機動戦士ガンダムSEED 連合vsZ.E.O.N. DX 作:ダルマ
宇宙で行われた第二次世界樹攻防戦が年内で終結した一方。
同じく停戦期間の終了と共に再開された地上での戦いは、年を跨いで続けられた。
まず最初に動いたのは、Z.E.O.N.の南アフリカ方面軍及び新・アフリカ共同体による連合軍であった。
地球連合側の戦線を今度こそ突破すべく、Z.E.O.N.側連合軍は攻勢を再開。
国軍及びZ.A.F.Tの陸上戦艦や陸戦艇による陸上艦隊、そしてド・ダイIIに搭乗したMSやディン、更には大気圏内用戦闘機による航空部隊は、ザンビア南部の地球連合側戦線に襲い掛かった。
そして、その先鋒を務めたのは、地上戦用のMS部隊であった。
だが、戦線の突破を図ろうとした彼らが目にしたのは、それまで見慣れた地球連合側のMSとは異なる外見、そして性能を有するMSで構成されたA.O.C.U.部隊の数々であった。
モデルとなったMS同様の名を持つ、ジムの陸戦仕様であり、宇宙用の装備を取り除き関節部などの強化を施した、形式番号RGM-79[G]、採用名"陸戦型ジム"。
その名の通り重力下での戦闘に適応させた同機は、形式番号XBR-M-79Eと呼ばれる、ガンダム装備のビームライフルとは形状の異なるビームライフルを装備している他。
ビームスプレーガンやビーム・サーベル等のビーム兵器、長距離支援火器である一八〇ミリキャノンや六連ミサイルランチャー、ロケットランチャー等の実弾武装を運用可能で、その装備は豊富である。
勿論、この陸戦型ジムの他にもジムや有明等で構成されたMS部隊が存在しており、それらはZ.E.O.N.側地上戦用MS部隊と対峙する事となる。
残念ながら、Z.E.O.N.側地上戦用MSであるドムやバクゥに比べると、未だに機動力では上記のA.O.C.U.製MSは劣っているものの。
運用可能である豊富な装備による火力は勝っており。
また、ドムやバクゥのパイロット達からすれば、これまで対峙してきたザニーやガンキャノンよりも格段に良い動きをする新型MS群は、その火力も相まって侮り難く。
事実、両者はお互いの長所を生かした戦闘で互いに一歩も譲らぬ活躍を見せ、結果、双方に少なくない被害をもたらすのであった。
一方空でも。
ド・ダイIIやグゥル等の、所謂
コルベット・ブースター、と呼ばれる機体に背負う様に装着させる事で飛行能力を付与させ、また翼下武装ポッドを装着可能な、このオプション装備を装備したMS部隊の投入や。
アナハイム・エレクトロニクス社が開発した、ビーム砲を備える等高性能ながら製造費用の方も高価な多目的大型戦闘機コア・ブースター。同機をもとに運用領域を大気圏内に限定し、再設計を施したジェット・コア・ブースターや。
ムラクモ・クローム社が開発した、隼の発展型で独特の三胴体構造に二門のビーム砲を備えた多目的戦闘機。高磯統幕長曰く、その外見はどう見ても超時空要塞マクロスと呼ばれるアニメに登場する
更には、従来の航空兵器等の前に。
Z.E.O.N.側連合軍の航空戦力は、苦しい戦いを強いられる事となった。
そして、自慢の陸上艦隊においても。
A.O.C.U.陸軍自慢の、別世界ではビッグ・トレーと呼ばれているホバークラフト方式の陸上戦艦と同様の外見を有する、敷島級陸上戦艦。
同じく、別世界ではヘビィ・フォークと呼ばれているホバークラフト方式ながらも、名前にもあるフォークに似た形状に三連装の主砲を三基備え、高い砲撃能力を有する、マンダレー級陸上打撃戦艦。
これらのA.O.C.U.陸軍自慢の陸上戦艦の打撃力を前に、制空権の確保もままならない状況も相まって、期待されていた以上の活躍は叶わなかった。
このように、陸と空で双方の激しい戦闘が行われている一方で。
海でも、陸と空に負けずとも劣らぬ戦闘が行われていた。
それは、大西洋連邦海軍とA.O.C.U.海軍の合同による、ザンジバル諸島及び対岸のダルエスサラームに対する上陸作戦を阻止すべく発生した。
同地域はZ.E.O.N.にとって重要施設であるマスドライバー施設ハビリスから、直線距離にして約八六〇キロメートルの位置にあり。
文字通り、ここに両軍の上陸を許せば、Z.E.O.N.側にとっては喉元に短剣を突きつけられるのも同じであった。
この為、Z.E.O.N.側は自慢の水陸両用MSを擁する水中艦隊を、大西洋連邦とA.O.C.U.両海軍艦隊の迎撃に投入。
