どうしてこうなった? アイシャIF   作:たいらんと

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オータニア編5 2000/9/19 ~ 9/20
第八十四章


 

 プーハットさんとのアレな会話を終えてオータニアへ移動した私達は、すぐに『宝籤』13枚を使い切る。

 はい、モノの見事にクズカードばっかりでした……

 トレードショップで不要なカードを売り払い、当座の予算を調達する。マサドラでお金下ろしそこねたから、無一文だったんだよね。

 忘れないうちに私がシームへ『密着』を使用しておく。これで後3枚使えば『密着』を全員かけ合ったことになるな。あんまり意味はないんだけど。

 

 そして、オータニアの宿へと戻ってきた。

 いつもの部屋で、嬉しそうに抱き合って布団でゴロンゴロンしているシームとサクラを微笑ましく眺めながら、私とウラヌスはお風呂の為に部屋を出ていく。部屋を出る間際にメレオロンの顔をちらっと見たら、少しむすっとしてたのが面白かった。暇つぶしの本があっても全然ダメじゃないか。

 宿の廊下を進む中、

 

「はぁー……シームも飽きないねぇ。

 そんなにいいもんかね、あの猫」

「なに言ってるんですか。

 あのサクラはいいものですよ」

「ちょっとアイシャがなに言ってるか分かんない」

 

 

 

 伸び伸びと1人風呂を堪能し、着替えを済ませて暖簾を潜ると、想像した通りにそこで待つウラヌスの姿があった。

 

「お待たせしました」

「ううん、待ってないよ」

 

 お互い言った後にくすくす笑う。何だろうね、この感覚。

 ウラヌスは笑顔のまま、売店の方を親指で差し、

 

「軽く飲んでかない?

 ほら、戻ると飲み食いしづらいし」

「ええ、いいですよ」

 

 

 

 ウラヌスは瓶のフルーツ牛乳。私は瓶のコーヒー牛乳とほかほかのドーナッツを手に、廊下のソファーへ座る。

 さっそくドーナッツを1つ頬張る。

 うむ……揚げたての蕩けるような甘みがハンパない。消耗した五臓六腑(ご ぞうろっぷ )に染み渡ろうというもの。

 ドーナッツをぺろりと平らげ、コーヒー牛乳のフタを開け、くいっと呷るように飲む。

 

「……ぷはっ」

 

 行儀悪く息を吐く。何となく隣を流し見る──あ、やべ。ウラヌスの飲み方、めっちゃ可愛い。なんか赤ちゃんが哺乳瓶でミルク飲んでるみたい。

 もしかして歌いすぎた影響なんだろうか。クチに力が入らないのかもな。

 ウラヌスの唇と離した牛乳瓶の間に、つぅっと唾液が伸びる。おおぅ……これは見ちゃいけないものだ。

 目を逸らし、コーヒー牛乳を呷ると、

 

「……リィーナ組ねぇ」

「ぶほぉっ!?」

 

 ぐっはぁ! 今、いま言うかっ!? 狙い撃ちしやがったのかっ!? 危うくやらかすトコだったぞ!

 

「げほっ! げっほ」

「あああ、ごめんアイシャ!

 変なこと言って」

 

 背中をさすってくるウラヌス。ああ、うん、助かるけどちょっとブラの感触が伝わってそうで困る……

 

「けふん、ぁ……はい。だいじょぶです、もぅ……」

「うん……

 ホントごめんね?」

 

 ぐぅ。謝るのはいいけど、そんなことを言った真意が気になる。私の今の反応で、諸々バレた気がするぞ。

 とりあえず一息吐き、誤魔化すような心地で2つ目のドーナッツにかぶりつく。

 

「でもさ……

 やっぱり気になるわけだよ。……いったい、どういう関係なの?」

 

 ……。

 このタイミングも狙ってたんだろうな。おそらくメレオロンやシームがいない時なら、私が話しやすいと踏んで。部屋に戻ったら戻ったで、私はサクラと遊ぶしな。

 

