機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第九話 ジーク・Z.E.O.N.!

 グリマルディ戦線の勝利から十二日後のC.E.七十年五六月十四日。

 ラグランジュポイントの一つであるL4宙域の一角、東アジア共和国が有する資源衛星"新星"をZ.E.O.N.が襲撃。

 これに対して、地球連合側はグリマルディ戦線による消耗が癒えきっていない事も相まって、迎撃には、東アジア共和国の駐留部隊と、同L4宙域に自国のコロニー群を有するA.E.C.の援軍が当たる事となった。

 

 グリマルディ戦線の勝利により地球連合側の将兵達の士気は高かったものの。

 名誉挽回に燃えるZ.E.O.N.側の将兵達もまた士気が高いのであった。

 

「えぇい! Z.E.O.N.の勢いを止められんのか!?」

 

「駄目です。止められません!」

 

「くそ! 月での勝利を思い出せ! MSがなくとも、Z.E.O.N.の連中を倒してみせろ!!」

 

 駐留部隊の司令官であるゴルジェイ司令は、座乗するネルソン級宇宙戦艦"ロスチスラフ"の艦橋にある司令官席に腰を下ろしながら、吠えた。

 艦橋にあるモニター等に映し出される戦況は、自軍が押されている様子を現し、もたらされる報告の数々も、聞いていて心地の良いものが何もない。

 

 そんな戦況が芳しくない現状に苛立ちを募らせたゴルジェイ司令、そんな苛立ちを少しでも解消すべく、再び大声で吠える。

 

「艦長! レッド、アルファよりMSと思しき反応一、急速接近!」

 

「っ! 対空機銃、弾幕を張れ! 直掩は何をしている!?」

 

 しかし、自身の座乗するロスチスラフの下方から敵MSが接近してくるとの報告に、ゴルジェイ司令は体を強張らせる。

 

「か、艦長!? げ、迎撃はできるんだろうな!?」

 

「今やっています! ……僚艦はどうした!?」

 

「他のMSに張り付かれていて、援護できない模様!」

 

「く! 回避行動をとりつつ迎……」

 

 刹那、艦橋を強い衝撃が襲い、艦橋内にいた全員の血の気を引かせていく。

 

「被害報告!」

 

「船底第二砲塔大破! 艦下部の連装対空機銃、大破三、中破一、右舷第二メインノズル、左舷第四メインノズルに被弾! 推力、四十パーセント低下します!」

 

「艦内第六ブロック、及び格納庫付近で火災発生!」

 

「ダメコン急がせろ!! 何としても誘爆だけは食い止めるんだ!」

 

 艦の被害状況を告げる報告と共に、艦長の矢継ぎ早の指示が飛び交う艦橋内。

 その中で、ゴルジェイ司令は相変わらず体を強張らせ、恐怖心から目を泳がせていた。

 

「敵MSは、敵MSはどうなった!?」

 

 そして、絞り出すように放った質問に、艦橋要員からの返答がもたらされる。

 

「て、敵MS、艦橋正面です!」

 

 刹那、艦橋の窓から外の様子を目にしたゴルジェイ司令は、艦橋の目と鼻の先に佇む、一機のMSの存在に気が付いた。

 それは、青・緑・白の三色で塗装された、高機動型ザクIIR-1A型であった。

 

 モノアイが怪しく光ると、その高機動型ザクIIR-1A型は手にしたM-120A1 ザクマシンガンを構え、銃口をロスチスラフの艦橋に向ける。

 

「この衛星は頂いていく! Z.E.O.N.の理想成就の為にな!」

 

 刹那、艦橋内に高機動型ザクIIR-1A型のパイロットの声と思しき男性の宣言が響き渡ると。

 次の瞬間、M-120A1 ザクマシンガンが火を噴き、放たれた七五ミリ弾の雨が艦橋を襲った。

 

 至近距離から放たれた七五ミリ弾の雨を防ぎきれる筈もなく、艦橋内の人々の命を刈り取ったその雨は、やがて艦橋部を吹き飛ばし、ロスチスラフを無残な姿に変える。

 だが、その姿を晒すのは忍びないとの親切心、ではないが。

 艦橋を吹き飛ばした高機動型ザクIIR-1A型は、続けざまにロスチスラフの船体にも七五ミリ弾の雨を叩きつけ、程なく、ロスチスラフは巨大な爆発と共に宇宙の塵と化すのであった。

 

「中尉! ご無事ですか!?」

 

「カリウスか、案ずるな、私はこの程度では墜とされんよ」

 

