渉ごとを得意とするタイプなんだろう。

 念能力も、そっちのタイプなのかもしれないな……用心するに越したことはないか。

 

 

 

 広い公園の中央辺り。ゲームキャラ以外にプレイヤーの気配がない、確かに見晴らしのいい場所まで私達は移動してきた。

 ただ、もう暗いんだよな。明かりのそばにいるけど、周囲が見えるかと言えば微妙だ。何かあった時、私やウラヌスはいいけど、メレオロンとシームはどうだろうか。

 

「さて、まず確認しときたいんだが……

 あんた確か、ウラヌスって名乗ってたよな? ……ウラヌス=チェリーか?」

「……。

 そうだよ。別に隠しちゃいない」

「やっぱそうか。

 聞き覚えのある名前なんで思い出そうとしてたんだが、話し終わった後に思い出したよ。

 大物のシングルハンターが、ツェズゲラ以外にもう1人来てるってな」

「……勝手に大物扱いしないでくれ。

 俺は最近、大したことしてないだろ。

 ツェズゲラみたいなバリバリの一線級と並べられてもな」

「あんたみたいな天才児でも、歳をとったらただの人ってか?

 世知辛(せ ち がら)いねぇ」

「どうとでも言え。

 つうか、それが本題じゃないんだろ?

 話があるなら早くしてくれよ」

「ああ。じゃあ単刀直入に言おうか。

 ……オレ達の仲間にならないか?」

 

 それを聞いて──

 一拍置き、ウラヌスは聞こえるように溜め息を吐いた。

 

「予想通りすぎるな……

 答えはNOだよ。話は終わりか?」

「おいおい、少しは話を聞いてくれよ」

「予想はついてるって言っただろ。

 ──オマエ、ハメ組だろ?」

 

 ずばり指摘され、痛そうにアゴをかくプーハットさん。

 

「あー……

 そう呼んでる連中がいることは知ってるが、オマエも面と向かって言うなよ……」

「言われるようなことをやってるからだろ。

 誰がハメ組なんて言い出したか知らないけど、オマエラにはお似合いだよ」

「皮肉を言うなよ。

 オレはまだ入って1年ぐらいだから、別にどう呼ばれようと構わねーけどな。

 入って長い連中が聞いたら、多分怒るぜ?」

「知らねーよ。

 俺達を説得できる材料がないなら、これで話は終わりにするぞ」

「あ、いや、ちょっと待ってくれ」

「……

 そもそもハメ組は解散したんじゃないのか? 仲間割れしたんだろ?」

 

 先ほどよりも痛そうな顔をするプーハットさん。片目を閉じて渋い表情をしている。

 

「あんた達、オレ達がどうなったか詳しく知らないクチか?

 説明したくねぇんだが」

「念能力者が、揃いも揃って赤っ恥だからな。

 ハメ組だったヤツなら、誰も話したくないだろうさ。

 噂程度なら耳にしてるが、是非とも当事者の口から聞きたいもんだね」

「……話せば仲間になってくれんのかよ?」

「話す気がないなら、俺達はもう行くぜ。

 興味ねーし」

 

 うむ。交渉ごとはウラヌスの方が上手(うわて )だな。おかげでラクチンである。

 プーハットさんは後ろ頭をがりがり掻き、

 

「……わーったよ。話す。

 クリア直前からでいいか?」

「仲間割れした原因がそれなら、そこから聞きたいね」

「……

 オレ達は指定ポケットカードを、最終的に96種まで揃えた」

「へぇー……やるじゃん。ちょっと見直したよ」

 

 ホントにクリア直前だったんだな……状況次第では誰が勝つか分からないぐらいの接戦だったか。ツェズゲラさんも99種まで揃えたみたいだしな。

 それだけに、クリアを逃したのは痛かっただろう。

 

「だが、他の連中が先に99種を揃えたんだ。

 オレ達もかなり混乱したが、その時点ではまだ仲間割れはしていなかった。

 イベントが発生して、それどころじゃなかったからな」

「あれだっけ? クイズイベント。

 おおかた、指定ポケットカードに関するクイズか?」

「そうだ……

 最高得点者のみ、No.000のカードが手に入るクイズが始まった。

 ……そのイベントで、連携に亀裂が入った。

 オレ達は慌てながらも、まだNo.000が手に入ればチャンスはあると思ってたんだ。

 それで知識を寄せ合って、クイズを協力して解いてたんだが……」

「ダメだったと」

「ツェズゲラが100点満点中96点なんて取りやがってな」

「ぅわー。それは俺も無理だな……」

 

 そうかなー……。ウラヌスならいい勝負した気もするけど。

 

「せめて、ゲンスルーがいれば何とかなったかもしれないらしいが……」

 

 いや、多分ムリだと思う。ゲンスルーさん、96点とか聞いて全然自信なさげだったもん。せめて私達も協力して解くべきだったかな……それでも勝てる見込みは小さかっただろうけどね。

 というか、ハメ組の指定ポケットカードに関する知識って、そこまでゲンスルーさんに片寄ってたのか? それは信用しすぎというか、アテにしすぎじゃないか?