 どうしようかなぁ……ウラヌス、嘘吐いても見破るからなぁ。

 だからって、真実そのまま話すなんて有り得ないし……

 

「……俺さ。

 風間流の道場の神字描いてるって言ったじゃん」

「ええ……」

「昔は俺も血気盛んでさ。里から外の世界に出て、色んなことが楽しくてね。

 風間流の念能力者とは、結構手合わせしてるんだよ。まあ、心源流ともだけどね。

 俺も色んなヤツと戦うのが楽しくって、口外禁止って約束で『発』ありの能力バトルもそこそこしてたんだよ」

 

 やたら練度が高いと思ったら……なるほどな。

 手合わせの回数ではなく、手合わせした相手の種類が多いのか。それなら、応用が利く使い手になりやすいだろう。

 

「面白いもんでさ。

 俺が色々手のうちを見せると、相手も付き合いよく手のうちを見せてくるんだよ。多分、念能力を思う存分使える機会に飢えてるからだろうね。

 俺も念をかけられてたとは言え、昔はまだまだオーラ量に余裕あったから、実力者とも遠慮なく勝負できたよ。

 ……リィーナさんとか」

 

 あ、はい。そこで出てくるんですね……

 

「リィーナさんも忙しい人だから、たくさん手合わせできなかったけど。

 最初のうちは全然勝てなかったな。なにやっても効かないか、返されて。

 でも、何度も戦ってるうちに、だんだん勝てるようになってきて……

 身体が急激に弱ってきてからは手合わせできなくなったけど、俺が柔の高等技術に対抗できるのは、大体あの人から吸収したからだと思う」

 

 ……。

 仮にウラヌスが今の数倍ぐらいのオーラ量で、今の技術水準だったとしたら……

 確かにリィーナでも、安定して勝つことはできないだろう。戦ってるところを見ないと何ともだけど、勝負の取り決め次第でいくらでも揺れてくる。

 

「クセっていうほどのものでもないけど……

 リィーナさんが本気だしてる時と手加減してる時の差、っていうのかな。

 その時の力の抑え方、技の隠し方が似てるんだよ。……アイシャは」

 

 ……。

 

 無理だな……。そこを誤魔化すことはできない。

 力や技を隠す場合、基礎のみをもって戦うのが常となる。何かを試したい時はともかく、基礎の反復は一番時間をかけてやっておくべきことだ。

 それが正しいと信じて私は実践しているし、リィーナにもそう教えた。

 私もリィーナも、技の最適化を終えている人間だ。同じ武術体系で、基礎も応用もほぼ同じ。これで似ないわけがない。……そもそもリィーナは、私を真似るしな。

 武術として修めた基礎が近しい以上、それを変えようとすれば異なる武術を改めて修め直すぐらいしないといけない。

 ……けど、なによりも。

 それはリュウゼン先生から教わったものだから……変えたくないんだよ。

 

 さて、どうしたものかな……

 

「アイシャがリィーナさんに、グリードアイランドを買ってもらって……

 その上、1ヵ月の『絶』状態や移動スペル使用不可になってるキミを助ける為に、率先してゲーム攻略までして……

 リィーナさんの立場も考慮すれば、それってもう普通の関係じゃありえないよ。

 ……愛弟子の為に色々してあげてる師匠、って構図にしか見えないんだけど」

 

 うん……そうですね。その部分だけを見れば。

 真実は、師匠の為に色々してくれる愛弟子なんですが……ワケが分からないだろうし。かといって、納得のいく説明をすることもできないし。

 

 ──ウソを吐くという手も、なくはない。

 私がリィーナの愛弟子だ、という彼の推理を肯定すれば、ひとまずこの場は丸く収まる。

 問題はその後だ。

 嘘が露見した時、真実を伝えなければならなくなると、非常に困る。

 最悪それは仕方ないにしても、間が悪いとヘタをすればゲーム攻略が頓挫してしまう。私がリュウショウだと知った3人がどういう反応をするか、怖くて想像もしたくない。

 

