機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX   作:ダルマ

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外伝 首輪付き

 傭兵。

 それはC.E.制定以前より存在する、国家に忠義を尽くさず、金銭に忠義を尽くし戦う兵士達の事。

 

 彼らは、C.E.制定以前、制定の切っ掛けとなる再構築戦争の時代、まさにこの世の春を謳歌していた。

 各地で起こる紛争の激化に伴う混乱は、彼らに未曾有の好景気を齎し、当時一番稼げる仕事として名を連ねた程だ。

 

 崩壊した国家からの流出や、汚職にまみれた軍人がブラックマーケットに横流しした兵器等を身に纏い、或いは操り、金の為に戦場を駆ける彼ら。

 その規模は、個人から、時に徒党を組んだ大規模なグループが独立国家を樹立してしまう程まで。

 まさに、再構築戦争の時代は大傭兵時代と呼ぶに相応しい時代で、様々な傭兵が後々にまで語られる伝説の多くを築いた時代。

 

 そんな時代を生きた傭兵たちを、当時の人々は尊敬と畏怖の念を込めて"レーベ(ライオン)"と呼んだ。

 

 

 だが、大傭兵時代と呼ばれる傭兵たちの天下も、そう長くは続かなかった。

 世界が再編し、現在の国家の形が作り上げられていくと、徐々に傭兵たちは必要な存在から、厄介な存在へとその見方が変化していく。

 国内が安定していくと、分不相応な力を持ちながらも、国家の意に従わぬ、自らに刃を向けかけない傭兵の存在は、厄介な存在でしかなかった。

 

 そこで、国家側は彼らに枷を課すべく働きかけるも、再構築戦争の時代に自由気ままに我が世の春を謳歌していた傭兵たちがこの働きかけに素直に応じる筈もなく。

 

 その後、両者の間で起こった些細な行き違い等から、両者の間に修復不可能なほどの溝が生まれ。

 やがて、両者が銃口を向け合うのに、そんなに長くはかからなかった。

 

 こうして、両者は、再構築戦争の時代に傭兵にとって天国とも呼べる主だった仕事場であるアフリカの大地において武力衝突した。

 

 当時、傭兵たちの多くは、国家側の戦力など再構築戦争の時代に戦った国家の軍たちと然程大差ない、との認識しか持っていなかった。

 無論、一部はこの国家側の戦力が、再構築戦争の時代とは比べ物にならぬ程巨大で、連合を組んだ傭兵如きが敵う筈はないとの認識を持っていたが、そうした認識を持つ者は、同業他社に忠告する事無く、関わり合わないように静かに距離を取っていた。

 

 そして、勝敗はあっけない程早く決した。

 

 開戦前の威勢や自負を、爆風と燃え盛る炎と共に吹き飛ばされた傭兵たちは、国家側の言う事を素直に受け入れ始めた。

 そして彼らは、国家側の用意した傭兵管理機構と呼ばれる組織によって、名前の通り管理されていく事になる。

 それは個人からチーム、更には企業まで、文字通り傭兵を一元管理する組織。

 

 それが、首輪をはめられた者、を意味する傭兵管理機構"カラード"である。

 

 

 傭兵たちに首輪をはめた国家側は、不自由を強制する代わりに、彼ら傭兵を手厚く報いた。

 それは、傭兵が持つ使い勝手の良さを手放すのが惜しかったからだ。

 依頼の斡旋や情報支援、更には訓練場の提供や保養地の見繕い。更には保険や戦傷病者の支援等々。

 カラードを介して、様々な支援が行われた。

 

 こうして、傭兵たちはいつしか国家や企業、NPO法人等の団体等々、幅広い依頼主の依頼を受け。

 時に、専属契約を交わし、時に、特に腕の立つ者は国軍の兵士としてスカウトされる事もあった。

 この様に、不自由を享受する代わりに、自由な頃には考えられない程の安心と安定を手に入れた傭兵たち。

 

 そんな、首輪をはめられた傭兵たちを、人々はいつしか"首輪付き"と呼ぶようになった。

 

 

 

 

 そして現在、C.E.七十年十一月上旬。

 身辺警護から宇宙海賊の排除等、時代が移り変わっても首輪付きこと傭兵たちの仕事はなくなる事無く。

 

