機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第十話 ある日の日常

 ラスティ・マッケンジーは、テレビ画面から流れるギレンの大演説を目にしながら、興奮と感動で心を震わせていた。

 原作においては弟の国葬の際に行われたあの大演説を、今まさに、中継とは言え、その雰囲気の一端を共有する事が出来たからである。

 

 そして、程なくして大演説の中継が終わりを告げると、ラスティはテレビの電源を切り、目を閉じて大演説の余韻に浸り始めた。

 だが、それも僅かで終わりを告げると、そこからは、暫し瞑想に耽り始める。

 

(どちらの原作でもそうだったが、やっぱり、国力の差は如何ともしがたいよな、この世界は原作よりも多くはなってるとは言っても……)

 

 瞑想の内容は、自信にも関わる事であった。

 それは、兵員の補充。

 開戦以来、地球連合と同じく、Z.E.O.N.も相応の兵員を損耗しているのだが。

 特に、地球連合側と比べ国力の乏しいZ.E.O.N.は、動員可能な兵員が予備役も含めても余裕がない事もあり。

 開戦以来の損耗スピードに補充が追い付かず、定員割れを起こす部隊等が問題となっていた。

 

 戦闘艦艇やMSをはじめとする各種兵器などは、資源と設備があれば、必要とあれば短時間でも用意でき補充は可能となる。

 だが、それらを操る人員に関しては、一朝一夕で用意できるものではない。

 

 それ故に、Z.E.O.N.ではこの兵員の問題に端を発する戦力確保の問題に対して、戦力確保の為にある程度の質の低下を容認し必要な数を確保する、という選択を取る事となった。

 即ち、比較的安定している戦線からの兵員の引き抜きを行い必要な戦線に再配備すると共に、短縮教練を経た新兵を引き抜いた補充要員に充てるというもので。

 この為、軍学校でそれまで行われていた教練期間を一か月短縮し、補充に充てる新兵を確保すると共に、採用年齢の引き下げや基準の緩和、更には志願者増加の為の更なるプロパガンダ採用など。

 兵員補充の為の措置を次々に打ち出していた。

 

 無論、これは国軍のみならずZ.A.F.Tにおいても同様で。

 現在ラスティが入学しているZ.A.F.Tの軍学校、通称アカデミーにおいても、ラスティの学年は当初の規定通りの期間であるが、後輩となる学年からは期間が縮小される事が決定している。

 

 因みに、軍としても兵員補充の為のこれらの措置に関しては本音では不本意の為、あくまでもこれらの措置は状況が改善するまでの暫定的もの、という説明を行ってはいるが。

 

(ま、まだ学徒動員が行われてないだけ状況は持ちこたえてるんだろうけど……。時間の、問題だろうな)

 

 ラスティには、もはやこの先状況が悪化する事はあれど、改善する事は可能性として低いのではないか。

 そんな否定的な考えが思い浮かばずにはいられなかった。

 

「はー、駄目だ。ネガティブなことばっかり考えてちゃ」

 

 だが、そんな考えが頭の中を覆い尽くす前に、ラスティは頭を左右に振るいそんな考えを払いのけると。

 目を見開き、気持ちを切り替えた。

 

「っと、もうこんな時間か」

 

 刹那、不意に壁にかけられている時計に目をやると、丁度昼食の時間であった。

 そこで、準備を整えたラスティは、アカデミー入学と共に生活空間となった寮の部屋を後にすると食堂へと向かうのであった。

 

 

 

 

 ラスティ・マッケンジーは、元々アカデミーに入学するかどうかについては悩んでいた。

 その理由は、言わずもがな、軍人になるという事は、原作同様の行く末を辿る可能性が高い事を意味していたからだ。

 故に、両親の離婚後、入学可能年齢に達するまでの間、ラスティは日々入学すべきか否か、悩みに悩んだ。

 

 そして、その結果は、先ほど説明した通りである。

 

