機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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第十四話 頃は長月の中旬すぎ

 A.O.C.U.の政治体制は、中央議会と呼ばれる議会の議員を、各州から選挙により選出し。

 こうして選出された中央議会の議員により、国家元首である首相の指名選挙が行われ。

 この指名選挙により選出された中央議会の議員が、任期四年、続投の是非を問う中間選挙に勝利すれば、更に追加の四年。連続合計八年の任期である首相を務める事となる。

 無論、特例により更なる続投も可能ではあるが、基本的には四年か八年の何れかの任期を務める事となる。

 

 そんなA.O.C.U.の首相の座に現在就いているのが、緒形 小五郎(おがた こごろう)

 開戦以前より首相を務め、現在任期五年目を迎えている熟年男性である。

 

 

 緒形首相の職場でもある、メガロポリスの一角に存在する、厳重な警備態勢で守れた建物、首相官邸。

 その官邸内の一角に存在する首相の執務室で、緒形首相は息つく暇もない程に、仕事に追われていた。

 

 そんな執務机で仕事に追われる緒形首相の様子を、高級感漂う黒革の応接ソファに腰かけながら、高磯がコーヒーカップを片手に眺めていた。

 

「相変わらず忙しそうですな」

 

「あぁ、開戦以来、睡眠時間が一時間も削られる程に忙しいよ。優雅にコーヒーを飲んでいる何処かの誰かさんが、早くこの戦争を終わらせてくれると、私の睡眠時間も戻ると思うのだがね」

 

 恨めしそうな顔を浮かべながら、緒形首相は高磯の方を見るなり、そうちくりと毒を吐いた。

 

 高磯は現在、A.O.C.U.軍の軍人達の最高位者、所謂制服組のトップである統合幕僚本部の長である、統合幕僚長の職に就いており。

 そんな制服組のトップが、日も出ているうちに、自らの職場を飛び出し優雅にコーヒーを堪能してる。

 先程の緒形首相の言葉は、そんな高磯に対する羨ましさが転じた恨み節の意味も込められていた。

 

 と、一見すると軍のトップである緒形首相と、制服組のトップである高磯は仲が悪そうにも思われるが、実はそうではない。

 

 実は緒形首相も、高磯同様に転生者であり。

 また、歳は違えど、高磯と近い日に組織に参加していた為、組織内では言わば同期の仲であり。

 その為、全くの赤の他人よりも、親しいからこそ多少の本音や嫌み等を言えるのである。

 

「ふぅ……」

 

 やがて、そんな緒形首相も何とか仕事に一区切りをつけ、漸くの小休止を堪能し始める。

 

「いやー、お疲れ様です」

 

「あぁ、すまん」

 

 そんな緒形首相に、高磯はコーヒーを淹れると、淹れたてのコーヒーが入ったコーヒーカップを緒形首相に手渡す。

 

「本当に、私達が軍人としての職務に専念できるのも、緒形首相の様な素晴らしい方々が身を粉にして働いてくれているお陰ですよ」

 

「その台詞……、概算要求の度に聞いている気がするんだが」

 

「そう、でしたかな? あはは、はは」

 

「はぁ……。ま、今日呼んだのは予算の話をする為じゃない。色々と君の意見を聞きたいと思ってね」

 

「私の意見、ですか?」

 

 すると緒形首相はコーヒーカップを片手に、自らの執務机から高磯の対面にある応接ソファに移動する。

 

「と、そうだ。本題の前に、一つ尋ねたい事があるんだが?」

 

「何でしょうか?」

 

「ガンダムの件だがね。……何故、"オリジナル版"と"ORIGIN版"の二種類があるのかね?」

 

「……」

 

 対面に腰を下ろした緒形首相の険しい目つきに、何故か高磯の目が泳ぎ始める。

 

「確かに会合ではガンダムの開発を行う事で決定したが。……それで何故、"オリジナル版"と"ORIGIN版"の二種類のガンダムが出来るんです?」

 

「い、一応、両機とも"ガンダム"ですし。それに、次世代MSの実用実験機は今後の戦略を左右する大事な機体、万が一を考慮し、アナハイム一社だけでなく、ムラクモ・クローム社にも開発を……」

 

「はぁ、つまり浪漫には勝てなかったと……」

 

 色々と方便を垂れている高磯の本心を察した緒形首相は、呆れるようにその本心を代弁するのであった。

 