 ゲンスルーさんが、ハメ組の人達に仲間意識を持てなかった理由にソレはあるのかも。裏切る気で手を組んだ仲間とは言え、彼らの一見善意からの提案にも全然嬉しくなさそうだったしな。頼りというか、アテにされるのが見え透いてたからか。

 

 私が色々考えてるうちにウラヌスは腕を組み、

 

「……。

 ゲンスルーねぇ……」

「オレも詳しくは知らないんだけどな。

 オレが入る前に、メインメンバーの1人が裏切ったんだとよ。

 情報が漏れたとか何とかで騒いでたよ」

「そりゃ大勢で群れりゃ、誰かが裏切るリスクは上がるだろうさ。

 所詮みんな金が欲しかっただけだろ? 旨い話がありゃそっちに行くさ」

「しかしツェズゲラと組むならまだ分かるが、女史と組んだのがな。一体どういう経緯でそうなったんだか」

「じょし?

 ……あ? ちょっと待て。

 ツェズゲラがNo.000取ったんだろ? それであいつクリアし損ねたのか?

 それならまだやりようもあったろうに」

「クリアしたのはリィーナ組だろうな。

 流石のツェズゲラも、リィーナ女史相手じゃお手上げだったんだろうさ」

 

 身じろぎ1つしないウラヌス。

 わ、私に一切視線を向けようとしない……

 ヤバイやばいヤバイ、これは後で絶対に詰問される。。

 

「……で。

 クイズでしくじって、誰が悪いだの何だので揉めたのか?」

「いや、それもなかったわけじゃないが、点数的に無理だったのは明らかだしな。それにどの答えが正解で間違いかも分からないんじゃ、誰の責任かなんて問いようもない」

 

 そうそうそう! あのクイズ、正解間違いどころか自分の点数すら分からないからな。ツェズゲラさんの点数が圧倒的だったから大して気にしなかったけど、結構不満だったりする。

 

「なるほど……まぁそうだな」

「……問題はその後だ。

 よほど焦ったのか、力ずくでカードを奪おうと主張する連中が出てきた」

 

 力ずくねぇ。穏やかじゃないな。攻撃スペルによる波状攻撃なら、まだこちらも手心を加えただろうけど、戦闘を仕掛けてきたらケガするぐらいじゃ済ませなかったかもな。

 

 ウラヌスは、腕を組んで難しい顔をするだけで、何も返事しない。

 

「1人1人じゃどうにもならないが、流石に全員でかかれば何とかなるってな。

 それでも無理だという意見と、イケルという意見が真っ二つに分かれちまってよ。

 しまいにゃ、喧嘩じゃ済まないレベルの争いになっちまった」

 

 呆れたように息を吐くウラヌス。

 

「結局、その仲間割れが原因で解散したわけか。実にバカらしいオチだな。

 ……なら、今のお前はなんなんだって話なんだが。そもそもお前はその争い、どっちについたんだ?」

「どっちにもつくかよ、お前さんの言う通りバカらしい。

 巻き込まれる前に、さっさと逃げたさ。

 後で様子見に戻ったら、大半の連中が傷だらけよ。死人は出なかったみたいだがな。

 ……そんな状態で、ツェズゲラやリィーナ女史に挑めるはずもない」

「そりゃ命拾いしたな。

 言っとくが、お前ら程度が束になったところで、リィーナさん相手じゃ全滅してたぞ」

 

 全滅て。……いや、大怪我ぐらいはさせたかもしれないけどね。襲ってきたら。

 

 プーハットさんは、多分に疑わしげな目を向け、

 

「ずいぶん偉そうに言ってるが、お前さんなら勝てたとでも言うのか?」

 

「…………

 ……。

 それは無理だな。カードを奪えたとは思えない」

 

 やけに沈黙長かったな……

 ウラヌス、リィーナの実力を知った上での発言か? ……まぁ無理って言ってるしな。

 