宇宙や地上では追い抜かれつつあるものの、水中では未だにZ.E.O.N.が地球連合に対して勝っている、との自負を持つ水陸両用MSのパイロット達。
しかし、そんな彼らの前に立ちはだかったのは、ジムをベースとした派生型の一つ。
その名の通り水中での運用も可能な水陸両用MS、モデルとなったMS同様の名を持つ、形式番号RAG-79、採用名"アクア・ジム"である。
バックパックと両肩に設けたハイドロジェットユニットにより、水中での活動能力を高めている他。
武装も、運用領域故の専用的な武装が多く、魚雷なども発射可能な携帯式の多目的ミサイルランチャーに短いビーム刃を発するビーム・ピック、格闘や捕縛など多様な用途に使える腕部に装備するハンド・アンカー等である。
モデルとなった機体は急遽制作された為、その完成度もいまいちではあったが、この世界の機体はある意味後発の為、モデルに比べ完成度が高い。
とはいえ、基礎設計の段階から水陸両用として設計された訳ではないので、水中用ザクやジンワスプ等の、同じ性質を持つ機体に対しては勝っていたが。
国軍のゴッグやズゴック、Z.A.F.Tのグーンやゾノ等の機体には、残念ながら劣っていた。
しかし、上記の様な高性能水陸両用MSは数で言えばそれ程多くはなく。
アクア・ジム隊は性能の差を数の多さや"大鷲"と呼ばれる、その外見は鷲と言うよりもカタツムリな対潜哨戒機との連携等でカバーし、両者は、ザンジバル諸島近海の海中で激しい水中戦を繰り広げた。
こうしてZ.E.O.N.側自慢の水中艦隊を押しとどめている間に、大西洋連邦とA.O.C.U.両海軍艦隊はザンジバル諸島及びダルエスサラームに上陸を開始。
沿岸部に展開していた防衛部隊を撃破し、次々と部隊が水揚げされていく。
この事態に、マスドライバー施設ハビリスを所管する南アフリカ方面軍の司令官であるノイエン・ビッター少将は遂に決断を下す。
それは、ザンビア南部の地球連合側戦線の攻勢に参加している戦力の一部を、上陸部隊の迎撃に振り分けるというものであった。
実は、大西洋連邦とA.O.C.U.両海軍艦隊による上陸作戦は、南アフリカ方面軍の戦力分散を誘引する事こそが真の目的であり、ビッター少将は、両軍の術中にはまってしまっていたのだ。
こうして、攻勢の勢いが弱まるや、南アフリカ統一機構、大西洋連邦、そしてA.O.C.U.による三連合軍側は、戦線を押し上げるべく逆撃を開始。
新型MSの性能や陸上戦艦の打撃力、更には空軍力を更に押し出し、戦線を押し上げていった。
そして、戦闘が落ち着くC.E.七一年一月十五日までには。
マスドライバー施設ハビリスへの侵攻こそ防いだものの、南アフリカ方面軍はその戦線を大きく後退させる事となった。
更には、三連合軍側の攻勢に対する被害により、再び戦線を押し上げる勢いを失い、マスドライバー施設ハビリスを中心とした守りの姿勢へと転じる事となった。
この一連の戦いは南アフリカ決戦と呼ばれ、地上での戦いにおける地球連合側の久しい勝利の栄光を手に入れた戦いではあったが。
当事者である三連合軍側もまた、少なくない被害の為間を置かず攻勢に出る事無く。
当面の間は戦力の補充と、攻勢再開に備えた更なる戦力の拡充に努める事となり。
戦線は再び、暫しの膠着期間を迎えるのであった。
なお、これ以外の戦線に関しては、停戦期間の終了と同時に再び小競り合いなどが再開されたものの。
南アフリカの様な大規模な衝突などは怒らず、不気味な程静かであった。
南アフリカ決戦の終結から遡る事数日前。
A.O.C.U.の中心である日本州は日本列島本州、近畿地方のとある地域の山間に設けられている、ムラクモ・クローム社が有する巨大なドーム型の屋内式多目的演習場。
同社の新兵器などの試験等に使用されるこの演習場内、役員などの幹部社員の観覧用に設けられた特別観覧室に二つの人影があった。
一人は、軍服に身を包んだ高磯統幕長。
そしてもう一人は、組織の会合において高磯の参加に対しいの一番で歓迎の意を表し、今やムラクモ・クローム社の会長として高級スーツに身を包んだメイナード・マクナイトであった。
「それで、メイナード会長。今日は以前申されていた新型MSの性能テストをお見せいただける為に、私をこの演習場にお呼びになったので?」
「ははは、ここには私と君しかいない。そう他人行儀にならず、いつものように話してくれていい」