 では何故、ラスティは原作同様の可能性のある軍人への道を選んだのか。

 一つは親孝行の為であった。

 憑依転生し、十年近くも家族として、離婚後は女手一つで育ててくれた母親を思っての事であった。

 プラント理事国との関係悪化、更には地球連合との戦争状態に入り、民間と軍とで開戦以前との待遇の差が完全に逆転。

 その為、民間企業に就職しても、母親の手助けにはあまりならず。また、軍に入隊すれば、そこで培った特殊技能などが、除隊後などに生かせる為、再就職の際に有利になる、との判断もあった。

 

 そしてもう一つが、現在では法律上赤の他人となった元父親、Z.E.O.N.最高評議会の一員でもあるジェレミー・マクスウェル氏が関係していた。

 

 実はジェレミー議員、二年前に再婚しており、その相手が何と、離婚の原因となった彼が応援していたアイドル、カノかっちことカノカ・マクミランであった。

 当時はプラント理事国との関係悪化など、プラント世間も暗いニュース等が多い時期であった為、この再婚はそんな暗い雰囲気を吹き飛ばすべく報道され。

 その際、当然のことながら記者からの質問に答えた事でジェレミー議員のアイドル趣味がプラント世間にも知れ渡り。

 この為に、離婚したとはいえ元家族であるラスティ達にも、世間の目というものが少なからず向く事となり。

 

 この世間からの体裁を鑑みて、軍人という道を選んだのであった。

 

 ただし、この元父親の再婚は、プラントで行われているとある政策により、ラスティに更なる問題を引き起こさせる事になるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 このような経緯からアカデミーに入学し、原作の登場人物達同期と共に立派な軍人になるべく座学や実習等に励んでいるラスティ。

 寮を出て、もはや通い慣れた構内を進んだ彼は、やがて目当ての食堂へと足を踏み入れた。

 

 そして、本日のおすすめメニューであるうどん定食を注文すると、出来立てのそれを手に、適当に空いている席に腰を下ろすと、いただきますの挨拶と共にメインのうどんをすすり始めた。

 

「んぁー、この出汁、五臓六腑に染み渡るなぁ……」

 

 精神年齢的には違和感はないが、肉体的には、とても十七歳の少年が口にするような台詞とは思えない感想を漏らしつつ、ラスティは食事を続ける。

 

「ん? よぉ、アスラン」

 

 すると、不意に料理の乗ったトレーを持って空いている席を探している同期の存在に気が付き、声をかける。

 

「座れよ、空いてるぞ」

 

「すまない」

 

 ラスティの勧めに、同期にして原作の最重要人物の一人でもあるアスラン・ザラは、勧められた対面の席に腰を下ろした。

 

 因みに、彼の父親は最高評議会の議員にして、議会の急進派の一員であり、プラント内のザビ家派と称される派閥の領袖を務めるパトリック・ザラであり。

 その為、共に片親──、アスランの母親であるレノア・ザラは血のバレンタインの犠牲者の一人である。

 また、理由は違えど、父親のお陰で苦労しているという境遇の親近感から、原作同様に仲の良い同期の一人であった。

 

「お、アスランはロールキャベツ定食か、相変わらず好きだな、それ」

 

「余計なお世話だ」

 

 こうして、アスランと会話を交わしながら再び食事を再開したラスティは、不意に、アスランにとある質問をぶつける。

 

「そういえばアスラン。お前、演説会場には行かなくてよかったのか? 仮にも最高評議会議員の息子だし、アカデミーの学年トップで、首席卒業間違いなし、なのによ」

 

「俺は、ああいう場所は苦手なんだよ……。それに、まだ首席で卒業するとは決まってないだろ、卒業試験も残ってるし。そもそも、それを言うならお前はどうなんだよ?」

 

「え? 俺?」

 

「ラスティだって、成績で言えば学年二位だし、元父親は最高評議会の議員だろ」

 

「う、……お、俺も、ああいう雰囲気の場所は、苦手、なんだよ」

 