 ロスチスラフの破壊を見届けた高機動型ザクIIR-1A型のもとに、一機のザクIIF型が近づく。

 会話の内容から察するに、カリウスと呼ばれたザクIIF型のパイロットは、高機動型ザクIIR-1A型のパイロットの部下のようだ。

 

「所でカリウス、突入部隊の制圧状況はどうなっている?」

 

「は! 間もなく司令室の制圧が完了するとの事です!」

 

「そうか。……カリウス、機体のバッテリー状況はまだ大丈夫か?」

 

「は! まだまだいけます!」

 

「では、今一度、この戦場、駆け抜けるぞ!」

 

「は! お供いたします! ガトー中尉!」

 

 機体を翻し、バーニアを噴かせると、高機動型ザクIIR-1A型はカリウスのザクIIF型を引き連れ、今だ戦闘の光が輝く宙域を再び駆け抜け始める。

 

 

 結局、士気は高くとも、兵の質の部分に関しては世界樹攻防戦での影響が尾を引いていた東アジア共和国。

 この為、奮戦も空しく一週間に及ぶ戦闘の後、Z.E.O.N.が遂に新星を制圧。

 工兵部隊による修復と移動用のブースター設置の後、Z.E.O.N.の本拠地であるL5宙域に向けて移送が開始された。

 

 なお、この移送中、東アジア共和国の奪還部隊による奪還が何度か試みられたものの。

 何れも、護衛部隊との戦闘により失敗に終わっている。

 

 こうして、L5宙域に移送された新星は各種改装が施され要塞化された後、その名を"ボアズ"と改められ。

 Z.E.O.N.本国の防衛の一翼を担う存在として運用されていくのであった。

 

 

 

 また、同時期には。

 Z.E.O.N.側は宇宙での大規模な侵攻作戦を取りやめ、代わりに、地球連合側の宇宙での補給路を妨害すべく通商破壊作戦を実行。

 通商破壊の為に編成されたこれら艦隊は、世界樹の存在するL1宙域をZ.E.O.N.側に抑えられている為、地球からL4宙域を通りL2宙域や月へと設定している地球連合側の補給路を攻撃すべく、L4宙域に侵出。

 

 これに対して、地球連合側は補給路の安全確保の為に全力で対応し。

 L4宙域周辺では、両軍の激しい戦闘が繰り広げられ、デブリが急増する事となった。

 

 

 

 

 宇宙でそのような動きが行われていた一方。

 その翌月のC.E.七十年七月には、Z.E.O.N.は再び地上での活動を活発化。

 地上への更なる増援を送ると、アフリカを起点として、各方面への方面軍を編成し、侵攻を開始した。

 

 一つは、建設が完了したジブラルタル基地を拠点にA.E.C.の本拠地でもあるヨーロッパ侵攻を行う欧州方面軍。

 一つは、プレトリアを臨時首都とし、今だ強固に抵抗を続けるアフリカ大陸南部の南アフリカ統一機構の支配地域を制圧する南アフリカ方面軍。

 一つは、中東地域における親Z.E.O.N.勢力と共闘し、A.E.C.が保有するバイコヌールのマスドライバー施設制圧を目的とした中央アジア方面軍。

 以上の三つの方面軍による侵攻である。

 

 本来であれば、一つずつ潰して事に当たるべきなのだろうが、Z.E.O.N.の置かれた状況が、そのような悠長なやり方を許さなかった。

 実はこの時期、A.O.C.U.からエイプリル・フール・クライシス後に他のプラント理事国へと提供された核融合炉の運用が軌道に乗り始め、徐々に各国がNジャマーによる被害からの回復への兆しが現れ始めていたのである。

 因みに、この核融合炉の提供により発生するロイヤリティーにA.O.C.U.の財務担当者の笑みが止まらなくなるのだが、それはまた別のお話。

 この為、未だ勢いと余裕のある内にオペレーション・ウロボロスに従い、地球連合の一角を切り崩すべく、三方面の侵攻作戦を決行したのであった。

 

 とはいえ、Z.E.O.N.側もこの侵攻作戦を決行するにあたり、何ら保険等を考えていない訳ではなく。

 地球方面軍総司令である国軍軍人のマ・クベ中将の提言を参考に、親Z.E.O.N.政権等に対して、新型の配備に伴い旧式となったザクIやザクIIの前期生産型であるザクIIC型、更にはZ.A.F.Tの初期生産型のジンなども、OSを国軍MS使用の所謂ナチュラル対応型OSに変更したものを提供し。

 更には、親Z.E.O.N.政権となった新・南アメリカ合衆国や新・アフリカ共同体といった国家に対しては、ベースマテリアル等の鉱物や食糧、更にはその他嗜好品等と引き換えに一部MSのライセンス生産を許可し。