共に初めて出会った頃に比べれば、シワや白髪も増え、肌のハリや体の引き締まりも個人差はあれど失われているが。
二人の関係は相変わらずであった。
「では、そうさせてもらいます。……それで、先ほどの話の続きですけど、今日私を呼んだのは例の新型MSの性能を実際に見せたいからで?」
「まぁ、それもあるが。実は、それとは別にサプライズを用意していてね」
「?」
「と、そろそろ始まりますよ」
隣に佇むメイナードの意味深な発言が気にかかりつつも、高磯は、分厚い防弾ガラス越しに眼下に見下ろす演習場に視線を向けた。
演習場への入場ゲートから姿を現したのは、二機のMS。
一機は鹵獲したZ.E.O.N.国軍のグフ、そしてもう一機は、白を基調に赤いラインの塗装が施された、二人の話に出てきた新型MSであった。
全体的にスリムなシルエットに、特に腰回りは従来のMSよりも更にくびれており、骨格となるフレーム構造が露出している。
しかし、その背部には、力強い一対のレールガン砲と可動式のシールドを備え、力強さを醸し出させている。
腕部には一二〇ミリライフルと可動式の物とは形状の異なるシールドを装備し、中・遠距離での高い戦闘能力を有している事を窺わせる。
そしてそのアンテナの様な頭部は、何処か、ガンダムを彷彿とさせるものであった。
「フラウロス……、いや、確か名前は……」
「ワイルドキャット、です」
「あぁ、そうだった。Z.E.O.N.の地上戦用MSに対抗すべくガンダム・フラウロスをベースに、砲撃モードをビーストモードに変更した機体、でしたね」
その機体の名は、形式番号MC-EB64[G]、採用名ワイルドキャット。
二人の会話に登場した通り、本機は機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場する、同作品のガンダムタイプであるガンダム・フレームの一つ、ガンダム・フラウロスをモデルとし独自の改良を加えた機体である。
相違点は装甲材質や動力源を新型バッテリー方式にする等、様々あるが。
特にモデルとなった機体との一番の違いは可変機構で、ガンダム・フラウロスでは砲撃の際の姿勢制御として用いられていたが、ワイルドキャットでは、走破性の高い四足獣形態となる事が出来るようになっている。
その為四足獣形態では、モデルとなったガンダム・フラウロスとは異なり、下半身を前後逆にする事無く。
変型と共にせり出した頭部保護装甲に、腕に装備していたシールドでコクピット付近を保護し、可動式のシールドで側面等を保護する等、四足獣形態では前面の被弾箇所が重点的に保護される。
四足獣形態での武装は背部のレールガン砲のみではあるが、必要とあればシールド等を使用した格闘攻撃も可能だ。
メイナード曰く、フラウロスの砲撃モードにガイアガンダムのビーストモードを組み合わせられないかとの転生技術者達の意見により生まれた、との事。
また、形式番号に書かれている通り、ワイルドキャットはガンダム・フラウロスの様な汎用機ではなく、完全な陸戦仕様である。
なお、本機はモデルとなったガンダム・フラウロスとは異なり、量産が予定されてはいるが、やはり可変機構の為生産コストが高くなることが予想され、大量生産までには至らないものとされている。
因みに、ワイルドキャットの名称に関しては、Z.E.O.N.が
なお、このワイルドキャットの存在を初めて知った際に高磯は、両者が戦場で相まみえる場面を想像し、それなんてゾイド? という感想を漏らしていた。
その際メイナードが、あちらはトラとライオンでどちらも猫科、こちらは犬対猫の王道対決だ! というツッコミが入ったのはここだけの話。
「流石、と言った所か」
「お褒めに預かり光栄です」
そんなワイルドキャットと鹵獲グフとの模擬戦が開始されると、ワイルドキャットはその性能を遺憾なく発揮する。
基本となる人型形態でもグフを圧倒する性能を見せつけ、中距離の撃ち合いや遠距離での戦闘でも終始グフを圧倒。
そして、四足獣形態でも、その姿に違わぬ獣の様な動きで演習場内を動き回り鹵獲グフを翻弄すると、最後は自慢のレールガン砲で模擬戦を終えるのであった。
「所で、ワイルドキャットの操縦は、基本は有明と同じですよね? まさか名前やモデルよろしく、ナニカサレないと操縦できないなんて事はないですよね?」