「ツェズゲラも無理、あんたも無理か。

 束になりゃどうにかってのも理想論だな。誰が率先して死にに行くってんだ」

 

 いや、その。殺しまではしなかったと思うけど……ゲンスルーさん達は、見るも無残な目に遭わせたけどね。リィーナもやる時は徹底的だからな……

 

「で、お前は今どこに所属してんだよ。

 ハメ組は解散したんだろ?」

 

 プーハットさんは複雑な顔をしている。

 

「……ああ。

 あんた達が言うところのハメ組は、確かに解散したよ。

 だが、全員がバラけたわけじゃない。

 大半はゲームから出たみたいだが、オレは次の勝負に賭けて残留したやつらと組んでるのさ」

「残留ねぇ……とっとと出てった連中の方がよっぽど賢明だと思うが。

 次の勝負も何も、バッテラの懸賞金なんてとっくにないって分かってるのか?」

「おいおい。頭を普通に働かせれば、気づきそうなもんだろ?

 バッテラがクリア報酬を手に入れたら、その後どうなるか」

 

 小馬鹿にした感じのプーハットさんに、ウラヌスはやや目線を落とし、

 

「……まぁクリア報酬を金にする手段なんて、いくらでもあるだろうな。

 それでもバッテラの報酬に比べりゃ、ずいぶん目減りはしそうだが。

 確実性もないし、分がいい話とは思えないけどね」

「あんた達も同じじゃないのか?

 プレイヤーが増えてきたから、オレ達はむしろ確信してるんだが。

 ゲームクリアの懸賞金がまたかかってるんだろ?」

「懸賞金がかかってるのは事実だけど、こちらの都合とは関係ない。

 クリアを目指しちゃいるけど」

「あ……?

 どういうことだよ。あんた達、金目当てじゃないのか?」

 

 問われたウラヌスは、面白くなさそうな顔で指に絡めた髪の毛をくるくる回し、

 

「お前らみたいな半端者と違って、俺は稼ごうと思えば稼げるんだよ。

 そもそも500億は確かに大金だろうが、勝者総取りのゲームに本気で挑むのは、よっぽど勝算があるか一攫千金を狙うしかないバカだけだろ。

 ──金勘定にシビアな連中が多いプロハンターがほとんど参加してない時点で、ワリに合わない勝負だって分からないのか?」

「ぐっ……!」

 

 あー、確かに……。クリアした人しか500億もらえないのって、やっぱり問題あるよね。足の引っ張り合いになるに決まってるもん。実際そうなってたわけだし。

 

「大体、まだゲームに居残ってるのは、ゲームから脱出する実力もないからじゃねーのか。お前も外には出てないんだろ?」

「それはむしろ、散らばった連中の方だろ。

 1人じゃゲームから出れもしないヤツは、もちろんいるだろうな。

 だが、オレをそんなヤツラと一緒にするな。残ってるのはオレの意思だ」

 

 ほとほと呆れ返ったような表情をするウラヌス。

 

「実力が足りないから、あれだけの徒党を組んでたんだと思ってんだけどな、俺は。

 ンなことだから、主力のゲンスルーにも見限られる」

「ぐ……

 いや、だがゲンスルーってヤツはそんなに強かったのか?

 ジスパーの方が強いって聞いてるが」

 

 いや……まず間違いなく、そのジスパーって人よりもゲンスルーさんの方が強いだろう。始めから裏切るつもりだったゲンスルーさんは別にして、実力者なら大勢と組もうなんて考えないだろうしな。報酬の取り分が減りすぎてワリに合わないから。

 つまり、ハメ組の人達はゲンスルーさんの実力をまったく見抜けなかったわけだ。長年一緒にいて誰1人見抜けなかったんじゃ、どうしようもないな……

 

「ゲンスルーが強いか弱いかなんてどうでもいいさ。……いないヤツのことなんて知ったこっちゃねーし。

 どっちにしろ、俺達がハメ組の残留チームなんかと手を組む理由がねぇよ」

「ホントにそうか?

 人数がいると断然違うぞ。現にオレ達はクリア寸前までは行ったんだぜ? 作戦自体は正しかった。

 ……足りなかったのは、突出した戦闘力だ。

 アンタ、かなり使えるんだろ? 聞いた話じゃ、PKバスターなんて呼ばれてたらしいしな。

 前はソロで動いてたアンタも、今は他人と組んでるじゃないか。アンタの腕とオレ達が長年蓄えた情報が合わされば、クリアの見込みは相当増すだろうよ」

 

 ……? なんだ、ピーケーバスターって。

 PK……ペナルティキック? そんなわけないか。

 

 調子のいいことを言ってるプーハットさんに対し、急に不機嫌になるウラヌス。

 不意に手を伸ばし、プーハットさんの下アゴをぎゅうっと掴んだ。

 

「──おごっ!?