 この日も、カラードに登録されているとある小規模民間軍事会社(PMSC)に、新たな仕事の依頼が舞い込んできた。

 

 依頼主からカラードの仲介担当者である依頼仲介人を介して、依頼のメールが送られてくる。

 メールには、依頼の概要を説明する為の資料映像や写真等の添付ファイルと共に、依頼を受諾するか否かの返信欄などが設けられていた。

 

 そんなメールを受け取ったとある小規模民間軍事会社(PMSC)の会議室内。

 薄暗い室内には、大型のスクリーンが壁に掛けられ、それを眺めるように、各々の椅子が用意されていた。

 

「それじゃ、始めるぞ」

 

 年季の入った男性の声と共に、大型のスクリーンに映像が流れ始める。

 最初に現れたのは、A.E.C.の国旗。次いで、透き通るような女性の声による説明が流れ始めると共に、映像が切り替わると、依頼の概要を説明する為の資料映像が流れ始める。

 

 

 ──ミッションの概要を説明します。

 ミッション・ターゲットは、西アフリカ、旧ブルキナファソ西部に位置するホルデス採掘場です。

 ホルデス採掘場はベースマテリアルと呼ばれる鉱物の採掘場で、現在、親Z.E.O.N.勢力である新・アフリカ共同体の管理下にあります。

 本採掘場で採掘されたベースマテリアルは、Z.E.O.N.の戦力増強に用いられており、地球連合の一員でもあるA.E.C.にとって看過できない事態となっています。

 従って、今回のミッション・プランは、極秘裏に旧ブルキナファソへと潜入し、ホルデス採掘場の警備戦力を速やかに排除、ターゲットを破壊する流れとなります。

 

 ミッションの概要は以上です。

 A.E.C.は、あなた方を高く評価しています。よいお返事を期待していますね。

 

 

 こうして簡素な資料映像が終わりを告げると、室内に明かりが灯り始める。

 室内にいたのは数人の男女。その中の一人は、明らかに子供と思われる女の子であった。

 

「とまぁ、依頼の概要はこんな所だ」

 

「成功報酬の額としては、なかなかに魅力的な依頼よね」

 

「しかし意外だな。(ガイ)がこの手の破壊活動の依頼を受けるなんて」

 

「以前から、この採掘場の噂は聞いていた。親Z.E.O.N.政権である現政権の発足以降、この採掘場を始めとして、国内の採掘場では採掘速度の向上の為に、以前にも増して過酷な労働を強いられているとな。……それに、不足する採掘人員を確保するためにまだ幼い子供達も働かせていると聞く」

 

「成程。それでか」

 

「所でリード。この採掘場の警備戦力だが、資料の通り、担当しているのは新・アフリカ共同体の軍だけなんだな?」

 

 そんな中の一人、地球連合軍の軍服を着込んだ眼鏡をかけた(ガイ)と呼ばれた若い男性が、同じく地球連合軍の軍服ながら袖をカットした改造軍服を着こなす、リードと呼ばれた中年男性に依頼に関する質問を投げかける。

 

「あぁ、こっちでも独自に調べたが、ホルデス採掘場を守ってるのは旧式のMSを主体とした新・アフリカ共同体軍の部隊だけで、Z.E.O.N.の国軍部隊もZ.A.F.Tの部隊もいない」

 

「何だそれ? ベースマテリアルと言えば貴重な鉱物だろ、そんな貴重な鉱物の採掘場なのに、国軍もZ.A.F.Tも配置せず、現地の連中に管理や警備を任せっきりなのか?」

 

 と、Z.A.F.Tの軍服を着込んだ美しい容貌の青年、おそらくコーディネイターであろう青年が疑問を口にする。

 

「イライジャ、アフリカのベースマテリアルの分布は知ってるか?」

 

「え? いや、知らない」

 

「アフリカにおけるベースマテリアルの分布は、主に東アフリカに集中してる。つまり、西アフリカにあるこのホルデス採掘場は、そんな分布から少し離れてるんだよ。だから、Z.E.O.N.の連中も飛び地の警備には部隊を割けずらいんだろうよ」