「ぷ、あははは!」

 

「笑うなよ、……ははは!」

 

 結局、先程まで行われていたギレンの大演説会場に苦手意識から、お互いに参加を避けていたと知るや、お互いに吹き出す二人。

 こうしてお互いに笑いあった後、話題は、明日の休日の過ごし方についてに変わる。

 

 軍学校と言っても、休日がない訳ではなく、基本は日曜日の朝から夕までの半日間だが、月に一度、丸一日の休日が設けられており。

 明日の休日は、その月に一度の休日日なのである。

 

「そういえばアスランはどうするんだ?」

 

「俺は、父上と食事をする事になってる」

 

「へぇ、親父さんと」

 

 父親であるパトリックとの親子水入らずの食事、だと言うのに、アスランの表情は何処かさえないでいた。

 それに気付いたラスティは、親子関係は当人たちの領分で、親しい友人だからと踏み込んでいいものではないと弁えつつも、何とか改善の助力になればと、言葉をかけた。

 

「なぁアスラン、知っての通りさ、俺の"元"親父は、いい年してアイドルなんかに夢中で、挙句に結婚までしちゃった程だけどさ。それでも、何だかんだ、今でも俺の親父である事には変わりないんだよ。でも、ご存知の通り、離婚して、今の俺とは法律上は赤の他人、それに、あっちはあっちで新しい家庭を作ったから、色々と言いたい事があっても簡単には言えないんだよねぇ……」

 

「……」

 

「でもさ、アスランの所は、まだ言いたい事があればいつでも言えるんだし。言いたい事があるなら、今度の食事の席で面と向かって言った方がいいぞ。あぁ、もし本人に言いたい事とかが無いなら、下らない事でも何でも親父さんと話してみろよ、黙って食事するよりも、断然そっちの方がいいだろ? お、そうだ、アカデミーの愚痴なんてどうだ? フレッド教官の汗臭さが酷いとか──」

 

「いや、それは流石に……」

 

「そうか。ま、兎に角、いい機会だし、腹割って話せばいいんじゃないか、話せる時にさ。色々不満もあるだろうけど、血の繋がった、この世にたった一人しかいない肉親なんだから、そんな肉親との時間は、大切にしろよ、な」

 

「……、ありがとう、ラスティ」

 

 ラスティの気持ちがアスランにどれだけ伝わったかは未知数であるが、ラスティは、これで少しでもザラ親子の関係が良くなればと願うのであった。

 

「所で、そういうラスティは明日の休日、どうするんだ?」

 

「あー、とりあえず実家に帰って、ごろごろして過ごす」

 

「ぷっ、何だよそれ」

 

 先ほどまで熱のこもった言葉を発していた割に、ラスティ自身の休日の過ごし方の無計画さに、アスラン呆れて吹き出すのであった。

 そんな、アスランの様子を見たラスティは、心の中で、決意を新たにする。

 

 その決意とは、憑依転生し、この世界を肌で感じて過ごしてきて、原作の登場人物達と実際に言葉を交わして、そして辿り着いた一つの答え。

 アカデミーに入学し、原作の学年五位の成績とは異なり、知識や技術を吸収し、それを磨く事で学年二位という成績を残すまでに至ったのも、その答えを実現するために必要な力を手に入れる為。

 

 その答えとは、即ち、救済。

 

 画面越しのキャラクターなんかじゃない、同じ時を共有し、下らない事で笑ったり泣いたり、時に喧嘩したり。

 れっきとした、生きた人間である彼らを、悲劇から救うべく手を差し伸べる。

 だけど、勿論全員を救える訳じゃない。

 だからこそ、手の届く範囲だけでも、救いの手を差し伸べる。そうすれば、救われたその者達が、その手で、新たに別の者に救いの手を差し伸べる。

 

 その連鎖が、やがて世界を動かす程の大きな変化になる。

 

 ラスティは、そんな答えを実現すべく、決意を新たにするのであった。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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