 けど、オーラやその他諸々で私が他人の嘘を見破るように、ウラヌスはその目で生命力精神力を見た上で嘘を見抜いてくる。戦闘中ですらあれだけ読み切ってくるんだ。日常で出来ないわけがない。

 

 つまり最悪の最悪、この場で嘘がバレるかもしれないということだ。それはマズイ……

 

 そもそも、こうやって私が悩んでるのを彼はリアルタイムで見てるわけで……無理ゲーなんですけどー。ぐぅぅぅ。

 

 ウラヌスが小首を傾げ、

 

「アイシャ。否定しなくていいの?」

 

「え……えっと……」

 

「俺、今こう言ったよ?

 『アイシャがリィーナさんに、グリードアイランドを買ってもらって』。

 ……それ、否定しないの?」

 

 ぐぁっ!?

 

 やられたっ……! そうだ、それはまだ断定される材料が揃ってなかったんだ!

 まずい、それが一番致命的かもしれない。嘘を吐ける余地が急激に狭まった……!

 

 おそらく顔色をころころ変えてる私を見つめて、「ふぅ……」と息を吐くウラヌス。

 

「……ま、この際どういう関係なのかはいいや。

 ただならない関係なのは事実みたいだし。

 アイシャは前回、リィーナさんと組んでゲーム攻略してクリアした。

 これだけは間違いないよね?」

「……。

 …………はい……」

「うん。それならクリアできたのも納得だよ。

 俺がまともにプレイできてたとしても、多分負けてた。

 ……しっかし、あの人もずいぶん過保護だねぇ。アイシャをゲーム攻略に参加させないなんて。まぁ俺が今回やってることも、褒められたこっちゃないけどさ。

 あー……

 つうか今回の件バレたら、俺リィーナさんに殺されんじゃね?」

「……いえ。

 そんなことには絶対ならないようにします」

 

 そんなことしようとしたら、私が全力でぶっ飛ばすよ。これ以上ウラヌスに迷惑かけるとかイヤすぎる。

 

「あ、うん。

 それはもちろんお願いします。

 どっちにしろ、タダじゃ済まない気がするけど……」

 

 ぬぅー。あのリィーナのことだから、暴走してやらかすのを否定できない……

 土壇場で私に逆らってまで、性転換を妨害しようとしたからな。しかも全力で。普段は奴隷もかくやという勢いで服従するくせに、なんでそんな時だけ逆らう。ホント厄介だよ、あの師離れしてくれない子は。

 

「怖いなぁ……

 キミの仲間、来ないといいね」

「はい……」

 

 それはホント、切に願いたい。リィーナ達が妨害に来た結果、もしクリアを逃そうものなら、私はウラヌスになんとお詫びすればいいやら……

 当然メレオロンやシームのことも露見するだろうしな……ああぁ、頭イタイ。

 

 

 

 なんとなく力が入らない感覚のまま、部屋の前まで戻ってくる。

 と、中から……

 

「にゃんにゃん♪」

「にゃんにゃん♪」

 

 更に気が抜ける声。おぅふ……容易に光景が想像つくんだけど。

 戸を開けると、部屋を出た時と大して変わらず、シームとサクラがごろんごろんしてた。ウラヌスの布団の上で。

 

「まーた俺の布団あっためてやがる……」

「監督ぅ。今日もベンチあっためときましたよー」

「だーから、誰が監督だ」

 

 上機嫌のシームが、サクラを抱えて立ち上がり、ウラヌスの頭に直接もにゅっと乗せる。

 

「……いや、あのさ」

「桜もそこがいいって」

「にゃん」

 

 一鳴きして、前足で顔をこするサクラ。本人──じゃないか、本猫にとってはどうなんだろうね。私は大助かりだけど。

 シームは再び手を伸ばし、ウラヌスの喉辺りに触れる。

 