 因みに、オリジナル版の開発はアナハイム・エレクトロニクス社が担当し。

 ORIGIN版と呼ばれる、左肩にショルダーマグナムを二基、右肩にガトリング砲を一基搭載し、更には左肩背部にショルダーキャノンを装備する等。

 オリジナル版に比べ固定武装を多く搭載しているORIGIN版の開発は、ムラクモ・クローム社が担当していた。

 

「はぁ。高磯幕僚長はもう少し現実的に物事の本質を見極められる方だと思っていたんだが……」

 

「ははは、男はいつまでたっても子供、という事ですな」

 

「はぁ……」

 

 もはや開き直った高磯に、緒形首相は深い溜息を吐くのであった。

 

 

 

 二杯目となるコーヒーをお互いのコーヒーカップに淹れた所で、いよいよ本題の話となる。

 

「君も既に耳にしているとは思うが、Z.E.O.N.側から今回の戦争の落としどころを探る為の会談の開催が提案されていてね」

 

「はい、その件でしたら既に聞いております」

 

「どうもZ.E.O.N.側としては、我が国からの提供で他のプラント理事国に普及した核融合炉技術を用いて、核融合炉ミサイルのような新兵器によるユニウスセブンの悲劇の再来、を恐れている節があるようだ」

 

「確かに核融合炉を用いれば、NジャマーもNジャマーキャンセラーも関係ないですからな」

 

「おそらくコロニーやプラント等の人口密集地への核兵器の使用禁止を盛り込んだ条約の締結を目指してくるものと推測しているが」

 

 と、そこで緒形首相は一旦コーヒーを一口含んで喉を潤すと、再び話を再開する。

 

「実は、その会談の場で、連合側として年内一杯までを目途とした停戦の提示を行おうと思っている」

 

「停戦、ですか?」

 

「我が国は兎も角、他のプラント理事国に関しては未だにNジャマーの投下の影響が残っている。そこで、国内復興、及び停戦明けからの第二ラウンドの準備に専念する為の期間の確保の為、だ。特にA.E.C.はこの停戦期間を強く望んでいてね」

 

「Z.E.O.N.側から地中海近郊で空襲を受けておりますからな……。少しでも安心安全な空の状況を確保したい気持ちは分かります」

 

「それに、大西洋連邦も、例の計画絡みで時間が欲しいようだし」

 

「あぁ、例のですか」

 

「さて、という訳で、これに関して、君の意見を聞きたい。君としては、停戦には賛成か、反対か?」

 

「私としては賛成です」

 

「理由は?」

 

「軍としても、確実な準備期間は望ましい。現状、地上の戦線等が膠着状態になったとはいえ、それはいつ均衡が崩れるとも分からぬものです。突発的な事態に怯えながら、戦力の増強や兵員の管理などを行うのは大変ですので。できれば、コーヒーを飲みながら管理に専念できる"確実"な時間というものはありがたいものです」

 

「ははは、本当に高磯幕僚長はコーヒーが好きだな」

 

 と、一笑い起きた所で、互いに表情を真剣な表情へと切り替えると、話を再開する。

 

「しかし、緒形首相。我々の側はその気でも、Z.E.O.N.側が停戦に応じますかね?」

 

「Z.E.O.N.側で定められた兵員確保の為の措置、前線の指揮官などから大変不評で不満の声が上がっているそうだ。その辺りに付け込めれば、応じるかもしれん」

 

「成程」

 

「まぁ、どうなるかは実際に始まってみなければ分からんが。軍としては、停戦期間の事も考慮して、今後の計画を立ててくれたまえ」

 

「了解しました」

 

 こうした話し合いが行われた数日後の事。

 地球連合とZ.E.O.N.の間で、中立国である北欧のスカンジナビア王国において、戦争の落としどころを探る為の会談の開催が発表された。

 

 

 

 そして、迎えたC.E.七十年十月一日。

 後に十月会談と呼ばれる会談が、スカンジナビア王国の首都であるストックホルムで開催された。

 

 四日間の期間の間続けられた話し合いは平行線を辿り、難航したものの。

 核、生物、化学の各兵器、即ちNBC兵器の使用禁止、及び捕虜の取り扱いなどを定めた、"北欧条約"と呼ばれる戦時条約が締結され。

 

 また、クリスマスである同年の十二月二十五日までの約二か月半の停戦合意がなされ、最終日であるクリスマスになぞらえ、"クリスマス休戦"が行われる事となった。

 

 こうして、地球連合側にとっては貴重な"時間"を、Z.E.O.N.側にとっては核融合炉技術を用いたミサイルによるユニウスセブンの悲劇の再来が起こる事のない"安心"を得た会談は幕を下ろした。

