機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX 作:ダルマ
彼は夢を見た。
自身が大好きなアニメ作品、機動戦士ガンダム。
初代のテレビ放送から連綿と続き、発表された作品群は数多い。
そんなガンダムシリーズの内の一つ、二十一世紀のファーストガンダムを標榜とし制作されたロボットアニメ、機動戦士ガンダムSEED。
同作品の舞台となる
そんな同世界の一員として、自身が仲間入りを果たしている、という夢であった。
「……変な夢だな」
その時の彼は、変な夢、という事で時にそれ以上気にする事もなく、いつものように起床すると仕事に向かう準備に取り掛かり、程なく、夢の事など忘れてしまったのだが。
それから数日後。
いつものように就寝した彼が、ふと目を覚ますと、視線の先に飛び込んできたのは、見慣れない天井であった。
「……え? 何処、ここ?」
目を開けたら知らない天井、そして見渡せば知らない部屋。
しかも、圧迫感のある狭苦しく、それでいて無機質な部屋の感じからして、どうやら船室のようだ。
そんな、何処とも知らぬ船室のベッドに知らぬ間に寝かされていた。
という状況に、彼は暫しフリーズした後、捻り出すように独り言ちた。
「夢?」
刹那、これは夢ではないかと、自身の頬をつねってみるも。
結果は、夢ではない事が証明され、落胆してしまうのであった。
「やぁ、目が覚めたかね」
暫く、この突然の状況に落胆していると、不意に、部屋に白衣を着た壮年の船医と思しき男性が入ってきた。
「大丈夫かい? まだ痛む所等はないかね?」
「え? えっと……」
彼は、この摩訶不思議な状況を確認する為の指標となる、船医の男性に幾つか質問をした。
すると、船医は、彼がこの部屋、医務室に運ばれる事になった事故の事を含め、色々と話し始めた。
「ふむ、脳震盪による記憶の混乱が少し起こっているようだね……。覚えていないかね、君は、
「え、えーおーしーゆー?」
「おいおい、まさか母国の事を覚えていないなんて、そんな冗談はよしてくれよ。俺達の母国、アジア・オセアニア共同連合、
刹那、まるで船医の言葉がトリガーになったかのように。
彼の記憶の中に、身に覚えのない記憶が次々と流れ込んでくる。
だが、厳密にいえば、少し語弊があった。
その記憶は、彼が以前見た"夢"の中で、確かに身に覚えのあるものとして記憶されていたのだ。
「俺は、
名前以外は身に覚えのない筈なのに、何故か身に覚えのある事の様に聞き覚えの無い肩書や単語を呟いていく高磯。
そして、高磯は心配そうに見つめていた船医に、再び質問を投げかける。
「あ、あの……。まだ記憶が、混乱、しているみたいなんですけど。そこで、一つ尋ねてもよろしいですか、先生?」
「何だね?」
「今は、何年何月でしたっけ?」
「今は、
(
心の中で叫んだ高磯は、この時、自分自身が夢の様に、本当にガンダムSEEDの世界の一員として、自身が仲間入りを果たしている事実に直面するのであった。
もっとも、高磯が知る
それでも、空想の筈の世界が現実となりその一員になる。という摩訶不思議な事象を体験する羽目になり、すんなりと、その事実を受け入れられるものではなかった。
「大丈夫かね、高磯少尉。……あぁ、どうやら、まだしばらく安静にしておいた方がよさそうだ。さ、横になって。艦長には、私の方から上手く言っておくから、心配しなくていい」
まだ事故の影響が残っていると勘違いしたのか。
船医に促され再びベッドに横になる高磯。
そして、安静に休ませるべく船医が医務室を退室した所で、高磯は、自身の心を落ち着かせるべく状況の整理を始めた。
(俺の知ってるC.E.の世界には、A.O.C.U.なんて国家は存在してない筈。なのに、俺が今いるC.E.の世界には、A.O.C.U.という国家の他にも、構成地域の変化や新ヨーロッパ共同体、通称