 な、なにしやがる! 放せ!」

「はぁぁー……

 お前さ。こうやってあっさり急所に触られる程度の実力で、俺と手を組むのか?

 俺がボマーとかだったらどうする? お前、もう死んでるぞ」

「……っ!」

 

 (あや)しげな笑みを浮かべながら、アゴをさするように手を動かすウラヌス。

 

「お、お前さん、なにやってんだ。

 ホントに男なのか? そんなナリで」

「あ?

 今そんな話、してねーだろ。なんだ急に」

「いいから放せよ、アゴをこするな。

 男か女か分かんねーツラしやがって……」

「悪かったな、どっちつかずで。

 いや、面白いアゴしてるから触ってみたくてな。

 お前のアゴヒゲこするの、なかなか楽しいぞ。ジョリジョリって」

「やめろよ、気持ち悪い……」

 

 機嫌よさそうにしていたウラヌスが、また不機嫌になる。

 

「まぁ実際、気をつけるんだな。

 ノドを潰されたら移動スペルも使えないぞ。警戒がまるで足りてない。

 そもそも腕も随分なまってると見える。イチから鍛え直した方がいいな。

 一部のイベントが再編されたって話だし、クリアがより困難になったバトルイベントにだって挑戦するかもしれない。

 ……その気がないなら、さっさとゲームから出ろ。実力不足だ」

 

 ゆるりと手を放すウラヌス。気持ち悪そうに首を揉むプーハットさん。

 

「ちっ……

 ムカつく忠告ありがとよ。じゃあな!」

 

 プーハットさんは腹立ち紛れにツバを吐き捨て、背を向けて去っていく。

 それを見送った後、ウラヌスは肩をすくめる。

 

「こんな調子だから、俺は嫌われるんだよな」

 

 ……。

 そうかもしれないけど、あんなことを口にする理由が分かるだけに何も言えないな……

 ウラヌスも大きなお世話って自覚してて、それでも言うからな。嫌われてまで忠告する、そういう部分で私は彼に敵う気がしない。

 アゴヒゲこすってたのは、正直なにしてんだとは言いたいけど。……確かに面白いアゴしてたけどさ。

 

「アンタ、ほんっとお節介焼きよね」

 

 メレオロンが一言突き刺す。

 

「うっせーよ。

 あいつ、シームより全然オーラ少ないんだぞ。なんであんなに自信満々なんだ」

 

 うーん。念能力者って、基本的に実力隠すからなぁ。だから自分がどれぐらいの強さか自覚しづらいんだよね。……実力不足を自覚した時には、手遅れだったりするんだけど。

 

「まぁ、オーラの多寡だけで勝負が決まるわけでもないですし」

「それはそうなんだけどね。

 実際シームが戦って、アイツに勝てるかどうかはまた別の話だから」

「……ぼくって、やっぱりまだ弱いの?」

「実戦経験をもっと積まないと、流石にな。

 相手だって、真剣勝負ともなれば必死になるさ」

「そうですよ、シーム。

 念能力者同士の戦いは、何があるか分かりません。

 特に命懸けの戦闘ともなれば、油断したばかりに実力上位の使い手が命を落とすことも珍しくありませんから」

「……うん……分かった」

 

 メレオロンがパンパンと手を叩く。

 

「ほら、あんた達。

 こんなところで立ち話してないで、早く帰りましょ」

 

 む、うまくシメられてしまった。……まぁその通りか。こんなところに長居は禁物だな。

 私達は『再来』を使う為、「ブック」を唱える。

 

「……ところでウラヌス。

 あいつのアゴヒゲ、どんな触り心地だった? アタシも触りたかったんだけど」

 

 おぉい。立ち話せずに帰るんじゃなかったのか。

 

「んなモン帰ってからで……

 いやいや、どうだっていいだろそんなの」

 

 メレオロンがちょっとイヤらしい顔をする。

 

「あいつ、あんたにアゴ撫で回されて、まんざらでもなさそうだったしさ。

 ……そういえばあんたって、ヒゲ生えてないわよね?」

 

「……。

 生えてこないしな」

 

 力なく返すウラヌス。んん? なんか思うトコあるんだろうか。

 

 

 

 

 

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