向かい合うサトシとシンジ。
タケシ「審判は俺がやろう」
タケシが審判役を買って出て、位置についた。
バトルの結果は引き分けだった。
第1戦は互いにムックルを使用した対決だ。互いに今日捕まえたばかりのポケモンらしい。
サトシは先手必勝とばかりに果敢に攻めるよう指示するが、シンジはサトシのムックルの素早さや攻撃力を観察しながら技を指示し、確実にダメージを与えた。サトシは巻き返そうとムックルを応援するが、結果はシンジのムックルの勝ちだ。
第2戦はサトシがエイパム、シンジはヒコザルを使用した。
サトシは同様にエイパムに勢いよく攻めさせる。しかし、シンジはサトシの指示を読むかのように対応していく。エイパムの“きあいパンチ”のタメの隙を狙い、ヒコザルの“かえんぐるま”を決めていく。技が不発に終わり、追撃を避けるための“かげぶんしん”も容易く破られる。
サトシは再び“きあいパンチ”を指示すると、シンジも再び“かえんぐるま”を指示する。
するとサトシはエイパムにヒコザルをギリギリまで引きつけさせ、タイミングを計ってタメの状態のまま回避を指示、そのまま“きあいパンチ”がヒコザルにクリーンヒットする。ヒコザルはそのまま戦闘不能。エイパムの勝ち。
ここまでのバトルで、2人のバトルスタイルが見えてくる。
サトシは勢いとスピードの速攻、そして、柔軟な発想のスタイル。
シンジは相手を分析し、合理性を重視したバトルスタイル。
ここまで正反対な2人が出会うのも珍しいよな。
3戦目はサトシはピカチュウ、シンジはエレキッドを使用したでんきタイプ対決だ。
サトシは“10まんボルト”を指示するが、エレキッドには大したダメージにはならず、むしろエレキッドはその電気を自分のパワーに変えてピカチュウに強力な“かみなり”を放ち、大きなダメージを与える。シンジはエレキッドのパワーアップのためにあえてサトシに先手を取らせたようだ。
続いてサトシはピカチュウにでんきタイプの大技である“ボルテッカー”を指示する。しかし、シンジは“まもる”を指示することで完璧に防ぐ。結局ピカチュウが反動ダメージを受けただけだ。挑発されたサトシはシンジの術中にハマっていた。トレーナーの番外戦術はなかなか無いが有効だ。サトシは見事に引っかかってしまったわけだ。
サトシは接近戦に移しシンジは受けて立った。ピカチュウの“アイアンテール”とエレキッドの“かわらわり”の激しい打ち合いとなった。
そして、激闘の末、2匹は倒れる。
両者戦闘不能。
互いに1勝1敗1引き分けとなり、勝負は引き分け。
タケシ「パワーは互角だったな」
タケシはそう言うが、サトシは否定した。
サトシ「いや、先に倒れたのは俺のピカチュウだった。俺の負けだ」
傷ついたピカチュウを抱き上げたサトシはそう言った。
シンジ「こんな結末じゃ、勝ったとは言えないな」
シンジはつまらなそうにそう呟くと、モンスターボールを取り出し、宙に投げる。
中からムックルが現れ、そのまま森まで飛び去ってしまった。
これはただ出したのではなく逃がしたのか。
サトシ「また逃がすのか!?」
サトシはシンジの行動に激高した。
シンジ「あの程度のムックルならいくらでもいる。もっと強いやつに会ったとき、ゲットすればいい」
2人の会話からようやくわかった。
おそらくシンジは何体かのムックルをゲットし、能力の高いムックルを手持ちにしていた。しかし、今のムックルも彼の眼鏡にかなわなかったわけだ。
シンジは今までもこうして、同じ種族のポケモンの中でも強いポケモンを選別してゲットしていってたのだろう。
サトシにとってそれはトレーナーとしてあるまじき行為に思えるのだろう。
サトシはポケモンとトレーナーに信頼や絆を重んじて、シンジは効率と能力を重視する。
本当に見事なまでに正反対な2人だ。
シンジ「博士、場所を貸していただき、ありがとうございました」
ナナカマド「うむ」
ナナカマド博士に礼を言うとシンジはその場を立ち去ろうとする。
サトシ「待てシンジ、もう一度俺とバトルしろ!」
サトシはシンジに食って掛かるがシンジは無視して歩いて行く。
シンジ「……」
ハチマン「ん?」
去り際に俺はシンジと目が合ったがそのまま行ってしまった。
ハチマン「残念だったな」
ここで必要なのは慰めではなく現実の言葉だ。
サトシもピカチュウも、きっとそれをわかっている。
サトシ「ああ、けど、次は負けない」
ピカチュウ「ピカ」
サトシ「よし、じゃあ次はハチマンとバトルだ!」
ピカチュウ「ピカ!」
サトシもピカチュウも元気そうだな。しかし……
ハチマン「その前に、傷ついたポケモンたちの回復だろ」
サトシ「あ、そっか」
すると、ナナカマド博士が話しかける。
ナナカマド「研究所に回復の機械がある。使うと良い」
サトシ「ありがとうございます」
ハチマン「それじゃあ、回復して、しばらくしてからだな」
サトシ「ああ、待っててくれ」
そのままサトシは研究所まで走って行った。
ハチマン「(まったく元気な奴だな)」