関連書籍やネット情報等々で目にしたC.E.の情勢と、身に覚えのない士官学校での座学の授業等の記憶とを比較し。
高磯が知るC.E.の情勢との差異を検証していく。
高磯が知る原作のC.E.には、再構築戦争、所謂第三次世界大戦の勃発とその終結後、世界はブロック化により幾つかの国家に再編された。
その中で、原作に深く関わる国家は以下の四カ国。
大西洋連邦、東アジア共和国、ユーラシア連邦、そして、オーブ連合首長国。
先の三国は、居住地よりも生産地としての機能を高めた次世代コロニー、プラントの宗主国にして、後に発足される地球連合軍の中心となる。
そして、オーブ連合首長国は原作の根幹にも関わっている国家である。
しかし、この世界では、大西洋連邦を除く三カ国に、大きな変化が生じている。
先ず、原作では影も形も存在していなかった高磯の母国、A.O.C.U.の存在。
原作では、本来北海道とそれ以外とでユーラシア連邦と東アジア共和国に組み込まれていた日本と、同じく東アジア共和国に組み込まれていた台湾。
更には、インドを除く赤道連合や大洋州連合、オーブ連合首長国であった地域を構成地域とする、西太平洋を代表する一大勢力である。
因みに首都は、日本のメガロポリス。
このA.O.C.U.の存在に伴い、オーブ連合首長国、及び赤道連合や大洋州連合と言った、原作に存在していた国家が、この世界では存在していない。
更には、東アジア共和国も原作とは異なり、インドや、原作においてはユーラシア連邦であったロシアのアジア地域を構成地域としている。
また、ユーラシア連邦においても、構成地域が減少している他。
原作同様のユーラシア連邦という国家が存在せず、代わりに、A.E.C.と呼ばれる国家が存在していた。
この他の国家に関しては、概ね原作と変わりはない。
が、国家として表面上変化は見られずとも、その内情は、高磯が知る原作とは多かれ少なかれ、変化していると考えてよい。
(とりあえず、状況を整理して分かったのは……、この世界には、俺と同じ類の人間がいる。それも複数だ)
天井の一点を見つめ、高磯は状況を整理して導き出した一つの答えを心の中で呟く。
ここまで原作と異なる、大規模な変化が起こっている要因は、C.E.と言う名の世界の行く末を知っている者達。
即ち、転生者とでも称する者達の存在を抜きにしては、説明が付かない。それも複数人。
(おそらく状況からして、母国のA.O.C.U.が一番多くいそうだが……、コンタクトをとるべきか、とらざるべきか)
そんな転生者たちと接触すべきか否か。
高磯は暫し、考えを巡らせた。
原作の開始まであと四十年。
それまでに、本来とは異なる変化が起こり続ければ、その先に待っているのは希望か、それとも絶望か。
(……いや、何をいまさら迷う必要があるんだ。ここまで変化が起こった後で軌道修正もへったくれもないだろ)
最初の変化を起こしたのが個人なのか、将又複数人かは分からない。
しかし、ここまで変化が起こってしまった現状では、今更、本来訪れる筈のない悲しみを生むだけだと流れを基に戻そうとしても、もはや手遅れ。
ならば、この流れにいかに上手く乗るのかを考えて行動するのが、現状では得策だ。
(となると、先ずはとっかかりとして同類連中とどうコンタクトをとるかだが……)
こうして今後の方針が決まった所で、先ずは第一の難関である自身と同類の人間とどうコンタクトをとるか。
誰彼構わず転生者ですか、と聞いて回るのは、傍から見ても事故の影響で思考に致命的な欠陥が生まれたと思われるのがオチだろう。
かと言っても、誰が転生者で誰が非転生者かなど、外見だけでは判別不可能。
(やっぱ手あたり次第……、いや、余計に警戒されて会えなくなる可能性すらあるしな)
どうすればスマートに事をうまく運べるか。
その後、暫くコンタクトをとる方法に頭を悩ませていた高磯であったが、事態は、高磯の思わぬ方へと進んでいく事となる。
