機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第十三話 伝説への道標

 ジョシュア(JOSH-A)

 それは地球連合発足の地、アラスカに設けられた基地の通称で、Joint Supreme Headquarters-Alaska(アラスカ統合最高司令部)の頭文字を取ってそう呼ばれている。

 ベーリング海に面したユーコン川河口のデルタ地帯、ユーコン・デルタの地下に作られた巨大地下空洞に基地施設は存在し。

 その巨大さは、"グランド・ホロー"と呼ばれ、地球連合軍の中枢でもある地球連合軍統合最高司令部の施設の他、そこで働く軍人や軍属、さらにはその家族などの為に広大な地下都市も存在しており。

 まさに、一つの都市が形成されている。

 

 そんな地下空洞部分を守るべく、地上部分には防衛用の火器が秘匿されながらハリネズミの如く配備され。

 更には通常兵器による爆撃の他、一説では核兵器の直撃にも耐えうると言われる強固な防御力を持っており。

 まさに、難攻不落の要塞であった。

 

 

 

 そのようなジョシュアの一角。

 基地の中枢である統合最高司令部の中を、案内役の女性士官に連れられ、一人の大西洋連邦軍の将官が歩いていた。

 統合最高司令部であるからして、別に大西洋連邦軍の将官がいてもおかしくはないのだが、統合最高司令部に勤務する軍人達から、その将官は少々奇異の視線を浴びていた。

 

 というのも、実はこの将官。

 整った口髭に短い金髪、そして年相応にこれまでの経験を刻み込んだシワを浮かべながらも、まだまだ精力的で衰えをあまり知らぬ中年男性。

 その名を、デュエイン・ハルバートンと言い、彼の肩書は"大西洋連邦宇宙軍第八艦隊司令官"という、月のプトレマイオス基地を母港とする艦隊の司令官なのである。

 

 そんな第八艦隊の司令官が統合最高司令部に足を運んでいる。

 Nジャマーの影響があるとはいえ、プトレマイオス基地には、ジョシュアと直接通信を行える設備も十二分に備わっているのにだ。

 わざわざ月からジョシュアと足を運ぶほどの事情、如何なるものかと、統合最高司令部に勤務する軍人達は、そのような疑問から彼に視線を向けていた。

 

 一方、そんな視線に気づいているのかいないのか。

 ハルバートン提督は案内役の女性士官と共に、防諜を兼ねた代わり映えしない規格化された廊下を進み。

 やがて、とある部屋の前でその足を止めた。

 

 そして、女性士官に促され部屋の中へと足を進めると、そこには案内役を務めた女性士官とそう違わない歳の女性士官のデスクがあった。

 

「ハルバートン提督、お待ちしておりました。只今将軍にご確認いたしますので、暫くお待ち下さい」

 

 女性士官はそう言うと、自身のデスクに置いてある構内電話で、誰かとやり取りを始めた。

 

「将軍、はい、ハルバートン提督がお見えです。……はい、わかりました。そういたします」

 

 そして、短いやり取りの後、構内電話を切ると、自身のデスクから立ち上がる。

 

「ハルバートン提督、どうぞ中へ、将軍がお待ちです」

 

 と、丁寧な所作と共に奥の部屋へと入室を促すのであった。

 それに応えるように、ハルバートン提督は、軽金属製の自動ドアに木目調の壁紙を丁寧に張り付け、いかにも高級な木製ドアに仕立て上げた、そんな自動ドアを潜った。

 

「おぉ、待っていたよ、さ、かけたまえ」

 

「失礼いたします、将軍」

 

 そして、ハルバートン提督が足を踏み入れた先に広がっていたのは、とある軍人の執務室であった。

 大西洋連邦のトップである大統領の執務室にも負けずとも劣らぬ程の広さと、主張し過ぎずとも高級感が滲み出ている家具達。

 更に壁には、大西洋連邦も採用している通常兵器の図面らしきものや、鹵獲したZ.E.O.N.のMSの分解写真等が、額に入れられ飾られていた。

 

「それで、レビル将軍。本日はどのような用件で私をわざわざジョシュアまで足を運ばせたのですかな?」

 

 そんな部屋の主こそ、誰であろう、あの劇的な脱出劇を経て、Z.E.O.N.に兵なしの演説を行い。

 その後、一部の者達の根回しなどもあり、大西洋連邦軍の軍人達を統率する、所謂制服組のトップへと上り詰めた軍人。

 現大西洋連邦軍統合参謀本部議長の、ヨハン・I・レビル将軍その人である。

 

 レビル将軍は、その白髪したフルフェイスの髭を触りながら、自身の執務机の椅子から腰を上げると、ハルバートン提督が腰を掛けた応接用のソファの対面に腰を下ろした。

 

「あぁ、先にコーヒーでも飲むかね? それとも君は紅茶の方がいいかな?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうか。……あぁ、そうだ、今日わざわざ君にご足労をいただいた理由だけどね」

 

 短い雑談を終えると、レビル将軍は早速、ハルバートン提督がわざわざ月からジョシュアに足を運ぶ事となった、その本題を話し始める。

 

「ま、先ずはこれを見てみてよ」

 

 かと思ったら、レビル将軍はリモコンを操作する。

 すると、壁の一部が可動し、大型のスクリーンが登場し。

 そして、スクリーンに映像が流れ始めた。

 

 映像には、一機の白いMSが宙域を縦横無尽に駆け巡り、装備した武装でターゲットとなる的を次々と撃破する、そんな様子が映し出されていた。

 

「こ、これは……」

 

 その映像を目にしたハルバートン提督は、息を呑んだ。

 

「この映像は、我が国の優秀な情報屋くんたちが入手したものでね。A.O.C.U.の実用実験機だそうだが、追加の情報によると、先日、Z.E.O.N.の部隊と交戦したそうだ」