 

「だが、貴重なベースマテリアルの採掘場である事に違いはないだろ?」

 

「それに、埋蔵量に関しても、東アフリカに比べ少なく。言わば、採れるから採ってるが、そこまで重要な採掘場でもないって訳さ。或いは、Z.E.O.N.の連中も自分達の勢力圏内だから、多少警備が雑でも安心だと思ってるのか、単に、そこまで割ける兵員が足りないのか。何れにしても、依頼をこなす俺達にとっちゃ、有難い話じゃねぇか」

 

「あ、あぁ」

 

 リードの説明に、イライジャと呼ばれたコーディネイターの青年は、納得した様子で口を閉じた。

 

「よし、それでは、ミッションの準備を始める。ロレッタ、採掘場の爆破に使用する爆弾の用意と、機体の用意を頼む」

 

「了解、任せて」

 

 そして、(ガイ)の指示により、各々が依頼に向けた準備に取り掛かる。

 ロレッタと呼ばれた地球連合の軍服の上着を着こなした女性は、爆弾の用意と、そして、最近では傭兵たちの間においても普及し始めたMSの用意を任された。

 

 なお、カラードの規定により、使用するMSは原則としてバッテリー方式の機体のみとなっている。

 ただし、噂では、一部の専属契約を交わした傭兵には、熱核反応炉搭載MSの使用が許可されていると言われている。

 

「リードは潜入や撤収の際に協力してくれる、現地の反政府組織とのコンタクトを頼む」

 

「了解だ」

 

「風花には、リードの補佐を頼む」

 

「うん、わかった!」

 

「よろしくな、風ッ花」

 

「かざはな! その呼び方はやめてよね!」

 

 そしてリードと、風花と呼ばれた女の子には、親Z.E.O.N.勢力圏内である旧ブルキナファソへの潜入などの際に助けとなる組織への接触と交渉が任される。

 

「で、俺はどうする?」

 

「勿論、俺と共に出撃してもらう」

 

 そして、(ガイ)とイライジャは、MSに搭乗し出撃するべく、コンディションを整えるのであった。

 

 

 

 

 それから数日後。

 現地の反政府組織の協力の下、再構築戦争の時代の傭兵にとっては天国であったアフリカは旧ガーナの地に降り立った彼らは、北上し旧ブルキナファソへと陸路で移動。

 そして、今回の依頼の破壊目標であるホルデス採掘場付近の岩山の影に、MSを積載したトレーラーを停車させた。

 

(ガイ)、イライジャ、デッキアップさせるわ」

 

 ロレッタの声と共に、二台のトレーラーの荷台がデッキアップを始め。荷台に搭載していた二機のMSがゆっくりと起き上がる。

 程なく、デッキアップが完了すると、ロックの解除と共に、二機のMSのモノアイに光が灯り、自走を始める。

 

 二機のMSは共に、Z.E.O.N.勢力圏内という事もあり、移動中怪しまれぬようにジンタイプのMSをベースに独自の改造を施した機体であった。

 

 一方は、青を基調とした塗装に、トサカ状の頭部センサーをバスターソードと呼ばれる近接戦闘用の武装に変更を施した、イライジャが搭乗する専用ジン。

 もう一方は、ネイビーと黒の二色を基調に塗装が施され、トサカ状の頭部センサーを廃して頭頂部にモノアイを増加、更に装甲各部に穴をあけ軽量化を図り、アーマーシュナイダーと呼ばれる対MS用戦闘ナイフを両肩に装備した、(ガイ)が搭乗する専用ジンである。

 

「ではこれより、ミッションを開始する」

 

 (ガイ)の合図と共に、ガイ専用ジンが片膝をつく。

 そして、膝をついた脚とは反対側の脚部の角度を調整すると、脚部外側のハードポイントに装着している三連装ミサイルポッドに装填した、短距離ミサイルを発射する。

 鋭い音と共に大空へと飛翔した三発の短距離ミサイルは、程なく、短距離用の為に短い推進力を失うと、そこからは重力に従い地上へと降下を始めた。

 

 そして、放物線を描いた三発の短距離ミサイルは、やがてホルデス採掘場に降り注ぐ。

 