「お? なに?」

「桜、こうすると気持ちよさそうだったし」

「おい待て、俺ネコじゃ……ちょ、くすぐってぇ」

「こちょこちょー」

 

 調子に乗って、両手でウラヌスの首元をくすぐるシーム。

 

「やめ、マジで、お、おひ」

「キューマニャーン♪」

「うは、シームやめてってば、あぁぁひゃ」

 

 ウラヌス、頭にサクラを乗っけてるから逃げられないな。本気で抵抗してないけど。

 ……あれだな。メレオロンが、プーハットさんもまんざらじゃないとか言ってたのって、こんな感じか。困ってるけど、ウラヌス結構気持ちよさそうでもある。

 そういえば宿のNPCから洗濯し終わったキュマニャンの衣装受け取ってたな。まさか、またいずれ着るんだろうか。うーん……

 

「あはは、ごめんね。

 ……じゃあね、桜。また明日」

「にゃん♪」

「おねーちゃん、行こ」

「ん」

 

 メレオロンは読んでいた本を畳み、それを持ったまま腰を上げる。

 シームについて部屋を出ようとして、ちらりと私達を見る。

 

「アイシャ。

 口許にお砂糖ついてるわよ」

 

 おっと、ほんとだ。ドーナッツの砂糖パウダーが残ってたか。

 私が口許を拭ってると、メレオロンは笑みを浮かべ、

 

「仲よさそうね。

 ……それじゃ2人ともごゆっくり。おやすみなさい」

「あ、はい。

 おやすみなさい……」

 

 反射で返す。ウラヌスは何か言いたげな顔のまま、何も言わない。

 メレオロンが出て行った後、

 

「……」

「……」

「にゃん」

 

 沈黙を守らないサクラ。気まずいよりはいいけどさ。

 

「しばらくそのままでお願いしますね」

「……あのさぁ。

 俺、なんだかんだで疲れてるんだけど?

 この上、桜にオーラまで(むし)られるの?」

「仕方ないじゃないですか」

「いやちょっと待って。仕方なくなんかないから。

 アイシャ、こうやって毎日桜と、その……遊ぶの?」

 

 なんか引っかかる言い方だな……

 

「当たり前じゃないですか。

 サクラの充電、ちゃんとお願いしますね」

「……アイシャ。

 完っ全に俺のこと、桜の充電器だと思ってない?」

「なに言ってるんですか。

 ウラヌスはサクラの充電器です。そのことに誇りを持ってください」

「ふぇぇぇ……」

 

 めそめそするウラヌス。なんとなく同情するように見下ろすサクラ。

 

「大体、サクラの何が気に入らないんですか。

 可愛いじゃないですか」

「こいつ……こいつ、俺には愛想ないんだもん……

 俺にとっちゃ、オーラを吸ってくだけの吸血鬼同然なんだけど」

「にゃにゃにゃにゃッ!」

「ぅわわわっ。

 やめろおいッ! 髪の毛ぐちゃるだろ!」

 

 あらら、怒らせちゃったか。

 

「吸血鬼なんて言うからですよ」

 

 仕方なく、ウラヌスの頭上で暴れだしたサクラを抱える。胸元に抱き寄せ、背を撫でる。

 サクラはすぐ機嫌を良くして甘えてきた。

 

「ふにゃあーん♥」

「ほらぁ。俺にだけこんなことしやがる……

 外ヅラだけはいいんだから、そいつ」

 

 涙目で髪の毛を直すウラヌス。自分の念獣なのに、深刻なほど仲悪いな。どうしてこうなった?

 

「……サクラ。

 あまりウラヌスの髪を傷めないであげてくださいね?