翌日から船医の診断により、再び与えられた警備の任務へと復帰した高磯は、その後も任務を順調にこなし。
程なくして、任務の日程を全て終えた為、地球へと降りる事となった。
地球に降り立ち、見慣れない筈なのに不思議と見慣れたA.O.C.U.の首都、メガロポリスの都市の風景に不思議な感覚を覚えつつ、高磯は地球での勤務に勤しんでいた。
そんな折。
ある日、不意に上官に呼び出され、何故か勤務が終わった後、呼び出した上官と共に何故の場所に向かう事となった。
こうして案内されたのは、小洒落た料亭であった。
そして、お上に案内され通された部屋には、性別も年齢層もバラバラ、背広に軍服、それに様々な服装の人物たちが座布団に座り談笑を楽しんでいた。
「やぁ、君が高磯 磯城少尉だね。会合へようこそ。歓迎しよう、盛大にな!」
そして、その内の一人、背広を着た男性が高磯の事に気が付き、歓迎の意を表明して見せた瞬間、高磯は気が付いた。
ここにいる人たちは、皆、自分自身と同じ類の人間だと。
その後は、高磯の予想通りの展開となった。
まさかコンタクトをとろうと思っていた相手側から先に接触を図ってきたのは予想外であったが、やはり彼らは高磯と同類の転生者達であった。
「君も薄々勘付いているかもしれないが、ここにいる者達は皆、君と同じく本来この世界に生まれる筈のないイレギュラー。所謂転生者達だ。……最も、前世に関しては、君と同じ、という訳ではないが」
「国籍や年代が違う、という事ですか?」
「それもあるが。……あそこにいる彼は技術者なんだが、彼の前世はユニバーサル・センチュリー。つまり、宇宙世紀で、アナハイム・エレクトロニクス社の社員として働いていた」
「えぇ!?」
「そう、ここにいる転生者の中には、君と同じような世界を前世に持つ者と、空想の世界に似た
しかし、その者達の前世に関しては、高磯の想像以上に混沌とした様相を呈していた。
「ま、前世は色々だが、今は共にこの世界を生きる者同士、協力し、未来に備えてこの国のかじ取りを行っている。勿論、公にはできないがね」
「何だか、秘密結社みたいですね」
「ははは、そうだな、童心に返ってそう呼ぶのも良いが、一応我々は自分達の組織の事を単に"組織"と呼んでいる」
何故固有名詞が付けられなかったのか。
曰く、結成当初"ORCA"や"国境なき世界"や"財団"等々、様々な候補が挙がったのだが、各々意見を譲らなかった為一つに絞り込むことが出来ず、結局単に組織と称する事になったのだとか。
「さて、組織の大まかな説明も終わった所で、改めて、君を歓迎しよう、盛大に。あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね、私はメイナード・マクナイト。とある企業の技術者をしている。よろしく」
最初に高磯に歓迎の意を表明した男性、メイナードの自己紹介を終え親愛の握手を交わした所で、高磯は早速今回の会合の目的について尋ねる。
「あの、今回の会合は、俺の参加を歓迎する為に?」
「いや、それはどちらかと言えば序で、主な目的は、今後の大まかな方針を話し合う為さ」
自身の歓迎の為にのみ会合を開いてくれていたのなら、どれ程期待されている事か。
等と、少しばかり心の内で期待していたが、やはりと言うべきか、会合を開いた目的は、やはり別にあった。
淡い期待を打ちのめされ、心の中で涙を流しながらも、末席の高磯は、いつか、皆に期待される程の男になるとそっと誓いを立てるのであった。
そんな高磯の内心を他所に、会合は滞りなく進み。
当面、A.O.C.U.は他国同様に、宇宙開発、及び宇宙軍の大規模な開発・整備を進めていく方針が決定された。
歓迎、大事。
という事で、この度は、ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
今後とも、どうぞご愛読のほどよろしくお願いいたします。