「な!? 何だ!?」

 

「警報鳴らせ!」

 

 幸い、採掘場自体や設備等に被害は無かったものの、突然の攻撃にホルデス採掘場は一瞬にして混乱に陥る。

 

「緊急事態だ! 総員第一戦闘配置! 非番の連中の直ぐにMSに乗せて出撃させろ!!」

 

 ホルデス採掘場の一角にある司令部施設では、同施設の司令官と思しき恰幅の良い新・アフリカ共同体軍の佐官が、司令室のモニター群を目にしながらマイク片手に声を荒らげていた。

 そんな司令官の急き立てられて展開を始めた警備担当のMSパイロット達は、乗機のコクピット内で口うるさいだけの上官に毒付きながらも、自らの職務を全うすべく各種画面に目を配る。

 

「っち、何処の連中だ?」

 

 隊長格であるパイロットは、乗機のザクIIF型のコクピット内で神経を尖らせながら襲撃犯を捜索していた。

 刹那、不意にレーダー画面に反応が現れたかと思えば、その反応の正体は木々の中から現れ、あっという間に近くにいた部下のザクIを、ただの鉄塊へと変貌させた。

 

「ハ、ハムザがやられた!」

 

「何だアイツら、ゲリラか!?」

 

「馬鹿か、ゲリラ如きがあんなもの(MS)持ってる訳ねぇだろ!」

 

「狼狽えるな、テメェら! 相手はたかが二機だ、数で押し切れ!」

 

 仲間がやられ半ばパニックに陥った部下達に対し、隊長は一喝して冷静さを取り戻らせると、直ぐに状況を冷静に分析し、指示を飛ばす。

 相手の素性は分からないが、相手は改造ジンが二機、対して自分達は倍以上の十機近く。

 数的優位を生かせば、勝てない戦闘ではない、筈であった。

 

「な、なんだこのジン。た、弾が当たらねぇ!?」

 

「た、助けて──ギャ!」

 

「ば、ばけもんだぁ!」

 

 だが、隊長の予想に反して、二機の改造ジンは強く。

 特にネイビーと黒の二色の改造ジンは部下達の攻撃を軽々と掻い潜りながら、装備したMMI-M8A3 七五ミリ重突撃機銃の銃弾を部下達の機体に確実に命中させていた。

 この予想に反する状況に、隊長は焦っていた。

 そこで、意を決し、腰のマウントラッチに装着させていたヒートホークを手に持つと、隊長のザクIIF型はネイビーと黒の二色の改造ジンに斬りかかるべく跳躍する。

 

「これ以上は、やらせるか!」

 

 威勢のいい声と共にネイビーと黒の二色の改造ジンに迫る隊長のザクIIF型。

 だが、振り下ろしたヒートホークの刃は、装備していたMMI-M8A3 七五ミリ重突撃機銃に受け止められ。

 それにより生じた僅かな隙をつかれる形で、アーマーシュナイダーの刃が、ザクIIF型のコクピット付近に突き刺さる。

 

「あ、あの、稲妻の様な蛇のエンブレムは──、サ、サーペントテー……」

 

 火花散るコクピット内で、隊長は相手の機体の胸部に施されたエンブレムに気が付く。

 だが、そのエンブレムの名を言い切る前に、彼の意識は彼の機体ごと爆発と黒煙の中に消えていった。

 

「た、隊長がやられた!?」

 

「それよりも、さっきサーペントテーって言わなかったか?」

 

「あぁ! あのエンブレム! サーペントテール!!」

 

 やがて、誰かがその名を口にした時、パイロット達の間に再びパニックが発生した。

 

 サーペントテール。

 それは(ガイ)達がメンバーを務める、カラード登録の小規模民間軍事会社(PMSC)であるが。

 その規模に反し、その知名度はかなり高く、同業者で知らぬ者はいないと言われる程だ。

 

 対峙している相手がサーペントテールと分かるや否や、残った警備隊のパイロット達は次々に戦闘を放棄し、その場から逃げ始めた。

 

「こ、こらぁ! 貴様ら! 敵前逃亡は銃殺刑だぞ!! 戻って戦え!」

 