 

 

 

 

 そして、その一週間後の十月十一日。

 この日、A.O.C.U.が二機種の新型MSをロールアウトした。

 

 一方は、機動戦士ガンダムに登場し、その他宇宙世紀を題材としたガンダムシリーズにおいて、やられ役、または主役、として登場する量産型MSの代名詞とも言うべき機体。

 その名も、モデルとなったMSと同様の名を持つ、アナハイム・エレクトロニクス社が満を持して送り出した、形式番号RGM-79、採用名"ジム"である。

 

 後発の為、基本的な性能はZ.E.O.N.のザクIIやZ.A.F.Tのジンを上回っており。

 更に同機の注目すべき点が、武装として頭部の四〇ミリバルカン砲の他、ビーム兵器を標準搭載している点で。

 近接戦闘用のビーム・サーベルに。

 形式番号BR-M79C-1、射程が短いものの、ガンダム装備のビームライフルよりも更に小型で取り回しが良く、単発・連射・拡散の三つのモードを選択可能な、その外見から"ビームスプレーガン"との愛称で呼ばれる射撃用武装を持つ。

 なお、このビームスプレーガンは、後にA.O.C.U.以外の国が採用した際はM79C-1 ビームカービンと呼ばれている。

 

 この他にも、対ビームコーティングを施したシールドに、ハイパーバズーカと呼ばれるMS用バズーカやザニー等の従来機と共用の武装等。

 実弾武装も豊富に用意されている。

 

 そして、動力源はコストの都合上MS用の熱核反応炉ではないものの。

 低電力で高出力のジェネレーターに、エネルギー変換効率の向上等、従来のバッテリーよりも低燃費で大容量のバッテリーを搭載している。

 

 また、A.O.C.U.では同機をベースとして、様々な派生型や改良型の開発も進行中である。

 

 

 そしてもう一方は、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場する、同作品の武装組織であるギャラルホルンが開発した量産型MS、グレイズ。

 同MSと瓜二つの外見を有する、ムラクモ・クローム社が満を持して送り出した、形式番号MC-EB06、採用名"有明"。

 モデル同様、索敵時に頭部の防護バイザーを展開しセンサーを露出させる事で、センサー精度を上げる事が可能となっている。

 

 同機もまた、後発の為、基本的な性能はZ.E.O.N.のザクIIやZ.A.F.Tのジンを上回っており。

 また、同機はA.O.C.U.製MSとして、初のフレーム構造を採用している。

 その為、同機はジムと異なりビーム兵器を標準搭載していない代わりに、ジム以上の基本性能を有している。

 

 上記のようにビーム兵器を搭載していない為、武装は実弾武装が中心となっており。

 従来のMS用マシンガンよりも大口径で、支援火器としても有効なAR-W01 一二〇ミリ二五口径ライフルの他。

 ザクのヒートホークを連想させるが刃を高温化する機能はない、AR-H01 9.8mバトルアックス。

 ジンの重斬刀を連想させる、AR-H02 バトルブレードの他、対ビームコーティングを施したシールドに、三二〇ミリバズーカ砲、更には従来機と共用の武装等。充実している。

 

 無論、必要とあればビーム兵器を運用できるものの、開発企業としては実弾武装での運用を推奨している。

 そして、同機の動力源も、ジム同様に新型バッテリー方式である。

 

 なお、こちらも、同機をベースとした派生型や更なる改良型などの開発を進めている。

 

 

 更には、上記の二機種の汎用性を更に高めるべく、様々なオプション装備も開発されている他。

 従来機の更なる改良型なども発表された。

 

 

 そして、この頃になると、A.O.C.U.以外の部隊でも、ザニーやガンキャノンと言った従来機が多く見られるようになっていた。

 これは、ライセンス生産或いは供与された国々で、MSパイロットの養成課程を修了した、第一陣とも呼べるパイロット達が機体と共に部隊に配属されたからである。

 

 このように、地球連合軍側の戦力がより強力なものへと強化されていく状況に対して。

 Z.E.O.N.側も、新型機の開発促進を図ると共に、現行機種の高性能機の更なる生産増加や部隊の配備を推し進め。

 更には、親Z.E.O.N.勢力に対して行っていた旧式MSのライセンス生産や供与についても、現行機種のライセンス生産や供与を認め、親Z.E.O.N.勢力全体の更なる戦力向上を図るのであった。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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