 あなたにオーラを足さないと、私と一緒にいられる時間が短くなっちゃいますし」

「……」

 

 サクラは何も鳴かなかった。多分、意味は分かってると思うけど。

 

 再びサクラを両手で抱え、髪を直したウラヌスの頭に乗せる。

 ウラヌスは不安そうに、視線を上に向ける。

 大人しく顔を洗うサクラ。うん、分かってくれたみたいだな。ご褒美にいい子いい子と頭を撫でてあげる。

 

「にゃーぅ……」

「やっぱり、アイシャの言うことならちゃんと聞くよなコイツ……」

「ウラヌスも、あんまりぞんざいにしちゃダメですよ。

 またサクラの力を借りることもあるでしょうし」

「……。

 吸血鬼なんて言って悪かったよ」

 

 サクラは不思議そうな様子で、ウラヌスを見下ろす。謝ったウラヌスも、それ以上何も言わない。

 なんとなくその様子にくすりとした。

 

「2人とも素直じゃないですよね」

「……2人じゃないよ。1人と1匹だよ」

「にゃ」

 

 どちらかと言うと、2匹な気がしなくもない。

 

 

 

 ウラヌスが布団の上であぐらをかいて、頭にサクラを乗せたまま『解析』を使用して、テキストをメモしている。

 邪魔してもいけないので、私は暇つぶし用に確保して既にゲインしていた1冊の続きを読む。心源流拳法の本だ。今までも色々読んでみたけど、これは一風変わっていたので、購入して続きを読んでいた。

 

「──『解析/アナリシス』オン。362」

 

 ちらりと見ると、サクラが暇そうにアクビをしている。ウラヌスもちょっと眠そうだ。

 本の内容に視線を戻し、しばらく読み進める。

 カチカチカチと音。ウラヌスがバインダーからカードを外し始めた。

 いつものことだ。贋作カードを指定ポケットから取り出し、辺りに並べていく。1分の時間制限がないから気楽なもんだよね。

 

 少し前に、贋作カードをなぜNo.1から順に作っていくのか聞いたら、間違えにくいから、という答えだった。うっかり有効な指定ポケットカードを出しっぱなしにしたら、大惨事だもんな。もし『念視』で見られたら贋作カードをたくさん持ってるってバレちゃうけど。

 

 有効なカードを、フリーポケットへ移し変えるウラヌス。複製贋作カードを作るには、『複製』カードの変身対象を贋作カードだけにしないといけないから、有効カードを指定ポケットから外しておく必要がある。今はまだいいけど、有効カードが増えてきたら面倒だろうな……

 『聖騎士の首飾り』も併用して、整理整頓を進めるウラヌス。

 

 読みふけっているうちに、整理する音も声も聞こえなくなる。

 バインダーを眺めるウラヌス。そろそろ話しかけてもいいかな。

 私はパタンと本を閉じ、

 

「ウラヌス。

 いま話しかけてもいいですか?」

「うん、いいよ。

 待っててくれたの?」

「ええ、まあ。

 いつもカード整理ありがとうございます」

「ううん。好きでやってるだけだからね」

 

 そうだろうなぁ……1人でプレイしてたぐらいだ。もうするのが当たり前になってるんだろう。

 

「喉の調子はどうですか?」

「んー……

 もう回復してるよ。オーラもそっちに回してたし、時間も充分経ったからね」

「それはよかった。

 ……プーハットさんとしてた話で、気になったことがあって」

「えぇー。あいつの話?」

 

 嫌がってるな。……仕方ない、単刀直入に聞こう。

 

「PKバスターって何のことです?」

「……さぁ?」

 

 あ。とぼけやがった。

 

「そんなこと言われると、余計気になっちゃうんですけど?」

「つーん。

 だって俺、心当たりないもーん」

 

 うーむ。冗談めかして言ってるけど教えてくれそうにないな……。無理に聞き出そうとして機嫌損ねてもアレだし、機嫌がよさそうな時にまた聞くか。

 

「そのうち教えてもらいますからね。

 ……えっと、プーハットさんがいたハメ組ってあるじゃないですか。

 あれって、誰がハメ組なんて言い出したんでしょうね?」

「へ?