 司令官の声も空しく、残った警備隊のパイロット達は乗機と共にホルデス採掘場からいなくなった。

 

「どうやら、部下の教育がなってなかったようだな。……さて、頼みのMSもいなくなった。降伏してもらおうか?」

 

「ぐぬぬ」

 

 たかが傭兵の操る二機のMSを相手に、数的に優位であった筈がいつの間にか屈辱的な降伏の勧告をされるまでに至り。

 司令官の男性は、悔しさで顔を歪ませた。

 

 だが、不意に不敵な笑みを浮かべると、(ガイ)からの降伏の勧告を突っぱねた。

 

「私は栄誉あるアフリカ共同体軍の軍人だ! 誰が傭兵の言葉なんぞに頷くものか!」

 

「そうか。なら、仕方な──っ!」

 

 司令官の決断に、(ガイ)は粛々と、使い物にならなくなったMMI-M8A3 七五ミリ重突撃機銃の代わりに拾った、M-120A1 ザクマシンガンの銃口を司令部施設へと向けた。

 そして、操縦桿のトリガーを引こうとした、刹那。何かを感じ取ると、咄嗟に機体を後方へと跳躍させた。

 

 すると、先ほどまでガイ専用ジンが佇んでいた場所に高速で何かが飛来し、着地と同時に爆発を起こす。

 

「ほぉ、流石はサーペントテールのリーダー、叢雲劾。あれを避けるとはなかなかやるな」

 

「誰だ!?」

 

 無事に着地を果たしたガイ専用ジンのモノアイが、飛来物の飛んできた方向へと向けられると。

 砂塵を巻き上げ、巨大な何かが接近してくる様子を捉える。

 徐々に輪郭のみならず細部も認識できるようになり、判明したその正体は、Z.E.O.N.国軍が正規採用している陸戦用重MS、ドムであった。

 

「ど、ドム!? リードの奴、国軍の連中はいない筈じゃなかったのかよ!?」

 

 ドムの登場に狼狽えるイライジャ。

 だが、(ガイ)はいつも通りの冷静な口調でイライジャに語り掛ける。

 

「落ち着けイライジャ。確かにあれはドムだが、国軍の部隊のものではない」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「俺達と同じ同業者さ。最も、奴は"首輪"をしていないようだがな」

 

 開戦以来、カラードはその発足の経緯などから地球連合側に立つことを表明しており、必然的にカラードに登録されている傭兵たちは地球連合側の先兵として働いている。

 

「ははは、流石は叢雲劾。一発で正体を見破るとは、流石だぜ。あぁ、一応言っておくとな、これでも元は俺もあんたと同じ"首輪付き"だったのさ。ま、今じゃこの通り、自由の身だがな!」

 

 しかし、カラードに未登録の者、或いはカラードから脱退した者等。

 地球連合側からすれば違法な傭兵たちも活動しており、そうした違法傭兵たちの多くは、反地球連合勢力に与する事が多かった。

 

「成程。お前があの司令官の切り札という訳か」

 

「そういうこった。休戦期間中は連合軍の連中も表立って行動できねぇ、だから、あんたらの様な連中を使ってコソコソと何かを仕掛けてくるのは予想されていたからな。目には目を、傭兵には傭兵を、ってな」

 

「だがそっちは一機、こっちは二機だ!」

 

「おっと坊主、誰が俺一人だって言った?」

 

「え?」

 

 数的優位に余裕を見せていたイライジャだったが、不意に、レーダーが接近してくる二つの反応を捉えた。

 青い何かが大地を駆け、接近してくる。

 

「悪いな坊主。こっちは三機だ」

 

 現れたのは、Z.E.O.N.国軍が正規採用している陸戦用MS、グフと呼ばれる機体、それも二機。

 どうやら、ドムを操る傭兵の仲間のようだ。

 

「それじゃ、手合わせ願いましょうか? 叢雲劾」

 

「っち!」

 

(ガイ)!」

 

「おっと、坊主、テメェの相手はこいつらだよ!」

 

 ジャイアント・バズの発砲と同時に戦闘を開始したガイ専用ジンとドム。

 イライジャは援護に入ろうとするも、二機のグフに進路を阻まれてしまう。

 