「ご安心ください。何度も説明した通り、ワイルドキャットの操縦システムは四足獣形態の特殊性を除けば、基本的には有明と同じですよ。間違っても、"AMS"なんて搭載していません」
メイナードの口からAMSという単語が零れた瞬間、高磯の表情が険しさを増す。
それに気づいたメイナードは、慌てて余計な一言を口にした事を詫びるのであった。
AMS、
それは、A.O.C.U.でも最重要の国家機密とされている、C.E.四十年代から六十年代に至るまで極秘に行われていた、とある巨大プロジェクトの一部として計画・開発されていた技術の一つであり。
この技術は、パイロットの脊髄や延髄を経て脳と機体を直接接続し、操縦桿などを使用せず機体の操縦を行うシステムである。
この、脳と機体を直接接続し、文字通り人機一体とさせる事により、操縦桿を用いた従来の操縦システムと比較して、タイムラグがほぼゼロになる等の精密な機体制御が理論上は可能となる。
しかしながら、直接接続する性質上、脳への負荷は大きく。
その為、同計画では負担軽減の為の補助コンピューターの開発なども並行して行われた他。
このAMSを用いた専用機の開発や、使用に最適化させたコーディネイターとは異なる強化人間、通称プラス等も巨大プロジェクトの一部として並行して開発が行われていた。
だが、C.E.六十年代、本計画を含む巨大プロジェクトの多くが凍結され、結局、この技術は日の目を見る事はなかった。
しかし、実はこの技術は、後に機械義肢の分野での開発に生かされ、機械義肢を必要とする多くの人々を助ける事になる。
と、一部は人の為に役立つ物となっているが、内容自体はまさにA.O.C.U.の闇というべき巨大プロジェクト。
実は高磯もメイナードも、この巨大プロジェクトに関与、否、この巨大プロジェクト自体、その立案は組織が主導した為、組織のメンバーは全員関係者である。
その為、この巨大プロジェクトに関する話は、組織のメンバーであっても軽々に口にして良いものではない。
「所で、メイナードさん」
「はい?」
「模擬戦が始まる前に言っていた、サプライズ、というのは、一体何なんです?」
「おぉ、そうでした。そろそろ、始まると思いますよ」
メイナードの視線が演習場へと向けられたのに釣られ、高磯も再びその視線を演習場へと向ける。
先程の模擬戦で荒れた演習場が綺麗に整備され、綺麗な状態となった演習場に、再びワイルドキャットが入場ゲートから姿を現す。
ワイルドキャットのパイロットの通信から聞こえるぼやきの内容から察するに、どうやらメイナードの用意したサプライズとは、ごく限られた者しか知らないもののようだ。
「サプライズと言うのは、ワイルドキャットととあるMSの模擬戦の事です」
「とあるMS? それは一体?」
「まぁ、見ていれば分かりますよ」
統幕長として、組織の重鎮として、開発されている新兵器などの情報は漏れなく把握しているものと思っていたが。
まさか、自分自身の与り知らぬMSが存在していたとは。
高磯は、自身の情報収集体制を漏れのないようにすべく、更に強化させる事を心の中で誓いながら、サプライズの目玉であるとあるMSが現れるのを待った。
それから程なく。
入場ゲートから、一機のMSが姿を現した。
「あ、あれは!」
その姿を見て、高磯は驚愕する。
ガンダムを彷彿とさせるトリコロールカラーの機体、その頭部には、V字型ブレードアンテナに複眼式のセンサーカメラ。
しかし、ガンダムと比べると幾分スマートで、特に胸部の形状に大きな違いがあり。また頭部にバルカン砲の砲口が見られず、固定武装は両腰部にマウントしているビームサーベルのみと少ない。
それもその筈。
この機体は、ガンダムはガンダムでも機動戦士ガンダムAGEと呼ばれる作品に登場するガンダムタイプのMSであり。
その特徴は何と言っても、胸部のコクピットハッチに設けられた、Aの文字のコアユニットである"AGEシステム"だ。
「あれはまさしくガンダムAGE-1、……だが、胸部のAのマークが見当たらないが?」
「いやー、流石に我々だけではAGEシステムやAGEビルダーを開発できませんでした。……フリット君が転生してくれていれば、開発できたかもしれませんが」
「という事はあれは」
「まぁ、所謂ガンダムAGE-1 フラットですよ」