 

「それで、結果は……」

 

「圧倒的だったそうだよ」

 

 レビル将軍の返答を聞いたハルバートン提督は押し黙り、じっと自らの手を凝視し始める。

 

「いやー、参ったね。君が一か月ほど前に提出してゴーサインを出した我が軍の次世代MSの試作機開発計画。……なんと言ったかな?」

 

「"G計画"であります」

 

「おー、そうだった、G計画」

 

 何処か悔しさを滲ませるような声で、自らが立案した大西洋連邦軍の次世代MSの試作機開発計画、その計画名を告げるハルバートン提督。

 そんなハルバートン提督を他所に、レビル将軍は淡々とした様子で話を続ける。

 

「確かあの計画、共同開発の企業として、A.E.C.のモルゲンレーテ社を巻き込んでいたと記憶しているが?」

 

「は、はい」

 

「確かに、モルゲンレーテ社はA.O.C.U.製のMSのライセンス生産を行っており、MSに関するノウハウを持っている企業だが。やはり、協力を仰ぐのならば、本家本元の方がよいとは思わんかね?」

 

 モルゲンレーテ社、それはA.E.C.を代表する企業ではあるが。

 一般的な認識として、同社は同国を代表するアクタイオン・インダストリー社の後塵を拝する企業。という認識であった。

 事実、同国の兵器開発競争においては、その多くで両企業が争い、そして、モルゲンレーテ社が涙を呑んでいた。

 

 しかし、そんなモルゲンレーテ社にも、最近では脚光を浴び始めていた。

 それが、グリマルディ戦線後、A.E.C.が導入を決定し、最近になってパイロット達の練度が達し、漸く実戦配備にまでこぎつけたA.O.C.U.製MS、ザニーとガンキャノンの、ライセンス生産を担当する事になったからである。

 最も、当初はアクタイオン・インダストリー社が担当する予定であったが、当のアクタイオン・インダストリー社側が通常兵器の生産などで手一杯の為、止む無くモルゲンレーテ社に回ってきた、という裏事情が存在していたが。

 

 そんなモルゲンレーテ社を、ハルバートン提督は自らが立案したG計画の共同開発企業として指名していた。

 

「まぁ、君がA.E.C.側からどれ程便宜を図られて、協力を取り付けた連邦議員や一部企業の役員の方々から、自国産業を考慮してくれと口酸っぱく言われたかは、儂には測りかねる事だが……。東洋の古い言葉に"餅は餅屋"、と言う言葉がある、意味は分かるかね?」

 

「い、いえ、お恥ずかしながら」

 

「何事においても、専門家に任せるのが安心で確実と言う意味だよ。今現在、地球連合で最もMSについて精通しているのは、間違いなくA.O.C.U.だ。そんな彼らを差し置いてこの計画を完遂させようというのは、ちと無理があるのではないかね?」

 

「……、ですが将軍、この計画によって開発される試作機は、計画通りの性能のものが完成すれば、A.O.C.U.製MSにも負けずとも劣らぬ……」

 

「だが、その試作機が完成した頃には、A.O.C.U.は更に高性能なMSを世に送り出してくるだろうね。あぁ、情報屋くんたちが言うには、A.O.C.U.はあの映像のMS程ではないが、近々、ザニーやガンキャノンを凌駕する性能のMSを二機種もロールアウトさせるそうだよ。しかも、一方はビーム兵器を標準搭載していると言うじゃないか」

 

 レビル将軍の口から飛び出す情報の数々に、ハルバートン提督の背中に嫌な汗がにじみ始める。

 

「このままいけば、試作機が完成してもその頃には、同等の、いやそれ以上の高性能機が"量産"されている可能性は低くはないと思うけどね」

 

「……。計画の一部変更には、反発が起こる事は容易に想像できますが」

 

「あぁ、そこは儂が上手く説明をしておくよ、それで安心かね?」

 

「はい」

 

「では、A.O.C.U.側に協力を仰ぐとして……。やはり、手土産は必要だとは思わんかね?」

 

「手土産、ですか?」

 

「G計画において実装予定の幾つかの新技術のデータ、と言うのは、どうかな?」

 

「ですが、それは我が軍のトップシークレットで……」

 

「だが考えてもみたまえ。我が国を始め他国に先んじて実用レベルのMSやそのOSを開発したA.O.C.U.の事だ。何れ、似たような技術を独自開発してしまいそうとは思わないかね?」

 

「それは……、確かに」

 

「では、新技術のデータを手土産に、A.O.C.U.側に協力を仰ぎ、計画に参加してもらう方向で話を進めるとしよう」

 

 そして、一旦話を切り上げたが、ふと、何かを思い出したかのように再び口火を切った。

 

「そういえば、先ほどの映像に登場した白いMS。名前は"ガンダム"と言うそうだ」

 

「ガンダム……」

 

「丁度G計画にも頭文字のGという単語が使われている。そこで、どうだろうか、我々の計画も、ガンダムの恩恵にあずかるというのは」

 

「と、申しますと?」

 

「試作機の名称に用いてみるとか、或いはOSの名称に用いてみる、というのはどうかな?」

 

「け、検証しておきます」

 

「うん。それじゃ、よろしくね」

 

 こうして、大西洋連邦のG計画は、フェイズシフト装甲やミラージュコロイド、更には可変機構などの新技術のデータを交換条件に、アナハイム・エレクトロニクス社の協力を取り付けることになるのであった。

 

 

 なお、交換条件で得たミラージュコロイドのデータに関し、その一報がもたらされるや否や、組織内で早速"見えざる傘"を作ろうとの声が挙がったのは、ここだけの話。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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