 ……俺も、誰かが言ってたのを聞いただけなんだけど。

 格ゲーのハメ技みたいなことしてるから、ハメ組。誰でも思いつきそうな名前だし」

 

 まぁそうかもな。ハメ組は代表プレイヤーがいないみたいだから、プレイヤーの名前をチーム名にできないだろうし。

 

 立ち上がり、ウラヌスのそばまで行く。

 ひょいとサクラを抱え上げ、だっこする。あー、ぽっかぽか。もふもふ。ぷにぷに。

 

「にゃあーん♪」

 

 サクラの頭をなでなでしつつ、困った顔で見上げてくるウラヌスを見返し、

 

「相変わらずサクラって、最高級のマシュマロみたいですよね」

 

 前足を持って、肉球をぷにぷにする。

 

「にゃーぅ♪」

「どこ触っても、やわやわで、もちぷにーってしてますよ。

 ほんとサクラって、人をダメにする子ですね」

「うん……

 今のアイシャは、すっかりダメになってるよ」

「え」

 

 顔がにへらーってしてる自覚はあるけどね。シームもそんな感じだったし。

 

「ま、しあわせそうで何よりだよ。

 桜も満足みたいだし」

 

 それに応えるように、しっぽをゆるりと振るサクラ。

 

「……。

 歌ってる時のウラヌスも、幸せそうでしたよ?」

 

 目をぱちくりさせるウラヌス。

 

「そう?」

「ええ。私が見てて不安になるくらいに。

 ジェイトサリさんは、むしろ安心したそうですけど」

「……そんなこと言われると、いいんだか悪いんだか分かんないんだけど?」

 

 首を左右に揺らすウラヌス。見事に困惑してるな。

 

「ふふ。混乱させてごめんなさい。

 あなたが楽しそうにしてるのを見て、ジェイトサリさん驚いてましたよ。

 ……一緒に居る私達を信頼していなかったら、あんな無茶するはずないだろうって」

「ぅ……

 あのおっさん、そんなこと言ったのか」

「彼は、普段のあなたの方を心配してましたよ。

 ……生真面目すぎて、いつか潰れるんじゃないかって。

 私は、私達のことが負担になってないか心配してたんですけど、ウラヌスって普段からそんな感じなんですね」

「……なんだよ、そんな感じって」

「あんまり張り詰めすぎてもいけませんよ。

 緊張感を持つことも大事ですけど、過ぎると毒になりますから」

 

 私がそう(さと)すと、「ふぅー……」と息を吐くウラヌス。

 

「……俺だってさ。もっと気楽に生きたいんだよ。

 でも」

「……。

 私が想像してるよりもずっと、その念はあなたを苦しめているんですね」

 

 うつむくウラヌス。

 ……何も言おうとしない。そのまましばらく見つめていると──

 開いたままのバインダーに、ポタポタと雫が落ちた。

 

 ……念を外したいのであれば。何をおいてもすぐに若返り薬を取りに行き、使えばいい。

 けどそれをしようとしないのは、新たに色々な問題が生じると考えているからだろう。でなければ躊躇う理由がない。

 想像が正しければ……私の強制『絶』が解けないこの1ヵ月間、彼は若返ろうとしないはずだ。不測の事態が起きた時、対処できなくなってしまうから。

 

 私は膝をつき、サクラをそっと置く。サクラも彼の方を心配そうに見ている。

 

「どうしても耐えられないなら、すぐにでも『魔女の若返り薬』を取りに行きましょう」

「いや……それは、だいじょうぶ。

 ちょっと、色んなこと思い出しただけだから。

 焦って妙なことになったら、困るし……」

 

 直接理由を言おうとしない──から、尚更分かる。

 彼は自分の心配をしてるんじゃない。

 私達の身を案じているから、若返ろうとして何かが起きた時、彼の代わりを務められる私の復活を待っている。

 いくら自分のことを優先してほしいと言っても、おそらく聞いてはくれないだろう……そういう子だもんな。

 