 また、それら勢力に対するMSの指導教官を派遣し、MS運用能力を確立させる事により、Z.E.O.N.の負担軽減を図ると共に、親Z.E.O.N.勢力全体の戦力底上げを図ったのである。

 

 

 七月初旬。

 欧州方面軍がジブラルタル基地からイベリア半島を制圧すべく侵攻。

 また地中海の制海権を確保すべく、ジブラルタル及びスエズの地中海の東西出入口から海洋戦力部隊を投入。

 鹵獲、及び親Z.E.O.N.勢力から提供された水上艦艇、及び独自の開発や鹵獲改装の潜水艦等の数は、地中海に展開する地球連合側に比べ少ないものではあったが。

 水陸両用MSのお陰もあり、ティレニア海、及びマタパン岬沖海戦の二つの海戦に勝利し、地中海に残存する地球連合の艦隊は、比較的防衛の容易なアドリア海及び黒海へと引きこもらざるを得なくなった。

 

 こうして地中海の制海権を大幅に確保した欧州方面軍は、イベリア半島制圧がマドリード近郊で強固な防衛線に突き当たり停滞していた事もあり。

 ジブラルタル基地及びアフリカ大陸北部から、国軍が要撃爆撃機として開発したド・ダイYSを用いてヨーロッパの地中海近郊の主要都市及び地中海沿岸部への空襲を敢行。

 A.E.C.政府の士気を砕き、A.E.C.国民に厭戦気分を蔓延させる心理的圧力をかける方向へと行動をシフトしていった。

 

 

 一方同時期。

 中央アジア方面軍は、中東地域における親Z.E.O.N.勢力を支援し、その協力の下、バイコヌール目指して進軍を行っていた。

 

 

 そして同時期。

 南アフリカ方面軍は、新・アフリカ共同体との共同によるアフリカ大陸南部制圧の為の攻勢を開始。

 MSを揃え、機動力と突破力を有する南アフリカ方面軍が敵戦線を突破。

 その後、MSの提供等が始まっていたとはいえ未だ通常兵器が主力を成す新・アフリカ共同体が、突破した箇所から制圧していく、という役割分担を担っていた。

 

 この役割分担は、共同作戦を行う練度に全く達していないながらも、政治的な判断から共同作戦を行わざるを得なくなった為、両軍の指揮官が協議の末辿り着いたものであった。

 

 こうした事情をはらんで臨んだ七月十四日。

 ザンビア北西部において遂に南アフリカ方面軍及び新・アフリカ共同体による連合軍が、地球連合軍と衝突、大規模な戦闘が発生する事となる。

 地球連合軍は南アフリカ統一機構、大西洋連邦、そしてA.O.C.U.先遣隊によるこちらも連合体制であり。

 特にA.O.C.U.先遣隊においては、月と同様に自国製のMS部隊が所属しており、その活躍が期待されていた。

 

 しかしながら、月と事情が異なり、自軍の手厚い支援もなく、またZ.E.O.N.側が地上戦用のMS。

 国軍が開発した、そのがっしりとした骨太な外見ながら、ホバリング推進システムによる見かけ以上の加速性能を有するドム。

 そして、Z.A.F.Tが開発した、四肢動物を彷彿とさせるそれまでのMSとは一線を画す外見ながらも、脚部に無限軌道を有し、走行形態により高い走破性能を有しているバクゥ。

 この二種のMSの性能を前に、奮戦し貴重な地上での戦闘データを入手する代わりに、高い授業料を支払う事となった。

 

 また、上記の二種の機動力を前に、南アフリカ統一機構、大西洋連邦の部隊も手痛い痛手を受け。

 陸に比べ優勢であった空からの、空軍の支援のもと撤退し、戦線をザンビア南部にまで後退させる事となった。

 

 だが一週間後の同月二十一日。

 A.O.C.U.の派遣本体と言うべき部隊や、大西洋連邦からの援軍も到着。

 先の戦闘を経験し急遽構築された対ドム、対バクゥ戦術による対策を講じ。

 倍増した戦力のもと、戦線を強化した事も相まって、Z.E.O.N.側連合軍はこの戦線突破に苦慮し、徐々に硬直化していく事となる。

 

 

 一方、同時期には中央アジア方面軍においても、イラン北東部において東アジア共和国とA.E.C.の連合軍と戦闘が発生。

 緒戦は中央アジア方面軍が有する、アフリカでも猛威を振るったドムやバクゥを前面に出しての機動戦で、数で勝る連合軍を翻弄。

 連合軍側に相応の出血を強いる事に成功し、戦線も、トルクメニスタン北東部まで押し込むまでに至った。

 