本来Aのマークが表示されている、胸部の六角形のコクピットハッチにはカバーが取り付けられており、何のマークも表示されていない。
メイナードの話から察するに、どうやら外見だけは瓜二つだが、中身は他のMS同様、モデルとなったものとは異なっているようだ。
A.O.C.U.の先進的な技術開発を支える、様々な世界からの転生者達。
そんな彼らの知識や技術などを用いても、要となるAGEシステム等はどうやら開発できなかったようだ。
「しかし、AGEシステムは未搭載でも、換装等の機能はモデル同様に備えています」
「動力源は? まさか、モデル同様にプラズマ圧縮炉を搭載してるなんて言わないですよね?」
「動力源は熱核反応炉ですよ、装甲材質も特殊鋼材ではなくガンダリウム合金です」
以前、隼IIのコンセプトデザインが提出された際、高磯はモデルがモデルだけに、熱核タービンエンジンやフォールド技術など、超時空要塞マクロスの技術の根幹である
幸いと言うべきか、隼IIは人型や中間形態と呼ばれるガウォークに変形する事もなければ、エンジンも隼の発展改良型であり、マクロス世界の技術は一切使われていなかった。
とは言え、転生者達の中には、ガンダム作品に似た
そうした者達が知らぬ間にオーバーテクノロジーをこの世界で再現し、不必要な混乱を齎してしまう事を、自称"組織最後の良心"を自負する高磯は危惧していた。
最も、組織最後の良心を自負してはいるが、時折心の奥底に眠る男のロマンに負けて、止めるどころかゴーサインを出してしまう事もあるのはご愛敬だ。
「で、中身は兎も角見た目は完全にガンダムAGE-1 フラットなあの機体が手にしているライフルはまさか?」
「見た目はドッズライフル、ですが、中身はビームライフルです。形式番号WG-F-PPkです」
「それで、メイナードさん。一体、どうしてまたガンダムAGE-1なんて開発したんです?」
「あれは、我が社の対アナハイム・エレクトロニクス社戦略計画! Anaheim electronics Generate Excellent product(アナハイム・エレクトロニクス社よりも優れた商品を生み出す)計画、略してAGE計画の根幹となるフラグシップ機なのです!!」
「は、はぁ……」
開発した目的を力説するメイナードに対し、高磯はその熱意に内心少々引いていた。
曰く、このAGE計画は、今後他のプラント理事国のみならず、Z.E.O.N.側でもフェイズシフト装甲採用のMSの出現が予想される中において、自社製ビーム兵器の有無はMS市場において重要な指標となる事が明白である為。
現在その分野でリードしているアナハイム・エレクトロニクス社に追いつき追い追い越すべく、この計画は立ち上げられたのだとか。
そして、その計画に則り、ムラクモ・クローム社が持てる技術の粋を結集して開発した、自社製ビーム兵器標準搭載のフラグシップ機こそ、ガンダムAGE-1 フラットなのだ。
こうして生まれたガンダムAGE-1 フラットの各種データをもとに、生産コストなどを抑えた量産型MSを現在鋭意開発中との事。
「ふふふ、この計画が上手くいけば、アランの奴の鼻を明かしてやれるぞ……」
と、表向きにはMS市場を理由にしているが、本音の部分では、メイナードがアナハイム・エレクトロニクス社の現会長であり、組織の一員でもあるアラン・マーティンへの対抗心から社員に発破をかけて計画をスタートさせたのだろう、と高磯は読んでいた。
組織内でもメイナードとアランのライバル関係は公然の秘密として広く知られており、これまでも両者は幾度も張り合っている事から、おそらく今回の件も、その一環である可能性が非常に高い。
(ま、互いに切磋琢磨して素晴らしい兵器が出来るのであれば、軍としては動機はどうあれ嬉しいからいいか……)
最も、会長同士は張り合っていても、両社の社員達の関係はそこまで仲が悪くなく、むしろ交流会を開くほどの仲である。
その為、特に止めに入らなくても問題ないだろうと、高磯は結論付けた。
そしてふと、考えに耽って模擬戦を見る事を忘れていたのに気が付き、慌てて演習場に視線を向ければ。
そこには、四足獣形態のワイルドキャットを足で踏みつけ、頭部にWG-F-PPk ビームライフルの銃口を向けたガンダムAGE-1 フラットの光景が広がっていた。
ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。