「ははは! あの有名な凄腕傭兵の叢雲劾とこうして戦えるとは夢にも思わなかったぜ!」

 

「お喋りが多い奴だな」

 

「はっ! 言ってな」

 

 ジャイアント・バズの重たい一撃を躱しつつ、M-120A1 ザクマシンガンの七五ミリ弾を浴びせるも、やはりその見た目に違わぬ重装甲には効果が薄い。

 更に、幾ら改造して性能を向上させているとはいえ、やはり基礎的な性能では後発のドムに軍配が上がる。

 次第に、(ガイ)の旗色が悪くなっていく。

 

「どうしたどうした!? このドムの動きについてこれねぇか!?」

 

「くっ」

 

「おらおらおらっ! っ! やってくれるじゃねぇか!」

 

 ドムの滑るような動きに苦戦しつつも、放った七五ミリ弾がジャイアント・バズに命中し、ドムの戦闘能力を大きく減少させる。

 

「だが、こいつで終わりだ!」

 

 しかし、傭兵は諦める事無くジャイアント・バズを投げ捨てると、一度距離を取り、その間にヒート・サーベルを装備する。

 高速で動き回るその巨体を、ガイ専用ジンの正面から突撃させた。

 

「同業者のよしみだ! この一撃で、すぐに楽にしてやるよ!!」

 

「っ!?」

 

 多少の七五ミリ弾の被弾をものともせず突撃するドム。

 やがて、腹部に装備されていた拡散ビーム砲から眩いばかりの閃光が放たれる。

 

 出力の関係から目くらまし等にしかならないが、(ガイ)の視界を確実に奪い、そして、ヒート・サーベルの一撃を回避するタイミングを誤らせるには充分であった。

 

「死に──、何!?」

 

 一瞬硬直化したガイ専用ジン目掛け、白熱化したヒート・サーベルを振るおうとしたその瞬間。

 不意に、弾丸の嵐が襲い掛かる。

 

 弾丸の嵐によってヒート・サーベルの一撃を繰り出せなくなったドムは、再びガイ専用ジンと距離を取ると、横槍を入れた下手人を探し始める。

 最初はイライジャかとも思ったが、イライジャは二機のグフと交戦を続けており、横槍を入れられるような状態ではなかった。

 

 では誰が、と思った次の瞬間。不意に、岩の上に佇む巨大な人影を見つける。

 

「あ、あれは……」

 

 それは、一機の青いMS、その額にはV字型ブレードアンテナ、そして顔には防塵・対閃光用のバイザーに覆われたツインアイ。

 その特徴は紛れもなく、"ガンダム"の名を持つMS。

 噂話程度にガンダムの情報について耳に入れていた傭兵にも、それがガンダムの名を冠したMSである事は、一目見て気が付いた。

 

 そんな謎の青いガンダムタイプのMSは、右腕前腕部を覆うように装備したガトリング砲とミサイル・ランチャーの複合火器をドムに向けると、刹那、複合火器が火を噴き始めた。

 

「な!? なんだよこの火力! じょ、冗談じゃ──」

 

 放たれる弾丸の雨に、ミサイルの雨、そんな火力の嵐を避けきれず、ドムはあっという間に巨大な鉄塊と化す。

 そして、異変に気付いた二機のグフも、複合火器と左肩背部に装備したショルダーキャノンによって、為す術もなく倒されてしまった。

 

「が、(ガイ)……あいつは、一体?」

 

「少なくとも、敵ではないだろうが……」

 

 自分達のピンチを助けてくれた謎の青いガンダムタイプのMS。

 岩の上から(ガイ)のもとへと近づくこの機体に対して、二人は警戒を緩めるどころかますます強めていく。

 

 と、その時、不意にロレッタから通信が入る。

 

(ガイ)、イライジャ、その機体は私達の味方よ」

 

「どういう事だ、にロレッタ?」

 

「それは、こういう事だよ」

 

「っ!? お前は、エド・ワイズ」

 

 そして、急に割り込んできた男性の声を聴くや、(ガイ)はその男性の名を口にした。

 

「という事は、あの機体のパイロットは……」

 