 なら、今の私にできることは……彼の負担を少しでも和らげることだけだ。

 

 ウラヌスの桜色の髪に手を置き、頭を撫でる。

 

「今日はお疲れ様でした。よくがんばりましたね。

 明日からも、よろしくお願いします」

「……

 子供扱いしないでよ」

「まだ子供じゃないですか」

 

 実年齢は微妙だけど、見た目はそうだしな。

 

「アイシャは俺より子供じゃんか……」

「ええ、まぁそうですよ。でもあなたも子供です」

「にゃん」

 

 ほら、サクラもこう言ってる。

 なにも言い返してこないウラヌス。頭を撫でていても、嫌がる素振りは見せない。

 

「ほんとはもっとお話ししたかったんですけど、今日はもう休みましょう。

 あ、サクラはお預かりしますね?」

「……別にいいけど。

 うん……

 やっぱり俺も疲れてるんだね。

 アイシャも今日はお疲れ様。心配かけてごめん。……明日もよろしく」

「ええ」

 

 サクラを抱きかかえ、自分の布団へ向かう。

 ウラヌスは「ブック」でバインダーを消し、明かりのところへ行く。

 

「おやすみ、アイシャ」

「おやすみなさい。ウラヌス」

 

 部屋の照明が落ちる。やんわりと光るサクラに、心が落ち着いた。

 

 

 

 

 

 隣室。

 

 お風呂から戻ってきて、おっさんみたく焼き鳥とビールを口にするメレオロン。

 姉が酒を飲みすぎないよう見張りながら、シームも焼き鳥とジュースをクチにしている。

 

 メレオロンが【神の不在証明】と【神の共犯者】を発動、ともに『練』でオーラを消費し終えた姉弟は、布団に身を横たえた。

 

 深い疲労と、まどろみの中──

 

「……おねーちゃん」

 

「……。なに?」

 

「今日はありがとう」

 

「……どういたしまして」

 

 何に対する礼かは、言わない。

 何に対する礼かも、問わない。

 

 その必要はなかった。今日礼を言うようなことは何か、お互いによく分かっている。

 

 

 

 

 

 湯たんぽ代わりのサクラを堪能しながら、離れて隣で横になるウラヌスを見る。まだ、眠ってはいないようだ。

 

「アイシャ」

「……なんです?」

「ゲーム、楽しんでる?」

 

 ゲームを楽しんでる……か。

 

 今日一日を振り返る──……

 

 昨日までの数日を振り返る──……

 

 けっして楽なわけではなかった。

 

 でも……

 

「楽しんでますよ」

 

 偽りではない。毎日が楽しい。色々あって、ゲームの攻略も進んでいる。

 ゴン達には悪いけど、もし前回こんな風に私がゲームを楽しんでいたら、私はグリードアイランドにあれほど悪感情を抱くことはなかっただろう。

 

 ここまでしてもらって、楽しくないわけがない。

 

「……あなたは、楽しんでいますか?」

 

 それだけは気になった。

 

 彼がつまらなさそうにしている感じはしない。

 けれど、負担は小さくないはずだ。今日、彼の喉を休ませる為に少しの間リーダー役を務めたけど、グリードアイランドでそれを務め続ける負荷は決して軽くはないだろう。

 念による衰えに苛まれながら、私達を率いて攻略を進める──彼の肩に伸しかかるその重圧がどれほどのものか、私には計り知れない。

 

 私が楽しんでいる隣で、彼だけ苦しんでるのは……絶対にイヤだ。

 

 暗闇の向こうから「ははっ」と笑い声が聞こえた。

 