 所が、日数が経つにつれ、宇宙と異なり、地上では未だ圧倒的を誇る東アジア共和国の物量を前に、徐々に中央アジア方面軍の勢いにも陰りが見え始め。

 

 月が替わった八月初旬には、遂に被害が看過できぬ程となり、中央アジア方面軍の司令官であるウォルター・カーティス大佐は攻勢を断念。

 戦力の立て直しを図るべく、戦線をイラン中部まで後退させるべく撤退を開始する。

 しかし、これを好機とばかりに、東アジア共和国とA.E.C.の連合軍は逆撃を開始。

 特に東アジア共和国は、宇宙で散々味わわされ続けてきた雪辱を果たさんと、戦闘開始当初の倍以上もの戦力で逆撃を行い。

 

 それは中央アジア方面軍の将兵に、東アジア共和国の兵士は畑で取れる、等と言わしめる程であった。

 無論、それは陸のみならず空でも同じことで。

 ディンや、国軍の大気圏内用戦闘機ドップや、Z.A.F.Tの大気圏内用戦闘機インフェストゥス等のパイロット達に、"くそ、空が狭い!"と一様に言わしめた事からも、その時の状況がいかに凄かったかを物語っていた。

 

 その様な物量による逆撃を受けての撤退は、まさに悲惨の一言に尽きた。

 それでも、カーティス大佐の指揮と、撤退を援護すべく結成されたドムやバクゥを中心とした特別隊の活躍も相まって八月下旬には、当初の予定通りイラン中部まで撤退を完了させる。

 

 そして、逆撃の際の、特に東アジア共和国の被った被害の多さも相まって、更なる攻勢に転じる事を断念した連合軍は。

 イラン中部において小競り合いを続けながらも、睨み合い、こちらも戦線を硬直化させていく事となる。

 

 

 なお、南米戦線においては、カリブ海海戦以降中米において睨み合いの膠着状態にあり。

 このように、九月へと月が替わる直前までに、地上の各戦線は膠着状態に陥るのであった。

 

 

 

 こうして、三つの方面軍による侵攻前にZ.E.O.N.側が思い描いていた。

 アフリカ大陸の支配を完全なものとし、南アフリカ方面軍の一部を後詰めとして中央アジア方面軍への援軍に派遣。

 バイコヌールのマスドライバー施設制圧の後、A.E.C.に対する単独講和を持ちかけ。

 バイコヌール、及びハビリス、更にはパナマを餌に大西洋連邦や東アジア共和国からも講和を引き出し。

 最後に、流石に同じプラント理事国の他の三国が講和に応じれば、残ったA.O.C.U.も交渉の席に応じずにはいられなくなる。

 

 という見立ては、脆くも崩れ。

 

 更には、この侵攻作戦の破綻はZ.E.O.N.の民衆にも大きな衝撃を与え、まだ真新しい月での敗北も相まって、民衆の間に厭戦感情を呼び起こす事となった。

 この為、Z.E.O.N.上層部は、厭戦感情を払拭し国内の士気を鼓舞すべく、最高評議会議長であるギレンの全地球規模という空前絶後の規模による大演説を実行したのである。

 

 

 

 我々は、多くの英雄を失った。しかし、これは敗北を意味するのか? 否!! 始まりなのだ!!

 地球連合に比べ、我がZ.E.O.N.の国力は三十分の一以下である。

 ……にも拘らず、今日まで戦い抜いてこられたのは何故か!?

 諸君! 我がZ.E.O.N.の戦争目的が、正義だからである。

 

 この正義の為の戦い、Z.E.O.N.が掲げる自由の為の戦いを、神が見捨てる筈はない!!

 

 しかし!

 その戦いの中で、諸君らの愛した、家族、恋人、友人たちは死んだ! 何故だ!!

 

 新たなる時代の覇権を選ばれた国民が得るのは、歴史の必然である。

 ならば、我らは襟を正し、この戦局を打破しなければならぬ!

 

 

 ──国民よ、立て! 悲しみを怒りに変えて、立てよ国民よ!!

 その怒りを連合軍にぶつけ、我らZ.E.O.N.国民は、我らの最良の(プラント)と共に、自由を勝ち得るのである。

 

 ジーク・Z.E.O.N.!

 

 

 

 この大演説により、Z.E.O.N.の民衆の間にあった厭戦感情は払拭され。

 更には軍でも、これまでの連勝に何処か緩んでいた空気を、今一度引き締め直す切っ掛けとなり。

 連勝続きでZ.E.O.N.全体に知らぬ間に漂っていた慢心は、取り除かれる事となった。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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