「お久しぶりです、(ガイ)さん」

 

「やはりお前だったか、グラン」

 

 目の前の機体からの通信の相手は、(ガイ)の予想していた通りの人物であった。

 

 グラン・メルセネール。

 (ガイ)と同じ首輪付きの青年にして、カラード登録の民間軍事会社(PMSC)、ラウンドナイツの一員でもある、所謂同業者だ。

 過去に何度か共に依頼をこなしたこともある仲で、(ガイ)にとっては顔見知りの一人であった。

 

 そして、エド・ワイズもその一人で、ラウンドナイツのリサーチャーでもある。

 

 

 

 それから暫くの後。

 切り札が倒され、今度はあっさり降伏を受諾した司令官、そして彼を始め司令部施設に残っていた新・アフリカ共同体軍の軍人達を拘束し。

 不当な採掘労働に従事していた労働者たちを解放し、採掘場の爆破準備が進められる中。

 ガイ専用ジンから降りた(ガイ)は、爆破準備の作業を眺めているグランやエドのもとへと近づく。

 

「まさか、グラン達もここに用がるとはな」

 

「僕達がこのホルデス採掘場にやって来たのは、偶然ですよ」

 

「そうよ、私達がここにやって来たのは、あの違法傭兵の排除を依頼されたからなんだから」

 

 すると、そんな三人のもとへ、金髪に眼鏡をかけた事務服姿の女性が近づき、話に割って入ってくる。

 

「シーラも来ていたのか」

 

「当然よ。私はグランのオペレーターなんですから」

 

 彼女の名前はシーラ・コードウェル。

 ラウンドナイツの一員にして、グランのオペレーターを務める女性である。

 

「それで、話を戻すけど。私達は依頼を受けて、ターゲットの違法傭兵がこのホルデス採掘場にいると知り、依頼をこなす為にやって来たという訳」

 

「成程。所で、あのMSは……」

 

 そして、グラン達ラウンドナイツの面々がホルデス採掘場にやって来た理由を理解した(ガイ)は。

 次いで、グランの搭乗していた、あの謎の青いガンダムタイプのMSについて尋ね始める。

 

(ガイ)、あんたも知ってるだろ、俺達ラウンドナイツがA.O.C.U.と専属契約を交わした事は」

 

「あぁ」

 

「あれは言わば、その見返りってやつだ。詳しくは言えねぇがあれは地上での耐環境性試験の為に開発されたものに、あの右腕の複合火器のテストも兼ねて、グラン用に改修を施してる」

 

 自慢げな顔と共に説明するエドに対し、(ガイ)は薄い反応を返すのであった。

 

「ったく、相変わらずクールだなお前さんは。……所で、聞いてるぜ、(ガイ)

 

「何だ?」

 

 と、エドのサングラスの奥の瞳が怪しく光り出すと、意味ありげな薄笑いと共に(ガイ)に語り始める。

 

「お前さんの所にも、A.O.C.U.からスカウトの話が来てるんだろ?」

 

「相変わらず耳が早いな」

 

「当たり前よ、こちとらそれで生活してるんだから。……で? どうするんだ? 随分と破格の待遇だって聞いてるぜ」

 

「……」

 

「ま、アンディの言葉を借りる訳じゃねぇが、最終的に決めるのはお前さん達だが、無理はしない方がいいぞ」

 

 そして、話に一区切りがついた所で、ロレッタから爆破準備完了との報告が告げられる。

 

「では(ガイ)さん。僕達も失礼します」

 

「あぁ、またな」

 

 グランと握手を交わし、彼らの撤収を見送ると、(ガイ)も急いで撤収準備に取り掛かる。

 それから程なくし、ホルデス採掘場に響く爆発音と、濛々と立ち上る黒煙をサイドミラー越しに眺めながら、(ガイ)達を乗せた二台のトレーラーは、一路脱出ポイントを目指した。

 

「ミッション・コンプリート……」

 

 遠く立ち上る黒煙をサイドミラー越しに眺めながら、風にかき消されるような声で、(ガイ)は呟くのであった。




グフの活躍を描きたいと言っておきながら、これだけ。
いえ、何れもっと活躍している所を描ければ、と思っております。


ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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