「楽しいよ」

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
・2000年9月19日終了時点で4人が所有するカード

 『1003:防壁/ディフェンシブウォール』4枚
 『1007:窃盗/シーフ』        1枚
 『1009:再来/リターン』       11枚
 『1010:擬態/トランスフォーム』   4枚
 『1014:離脱/リーブ』        1枚
 『1016:漂流/ドリフト』       3枚
 『1018:徴収/レヴィ』        1枚
 『1019:城門/キャッスルゲート』   13枚
 『1021:強奪/ロブ』         1枚
 『1022:堕落/コラプション』     3枚
 『1023:妥協/コンプロマイズ』    2枚
 『1026:聖水/ホーリーウォーター』  3枚
 『1029:凶弾/ショット』       1枚
 『1030:道標/ガイドポスト』     11枚
 『1031:解析/アナリシス』      4枚
 『1036:神眼/ゴッドアイ』      1枚
 『1038:名簿/リスト』        5枚
 『1039:同行/アカンパニー』     15枚
 『1040:交信/コンタクト』      8枚

 『176:狂気のガーネット』          1枚
 『179:神樹コハク』             1枚
 『602:100J』                1枚
 『604:1000J』              1枚
 『605:2000J』              3枚
 『606:5000J』              2枚
 『607:10000J』              4枚
 『5112:心源流拳法の源流-技の章-』   1枚
 『5113:心源流拳法の源流-体の章-』   1枚
 『6409:魔法少女隊ナッパ アニメコミック』1枚
 『6410:魔法少女隊ナッパ アニメコミック』1枚
 『28309:今日の夕飯』           1枚
 『32531:SARISA』          1枚

 『1:一坪の密林』         1枚 ※複製贋作
 『2:一坪の海岸線』        1枚 ※複製贋作
 『3:湧き水の壺』         1枚 ※複製贋作
 『4:美肌温泉』          1枚 ※複製贋作
 『5:神隠しの洞』         1枚 ※複製贋作
 『6:酒生みの泉』         1枚 ※複製贋作
 『7:身重の石』          1枚 ※複製贋作
 『8:不思議ヶ池』         1枚 ※複製贋作
 『9:豊作の樹』          1枚 ※複製贋作
 『10:黄金るるぶ』       1枚 ※複製贋作
 『11:黄金天秤』        1枚 ※複製贋作
 『12:黄金辞典』        1枚 ※複製贋作
 『13:幸福通帳』        1枚 ※贋作
 『14:縁切り鋏』        1枚 ※贋作
 『15:きまぐれ魔人』      1枚 ※贋作
 『16:妖精王の忠告』      1枚 ※贋作
 『17:大天使の息吹』      1枚 ※贋作
 『18:小悪魔のウインク』    1枚 ※贋作
 『19:遊魂枕』         1枚 ※贋作
 『20:心度計』         1枚 ※贋作
 『21:スケルトンメガネ』    1枚 ※贋作
 『22:トラエモン』       1枚 ※贋作
 『23:アドリブブック』     1枚 ※贋作
 『24:もしもテレビ』      1枚 ※贋作
 『25:リスキーダイス』     1枚 ※贋作
 『26:7人の働く小人』     1枚 ※贋作
 『40:超一流ミュージシャンの卵』1枚
 『52:真珠蝗』         4枚
 『78:孤独なサファイヤ』    1枚 ※宝籤
 『80:浮遊石』         7枚 ※うち複製6枚

 所有する有効指定ポケットカード種類数:4種



・ゲイン待ちアイテム

 『80:浮遊石』1つ



・所有するカード化解除アイテム

 『84:聖騎士の首飾り』4つ
 『100:島の地図』   2つ
 ※雑貨品は割愛



・店舗貯金額

 アントキバ飲食店 :1890J
 アントキバ交換店 :921万2500J
 マサドラ交換店  :373万9210J
 エリル桜茶屋   :600J
 オータニア定食屋 :1700J
 オータニアSS  :1000J
 オータニア秋の空 :9000J
 オータニア時雨紅葉:8000J
 オータニア交換店 :1万3100J
 トラリア交換店  :4800J
 トラリアデパート :600J

 所持金と貯金合計額:1304万9500J




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